西本ゼミの3年生は、今、「高齢社会における現状と課題」をテーマに4つのグループに分かれて活動をしています。今回、私たちのグループは「ベルパージュ大阪帝塚山」という介護施設を訪問しました。実際の介護施設の現場はどうなのか、働いている人はどういうことを感じながら働いているかなどについてレポートします。(加島千紗子)

※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

さまざまな介護施設がある!!

3年生 加島千紗子
 今、日本は高齢化が進んでいます。高齢者とは65歳以上の方をいいます。内閣府の調査によると高齢化率は2000年で17.4%、2010年で23.0%、高齢化率推移は2015年には26.8%、2030年には31.6%にも上がっており2060年には39.9%にまで上がっています。平均寿命も延伸し、2005年には女性が85歳、男性が78歳でしたが、2035年には女性が89歳、男性が82歳になり、2055年には女性が90歳、男性が83歳を超えると考えられています。
 東京都が高齢者に行った東京都福祉保健基礎調査によると、必要な施策や支援で一番必要とされているのは年金や医療など国の社会保障制度の見直し、そして二番目に多く必要とされているのは、訪問介護や介護者が住宅を訪問する形態の住宅サービスの増加というアンケート結果がでました。このように介護施設が足りないということが高齢社会の問題点となっていることがわかります。
 高齢者が入所して介護が受けられる施設には、介護保険が使える施設と介護保険が使えない施設があります。そして、介護保険が使える施設には、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、介護老人保健施設(老健施設)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護療養型医療施設があり、介護保険が使えない施設には、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームがあります。
 今回、私たちのグループが訪問した「ベルパージュ大阪帝塚山」は、有料老人ホームです。有料老人ホームには介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームの3種類があり、それぞれ対象者や介護サービスの種類が異なります。例えば、介護付き有料老人ホームは、都道府県から特定施設入居者生活介護に指定されている介護付き老人ホームで、入浴や排泄や食事といった生活に必要となる部分に介護サービスがついている施設。住宅型有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないので施設内スタッフによる入居者への介護サービスの提供が原則として決められていない施設。健康型有料老人ホームは、生活を送る上で特に介護の必要がないと判断された人が対象で原則、介護は行わない施設です。「ベルパージュ大阪帝塚山」は、これらのうちの介護付き有料老人ホームにあたります。

「かんでんジョイライフ」とは?

3年生 堀内一孝
 私たちが訪問したベルパージュ大阪帝塚山は、関西電力グループの中の「かんでんジョイライフ」という会社が経営しています。先日の訪問では、ここで働いている人材育成部長の高山彰彦さんが、かんでんジョイライフとはどういう会社なのか、そして展開している他の介護事業ネットワークについてなど、いろいろ紹介してくださいました。
 今、関西電力グループは電力の供給だけでなく、私たちに安心・快適・便利を届けてくれる企業へと生まれ変わろうとしています。「総合エネルギー」、「情報通信」、「生活アニメティ」の3つの柱を合わせて、「総合生活基盤産業」へ変わろうとしているのです。この3つの柱の中で、「かんでんジョイライフ」は生活アニメティに位置しています。お客様の信頼をベースに質の高いサービスを提供することができ、成長が期待される部門です。
 「かんでんジョイライフ」は、2000年10月に誕生しました。「かんでんジョイライフ」には「ベルパージュ」、「ユトリーム」、「ナービス」の3つのシリーズが存在し、これらの3つはそれぞれライフスタイルが異なっています。例えば、「ベルパージュ」は、主に元気な方が入居しており、基本的には自由に生活を送ることができるところです。万が一、介護が必要になっても介護体制もしっかりと充実しているのが特徴です。「ベルパージュ西宮北口」がベルパージュシリーズでは1号店となっており、他にも、「ベルパージュ大阪帝塚山」、昨年9月にオープンした「ベルパージュ奈良あやめ池」などがあります。
また、「ユトリーム」は、主に交通などアクセスしやすい場所に位置しており、使いやすい居室となっており便利です。介護が必要になってもサポートがしっかりしていて安心して暮らせます。「ユトリーム大阪北」は「かんでんジョイライフ」が初めて設立した介護付き有料老人ホームで、「ユトリーム」には、もう一つ「ユトリーム朝霧」という施設があります。
そして、「ナービス」は主に介護を必要としている方が入居していて、その分、医療、介護サービスがしっかりと充実していることから、安心して生活を送ることができます。「ナービス守口平代」がナービスシリーズ1号店となっています。また、今年の3月にオープンしたばかりの「ナービス京都二条」は京都に住む方々からの要望で建設された施設です。
 これら「ベルパージュ」「ユトリーム」「ナービス」の3シリーズが関西に展開している介護施設です。これらの施設が元気な高齢者の方の第2の人生をサポートしたり、介護が必要な方をサポートしたりしています。こうしたサポートのおかげで高齢者の方は、安心で楽しく充実した人生を送ることができているといえます。

