大阪老人ホームの橘さんの話を聞いて

高齢社会について
3年  向井一貴

 現在、高齢者が年々増加し続けています。今では各地で高齢者の比率が20%を上回る高齢社会となってしまいました。そして、全国的に高齢者が増えた結果、少子高齢化は大きな社会問題となってきており、高齢者を介護する施設にも様々な影響が及んでいます。
 例えば、高齢化のスピードに介護施設の普及が追いつかず、高齢者に対する介護がなかなか行き届かないこともその一つとしてあげられます。今回は高齢者介護の実情を知るため、介護施設の職員の方に話をうかがいました。今回お話しいただいたのは特別養護老人ホームである大阪老人ホームの橘さんです。
 特別養護老人ホームとは、寝たきりの高齢者など、常時介護を必要とする高齢者が対象となっている施設です。そこでは、様々な身体障害者の生活の援助、身体の介護を中心に介護を行っております。特別養護老人ホームでは入居費用は必要なく、月額利用料のみですみます。しかし、入所基準というものがあり入所希望者が一定基準に達していないと入居できないシステムになっています。現在、入所希望者が多いのですが、入所している人の平均在所日数が長いため、ほとんどの施設が満室で入居待ちという状況です。
 特別養護老人ホームでは、要介護高齢者に対して様々なサービスを提供しています。主に提供されるサービスは、介護職員や看護職員による要介護者に対する食事、入浴、排泄の介護、機能訓練指導員によるリハビリテーション、カウンセリングなどの生活援助サービスなどで、レクリエーションなどのイベントもあり、高齢者が互いに親睦を深める場も用意されています。
 このように特別養護老人ホームは、高齢化が進む中で、様々な課題を克服し現在に至っています。橘さんには老人ホームの施設、設備、介護などについてお話しいただきましたが、話を聞いて思ったことは、やはり高齢化のスピードに介護施設普及、人員配置が追いついていないことです。つまり、要介護者数に対して介護を請け負う人員が少ないということです。将来的にも多くの人員が必要とされている介護施設ですが、介護職を志望する学生が少ないことも課題の一つだと思います。
 現在、国の法律では3人の要介護者に対して介護する人員は1人と基準で定められています。しかし、多くの施設において、人員の少なさのため介護従事者は多くの労働を強いられてしまい、離職にと繋がることもあるでしょう。今後、高齢化が進めば経済の成長を担う若い世代に多くの負担がかかることが予想されます。介護市場において若手が不足している今の状況を打開するのは、若手である自分たちがいかに行動するかにかかっていると思いました。

入居者と介護者
3年 橋本慎也

 大阪老人ホームの橘 友味子さんに話を聞きました。まず大阪老人ホームにはどのような方が入居されているのかとの質問に対して、女性が73名、男性が23名で、平均の年齢が男性は80歳、女性は87.5歳と教えていただきました。入居者は男性に比べると女性のほうが約3倍多いそうです。やはり寿命と比例して女性の方が入居者が多いということだと思いますが、これほど男性が少なく女性が多いと、男性は老人ホームが女性仕様の環境になっていると感じるかもしれないと思いました。
 また、平均介護レベルが4.12で、ほとんどの人が4以上ということになります。介護レベルが4というのは、次のような状態です。(1)見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない。(2)立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。(3)歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない。(4)排泄がほとんどできない。(5)多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。つまり、大阪老人ホームに入所している人の多くは、一人で生活を送るということに支障をきたすレベルだと感じました。
 次に大阪老人ホームで働いているのはどういう人たちであるのかという質問に対しては、施設長、介護職員、生活相談委員、看護婦、機能訓練指導員、介護支援専門家、医師、管理栄養士などで構成されているとのことでした。機能訓練指導員は、特別養護老人ホームに1人以上配置しなければならないとされています。また、大阪老人ホームの職員は介護にかかわる職員は常勤が32名、契約が12名、パートが23名です。わたし個人的にはパートの人が多いのではないかと思っていましたが、思った以上に常勤の職員が多いことがわかりました。そして、看護師が常務3名、パート7名だそうです。また、相談業務が2名で、管理栄養士、理学療法士、介護支援専門員は1名ずつです。だいたい法的な基準は一人の職員に対し3人の利用者となっていますが、この施設は1人の職員に対して2.09人の利用者です。つまり、この施設の1人の職員に対する利用者は法的な基準よりも少なく、介護が手厚いことになります。
 次に認知症についてもお話してくださいました。ものごとを記憶する、考える、判断する、人とコミュニケーションをとるなど、私たちが日常生活を過ごすために欠かせない脳の働きのことを認知機能といい、この認知機能が、何らかの脳の異常によっていちじるしく低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態のことを認知症というそうです。認知症の人は年々増加しています。高齢になるほど認知症の人の割合は高くなり、85歳以上では約4人に1人が認知症であるといわれています。認知症については、以下で森本くんがレポートしてくれています。

認知症の問題と改善
3年 森本雅喜

 橘さんのお話を聞くまで、認知症の存在は知っていましたが、認知症が少なくとも4種類以上あるということは知りませんでしたので、そのことに驚いたというのが最初の感想です。変形性認知症にはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあり、昔はアルツハイマー型とレビー小体型の2つしかなかったそうです。
 現在では、アルツハイマー型が一番多く発症しており、早くて五十代、六十代で進行していくと聞きました。しかし、五十代、六十代では加齢による物忘れと、認知症によるものは根本的に異なっているそうです。例えば、御飯の内容を忘れてしまう、テレビでよく見る芸能人なのに名前がすぐ出てこないなどの行為や出来事の一部を忘れる、こうしたことが物忘れに値します。しかし、加齢による物忘れは、まず病的なものではないそうで、その忘れたことを認められるのが加齢によるものということになります。
 一方、認知症によるものは病的な状態であり、自分が御飯を食べたという行為や出来事すら忘れてしまいます。そして忘れていることに気が付かないのが認知症ということになります。橘さんによると初期症状を見逃しやすいらしいです。親や周りの人が歳を老いた時、普段とは違う行動をしないか十分に気を付けたいと思いました。
 認知症の中核症状としては、記憶障害、実行機能障害、見当識障害があらわれ、周辺症状では介護に対しての抵抗、妄想、興奮、介護への抵抗など患者によって出たり出なかったり、種類に差が生じてしまうようです。対処法としては薬物治療やしっかり聞いてあげるなど患者のことを理解してあげて不安を取り除くのも一つの手でもあると思われます。症状がひどい場合は病院への入院も必要となります。大切なのは、認知症の症状に目をやるのではなく、本人は、ちゃんと意味がある行動をしているので、個人としてちゃんと理解してあげることであると橘さんはおっしゃっていました。
 たとえ認知症を発症したとしても、その人らしさを大切にし、その時々に必要な手助けを医療、福祉、地域、家族全員がすべての場において連携することも大切であるようです。話を聞いて思ったことは、認知症を発症した人は家族であることも忘れてしまうと聞いたことがあり、もし家族がそうなった場合、不安になるけど、認知症にかかった人の方が不安になり焦りもすると思うので、うまく対応した介護を行いたいということです。どこで暮らすかということも重要だと思うので、自分がもし認知症になった時、家族や大切な人、大事にしている出来事を忘れたくないので、たとえ、その出来事や家族を忘れたとしても起きる出来事も含めて、紙など何か目に映る物にすぐに書きたいと思いました。
 今回、老人ホームで働いている話を聞いて介護についての理解が深まり、就職活動の参考にもさせてもらおうと思いました。