教員からのごあいさつ

 本記事をご覧いただきありがとうございます。
 またも年度内に間に合いませんでしたが、昨年度(2023年度)の私の研究室(以下「ゼミ」)の活動の報告を行います。とうとう10年目を迎えた本ゼミは、各学年でそれぞれ現地調査(フィールドワーク、以下「FW」)を計画し、ゲスト参加者も積極的に迎え入れて実施しております。
 私のゼミでは、前期(4~9月)は映画などの作品舞台を巡るガイドツアーを組んで「作品観光研究」を行い、後期(10~3月)は特殊な観光資源をもつまちに出向いて、「テーマ観光研究」を行っております。ゼミの学生にはどちらの研究においても、ゲストにとって、どのような工夫が必要であるかを、多様な角度から追究してもらっております。
 まず、7月には作品観光研究として、映画「名探偵コナン~から紅の恋歌」の舞台を巡るガイドツアーを企画してもらい、京都嵐山と大阪ビジネスパーク周辺をガイドしてもらいました。また9月には、映画「ちはやふる」の作品世界を追体験するツアーを企画し、こちらは滋賀県大津市周辺をみなで巡りました。
 後期のテーマ観光研究では、3回生ゼミが12月にみかんのまちとして知られる和歌山県有田市を訪れました。ちょうどみかんが旬の時期です。食べる以外にも、なにか興味深い取組みをされているのか、それを見て探す目的で現地に赴きました。新たに入ってきた2回生のゼミ生12名も、春休みに、たぬきのまちとして名高い滋賀県信楽町にて、同様のFWを行いました。なお、今年は毎年恒例の「歩き旅」が中止となりました。そのことはまた、文末の「おわりに」のなかで少し触れようと思います。

映画「名探偵コナン—から紅の恋歌」舞台探訪
—京都嵐山・大阪ビジネスパークまちあるき 23/07/08

 まずは、3回生の夏の作品観光についてです。今年は、毎年候補に挙がっていた「名探偵コナン—から紅の恋歌」の舞台巡りをいよいよ実施することになりました。ご存じのとおり、コナンの映画版は、かつての寅さんのように日本各地を舞台とし、本作では京都嵐山と読売テレビのある大阪ビジネスパーク周辺が舞台となっております。ゼミ生たちが事前に下準備を重ね、当日は作品世界を追体験できるように、ガイドしてくれました。
 本作は、読売テレビが爆破されるシーンから始まります。ですので、順番から言いますと、大阪から京都へ移動するのが良かったのですが、帰りの都合を優先し、今回は、京都嵐山からスタートします。4回生の多くがゲスト参加してくれました。
 嵐山の景色はいつもどおり美しいです。おそらく平安時代から変わっていないのだと思います。そしていつもどおり観光客で溢れかえっています。コロナの時期にまったく人がいなくなったという話が嘘のようです。
 まずは、作中でかるた大会の予選が行われた天龍寺へと向かいました。想像以上に境内は広く、こちらでは作品のことや天龍寺の歴史について、ゼミ生たちが説明してくれました。ついで、エンディング曲にも用いられた渡月橋にて、諸々のガイドをしてくれました。FWの進行と並行して、記録動画の撮影も行っており、ゼミ生たちは大変だったと思います。嵐山は観光客が多いだけでなく、車の交通量も多く、その割には歩道がないような場所もあり、団体での移動にはかなり気を遣います。
 その後、阪急電車に乗り、大阪へと移動。さらに環状線で大阪城公園に移動し、もう夕方です。当日は人気歌手のコンサートが大阪城ホールで開催されていたようで、たいへんな熱気でした。なお、読売テレビの1階には、さまざまなコナン関連のグッズや展示があり、無料で見られます。カフェや休憩スペースもありますので、ありがたい場所です。
 最後に、読売テレビ前のコナン像にて、みなで記念撮影をして、ガイドツアーは無事終了となりました。その後、近隣の飲食店で打ち上げをしました。コロナ禍で自粛していたので、ひさしぶりです。おかげさまで楽しい一日となりました。ホストグループのゼミ生のみなさん、暑い中、ご苦労さまでした。

