Plaza de Comunicación(プラサ・デ・コムニカシオン)vol.06

 皆さん、こんにちは。連日暑い日が続いていますが、賀川ゼミではこの夏を卒業研究に取り組む山場ととらえ、各自が改めてなぜその研究テーマを設定したのか、それに対してどのように向き合うのかを確認する意味で、本欄にコラム風にまとめてみました。
 これまでにもゼミ内で議論を重ねてきており、ゼミ内での仮提出は10月末としています。その後、推敲を経て12月上旬に最終的な研究成果を提出するまで、自分の中での最高傑作となるよう、そして「日本(世界)でのオンリーワン」を目指して卒業研究に取り組むことにしています。
 さて、皆さんはどの研究テーマに惹かれましたか。
国際コミュニケーション学部 賀川 真理

1.「ヒップホップのジャーナリズムとしての役割」

 「ヒップホップ」とは1970年代にニューヨーク・ブロンクス地区のアフリカ系アメリカ人(以下「黒人」という)コミュニティから生まれた音楽であり、現在は音楽チャートに必ずランクインするほどの人気音楽ジャンルになっている。筆者は大学2回生の時に「ブラック・ライヴズ・マター運動」(以下「BLM運動」という)に関連したテーマを学んできたなかで、音に惹かれて聴いていたヒップホップが内包する、人種差別に訴えかけるメッセージや歴史的背景を深く理解することに関心を持った。
 アメリカ社会では奴隷制時代から現在に至るまで政治的、法的、経済的、社会的な不平等による人種差別が社会構造に組み込まれ地続きで繋がっており、生まれた瞬間からスタート地点が異なる。そうした人種格差による劣悪な生活環境やアメリカ社会で黒人として生きる苦悩を伝えているアーティストが多くいる。
 2016年、カリフォルニア州ロサンゼルス南部、犯罪率が高いことでも知られているコンプトンで生まれ育ったケンドリック・ラマーの楽曲“Alright”は“We gon’ be alright(俺たち、私たちはきっと大丈夫)”と、繰り返される人種差別に疲弊した人々に寄り添うメッセージでBLM運動を象徴するアンセムとなり、2020年5月25日にアメリカ・ミネソタ州で警察官に首を膝で抑えつけられ死亡したジョージ・フロイド氏の事件により、再びBLM運動が全米に拡大した際には、多くの黒人アーティストが人種差別や警察からの暴力を題材にした楽曲を発表した。
 ブロンクスの一室からメインストリームの地位に上り詰め、人種格差に苦しみ抑圧された黒人が社会全体に生の声を届ける手段となり、音楽という人種を問わない共通言語を介して、世界中に社会の不合理を訴えるジャーナリズムとして機能している「ヒップホップ」からアメリカ社会のいまを読み解いていく。
担当者:浅田

2.「言葉の暴力—SNSコミュニケーショントラブルを解決するには」

 「人間は、言葉と火と道具を使う動物だ」。言葉は人間が生活する上で、必要不可欠な存在である。言葉でコミュニケーションを取り合い、共同体を組織することで人類は生存していった。また人類は言葉で喜び、悲しみ、怒り、感動などの気持ちを伝えている。今日、言葉はSNS上でも文章として用いられている。
 SNSはインターネットを通してどんな時間でも利用でき、遠くにいる人ともコミュニケーションを取ることができる。より多くの人々と喜び、楽しさを共有できる反面、同様に怒り、悲しみを共有できるようになった。SNSではマイナスな感情による誹謗中傷、過激な発言などが見られる。
 そして、言葉の暴力で命を亡くす事件も発生した。フジテレビの恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演した女子プロレスラー、木村花さんが急死した事件だ。その背景にSNS上での誹謗中傷、視聴者からのバッシングがあった。SNSのコメントには「早く消えろ」や「ブス・お前が気持ち悪い」などと人格や容姿を否定するものも存在した。肉体への攻撃ではない、言葉や文章でも人々の精神を追い詰める力があるのだと考える。そしてインターネットという匿名性のある世界が、人々に普段よりも軽率な行動をとりやすくさせていると考える。
 そして社会的に成熟しきっていない子どもたちは、大人に比べてネット犯罪への危機感の薄さから、軽率に誹謗中傷を起こしてしまう危険性もある。実際に京都府立大学大学院生命環境科学研究科特任研究員の加藤亮太さんと京都府立大学生命環境学部環境情報学部の上田裕果さんは、2013年7月24~8月30日、9月20~27日の期間の書き込みを対象にネットパトロールを実施し、人権侵害の可能性のある書き込みを収集した。収集件数101件の中で書き込みの年齢区分を調べたところ、年齢が不明な投稿者を除けば高校生が一番多い11件という結果になっている。加えて、子どもたちは大人よりも言葉を強く受け止めてしまう可能性がある。
 インターネット上の言葉の暴力から子どもたちを守り、彼らが他者を傷つけることを未然に防ぐためには、ネチケットの理解と人権教育が必要になる。そして、誹謗中傷を減らし、言葉の暴力を受けて傷ついている人をサポートする社会的取り組みが必要になってくるだろう。
担当者:小幡