ベルパージュ大阪帝塚山について

3年生 寺岡拓海
 ここでは、「ベルパージュ大阪帝塚山」の施設の内部についてお話ししたいと思います。まず、正面の入り口には近代的で厳重なセキュリティが設けられていました。中に入ると、すぐ左に手洗い・うがいをするための洗面所があり、ハンドソープにうがい薬まで置かれていて、ウィルス対策が万全でした。そして、フロントがあり、お洒落な内装、癒されるような落ち着いた雰囲気は、まるで高級ホテルを思わせるような仕様でした。
 各部屋については、一つひとつ回り、解説していただくという形で案内をしていただきました。当然ながら、各部屋には身体の不自由な高齢者の方たちのための様々なバリアフリーが施されていました。手すりがあることは想定内でしたが、私が驚いたのはその数の多さです。こんなところにまであるのかと思うような場所にもありましたが、身体の不自由な高齢者の方のことを考えると納得がいきます。
 その他にも、腰を掛けられる場所も多く見かけられました。ただ設置されているだけではなく、平均的な立ち座りのしやすい高さに設置されていて、この細やかな配慮にも私は驚かされました。また、転んだ際の救済措置として掴まる場所を増やすために、高齢者の介護レベルに合わせて、棚やテーブルなどの物をわざとたくさん置くという配慮がなされた部屋もありました。
 お風呂については、広くて浅いお風呂は溺れる事故が多いそうです。実は、深くて狭いお風呂の方が安全なのだそうです。具体的には、55cm以上の深さが、浮力を使って起き上がるのに最適な深さなんだそうです。一般的に、寝た状態で入るお風呂もあるようでしたが、これは人として自然なお風呂の入り方ではないため、「ベルパージュ大阪帝塚山」のスタッフの方たちはこの入り方は活用していないそうです。
 また、各部屋のトイレには天井にセンサーがついてあり、12時間以上センサーに反応がないと、フロントに連絡がいく仕組みになっていました。人間は、たいてい12時間に一回はトイレを利用すると思います。したがって、トイレに12時間以上センサーの反応がないということは、その部屋の利用者に何か異常事態が起きた可能性があります。そうした場合、迅速に対応できるように、このような仕組みになっているそうです。
 施設内の部屋はまだまだたくさんの種類があり、娯楽を楽しめる部屋もありました。いくつか紹介しますと、利用者がお客さんを招いた時に使えるゲストルーム、様々な種類の本がたくさん並んだカルチャールーム、映画を見たりカラオケができたり楽器の演奏もできる防音室などです。利用者は自分のやりたいことができる部屋がたくさん用意されており、娯楽も充実していると感じました。

訪問して思ったこと

3年生 平方瑞樹
 今回、「ベルパージュ大阪帝塚山」を訪問して、私たちが持っていた介護施設のイメージがとても変わりました。まず着いてみて驚いたことはセキュリティが充実していたことです。玄関は、インターホンを押して中から開けてもらわないと入れない仕組みになっていました。
 施設の中に入ってみると、介護施設とは思えないほど綺麗で、いろいろなところに利用者のための配慮がなされていました。例えば、転んでも痛くないように部屋の床が柔らかかったり、家具をわざと置いて部屋を狭くして手をつけるようにしていたり。
また、介護施設と聞いたら私は病院の病棟をイメージしていたのですが、訪問してみて大きくそのイメージが変わりました。介護スタッフの方々は利用される人たちが少しでもストレスを減らせるように、いろいろなところに気を遣っているなあと思いました。
 施設案内が終わった後、質問に答えてもらったり、介護施設の問題点などの話を聞かせてもらいました。今、介護施設での一番の問題点は人が足りていないことだとおっしゃっていました。なぜ人が足りていないかというと、給料が安く、資格を取れるレベルが低いからだそうです。今、日本は資格のレベルを下げて誰でも資格を取れるようにして人を増やそうしています。しかし、この方法だと知識の少ない人が増えて介護職のレベルが上がらない。だから介護職は将来ダメになるとおっしゃっていたのが印象に残りました。そして、今の制度を変えなければ介護職を目指す人が増えていかないということも初めて知りました。
 今回の「ベルパージュ大阪帝塚山」の訪問を終えて、行く前と行った後では介護施設のイメージが本当に大きく変わりました。私が思っていた介護施設と実際の介護施設は全然違うことに気づきました。訪問させていただくまで、介護施設は汚いように思っていて、あまりいいイメージがありませんでした。一般的に、多くの人が思っている介護施設も、あまり綺麗ではなくて、楽しくない老後生活を送る病院をイメージなのかもしれないと思います。
 しかし、「ベルパージュ帝塚山」はとても綺麗で設備も充実していて高級感があり、介護施設とは思えませんでした。こうしたイメージと実際のギャップを解消していくことができれば、介護施設で働きたいという人が増え、人手不足を解消できるのではないかと私は思いました。今回、「ベルパージュ大阪帝塚山」を訪問し、いろいろな新しい発見ができてよかったと思いました。

