北海道標津町を訪問し、さまざまな体験を通して現地の方々と交流しました

 8月5日(火)から4日間、国際観光学科2~3年生の学生有志6名が北海道標津町(しべつちょう)を訪問し、現地調査を実施しました。
 標津町は北海道東部の根室海峡沿岸に位置する人口約4,700人のまちで、標津町を含む1市3町が日本遺産「「鮭の聖地」の物語」に認定されています。しかし、日本遺産の知名度が必ずしも高くないこともあり、日本遺産を活用した観光振興が十分に図られていないのが現状です。そこで、現地調査を通して観光振興に向けた提案を行うことが今回の活動の目的です。そのため、学生有志6名は6月から毎週木曜日の夕方に集まり、課題の整理や現地調査の準備など、議論を重ねてきました。
 当日は大阪から釧路を経由し、約5時間をかけて標津町へ向かいました。5日夕方に現地に入った後、南知床標津町観光協会の清野さまより今回の調査の趣旨や行程の説明を受けた後、翌6日に本格的な現地調査を実施しました。
 まず、標津サーモン科学館を訪問し、市村館長のガイドのもと、館内をご案内いただきました。サーモン科学館は日本遺産「「鮭の聖地」の物語」を最初に学ぶゲートウェイ機能の役割を担っています。その後、清野さまの案内で海の公園や標津神社などのまち歩きを行いました。途中の旧根室標津駅転車台では、標津転車台保存会の和田さまがご案内くださいました。
 郷土料理武田にてサケ料理の昼食をとった後、ポー川史跡自然公園へ移動し、観光協会会長の井南さまから、歴史民俗資料館で日本遺産の説明を受けました。そして、北のジャングルカヌー体験に挑戦し、ポー川史跡も見学しました。その後、まちなかへ戻り、若手漁師からなる波心会のガイドのもと、シロザケの魚捌き体験を行い、自分たちで捌いたシロザケでちゃんちゃん焼きも楽しみました。現地調査では観光協会の清野さま、森さまが終日同行してくださり、多くの現地の方々と交流しながら過ごす、充実した1日となりました。
 翌7日は前日の調査の振り返りを行い、それぞれの体験の良かったところや改善が必要なところをメンバーで発表し、次回の現地での発表に向けた情報の整理と共有を行いました。その後、観光協会でお土産を購入し、野付半島にあるネイチャーセンターに立ち寄った後、釧路まで戻りました。
 以下では、今回の調査に参加した学生が当日の様子を報告します。今後は今回の現地調査の成果をまとめ、9月27日(土)に現地で行われる成果発表会に向け、準備を進めていく予定です。今回の現地調査では、標津町の多くの方々に大変お世話になりました。ここに記して、心より御礼申し上げます。(森重昌之)