【参考文献】

・吉富康成『インターネットはなぜ人権侵害の温床になるのか—ネットパトロールがとらえたSNSの危険性』ミネルヴァ書房、2014年
・東洋経済オンライン「テラハ・木村花さん急逝、現場に問う不幸の元凶 何が22歳女子プロレスラーを追い詰めたのか」2020年5月25日(参照:2022年7月12日)(https://toyokeizai.net/articles/-/352379)
・WEBLEACH「木村花さんのTwitterに寄せられた誹謗中傷の内容とは?対処方法も徹底解説!」2020年5月31日(参照:2022年7月12日)(https://webleach.net/blog/slander/3461/)

3.「ROCK AGAINST RACISMとは」

 ROCK AGAINST RACISM(以下RAR)は、不景気真っ只中であった1970年代のイギリスで生まれた運動である。1970年代当時のイギリスは、1960年代から続いた経済停滞、物価の上昇、頻発するストライキ等による衰退、所謂「英国病」を患っていた当時のイギリスにはかつての栄華を極めた大英帝国の面影はなく、他国からは「ヨーロッパの病人」と揶揄される始末であった。
 そのような社会情勢にあっては、国民の生活の向上は望むべくもない。さらに、将来の見通しが立たないとあって、社会全体で鬱屈な気分が漂っていた。そうした情勢では人々の不満を背景に、急進的な主張が伸張する。苛立っていた人々はその鬱憤を晴らすべく、矛先を当時増加していた移民に向けた。
 イギリスは第二次世界大戦後、戦争で失った労働力の補填の為、旧植民地からの移民を受入れた。しかし、大量の移民の流入は社会的な摩擦も生み出し、移民反対派である白人労働者が移民の居住地域を攻撃し、移民との間での抗争が起こることもあった。白人たちは移民に自分たちの仕事や国を乗っ取られると危機感を募らせ、このような暴挙に打って出たのだった。この動きは一時鎮静化を見せたが、70年代に入ると、今度は移民側が暴動を起こすようになり、人種間の対立は深刻なものとなった。こうした背景により、イギリスの白人達は移民への差別的な視線を向け、排外思想が社会全体を覆い、その影響は政治や著名人に及んだ。
 RARはその風潮に待ったをかけた運動だった。RARの発端はエリック・クラプトンの発言によるものだった。酔っぱらったクラプトンは、自身のコンサート会場で差別的な発言をした。これが引き金となり、写真家であるレッド・ソンダースは人種差別と闘おうという声明文をいくつかの音楽誌に送った。これが掲載されると、凄まじい反響を呼び、数週間でRARは結成された。怒涛の勢いで結成されたRARはその後、当時勃興していたロックやレゲエを組み合わさり、一大ムーブメントとして広がってゆく。
担当者:河合

4.「アメリカの『ヒップホップカルチャー』がもたらした社会的影響」

 ヒップホップカルチャーと言えば、黒人・ラップ・ダンス・ぶかぶかのズボン・金のネックレスなどの大まかなイメージがあるだけで、社会的に影響力のある存在だと認知している人が少なく感じる。
 筆者自身ヒップホップ音楽をよく聴くが、これまで歌詞の意味を考えずに何となく聴いていた。ある時リル・ナズ・Xの“industry baby”という曲のミュージックビデオを見ていると、同性愛について訴えかけている映像があり、衝撃を受けた。他のヒップホップアーティスト達の歌詞の意味を調べてみると、黒人差別や同性愛について訴えているものが多く、社会的に影響力のある存在だと感じ、本研究を始めるきっかけとなった。
 そもそものヒップホップカルチャーの始まりは、ヒップホップ史上で最も重要な人物であるアフリカ・バンバータ(Afrika Bambaataa)が、1973年に“Universal Zulu Nation” を結成し、音楽を使って人々にメッセージを広める活動をするためであった。そのメッセージとは、「同じスラム街で人種差別や貧困に苦しむ者同士が血を流し、殺し合うなんて間違っている」、「争うのなら、その文化で争えば血は流れない」という思想であった。この思想が多くの人々の心を動かし、人々は争い方をラップやダンスに変え、血が流れることは少なくなった。この“Universal Zulu Nation” は、平和・自由・平等を信じ活動し、ここからヒップホップの精神が確立していった。
 上記のように、本研究ではヒップホップカルチャーの歴史や各アーティストが与えた社会的影響などについて研究し、ただの音楽・ダンス・ファッションというイメージだけではなく、ヒップホップカルチャーが社会的に影響力のある存在であることを広めていきたい。
担当者:川上