今の日本、これからの日本

3年生 丸山海斗
 日本だけでなく、高齢化問題は世界的に考えても悪化の一途を辿っています。現代社会の現状と課題を説明する前に、なぜ私が「高齢化社会」ではなく「高齢化問題」と言ったのか、まずはそれを説明したいと思います。
 私達が生きる現代では、社会の高齢化が進んでいます。「高齢化社会」とは、65歳以上の老年人口が、他の世代と比べて増大した社会の事です。高齢化社会は、はっきり言って社会問題といえます。それはなぜか。高齢化社会が進むと日本の社会福祉制度では、医療費などの負担は労働者が背負う事になります。さらに、老年人口が増えていくと医療費の負担がさらに大きくなり、子孫繁栄よりも現状の高齢化対策に追われることとなります。そして、結果的に少子化となり、高齢化に拍車がかかるのです。このような悪循環を引き起こす原因となるのが高齢化問題であると私は考えます。以上の事から、私は敢えて「高齢化問題」と言ったのです。
 そもそも、なぜ高齢化社会になってしまったのでしょうか。一般的に言われているのは医療の発達です。医療の進歩は凄まじく、例にあげるならば、少し前のニュースのiPS細胞。医療の発達は、日本の平均寿命からみても感じ取れます。1960年、日本の平均寿命は67、67歳であったのに比べ、50年後の2010年には82、84歳に跳ね上がっています。このデータからみてわかるように、長生きする人が多くなっているのです。医療の発達により、今まで「治らない」とされていた病気も、今や「治る」のです。治るのだから、長生きして当然だと思います。今までの話だと「長生きは悪だ」と言っているように聞こえますが、そうではありません。長生きする事が、人生を生き抜く為に必要な力である「幸せ」と結びつく事もあります。
 高齢化社会の問題点は、増えすぎた高齢者に対して、労働者が少なすぎることにあります。高齢者の医療費の大部分は社会福祉制度によって、労働者が補っています。しかし労働者が少なくなり、高齢者が多くなると、莫大な医療費がかかってしまいますが、国にそれを補える財力はありません。要するに国はあまり裕福ではありません。
 問題点は他にもあります。率直に言うと虐待です。虐待と聞くと親が子にするイメージですが、要介護者である親に介護者である子が暴行を加えるケースや、介護施設の利用者に介護者が虐待を加えるケースもあります。「ベルパージュ大阪帝塚山」の高山さんは、その解決策として「虐待を加える前に、周りの人間が気付いてあげるべきだ。」と考えています。私もそう感じました。虐待を加える事が出来ないようにするのではなく、虐待を加える前の段階で周りが察知し、ケアしようという考え方です。更に突き詰めるのであれば、虐待すると言う概念を消すべきだと私は考えます。そうすれば、ケアする事もなくなると思います。
 私たちは、高齢化社会のこう言った状況から早く脱しなければならない。子孫繁栄、社会福祉制度の見直し、医療制度、子育てのしやすい環境づくり、雇用の増加、子供への教育などは、状況を打破する直接の決め手には繋がらないでしょう。しかし、この国の多くの事柄が高齢化問題に密接に繋がっており、状況を善くも悪くも変えるでしょう。今回の訪問で、現代社会について深く考え、学ぶ事が出来たと私は思います。