2014.1.31

特別養護老人ホームでの体験実習について

 私達西本ゼミは高齢化という問題をテーマにして、高齢者の介護施設を調べることにしました。現在も進んでいる高齢化社会に対し、高齢者を対象にして運営されている介護施設はどのような対策をとっているのか、またそれによって起こる問題はどのように解決しているのかということを中心に調べました。(米田奨)

※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

老人ホームのサービス体制
3回生 米田奨

 高齢者が増加するということは、介護施設の入居者も増加するため、それに伴って施設やヘルパーの数が不足するなどの問題が出てきます。そこで私達は、現在の介護施設で起こっている問題や、その問題に対する解決策を学び、将来の社会に生かしたいと思いました。
 今日の日本では、高齢社会を迎えて年々高齢者の人が増えています。内閣府によると、平成23年度には日本国内の23.3%が高齢者というデータが出ています。高齢者が増えると介護施設に入りたい人が増える一方、介護施設が少なく入居基準が厳しくなってきており、介護を必要としている高齢者が入居できないという問題が出てきます。そこで介護施設の現状を知るために私たちのグループは「大阪老人ホーム」という介護施設に実際に訪問させていただき、見学させていただきました。
 私たちが訪問させていただいた「大阪老人ホーム」は、「高齢者総合ケアセンターまつばら」にある特別養護老人ホームで、介護施設における施設サービスの一つです。介護施設には有料老人ホームやグループホーム、特別養護老人ホーム等がありますが、その中でも特別養護老人ホームは、比較的重度で要介護認定を受けた方が多く入所しており、多くの施設で入居待機者がいる状態です。「高齢者総合ケアセンターまつばら」は、大きく分けて4つのサービス体制を取っています。具体的には、施設サービス、在宅サービス、医療・介護サービス、保育サービスがあります。まず施設サービスでは、介護を必要としているが自立した生活をしたい方のための「大阪老人ホーム」などがあります。一方、介護や家事に助けがほしいといった在宅サービスを希望する方には「まつばらヘルパーステーション」があります。医療・介護サービスについても、高齢者の方以外に一般の方にも利用可能な「岩田記念診療所」があり、保育サービスでは「まつばら駅前おおぞら保育園」があります。介護サービスから保育サービスまで多種多様なサービスを実施していて、総合センターにすることで他のサービスとの連携が容易にとれることが一番の利点であるといえます。これらのサービス体制が高齢者の方の第2の人生のサポートをしたり、介護が必要な方をサポートしたりしています。こうしたサポートのおかげで高齢者の方は、安心で充実した人生を送ることができています。

大阪老人ホームの特長
3回生 山田希

 大阪老人ホームの特長は、それぞれの階に大きなリビングルームがあり、そこにご飯やおやつの時間になると利用者の方たちが集まって介護職員と談笑したり、他の利用者と一緒に食事をとったりして、まるで家族のような雰囲気が味わえる空間を楽しむことが出来ることです。高齢者で介護を受ける立場だからといって、ずっと職員がついているわけではなく、「施設がただ死を待つのみの場所とならないように」という創設者の言葉をモットーに、要介護状態、介護予防にあっては要支援状態にある高齢者の有する能力に応じ、可能な限り自立した日常生活を営むことができるように支援しているそうです。
 その特長のおかげか、利用者の方々に「この老人ホームの居心地はどうですか」とお伺いしたところ、ほとんどの方が「色々な人と話したり出来るからとても楽しい」、「ここはとても居心地がいいし、職員の方も皆優しいから、快適に過ごせている」と仰っていました。「アットホームで快適な生活をしていただく」というコンセプトで経営しているように、
大阪老人ホームでは、まずは利用者に気持ち良く、そして安心して施設に滞在してもらうために医療、看護、介護体制を充実させており、そのことで豊かで潤いがある暮らしが出来るところとなっています。
 また、利用者にとって住み心地がいいだけでなく、認知症介護実践研修や指導者研修を終えた職員が配置されており、ターミナルケアをはじめとした介護体制も充実しています。さらには各種行事などでは地域住民との交流を深めたりしています。他にも、長期滞在する利用者のみならず、短期だけ介護を受けたいという方達のために、ショートステイというサービスがあります。ショートステイでは、特別養護老人ホームなどに短期間滞在し、食事や排泄、入浴や着替えやレクリエーションなどの日常生活の介護を受けられます。一人暮らしの方の自立支援と、家族の介護が一時的に困難になったときの支援サービスもあります。また、要介護の利用者の場合は、予防ショートステイというサービスを受けることが出来ます。基本的な内容は前述したショートステイと同じです。
 特別養護老人ホームである大阪老人ホームは、介護を受けるすべての人、介護をするすべての人のどちらにも居心地の良い場所にするために、様々な介護サービスやイベントなどを行っています。そのため、自主的にこのホームを快適で過ごしやすい場所にするように努めているというのが、私が大阪老人ホームを見学させてもらった時の率直な感想でした。

