塩路ゼミ3年生が吹田市片山で2回目のまち歩き
国際観光学部 塩路研究室3年生が、6月1日に吹田市片山エリアで2回目のまち歩きを実施しました。今年度も、本学キャリアゼミ活動として、吹田歴史文化まちづくり協会と連携し、吹田まち案内人の方々に1回目のまち歩きの際にガイドのご協力をいただきました。今回は3年生が片山エリアを自分たちで自由に歩いて感じたことや考えたことについて報告をします。また、これまでの2回のまち歩きを踏まえて、7月には同協会の活動拠点である吹田市浜屋敷で吹田まち案内人や浜屋敷に関係する吹田市民の方々と学生たちの意見交換を目的とした交流会を開催する予定です。


学生活動状況報告
五感で巡る吹田
国際観光学部3年生 菅 莉々子
私たち塩路ゼミは、5月10日に吹田まち案内人の方に吹田市の片山コースを案内してもらいました。地元の歴史や文化について丁寧に説明していただき、とても有意義な時間となりました。そして6月1日には、ゼミ生だけで吹田市内を自由に散策してきました。
JR吹田駅を出てすぐに、「さんくす夢広場」でさまざまな出店を見つけました。これは「ビレッジマート吹田」と呼ばれる毎月第1日曜日に開催される手づくりマルシェでした。スーパーボールすくいやアクセサリー、衣類、飲食類・キッチンカーなど約30店が並び、子どもから大人まで楽しめるイベントです。私たちが訪れた日は、天気が良く暖かかったので、思わずかき氷が食べたくなりました。
その後、JR吹田駅中央口から右方向へ、徒歩約5分で常光円満寺に到着しました。奈良時代735年、行基によって創建されたと伝えられています。中世には、南北朝時代の武将・吹田氏の菩提寺となり、室町時代には足利将軍家の祈願所にも指定されるなど、時代を通じて由緒ある寺院として栄えてきました。現在に至るまで約1300年の歴史が刻まれています。境内に入ると、赤ちゃんの絵馬がたくさん並んでいました。これは、赤ちゃんの誕生や健やかな成長を願うもので、多くの人が赤ちゃんの似顔絵を描いて奉納しており、祈りと優しさが込められた心温まる風習だと感じました。奥へ進むと、黄金の釈迦涅槃仏像が祀られていました。この釈迦像と一緒に写真を撮ると「ご縁を結ぶ」と言われています。そばには仏足(足形)もあり、願いの場所に触れて祈ると、ご利益が得られるそうです。1日1つが効果的だそうで、私は金運向上に該当する場所に触れました。さらに進むと、大きな鐘がありました。この梵鐘は、第二次世界大戦の際、兵器となるべく没収されましたが、無事に返還された奇跡の鐘で、いたるところに戦争時の空襲の傷跡が残っています。災難を逃れたことから厄除けの鐘として信仰されています。ゼミ生の1人が実際に鳴らしてみると、とても迫力のある音が響き渡りました。
次に訪れたのは泉殿宮です。平安時代から続く古い神社で、素戔嗚尊(すさのおのみこと)などの神様をお祀りしています。雨乞いをしたら泉が湧いたという伝説があり、明治時代にその泉の水でビールが作られ、近くにアサヒビールの工場が建てられました。神楽や祭りも行われていて、地元の人に大切にされている神社です。
前回のフィールドワークをもとに、今回は自分たちの視点で吹田のまちを自由に歩くことで、新たな発見や気づきが数多くありました。実際にその場所に立ち、地元の方々の営みや歴史の跡に触れることで、よりリアルな感覚が生まれました。中でも、赤ちゃんの絵馬や奇跡の鐘など、人々の祈りや想いが形となって残っていることに感動しました。こうした体験を通じて、吹田のまちの魅力をより深く感じることができ、学びをより豊かに広げるきっかけになりました。


