【概要】
 私たちは、介護付き有料老人ホームのフェリーチェ三国ヶ丘に一日介護の体験させていただきました。さらに、施設内の設備、施設の目的、入居している方々の一日の生活の流れについて、施設の板倉さんにお話を伺いました。今回、自分の体で体験することで授業だけでは知り得なかったことをたくさん学ぶことができました。

※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

フェリーチェ三国ヶ丘とは
3年 吉元彬乃

 フェリーチェ三国ヶ丘は、入居している方々の意志を最も大切にしている施設です。というのも要介護者の皆さんがまるで自宅で生活しているかのようにゆったり落ち着いて生活できるように、施設で介護する方々が様々なことを心がけているからです。
 まず、訪問時、私たちは正面入り口を入ってすぐのロビーでたまたま要介護者の方とお会いしました。新聞紙を両手にしっかり持ち私たちに挨拶をしてくださりました。その場で受けた印象は、大変お元気、というものでした。この何気ないいつもと変わらない生活かできているのには理由があります。このフェリーチェ三国ヶ丘では入居していただく際、必ず一週間程の体験入居をしていただくことになっているそうです。体験していただくことで施設の設備はもちろん、周りの方とのより良い関係を作っていけるかということを見てもらうことを目的としており、この体験があるから入居される方の周りの環境が大きく変わっても落ち着いて生活してもらうことができると考えています。これからずっと快適な生活を送れるかどうかは、より良い人間関係が作れるかどうかだと施設の板倉さんはおっしゃっていました。
 この施設では茶道や書道、映画鑑賞など趣味感覚で参加することができたり、ナイトバーが開かれてお酒を飲んだりできます。さらにはみんなで旅行に行くなどのイベントがたくさんあります。5階ではご家族やご友人だけでお話をしたりご飯を食べたりすることができる場所があり、自分の家に招いているような感じで一緒に楽しい時間を共有できます。また、要介護者の方が散歩やお出かけといった外出を希望すればそれにもきちんと対応してくださいますし、もし急な体調不良や体調変化があった場合には隣接している吉川病院に連絡通路を利用して運んでくださったり、逆に病院側から診に来てもらったりして素早い対応ができるシステムになっています。安心して生活してもらえるように様々な対応ができるのが、この施設の特徴です。
 そしてターミナルケア(看取り)では、本人の思いや家族の思いを大切にしています。板倉さんは「一人ひとりの思いは違っているから、我慢は必要ない。最期だからこそ好きなことをしてほしい」とおっしゃっていました。これらのすべては身体のリスクを判断したうえでのことですが、本人の意志、家族の思いを最優先するフェリーチェ三国ヶ丘だからこそできることです。
 介護はコミュニケーションの延長のようなものであり、一人の生活に一緒に寄り添っていけることの楽しさや他人と関わることをどう楽しめるかが大切だと分かりました。入所者さんといえど人生の先輩であることに変わりはありません。敬意をもって接することの大事さを感じました。

