西本ゼミ3回生 山口文也

 2025年9月、私たちは大阪市天王寺区にある「つばい訪問看護ステーション」を訪問し、実際に現場で働かれている看護師の方にお話を伺いました。現在、私たちは在宅医療や訪問介護について学んでおり、今回の訪問では「訪問看護の現状」や「訪問看護ステーションの経営」について理解を深める貴重な機会となりました。

 訪問看護は、利用者のご自宅を訪問して医療的なケアを行うサービスであり、1人の看護師が1日あたり平均5件ほど訪問されているそうです。訪問時間は1件あたり30分から60分で、訪問は午前9時から始まり、12時〜13時に昼休みを取りながら18時ごろまでの勤務になります。

 介護サービスの内容は、身体的なケアはもちろん、利用者の生活全体を支える介護支援まで幅広く対応されています。病院や施設との違いについて伺うと、「訪問看護は利用者や家族との関係がより近く、まるで“家族のような存在”であることが求められる」と話されていました。

 また、訪問看護ステーションを立ち上げた経緯についてもお聞きしました。10年前、まだ地域に訪問看護の拠点が少なかった頃、「これから高齢化していく社会を見据えて終末期を迎える患者さんなどを地域で支えたい」という思いから、看護師の方が中心となって設立されたそうです。当初は経営の知識がない状態でのスタートでしたが、地域のPTAや老人会、新聞などを通じてボランティア的に活動し、信頼と知名度を少しずつ築いていかれたとのことです。現在は開設10年を迎え、地域に欠かせない存在となっています。

 利用者との関係づくりについて伺うと、「信頼関係を築くためには、初対面の印象が大切。あいさつやマナーを大切にし、親しみやすくも仕事としての距離を保つようにしている」とお話しくださいました。あまりに近くなりすぎるとトラブルの原因にもなるため、「一人で抱え込まず、スタッフ同士で共有することを心がけている」とのことです。ご家族への対応については、「病院では叶えられない希望を少しでも形にすることを大切にしている」と話されていました。例えば「温泉に行きたい」という声に対して、家庭で入浴剤を使った“プチ温泉体験”を実現されることもあるそうです。

 他職種との連携についても積極的に取り組まれており、ケアマネジャーや医療機関、薬局との連携を密に行うことで、より良い在宅医療の提供を目指されています。緊急時には「電話が入ればすぐに駆けつける」という柔軟な対応をされており、まさに地域に根ざした信頼関係が感じられました。事業所内では情報共有ツールを活用し、スタッフがいつでも意見交換できる環境が整えられています。

 今回の取材を通して、訪問看護の現場では「医療技術」だけでなく、「人とのつながり」や「思いやりの心」が非常に大切であることを実感しました。地域の方々に寄り添い、安心して暮らせる環境を支える訪問看護の意義を改めて学ぶことができました。

 ご多忙の中、丁寧にお話をお聞かせくださった訪問看護ステーションの皆様に、心より感謝申し上げます。