利用者の食事風景
3回生 藤井大典

 私は主に食事を見せてもらいました。まずは胃瘻が必要な方から食事が行われました。胃瘻とは、胃内に管を通し、そこからほぼ水みたいに細かくなっている食べ物や水分などを流すという食事方法です。主に寝たきりの方がとる食事方法なのでベッドは少し角度をつける、食事と一緒に空気を入れないなどの注意が必要です。なぜこのような注意が必要かというと、普段私たちが食事をするときも寝転んで食事をするのは困難であるように、利用者の方もそれは全く一緒といえます。少し角度をつけるだけでも食べやすくなるからという配慮です。空気を入れない理由は、私たちは普段炭酸を飲んでゲップをしますが、それと似たようなことです。私たちは普段簡単にゲップができますが、利用者の方々はゲップをするのも苦しく、時には吐いてしまう恐れがあります。それを防ぐために介護をする方も慎重に時間をかけて胃瘻による食事を介助する必要があり、決して簡単なことではないのです。
 次に車いすで移動ができる方々の食事をみせてもらいました。まずは利用者の方々に順番に広場に集まってもらい何人かで一緒に食事をとるという方法でした。これには介護者と利用者、または利用者同士で会話をする時間を作ることで脳のリハビリをするという目的があります。食事の準備には時間がかかるので、その間は紙芝居を読んだり、介護者と一緒に折り紙をしながら会話しました。利用者の方々のほとんどがうまくしゃべれない方々なので、介護者の方は利用者の方がわかりやすいようにゆっくり大きな声で話しているのが印象的でした。また、利用者の方の言葉は聞き取りにくく会話に苦労しますが、介護者の方々は利用者の方の口の動きやテンションで言葉を聞き取っているとおっしゃっており、会話をするのにも介護者の方は工夫していることがわかりました。
 食事の方法は利用者によって違っており、少しでも自分で食べることができる人はどれだけ時間がかかってもリハビリの一環として自分で食べるようにしているそうです。自分で食べることが困難な方は介護者の方が一口一口食べさせるのですが、食べたものを出してしまったり、食べている途中にむせてしまったりするので、ゆっくり気を遣いながら食べさせていました。普段私たちは普通に食事をしていますが、利用者の方々は食事をするのもなかなか簡単にはできず、介護者の方々は一人一人のことを細かく考え、その人に一番合った食事方法を何通りも考え、気を遣いながら食事の介助を行っていたことが印象的でした。
 また、食事方法だけではなく、食事内容もなるべく噛みやすいように柔らかく作ったり、利用者の方に合わせた食事を作っており、これだけ利用者の方のことを考えている介護施設だからこそ、ご家族の方も安心して入居させることができるのではないかと感じました。

