約10年前、ゼミでDeFi(Decentralized Finance)の仕組みを紹介したところ、学生から強い関心が示されました。これをきっかけに、デジタル金融・フィンテックを王ゼミの教育内容に取り入れることにしました。
 周知のように、近年のAIやブロックチェーン技術の急速な進展により、デジタル金融・フィンテックは金融の世界を根底から変えつつあります。1日24時間、1週間7日、1年365日、国境を越えたグローバルな金融取引が可能な時代が到来しています。
 若い世代がこのパラダイム・シフトとも呼ぶべき新しい時代の特徴と現実の変化により良く適応できるように、現在ではデジタル金融・フィンテックのトピックをゼミで頻繁に取り上げています。具体的には、バイリンガル資料に基づき世界中の先進的な取り組みを探究し、読み書きやディスカッションなど、AI時代に不可欠な人間固有の知的活動の実践を通じて、学生が主体的に思考・判断する力を育みます。
 こうした学びを通じて、金融の専門知識や英語力、知性を養うだけでなく、学生一人ひとりの視野を広げ、将来必ず訪れるより大きな変化に、より早く、柔軟に備えてほしいという意図も込めています。
 以下では、2026年度前期のデジタル金融・フィンテック学習に関する学生の感想(一部)をご紹介します。


・フィンテックは、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術を活用し、金融サービスをより便利で効率的にする仕組みであることを学びました。特に、ステーブルコインは価格が安定しているため、送金や決済に利用しやすく、従来よりも低コストかつ迅速な取引が可能になる点が印象に残りました。また、AIエージェントが利用者に代わって資産運用や決済を行うなど、金融サービスの自動化が進んでいることも理解できました。一方で、利便性が高まる反面、セキュリティ対策や個人情報の保護、法整備などの課題もあると感じました。今後は技術の進歩と安全性の両立が重要であり、フィンテックは私たちの生活や社会を大きく変えていく分野だと学びました。


・デジタル金融やフィンテックは決済を便利にするだけの技術ではないということを考えさせられました。特に、国際送金にかかる時間やコストを抑えられるようになれば、中小企業でも海外企業との取引に挑戦しやすくなるという点が興味深かったです。フィンテックは個人向けのサービスという印象を持ちやすいですが、企業の経営や国際的な経済活動にも影響を与える技術であることを理解できました。また、新しい仕組みが社会に定着するためには、技術の進歩だけでなく、安心して利用できる制度やセキュリティ対策も欠かせないと考えます。


・デジタル金融・フィンテックの発展によって、金融業界の仕事や人間の働き方そのものが大きく変化していることを学びました。特に、AIエージェントが銀行や証券会社、保険会社などで活用され、これまで人間が多くの時間をかけて行っていた業務を支援できる点は興味深いです。AIを活用することで、業務のスピードや効率を向上させるだけでなく、人間は単純な作業から解放され、顧客への提案や重要な意思決定など、人間にしかできない仕事に集中できるようになると考えます。また、AIは人間の仕事を完全に奪うためのものではなく、人間の能力を補完し、仕事の成果をより良くするために活用することが重要です。一方で、金融業界ではお金や個人情報など非常に重要なデータを扱うため、AIによる誤った判断や情報漏洩、セキュリティ上の問題などのリスクも考える必要があります。そのため、AIの利便性だけを追求するのではなく、最終的な責任や判断は人間が担う仕組みを作ることが大切です。フィンテックは、単にIT技術を金融に導入することではなく、AIと人間が協力しながら、より効率的で便利かつ安全で信頼される金融サービスを作っていくことだと学びました。今後は、AIを正しく活用する能力と人間ならではの判断力や責任感の両方が金融分野でますます重要になると考えます。


・ブロックチェーンを使って、今までより簡単に投資ができる仕組みが作られていることを学びました。また、シティ銀行は「デジタル預託証券」を使うことで、未上場企業にも間接的に投資できるようにしていることが分かりました。預託証券を持っていても本当の株主ではないため、通常の株式とは違う点があることも理解できました。さらに、株式や預金をデジタル化することで、取引が早くなったり、手数料が安くなったりする可能性があることも知りました。これからは、このような新しい金融の仕組みが広がっていくと思いますので、便利な点だけでなく、仕組みやリスクについてもしっかり学ぶことが大切だと感じました。


・デジタル金融やフィンテックは、これまで時間や手間がかかっていた金融サービスを、スマートフォンやAIを活用することで素早く利用できるようにしていることが分かりました。また、これまでは中小企業は地方銀行や信用金庫を利用することが一般的でしたが、デジタル技術の発展によってメガバンクやフィンテック企業も参入し、競争が激しくなっていることも学びました。今後は、金利だけでなく、サービスの使いやすさやスピードが金融機関を選ぶ重要な基準になっていくのではないかと考えます。


・ステーブルコインが中小企業の国境をまたぐ電子決済手段として大きな役割を担うということに興味を持ちました。ステーブルコインは法定通貨の円やドルなどと価値が連動するように設計されているため、価格変動が小さく、安全性の高い決済や送金ができます。また、国境を超えた取引でも手数料を抑えながら迅速に送金できるため、ステーブルコインのさらなる普及や企業間取引・海外決済での活躍が期待されていることも理解しました。


・デジタル金融における生成AIが、企業と個人の両方で急速に進展していることを学びました。企業向けでは、業務を効率化できるソフトウェアによって、ピッチブックの作成や財務諸表の監査、クレジットメモの草案作成が可能となっています。これによって、従来の業務をより効率的に進めることができます。個人向けでは、対話型AIが個人の金融口座と連携して、個人の資産管理や財務相談ができるサービスが誕生しています。さらに、金融業務はAIによる影響を受けやすい分野で、技術の進化によって金融業界の労働市場が大きく変わっていくことを学びました。


・デジタル金融やフィンテックは、新しい技術によって金融の仕組みをより便利で効率的なものに変えていく取り組みであることを学びました。特に印象に残ったのは、ブロックチェーンを活用して未上場企業に投資しやすくする仕組みです。デジタル預託証券を利用することで、従来よりも透明性の高い取引が可能になることが分かりました。また、トークン化によって決済時間の短縮やコスト削減などが期待されており、金融サービスは今後さらに発展していくと感じました。一方で、投資家が保有するのは株式ではなく預託証券であるため、仕組みや権利の違いを正しく理解した上で利用することが重要だと学びました。