産官学連携先:AWT合同会社

立体音響生成の意義は、3次元映像が一般化しつつある現在において、視覚だけに偏った没入体験を補完し、空間全体を統合的に感じさせる点にあります。現状、映像技術はVR・MRを中心に高度化している一方で、音響はステレオ再生が主流のままであり、視覚と聴覚の没入度に大きなギャップが残っています。この不均衡を解消する鍵として注目されるのが、アンビソニックスを用いた立体音響生成です。

アンビソニックスは、音場を球面調和関数で表現し、任意方向からの音を再構成できる方式であり、ヘッドホン・スピーカーのどちらにも柔軟に対応できます。特に、頭部の回転に応じて音像が自然に追従する特性は、3次元映像との親和性が高く、視聴者が「その場にいる」感覚を強めます。これは単なる臨場感の向上にとどまらず、没入感の質的向上につながり、教育・医療・観光・エンターテインメントなど多様な領域で応用可能性を広げます。

さらに、立体音響は心理的効果の観点からも重要です。音の包囲感や定位の自然さは、リラックス感や安心感に影響を与えることが知られており、アンビソニックス生成を用いた音場設計は、ストレス軽減やウェルビーイング向上の評価研究にも適しています。3次元映像と組み合わせることで、視覚と聴覚の相互作用が生まれ、従来のBGM的な音響では得られない深い没入と心的安定を誘発できます。

学生活動状況報告

 音源の収録には通常モノラルマイクやステレオマイクを用いるが、立体音響を生成するためには、4チャネル以上のマイクロフォンで構成されるマルチチャネルマイクが必要です。今回は、連携協力企業より16チャネルのマルチチャネルマイク(AMANE)の提供を受け、音源を収録し、そのデータをアンビソニックス方式で保存しました。また、マルチチャネル音源を適切に扱うため、DAW(Digital Audio Workstation)であるReaperの使用方法に関する講習会を受講し、編集技術を習得しました。
これらの知識と技術を身につけたうえで、実際に室内外で360度映像と同期させた音源収録を行い、収録した音源をアンビソニックス化した立体音響として処理し、Adobe Premiereを用いて360度映像と統合した編集を実施しました。
以上のように、立体音響の原理理解から編集方法の習得までを体系的にまとめることができました。一方で、今年度は立体音響による効果の評価まではできませんでした。没入感やリラックス感は主観的評価が中心となりますが、心電図や脈波などの生体情報を用いた客観的評価が可能であるとの研究も報告されており、今後はそのような評価手法にも取り組みたいと考えています。また、メタバースなど仮想空間における立体音響の利活用についても、今後の検討課題と考えています。
総合情報学部 総合情報学科2年 土田 萌




 

連携先コメント

AWT合同会社
代表 川原 正順 様

私どもでは、立体音響の可能性を追求するために、高品質の音源収録から再生環境の構築に取り組んでいます。その取り組みの一つとして、16チャネルのマルチチャネルマイクロフォンの設計、製造を行っています。

阪南大学三好ゼミには、このマルチチャネルマイクの利活用方法の検討や、生成された立体音響の聴取者への効果測定をお願いしています。今年度は、立体音響の生成環境の構築と利活用方法の検討を頂きました。学生の多様な視点からの意見や活動の中で、新しい発見もありました。

若年世代の音源に対する感覚や感性をフィードバックいただきながら、新しい利活用方法を検討できるプロジェクトになればと思います。引き続きよろしくお願いします。

教員コメント

総合情報学部 総合情報学科
三好 哲也 教授

立体音響は、3次元映像などの視覚情報を補完し、人が空間を現実的に認識できる環境を提供する技術です。
マルチチャネルマイクロフォンは、高額で普及しておらず、そのため、立体音響を如何に利活用するかについてはチャレンジングな課題です。立体音響は、新しいユーザインタフェースですので、どのように利活用できるかについて、学生とともに検討を始めました。まだ、初年度で、立体音響生成環境を整えるとともに、今後の課題を整理しました。
次年度は、引き続き立体音響の生成とメタバースでの活用について検討したいと考えてます。

参加学生一覧

【3年】
内野 純希 中野 来哉
【2年】
夘津羅 陸斗 土田 萌