映画「ちはやふる」舞台探訪—滋賀県大津市まちあるき 23/09/20

 3回生ゼミの別班は、秋に映画「ちはやふる—上の句」の舞台巡りツアーを企画し、実施しました。気候的にはこの時期が一番やりやすいです。学内に貼った参加募集のポスターをかるた札のレイアウトで作り、偶然にも、今年は夏のコナンとともに<かるた>つながりの舞台巡りとなりました。
 この日のガイドツアーの目玉は、かるたの聖地である近江神宮参拝です。もうずいぶん前に、一度近江神宮には来たことがありまして、そのときは朱塗りの楼門が修繕中だったと記憶しております。今回は完成された門を拝むことができました。境内にある近江勧学館では、実際に映画で用いられた部屋や「ちはやふる」出演者のサインなどを見学し、学生たちはそれら興味深く見入っておりました。
 神宮では神主さんにもお話を伺うことができ、近年は我々のような観光学を研究している大学生たちがよく訪れているとのことでした。じつはこの日は大学パンフレットの取材班も同行していて、ポーズ写真を撮影したり、雨が降ったりで、ホストグループは旅程の管理が大変そうでしたが、ほぼ予定通りに進行できていたと思います。帰り際には、さまざまな映画のロケ地となっている三井寺を参拝し、そちらの茶店で一休みした後、解散しました。ゲスト参加者にアンケートを書いてもらっておりますが、おおむね好評であったようです。秋のホストグループのゼミ生たちも、準備から実践まで、まことにご苦労さまでした。

3回生テーマ観光「特色ある観光資源をもつまち」現地調査
—みかんのまち「和歌山県有田市」 23/12/02

 3回生ゼミのテーマ観光の現地調査についてです。今年はいろいろと候補が挙がったなかで、みかんのまちとして知られる和歌山県有田市を訪れました。
 数年前、しょうゆのまち和歌山県湯浅市を同じ12月にFWで訪れましたが、その際に路地という路地でみかんが売られていたのを目にしており、湯浅でこの状況ならいったい本場の有田ではどういう状況なのだろうと、以前より関心をもっておりました。
 当日は快晴で、昼前に簑島駅に集合しました。本数が限られているバスの都合で、先に昼食をとる必要があり、今回はまず、道の駅「浜のうたせ」に向かいました。こちらは比較的新しい道の駅で、私もテレビのニュースで取り上げられていたのを見たことがあります。新鮮な海鮮丼を提供する食堂が人気ですが、みかんの直売所も併設しており、昼食とともに調査と取材も兼ねることができました。土曜日ということで、食堂はたいへんな賑わいでしたが、なんとか帰りのバスの時間までに食べ終わることができ、ゼミ生たちも満足でした。
 そのあとは「みかん資料館」を訪れました。こちらでは、お忙しいなか学芸員の方にお話をお伺いすることができました。ゼミ生たちは、当館で展示なども見学し、いろいろ勉強になり、また検討すべき課題も発見できたようです。その後、駅前にどれほどみかん関連のものがあるかを手分けして探し、全体の調査を終了しました。
 計画の段階では、現地でのみかん狩りも検討していたのですが、なかなか一日のFWではできることも限られており、今回は見送りました。体験型のFWは重要なので、できるだけ組み込むように指導しております。
 さて、冒頭にお話ししたみかんの路上売りについてですが、じつはこの箕島駅周辺では、まったくというほど見かけませんでした。そのために、私個人はみかんのお土産を買いそびれてしまい、ですので、もしこちらにお出かけなさる際には、直売所等で購入されるのがよろしいかと思います。