排泄と食事 3回生 永易拓

 人間が生活をするうえで、食事・睡眠・排泄が最も重要といえますが、訪問時は、そのうちの排泄するところも見せていただきました。トイレはもちろん、建物に設置されている一般的なトイレもありますが、それ以外に、歩いての移動が困難な方のために、個室になっている入所者の部屋には、それぞれ簡易トイレがひとつずつ置かれていました。この簡易トイレは可動式であるため、便器を入所者の近くまで移動させて利用時の負担を減らすことができます。入所者は、建物に設置されたトイレまで移動したり、部屋に置かれた簡易トイレを使用したり、体調に合わせて、その両方を使用していました。
 まず、建物に設置されたトイレを利用する場合では、介護士が入所者の方を支えながらトイレへ誘導し、便座に座らせるのを手伝ったり、服の脱衣の補助をしたりしていました。トイレの内装は、車いすが余裕をもって入れるくらいの幅で、壁には入所者の転倒を防ぎ、体の支えにするための手すりが備えつけられていました。もちろん、部屋に置かれたトイレで排泄するときも同様で、介護士による補助の仕方には変わりはありませんでした。
 次に、食事について説明させていただきます。一般的に食事とは、単に栄養を取るため、生きていくために摂取するという目的があげられますが、多くの人は、家族でファミリーレストランなどに行って食事や会話を楽しんだり、居酒屋で会社の同僚とお酒をたしなんだり、広い意味で考えると様々な目的や意味を込めつつ食事をしています。今回の施設訪問では、実際に食事の介助も見せていただきました。
 まず、食事の時の座席の位置が一人一人決まっていました。決めている理由は、入所者同士でも仲の良し悪しがあり、他の入所者の方の食事をとってしまう人もいるので食事の座席に工夫をしているということでした。そのほかにも入所者が快適に食事をとるための工夫として、おぼんに名札が一つずつ置かれていました。その名札は、入所者によって色分けされていました。訪問した特養では4色あり、オレンジ色が普通食、ピンク色が一口大の食事、黄色が極細(食材を細かくきざんだもの)の食事、緑色がミキサーでペースト状にし、飲み込みやすくした食事でした。この色分けにより、入所者が最も食べやすくバランスの良い食事をとることができ、健康を保つことができます。
 訪問時は、緑色の名札がついた入所者の食事のとり方を近くで見せていただきました。緑色の名札なのでペースト状になっており、ほとんど噛まずに食べられる食事でした。その方に対して、介護士の方はスプーンを舌の上に乗せ刺激を与えて食べさせる方法をとっており、そういうところにも工夫がなされていました。今、インターンシップの授業で仕事のやりがいなどを勉強していますが、実際に現場を見せていただき、これまでとは異なった視点で介護の仕事をみることができました。そして、この仕事に対して大きな興味を抱くようになりました。

高齢化社会の現状と課題
3回生 舟野翼

 私たちのグループは「高齢化社会の現状と課題」のテーマについて取り組むために、実際に特別養護老人ホームの現場に足を運びました。今回、私たちが訪れたのは松原市にある明治35年に日本で4番目の高齢者施設として創設され、平成24年12月に110周年を迎えた歴史ある大阪老人ホームです。
 私たちは、大阪老人ホームで全6フロアあるうちの4つのフロアに分かれて、ひとり1フロア、3時間の体験をさせていただきました。4人とも様々な重度のフロアで、私は1番軽度なところを体験しました。そこでは施設の訪問が七夕前だったということもあり、利用者たちと折り紙で飾り物を作りました。
 初めは、折り紙を折ることも難しいと私は思いましたが、数人の人は鶴や奴さん、箱などいろいろな飾り物を作ることができていました。その飾り物の量を見ると、施設で行われるイベントが盛大に行われていることがわかりました。折り紙を一緒にする中で私が気を付けたことは、利用者がハサミを使用する時です。折り紙を折ったりできる人でも高齢者なので手の震えがあり、手を切ったりハサミを落としたりして他の利用者も危ないと感じたからです。このように、私たちには普通のことでも十分気をつけないといけないことがたくさんあると今回の施設訪問を通して学ぶことができました。
 その他には、一緒にラジオ体操第一も行いました。私と職員の人が前に立って体操をしましたが、利用者はほとんどの方が車いすなので、私たちのことを見て上半身だけ体操をしていました。利用者の中には、体を動かすことが困難なため体操は出来ないですが、少しリズムをとってくれている人もいました。利用者全員が興味をもって体操をしてくれていたので私も嬉しかったです。
 大阪老人ホームはアットホームで、利用者の方は自分の家にいるようにくつろげ、ゆったりとした環境のなかで過ごすことができているようにみえました。さらにリハビリテーション、レクレーション等のプログラムメニューも用意されており、利用者が自立できるような工夫もされていました。
 私が利用者の方と話をしていた中で、比較的長くいる方は楽しいと言っていましたし、入りたての方はやっぱり家のほうが良いと言っていました。多くの利用者を見ていてもその様子がすごく伝わってきました。長くいるとコミュニケーションの幅が増え楽しくなっていくのだと思いました。他には、私の地元のことや阪南大学のことを知ってくれている利用者もいて嬉しかったです。大阪老人ホームで体験できたことで、この課題についての関心もより高まりました。この経験を、今後の取り組みにも活かしていきたいと思います。