スキルや障がいの有無を超えて共に楽しめる「共遊楽器」から学ぶデザイン思考とプロトタイピング

・Touch the sound picnic〜 音を振動に変えて触れることができる作品

・Pitapat〜 歩行の軌跡を可視化することで「思わず体が動く」 インタラクティブインスタレーション

Vibracion Banco〜 叩くと楽器の振動が相手に伝わるベンチ型の打楽器

Vibracion Cajon〜 楽器を叩いたときに発生する振動を他のプレイヤーと伝え合いながらセッションを行う打楽器

講義概要

·日時 : 2025年7月2日
·場所 : 阪南大学 本キャンパス
·主催 : 阪南大学総合情報学部「IT入門」
·講演者 : 金箱 淳一 准教授 (神戸芸術工科大学 芸術工学部 生産・工芸デザイン学科)

講義内容

金箱准教授は、約20年にわたり、「共遊楽器」の創作と研究開発に携わってこられました。「共遊楽器」とは、障がいの有無や年齢、経験に関わらず、誰もが一緒に音楽を楽しめるようにデザインされた楽器(金箱准教授による造語)です。講義では、共遊楽器の開発プロセスを事例に挙げながら、「プロトタイピング」(※)の重要性について深く掘り下げて解説いただきました。
金箱准教授は、実際に手を動かし、試行錯誤を繰り返しながら形にしていくプロトタイピングのプロセスを繰り返し、またユーザーからのフィードバックをトリガーに、派生的に新しいプロジェクトを生み出してきたことを強調していました。特に、共遊楽器の開発においては、試作と改良、障害のある当事者との対話や使用時の観察から洞察を重ねることで、よりインクルーシブなデザインが実現できることを具体例を交えて示されました。
また、金箱准教授の活動は、音や音楽を単なる聴覚情報としてだけでなく、触覚や視覚など様々な感覚で捉えることのできる「感覚代行」というアプローチに基づいています。講義では、デジタル技術とアナログな要素を融合させることで、これまでにない楽器体験を創出する取り組みについても紹介があり、学生たちはITが拓く新たなものづくりの可能性に触れることができました。

(※)製品やサービスを開発する初期段階で、試作品(プロトタイプ)を作成し、機能やデザイン、使い勝手などを検証する開発手法

今後の展望

今回の金箱准教授による特別講義は、学生たちがITを学ぶ上で、単なる開発実装や技術習得に留まらず、社会課題の解決や多様な人々への配慮といった視点を持つことの重要性を改めて認識する機会となりました。阪南大学総合情報学部は今後も、このような実践的かつ示唆に富んだ講義を通じて、社会に貢献できる人材の育成に努めてまいります。