【付記】本事業は、本学の社会連携事業および日本財団2025年度「海と日本PROJECT」助成事業の支援を受けて実施しました。

当日の現地調査の様子

  • 標津サーモン科学館で説明を受ける様子

  • 標津神社でのまち歩きの様子

  • 旧根室標津駅転車台で説明を受ける様子

  • ポー川でのカヌー体験の様子

  • ポー川史跡自然公園で説明を受ける様子

  • シロザケの魚捌き体験の様子

  • ちゃんちゃん焼き体験の様子

  • 現地調査の振り返りを行うメンバー

  • 現地調査に参加したメンバー

参加した学生の報告

標津で見た日本遺産と鮭のリアルな物語
 国際観光学科3年 清水毅琉

 2023年8月5~7日の3日間をかけ、北海道標津町にてフィールドワークを実施しました。フィールドワークには6名の学生が参加し、現地のガイドツアーに参加させていただき、現地調査を行いました。
 この調査をするにあたって、6月から学生間でミーティングを重ね、調査の背景や目的を考えてきました。調査の目的について、標津町は日本遺産に登録されている町であるが、その事実があまり知りわたっていない現状にあること、そもそも日本遺産を目当てに標津町を訪れる人は少ないのではないかといった議論を持ちました。そこで、標津町の名物である「鮭」や「いくら」から日本遺産に結びつけると良いのではないかと考え、町内でどのような鮭料理を食べられるのか、他では食べられないような特徴的な鮭料理はあるのかについて探ることを目的に、調査を行いました。この目的を達成するために、数々の鮭料理や標津町で鮭料理を提供している飲食店を事前に調べ、リストにまとめました。
 調査当日、夕方17時30分頃に宿泊地「ゲストハウス潮目」に到着しました。夕食を食べるために、事前にあげたリストの中から町内の飲食店を巡りましたが、どこも定休日で、少し離れた居酒屋で夕食をとることになりました。
 2日目は観光協会の方が標津町の観光資源や日本遺産を活用したガイドツアーを企画してくださり、参加しました。まずはサーモン科学館に行き、市村館長による鮭のレクチャーを受け、なぜ標津町が鮭の聖地なのか、鮭の種類など、標津町の歴史や日本遺産について学びました。サーモン科学館は他では体験できない「チョウザメの指パク体験」ができ、楽しめる観光施設だと実感しました。
 次に、観光協会の清野さんのガイドを聞きながら、市街地を散策しました。町や標津神社の特徴などを学び、中でも神社に保存されている「錨」は標津町の歴史にかかわる重要なものだと実感しました。そして、標津町内で保存されている「転車台」を見学しました。そこでは実際に走っていた国鉄標津線のSLと転車台が保存され、標津町の物資がどのように他方へ送られていたのか、学ぶことができました。
 昼食は、標津町内の「武田」にて標津で獲れた魚の海鮮丼と、鮭の胃袋や腎臓といった鮭の珍味をいただき、鮭に関する珍しいものを食べました。
 午後はポー川史跡自然公園にて、ガイドの井南さんから標津町の歴史や日本遺産、アイヌについて、史跡の中を歩きながらリアルなお話をうかがいました。また、ポー川でカヌー体験をし、大自然の中の魅力を感じたともに、船を漕ぐ難しさを実感しました。
 最後に、波心会の漁師の皆さんに教わりながら「シロザケ捌き体験」をしました。とても貴重な体験をさせていただき、緊張感を持ちながら捌きました。実際に捌くことはとても難しく、食の有難さを感じることができました。そして、捌いた鮭でちゃんちゃん焼きをつくり、ゲストハウスにてみんなで食べました。
 3日目は、観光協会の清野さんとこれまでの振り返りを行いました。今回の調査を今後標津町にどう提案するか、話し合いを行いました。話し合いの結果、「鮭」「いくら」から日本遺産に結びつける方法を探るよりも、今回のツアーでの気づきや改善点を現地の方々と共有した方が良いと考えました。
 今回の調査で特に感じたこととして、現地の方によるリアルなガイドツアーだったことを実感しました。ただ単に歴史や文化を説明することだけでなく、実際の体験談や起こったことを直感的に話しながらガイドをすることを、とても興味深く学ぶことができました。特に、ポー川史跡自然公園の井南さんのガイドは歩きながら次々と説明してくださり、興味深いガイドで、なぜ標津町が「鮭の聖地」と呼ばれたか、アイヌとのかかわりや日本遺産に登録された経緯を学ぶことができました。
 調査のためにガイドツアーを企画し、参加させていただき、ありがとうございました。このツアーに参加することで、標津町が日本遺産に登録された経緯やアイヌと鮭とのかかわりを学ぶことができました。今後は、今回のツアーで気づいたことや改善点を一人一人意見共有し、それを標津町の方々に伝えることができれば、若者の視点を共有でき、より良いツアーが完成できると考えます。

フィールドワークを通して感じた標津町の日本遺産の現状
 国際観光学科3年 阪野広稀

 8月5日から7日にかけて北海道標津町でフィールドワークを実施し、標津町の日本遺産について現地調査を行いました。
 この調査の目的は、標津町が日本遺産に登録されていることが観光客に認知されておらず、そもそも標津町には日本遺産を目的に旅行に訪れる人が少ないのではないかという意見が多く見られました。そこで、観光客が標津町に訪れてもらえるよう、日本遺産からのアプローチではなくて、標津町の名物である鮭やイクラといった「食」の観点から日本遺産を結びつけるというアプローチを提案することで、観光客に訪れてもらえるのではないかと考えました。そして、実際に標津町に現地調査に出向いて、町内でどのような鮭料理が食べられるのか、他の地域では食べられないような鮭の珍味はあるのかについて調査を行いました。この調査を行うにあたって事前準備したことは、標津町内で鮭料理が食べられる飲食店の場所をリストアップし、当日に飲食店を探し周らずに効率よく訪ねるようにしたことです。
 調査当日、18時頃に標津町に到着して、事前にリストアップした飲食店を周りました。しかし、どこも定休日で開いておらず、最終的に川北の居酒屋「ゆかり」で夕食をとりました。そこでは鮭節でダシをとるという他の地域ではあまり見かけない鮭節ラーメンを食べました。
 2日目は標津町観光協会の協力のもと、標津町の観光資源および日本遺産を巡るガイドツアーに参加しました。最初に訪れたのはサーモン科学館です。ここでは、鮭の生態や忠類川サーモンフィッシングといった今まで標津町が取り組んできた鮭と絡めたイベントと、その効果について学習しました。その後、標津町がどのように鮭の町として発展したのかという歴史の部分を、日本遺産と関連づけながら学習しました。また、サーモン科学館は鮭の生態や日本遺産の学習だけでなく、「チョウザメの指パク体験」といったアトラクションもあり、老若男女問わず学んで遊べる施設なのだと感じました。
 次に、観光協会の方のガイドを聞きながら、標津町内のまち歩きをしました。その中で、全国で3か所しか現存していない貴重な転車台や標津神社に奉納されている錨を見ることができました。標津町には歴史ある多くの観光資源がしっかり住民の力で保存されていて、次世代に残していこうとする姿勢を感じました。
 昼食は、標津町内にある「武田」で、標津で獲れた鮭の海鮮丼と、他の地域では見かけない鮭の胃、腎臓、腸といった珍しいものを食べることができました。
 次に、ポー川自然史跡公園で標津町の歴史やアイヌと鮭の関連性について、遺跡を歩きながらガイド付きで解説してもらいました。実際に遺跡を見ながら当時の状況をガイドの方が軽快なトークで説明していたので、とてもわかりやすく、歴史が苦手な人でも理解しやすいのではないかと考えました。また、ポー川のカヌー体験も行い、自然の雄大さを感じるとともに、アイヌ民族が実際に利用していた水運を直接体験することで、標津町の日本遺産の歴史を深く学べました。
 最後は波心会の全面指導のもと、シロザケ3枚おろし体験と、標津町の郷土料理「ちゃんちゃん焼き」をつくり、標津町の鮭の食文化を学ぶことができました。
 3日目は、観光協会の方と現地調査の振り返りワークを行いました。今回の調査をもとに、標津町にどのような提案をするのか議論しました。その結果、今回のガイドツアーで私たちが感じたことや改善点を標津町の皆さんと共有した方がよいという結論に至りました。
 今後取り組むこととしては、ガイドツアーで疑問に感じたことや改善点を私たちと観光協会だけで意見交換するのでなく、波心会や転車台保存会の方々など、多方向の意見交換を行い、それを標津町全体で共有することです。そうすることで、全体が一つの方向に向いてより良いガイドツアーを考えられ、日本遺産の位置づけもよりクリアになるのではないかと考えました。
 今回の現地調査で印象に残っていることは、ポー川でのカヌー体験です。アイヌ民族が鮭を運ぶときに使用していた川を実際にカヌーで漕ぐことで、日本遺産の歴史の悠久さを五感で感じられました。また、アイヌ民族の生活文化の中で、鮭がどれほど重宝されていたのか学べました。
 最後に、今回のフィールドワークでのガイドツアーを企画・協力してくださった南知床標津町観光協会をはじめ、転車台保存会、波心会の皆さま、本当にありがとうございました。このツアーで標津町が鮭の町と言われるようになった経緯や標津町で独自に発展した鮭の文化を五感で学ぶことができました。