新たな発見
国際観光学部3年生 前田 和音
6月1日に私は2回目の吹田のまち歩きを行いました。今回のフットパスは、前回と同じ吹田の町での活動でしたが、今回は自分たちで歩く道を決めて歩きました。
今回も出発はJR吹田駅からにしました。前回はJR吹田駅の東出口の改札を出てから左の方向に歩き出しましたが、今回は右方向に歩いてみました。そのままJR吹田駅の周りを歩いていたらJR吹田駅の中央出口に着きました。JR吹田駅の中央出口の前には大きなゴリラの像が両手を広げて迎えてくれました。この日はPanasonicと書かれた青と黒のストライプのガンバ大阪のユニフォームを着ていましたが、クリスマスの時期には、サンタクロースになる吹田市民、大阪府民の癒しのヒーローだそうです。また、ベビーカステラやかき氷、フランクフルトなどたくさんの屋台があり、賑わっていました。この時なぜこんなに多くの屋台があるのか気になり後で調べてみると、吹田市で、第1日曜日に開催される手づくりマルシェ「ビレッジマート吹田」が行われていたそうです。私は食べ物の屋台しか目に入らなかったですが、スーパーボールすくいやモルック体験、レジンアクセサリー・ビーズアクセサリー、雑貨など幅広く出店していたそうです。
その後、常光円満寺に向かいました。常光円満寺に入ると、常光円満寺の中心となる本堂が見えました。この本堂は、浜辺にできたことから、「浜の堂」と呼ばれ現在でも地域名として親しまれているそうです。常光円満寺の本尊は、足利3代目将軍である義満公が深く帰依し、足利歴代将軍の位牌を安置したと伝えられており、足利将軍の菩提寺として信仰されているそうです。その本堂の前に、めぐみ地蔵とふれあい地蔵が左右にあり、ふれあい地蔵の少し離れた場所にあゆみ地蔵という3体の可愛らしい地蔵が出迎えてくれました。めぐみ地蔵とふれあい地蔵の前に子どものおもちゃがたくさん置かれていて、私がお参りしたときは幼稚園くらいの子どもたちが地蔵の頭をなでていました。また、境内の敷地内にある建物の中に入ると、金色の寝ころんだ釈迦像が目に飛び込んできました。サイズはそれほど大きくはありませんでしたが、色が本当に明るく、建物の中まで照らされていました。釈迦像の前には触るとご利益がある仏足があり、金運向上だと言われている宝瓶相を触り、願いを書いた折り紙を友達と折りました。建物を出ると、鐘楼堂という厄除けの鐘や水かけ六地蔵を見て寺から出ました。
最後に、泉殿宮へ行きました。泉殿宮は、厄除けや開運、五穀豊穣、家内安全のご利益で知られる神社で、 平安時代から続く歴史を持っているそうです。神社の入口の近くには、屋根の部材である勝男木、千木、鬼板が展示されていました。奥の方にある、境内から湧き出た清水である「泉殿霊泉」は、かつて清水が湧き出ていた場所で、明治時代にはビール醸造に適した水質と評価され、これがきっかけで、現在のアサヒビール吹田工場の前身となる醸造場所が近隣に建設されたそうです。
今回は2回目となる吹田のフットパスでした。2回目のフットパスに行くまで、1回行った場所になぜまた行くのか不思議に思っていましたが、今回行ったおかげで泉殿宮がアサヒビールにゆかりがあることを知れたり、帰りの道で万博のマンホールも見ることができたり、新しい学びと発見が増えました。今回行った場所以外にも浜屋敷(吹田歴史文化まちづくりセンター)や、彫刻の美術館スキュルチュール江坂などにも行けたらもっと吹田のことが知れたかもしれないと感じたので、また吹田に訪れる機会があるなら行ってみようと思います。




都市近郊における信仰空間の観察
国際観光学部3年生 梶浦 健太郎
6月1日日曜日、大阪府吹田市にあるJR吹田駅を出発点として、徒歩で常光円満寺、泉殿宮の順に訪れるフィールドワークを行いました。午後2時にJR吹田駅に集合し、吹田市のまち歩きを開始しました。駅から少し歩くと、吹田市の静かな住宅街が広がっていて、一戸建てと低層の集合住宅が混在していました。道幅は比較的狭かったですが、歩道が整備されていたので、安全に歩くことができました。
まず向かったのは「常光円満寺」です。JR吹田駅から常光円満寺まで最短で約5分のところを遠回りし、20〜30分かけて到着しました。常光円満寺は平安時代に創建されたと伝えられる高野山真言宗の寺院だそうです。境内に入ると、立派な山門があります。門の奥には本堂があり、木造の落ち着いた佇まいが印象的でした。本堂には本尊として大日如来が安置されていました。本堂の隣には、常光円満寺の信仰の中心である「延命地蔵尊」が祀られている地蔵堂があります。この地蔵尊は、安産、病気平癒、子どもの守護などのご利益があるとされ、多くの参拝者が訪れるそうです。地蔵堂の前には賽銭箱や線香立てがあり、常に花が供えられているなど、地元住民の信仰の深さを感じました。さらに進むと、常光円満寺を訪れる人々の注目を集め、特徴的なスポットである「幸せの涅槃堂」がありました。涅槃堂には、珍しい「涅槃仏」が安置されていて、釈迦が入滅する姿を横たわった仏像として表現しています。日本の寺院では比較的珍しい横たわった仏像であり、その穏やかな表情が印象的でした。この涅槃仏は「幸せの涅槃仏」とも呼ばれていて、多くの人が願いを込めてそっと触れるそうです。特に仏様の足の裏に触れることで「幸せを授かる」とされていて、私たちが訪れた直後にも年配の方が参拝しに来ていました。
常光円満寺を後にし、次に訪れたのは「泉殿宮」です。常光円満寺から約20分かけて、泉殿宮に到着しました。泉殿宮は、大阪府吹田市に位置する歴史ある神社で、菅原道真公を主祭神とする天満宮系の神社です。境内に足を踏み入れると、まず木々に囲まれた落ち着いた空間が広がり、都市部にはない静けさが印象的でした。正面には朱塗りの鳥居が立っており、そこをくぐると緩やかな石畳の参道が続きます。参道の両脇には樹木が生い茂り、木漏れ日が差し込む中で歩を進めると、本殿と拝殿にたどり着きます。境内の一角には「御神水」と呼ばれる湧水があり、古くから清浄な水として信仰を集めてきました。また、境内には絵馬掛けや小さな稲荷社もあり、地域の人々の願いや信仰の痕跡が感じられました。
今回のフィールドワークを通じて、吹田市内に息づく歴史と信仰、そして地域に根ざした暮らしを深く知ることができました。今後もこのようなフィールドワークを通じて、地域社会の多層的な価値や文化の継承について考える機会を持ち続けたいです。




