私の単著論文が、Letters in Spatial and Resource Sciences (査読有)に掲載されました。この研究では、研究開発型立地モデルを活用して、経済成長、産業集積、不平等、自然環境の関係を分析しています。ここでは、イノベーションを通じて新しい企業が設立される中、海外直接投資を通じて、企業が立地先を変えていく状況を念頭においています。
これらの企業は、汚染を排出する為、国際的な排出権取引市場に参加していますが、排出枠は、企業に無償配布される為、排出枠の売却で利益を得るという既得権益を得ています。排出枠の引き下げにより、排出権価格の高騰により、この既得権益を得ることができる為、より多くの排出枠が配分される国へ立地したい誘因が企業にはあります。
ここで、こうした企業の利潤は、投資家である家計に配当として分配されます。しかし、家計は、初期に保有する資産に不平等が存在する為、より多くの資産を保有している家計は、より多くの株式を購入できる為、より多くの配当所得を稼ぐことができます。
こうした状況下で、世界全体の排出枠を引き下げると、途上国から先進国への企業立地が進む為、先進国での汚染拡大と途上国での汚染削減が進みます。それぞれの企業が排出権価格の高騰で売却益を増やす中、先進国では企業集積が進む為、株式の配当所得を通じて、資産の不平等が拡大します。他方、途上国では脱集積により、資産の不平等が縮小します。つまり、排出権取引を通じて、先進国では不平等と環境汚染が進む一方、途上国では平等と環境保全が実現することになります。
更に、汚染除去技術の生産性を改善すべしという直接規制は、企業の汚染排出を減らす為、排出枠が余り、排出権価格の下落をもたらします。それ故、排出枠の引き下げと逆の結果が起きます。先進国から途上国への企業立地が進む為、先進国での汚染削減と途上国での汚染削拡大が進みます。それぞれの企業が排出権価格の下落で売却益を減らす中、先進国では脱集積が進む為、株式の配当所得を通じて、資産の不平等が縮小します。他方、途上国では企業集積により、資産の不平等が拡大します。つまり、直接規制を通じて、先進国では平等と環境保全が進む一方、途上国では不平等と環境汚染が実現することになります。この結果は、先進国での厳しい環境規制が、企業の貿易や立地を通じて、途上国の汚染を増やしてしまうという汚染逃避地仮説を含意します。
今、世界では、先進国の低所得者層を中心に、グローバル化に反対し、地球温暖化対策に否定的な態度を取る人々が増えています。その理由の一つとして、厳しい環境政策が所得格差を拡大していることが考えられます。本研究は、こうした主張に一つの根拠を与えることになります。かつての公害問題において、環境政策は、貧しい労働者の居住環境と健康水準を改善する為、公正かつ公平な側面を持ち合わせており、支持されていました。しかし、昨今の状況では、環境政策により不平等が拡大する場合、適切な所得分配政策を導入する必要があるかもしれません。
環境保全が不平等を拡大するのか縮小するのかに関しては、今なお議論が続いており、現時点で確定的なことを述べることができません。研究の更なる進展が待たれます。
これらの企業は、汚染を排出する為、国際的な排出権取引市場に参加していますが、排出枠は、企業に無償配布される為、排出枠の売却で利益を得るという既得権益を得ています。排出枠の引き下げにより、排出権価格の高騰により、この既得権益を得ることができる為、より多くの排出枠が配分される国へ立地したい誘因が企業にはあります。
ここで、こうした企業の利潤は、投資家である家計に配当として分配されます。しかし、家計は、初期に保有する資産に不平等が存在する為、より多くの資産を保有している家計は、より多くの株式を購入できる為、より多くの配当所得を稼ぐことができます。
こうした状況下で、世界全体の排出枠を引き下げると、途上国から先進国への企業立地が進む為、先進国での汚染拡大と途上国での汚染削減が進みます。それぞれの企業が排出権価格の高騰で売却益を増やす中、先進国では企業集積が進む為、株式の配当所得を通じて、資産の不平等が拡大します。他方、途上国では脱集積により、資産の不平等が縮小します。つまり、排出権取引を通じて、先進国では不平等と環境汚染が進む一方、途上国では平等と環境保全が実現することになります。
更に、汚染除去技術の生産性を改善すべしという直接規制は、企業の汚染排出を減らす為、排出枠が余り、排出権価格の下落をもたらします。それ故、排出枠の引き下げと逆の結果が起きます。先進国から途上国への企業立地が進む為、先進国での汚染削減と途上国での汚染削拡大が進みます。それぞれの企業が排出権価格の下落で売却益を減らす中、先進国では脱集積が進む為、株式の配当所得を通じて、資産の不平等が縮小します。他方、途上国では企業集積により、資産の不平等が拡大します。つまり、直接規制を通じて、先進国では平等と環境保全が進む一方、途上国では不平等と環境汚染が実現することになります。この結果は、先進国での厳しい環境規制が、企業の貿易や立地を通じて、途上国の汚染を増やしてしまうという汚染逃避地仮説を含意します。
今、世界では、先進国の低所得者層を中心に、グローバル化に反対し、地球温暖化対策に否定的な態度を取る人々が増えています。その理由の一つとして、厳しい環境政策が所得格差を拡大していることが考えられます。本研究は、こうした主張に一つの根拠を与えることになります。かつての公害問題において、環境政策は、貧しい労働者の居住環境と健康水準を改善する為、公正かつ公平な側面を持ち合わせており、支持されていました。しかし、昨今の状況では、環境政策により不平等が拡大する場合、適切な所得分配政策を導入する必要があるかもしれません。
環境保全が不平等を拡大するのか縮小するのかに関しては、今なお議論が続いており、現時点で確定的なことを述べることができません。研究の更なる進展が待たれます。