都会から来る人を惹きつけるもの
 国際観光学科2年 佐藤慶次郎

 私たちは8月5日から7日の3日間、北海道の標津町のツアーの調査を行いました。このツアーは鮭を通した標津町の物語が日本遺産に登録され、それを感じることを軸につくられたツアーです。今回の目的は実際にツアーに参加し、良い所と改善点を見つけることです。
 この調査に向けて私たちはまず、日本遺産とは何かを学びました。日本遺産とは、その地域の特産品や歴史を通して日本の文化や伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。そして、標津町の日本遺産である鮭をアピールして観光客が来るにはどうすればよいかを考え、提案するため、現地に行って調査をしようと考えていました。しかし、実際はツアーの改善点の調査で、私たちの予定していたものと標津町の方が予定していたものが違っていたため、次からはこのようなことがないように入念な打ち合わせが必要だと感じました。
 ツアー当日は、朝9時にサーモン博物館に行き、鮭の生態や標津町の漁業に対する取り組みを学びました。ここでは幻の魚であるイトウを見ることができたほか、さまざまな種類の鮭の餌やりやチョウザメに手を食べられるといった体験コーナーが非常に楽しかったです。次のまち歩きでは、海辺のキャンプ場、標津神社、旧根室標津駅転車台を巡り、標津町の自然や歴史を学べるような内容になっていました。特に標津神社と転車台は歴史を感じられる物があり、そこに説明も加わって標津町の歴史をよく知ることができました。
 そして、昼食はさまざまな鮭料理が楽しめる「武田」に行きました。その次に行ったポー川史跡自然公園では、資料館で鮭と標津町の歩んできた歴史を学び、カヌーに乗ってポー川を下り、史跡自然公園でアイヌの生活の跡を見学しました。そして次に、鮭の捌き体験を行いました。これは漁師の方々が実際に教えてくださり、普段はできないような貴重な体験ができました。最後に自分たちで捌いた鮭をちゃんちゃん焼きにして漁師の方々と食べました。1日中歩いて疲れた体にすごく沁みて、素晴らしい1日の締めくくりになりました。
 今回、標津町に行って感じたことは、都会から来る人が多いということです。転車台にどこから来たか書くノートがありました。それを見ると、関東から来ている人が多く、「癒された」、「汽車に乗れて満足」といったメッセージが多く見られました。なぜ都会からここに来ているのでしょうか。それは、標津町の特徴である汽車と転車台、そして北海道ならではの自然が掛け合わさって癒されつつ、汽車にも乗れるといったことが都会の鉄道好きの人びとに魅力的だったのだと考えられます。このように、自然と汽車、転車台をアピールすると、観光客の増加が期待できると考えました。
 私たちが今後取り組むべきことは、身近な人に標津町を売り込むことです。特に、癒されたい、リラックスしたいという人に標津町を勧め、行ってもらい、フィードバックをもらって改善点を標津町に伝えます。実際に私も鮭節のお土産を友人にプレゼントして、標津町のことを宣伝しました。このようにすることによって標津町が活気づいていき、鮭の町として多くの人に知ってもらえると考えています。