時の層を歩く
~吹田の宗教空間とまちの記憶~
国際観光学部3年生 永田 雄真
5月末、私は再び吹田のまちなかを歩き、2か所の宗教施設である常光円満寺と泉殿宮を訪れました。前回のフィールドワークでは、都市の中に刻まれた時間の層や、日常のなかに潜む歴史の気配を感じることができました。今回はその体験をふまえ、具体的な宗教空間に足を踏み入れることで、「土地の記憶」がどのように今も息づいているのかを確かめる機会となりました。
最初に訪れた常光円満寺は、阪急吹田駅のすぐ近くに位置しながら、まるで地域の生活の延長線上にあるような空間でした。門前の地蔵堂には、通行人がふと立ち止まり、自然な所作で手を合わせる姿が見られました。境内には本堂を中心に、水子地蔵や供養塔などが点在しており、やや雑然とした構成ですが、それがかえって「生活のなかの祈り」のリアリティを感じさせていました。お寺を取り囲むように住宅や商店が並び、境界の曖昧さが、日常と宗教空間との親密な関係性を象徴しているように思いました。境内の石畳は少し苔むしていて、長い年月を感じさせる一方で、掃き清められた落ち葉や季節の花々が訪れる人の手入れを感じさせ、地域の人々が今も大切にしていることが伝わってきました。子どもたちの笑い声が遠くから聞こえ、生活の息遣いと祈りが共存する場所だと感じました。
その後に訪れた泉殿宮は、常光円満寺とは対照的に、明確な区切りと静謐さを持った空間でした。参道は鳥居をくぐることで一気に都市の喧騒から切り離され、拝殿へと導く一直線の構造が、訪れる者に一定の緊張感を与えていると感じました。泉殿宮は天照大神を祀り、古くは清泉の湧き出る神聖な場所として信仰されてきたとされます。整った石畳や手入れされた樹々、静かな空気が保たれており、「神域」としての隔絶性が色濃く現れていました。境内の周囲には自然の木々が茂り、鳥のさえずりが静寂の中で響き、都会の真ん中にあることを忘れさせるような穏やかな時間が流れていました。訪れる人の表情も、少し引き締まり、日常から離れた静かな祈りの時間を過ごしているのが印象的でした。
常光円満寺と泉殿宮、そしてそれらをつなぐまちの風景を歩く中で、私は再び吹田という土地が持つ「時間の重なり」に触れました。古びた商店街、再開発された住宅地、細い路地、そして宗教空間、それらが同じ地平に並び、異なる時間の層を同時に生きているようでした。宗教施設も、決して過去の遺物ではなく、現在の生活や感情、記憶に深く結びついた「生きた空間」であることを実感しました。まちの人々がそれぞれの時間軸を持ちながらも、ここで交差し、共鳴している様子が伝わってきました。
今回のフィールドワークでは、宗教施設という特定の空間を通じて、まちの中に生き続ける「記憶の構造」に触れることができました。整った神聖性と、生活に寄り添う親密さという異なる性質が共存し、それぞれが異なる「記憶のかたち」を体現しています。吹田のまちには、過去と現在が交差し、層となって積み重なる空間が確かに存在していました。この気づきは、今後の調査や研究を深めていくうえでも、大きな手がかりになると感じています。





参加学生一覧
菅 莉々子、
辻 悠人、
仲井 大翔、
西口 祐司、
廣瀬 彩、
福本 一紗葉、
梶浦 健太郎、
川本 託巳、
永田 雄真、
前田 和音、
山村 遥香