2回生テーマ観光「特色ある観光資源をもつまち」現地調査
—たぬきのまち「滋賀県信楽町」 24/04/04

 毎年恒例の2回生ゼミのデビューFWです。今年は、たぬきのまち、というか、たぬきの陶芸のまちというべきか、滋賀県の信楽町を訪問させていただきました。もちろん、貴生川駅からは信楽高原鉄道に乗ります。
 駅を降りてすぐ視界に飛び込んでくるのは、写真でよく見るたぬきの大歓迎です。この日は平日でしたので、さほど大勢の観光客が来ているという印象ではありませんでしたが、駅の売店コーナーにたまたまブラジル人の方がおられましたので、すこしだけインタビューさせていただきました。
 そのあと、まず駅近くの観光協会でヒアリング調査を、と考えておりましたが、あいにくお休みでした。そこで、お邪魔とは思いつつも隣接している市民センターの窓口で、信楽町での観光活動に関する取り組みについて、あらかじめ学生が用意してきた質問をさせていただきました。突然の訪問にもかかわらず、とても親切に対応してくださり、助かりました。
 その後、昼食は、地域のうどん屋さんに入りました。量が多かったですが、とても美味しかったです。お店の前にはたぬきの置物が所狭しと並んでおり、地域とたぬきがいかに密接な関係にあるかが窺えます。信楽の駅前は軽く歩いただけでも、想像以上にたぬきだらけで、昼食後には町内のローラー調査を行いましたが、かなり大量のたぬきがあることが分かりました。現在ゼミ生が報告書をまとめております。
 その後、場所を雲井駅に移し、歩いて「たぬき村」へ。こちらはお土産屋さんがメインですが、カフェあり陶芸教室ありで、たぬきを使っていろいろと観光客を楽しませる工夫をされておりました。お店のマスターには、貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。一日天気もよく、計画通りに調査も進み、2回のゼミ生の面々にとっては上々のデビューFWとなったのではないでしょうか。

おわりに—卒業式 24/03/18

 この春には8期生が卒業しました。この代は2回生のうちから広島で合宿もしましたし、とても和気あいあいと過ごした代でありました。歩き旅や他学年のFWにも参加率が高かったと思います。どちらかといえば、準備より実践型の学生が多かったのかもしれません。就職も早く決まった学生が多かったです。その分、卒論指導はなかなか大変でしたが、授業もFWも楽しい思い出ばかりです。卒業式の日には、寄せ書きも頂戴しましたので、南キャンパスから移転した新しい研究室に、大切に飾らせてもらっております。
 この年の卒業式は、コロナの時期にできなかった4年前の卒業生も集めて、大阪城ホールで盛大に行われました。写真は、そこで撮ったものです。普段は、なかなかアリーナには降りることもできないので、よい思い出になったと思います。また、すでに就職しているにもかかわらず、この日のために集まってくれたコロナ禍の卒業生にも再会できて、私もとてもうれしかったです。私だけすこし年をとってしまったのが恥ずかしかったですが。これを機に、定期的に会えるといいですね。ともかくみな、卒業おめでとう。今までどおり、元気で頑張ってください。
 で、いつもの年ですと、ここで活動報告はおしまいなのですが、今年は、まことに蛇足なのですが、追伸を少しだけお許しください。
 春休みに毎年少しずつ進めている旧街道ウォーク(歩き旅)について、今回はご覧のとおり記事がありません。今年は残念ながら、参加希望者が少なかったです。教員としては、大変だけど得ることの多いこの企画にぜひ参加してもらいたいと思っているのですが、こればかりは体力的な問題もあって強制参加させるわけにもいかず、悩ましいかぎりです。来年は行くと言ってくれている学生もいるので、復活できることをひそかに期待しております。その代わりというわけではないですが、今冬に毎朝楽しませてもらった「ブギウギ」のセット公開をNHK大阪放送局でやっておりましたので、個人的にFWしてまいりました。ほんとうにふらっと立ち寄ったので、大阪住まいで良かったなと思えた瞬間でした。
 というわけで、まことにしまりが悪いですが、今年度の活動報告を終わらせていただきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。