認知症の方との交流
3年 中塚 勝史

 フェリーチェ三国ヶ丘は5階建てになっており、入所者の方たちは2階から4階でお風呂に入ったりお食事をしたりして日常生活を送っています。介護レベルによって入居者を各階に分け、下の階になるにつれて介護レベルが高い仕組みになっています。フェリーチェ三国ヶ丘は認知症の方が多く利用されていました。私は主に2階で生活されている比較的介護レベルの高い方との交流をしました。
 私は今まで認知症の方と交流したことがありませんでした。私の認知症のイメージは「物忘れが激しい」というものでした。そしてそのイメージで実際に認知症の方との交流をしはじめました。一緒に体を動かすレクリエーションに参加したり昼食を一緒にいただいたりして楽しい時間を過ごすことができました。ご飯を食べ終え一緒にテレビを見ているときはほんとうに自分の家にいるのと変わらないくらいのんびりできる環境でリラックスでき、少し眠たくなってしまうほどでした。しかし、レクリエーションや昼食を一緒に食べて、少しそこの場に馴染めてきて会話も弾むようになってきたときのことでした。私のイメージしていた認知症と実際の認知症との違いを実感したのは…。「物忘れが激しい」という点ではイメージと合っていたのですが、その激しさに驚きました。ほんの数十秒前の会話を初めて話すかのようにまた話し始めるのです。さらにそれがずっと続いたのです。交流をしている間に話が順調に進んでいくことはほとんどありませんでした。私は次第にどう接していいかわからなくなり反応に困ってしまいました。しかし、介護士の方々は認知症の方との会話をすごく楽しんでいました。
 私が交流した方々の中にはほんとうに認知症になっているのか分からないくらい話せる方もいれば少し会話するだけで認知症だと分かる方もいました。しかし、認知症かわからないような方でも一人で外に散歩すると帰ってくることができないことがあるようです。例えば、いつもと違う道に一歩踏み入れるだけで分からなくなってしまうのだそうです。認知症にもいろいろな症状があり、その人にあった対応をしなければなりません。そのためにはたくさんの会話を交わし、信頼を得なければなりません。たった一日の介護体験では、それは大変だと感じました。介護士の方たちのコミュニケーション能力の高さを実感できました。認知症の方との交流や介護士の方からの話を伺うことができ、レクリエーションをすることの意味や重要性、コミュニケーションをとる上で相手を敬う大切さや楽しさを学ぶことができた一日でした。

レクリエーションを通して
3年 樋口慧周

 要介護者の皆さんとレクリエーションを通してコミュニケーションとらせていただき、感じたこと学んだことがたくさんありました。
 私たちが一緒にレクリエーションをした時間帯はお昼前の時間でした。本来であれば太極拳の時間でしたが、私たちのために貴重な時間を割いてくださりました。介護士の皆さんはほぼ毎日、運動能力の衰え防止や思考回路の回復などをはじめとし、様々な目的で行うレクリエーションを考えていらっしゃいました。それらは元気な私たちにとってはすごく簡単な動きの運動でした。しかし、要介護者の方たちにはすごく意味のあることで大切なことです。このようなお話をしていただいたとき簡単にこなしていた自分に恥ずかしさをおぼえました。
 私たちが体験したレクリエーションは、みんなで大きなサークルを作り、様々な拍子に合わせて歌を歌ったり手拍子をしたりするものでした。そのとき私が気になったことがありました。それはサークルを作るときに仲の良い方たちがかたまっていたことです。このことについて介護士の方たちは、誰もが人間関係の中で生きているので仲の良さも重視しなければならないとおっしゃっていました。そういった面も含めて、施設の各フロアの構成も重要だとおっしゃっていました。そして、手拍子をする場面でも決して無理をさせることがないようにしていました。また童謡も誰もが知っているものばかりでした。今回のレクリエーションの目的を伺うと、脳を活性化させることが目的だったそうです。
 最初は恥ずかしさから少し消極的だった私たちも時間が経つにつれ、要介護者の皆さんと笑顔でいろいろな運動を楽しむことができました。そんな中、レクリエーションの最後には、私もギターを持って弾き語りを3曲、歌わせていただきました。後々、皆さんからよかった、と笑顔で言っていただいたことがとても印象的で皆さんから元気をもらいました。
 また、最後には介護士の皆さんに質疑応答をさせていただきました。そこでは、介護職とは難しいことではなく、人とのコミュニケーションの延長だとおっしゃっていました。私自身も実際に介護の現場に行かせていただいて、体力のいる仕事にも関わらずしんどいそぶりを見せることなく本当に楽しく仕事をしている介護士さんのお姿を拝見できました。今回の訪問は、私が抱いていた介護のイメージを大きく変える体験になりました。
 施設名の「フェリーチェ」は「幸せ」の意味。そして、それを介護士の皆さんの笑顔で要介護者の皆さんに与えているのだと感じました。