5.「フェアトレードコーヒー」

 筆者はコーヒーラバーである。豆を挽き、お湯を注ぎ、コーヒーの香りと風味を味わう。豆にもこだわりを持っている。酸味が強いものよりも苦みやえぐみがあるものを好む。そんなコーヒーラバーの筆者は新しいコーヒーの飲み方に挑戦したい。それは、コーヒー豆農家のことや歴史を知識として蓄えることによって、1杯のコーヒーを物理的ではない方法で深みを出したい。例えば、美術館で作品の背景を知っているかいないかでは美術館で過ごす時間の深みは違うであろう。筆者の卒業研究テーマの選択動機は、そのようなコーヒーに対する愛である。
 ところで、皆さんは「コーヒーフェアトレード」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。コーヒー豆が公平な価格で取引されているかというものである。コーヒー1杯を500円だとすると、生産者へ渡るのは6円ほどにしかならないという。その原因として、コーヒー豆が生産者から消費者に届くまでの間に中間業者が多いことが挙げられる。はたしてこれはフェアなトレードだと言うことができるのだろうか。いや、この質問は少し意地悪だったかもしれない。フェアかどうか決めるのは我々消費者ではない。生産者である。
 コーヒー豆を生産している国は、貧しくてかわいそうであると思ったことはないだろうか。そのかわいそうだとレッテルを張る行為自体が、彼らをかわいそうだとしているのではないか。筆者は南アフリカから日本に研修のため来日している方の話を聞いたときに、価値観を塗り替えられた。「確かに我々は日本の方からすると貧しいというイメージを持たれているかもしれない。だが我々は決して不幸ではない。幸せな毎日を過ごしている」。
 コーヒー豆の話から少し離れてしまったが、この言葉を聞いて筆者は価格を正当にすることだけがフェアトレードと言えるのか疑問に思うようになった。生産者と消費者がお互いに納得のいく環境こそがフェアだと言える。コーヒーラバーの筆者は、コーヒーフェアトレードを価格の面からだけでなく価値観やお互いにできることは何なのかを考え、コーヒーに対する知識を深め至高の1杯を味わいたい。これは究極の自己満な卒業研究である。
担当者:川路

6.「メディアはなぜ日本を被爆した『唯一』の国と表現するのか」

 「日本は被爆した唯一の国である」。皆さんはこの文章について、ニュースや新聞で一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。筆者も8月6日になれば、常套句であるかのようにニュースで言われてしているのを耳にしてきた。しかし、それは本当なのだろうか。筆者は、大学2回生の時に原爆について学ぶ機会があった。その授業では、日本以外にも被爆によって、現在も苦しむ人々が存在することを知った。筆者がこれまで学んできた中で最も衝撃を受けた授業の一つになったとともに、無知な自分を恥じた。
 では、日本以外にも被爆した国とはどこなのだろうか。1945年に初めてアメリカがニューメキシコ州で核実験を行ったのを契機に、これまでに2050回以上の核実験が行われたと言われている。アメリカは他にもネバダ砂漠や太平洋で、ロシアはカザフスタンや北極海で、イギリスはオーストラリアや太平洋の島国で、フランスはアルジェリアやポリネシア、タヒチで、中国は新疆ウイグル自治区で核実験を行ってきた。またこの事実には、共通することが2つある。1つ目は核実験を行った国が国連安全保障理事会の常任理事国の5か国であるということ、2つ目は核実験の被害に遭った国がかつての植民地や先住民族の住む地域であることだ。
それでは、この事実を知った上で、皆さんに一度聞いてみよう。日本は本当に被爆した「唯一」の国なのだろうか。第二次世界大戦中にヒロシマやナガサキに原爆が投下されたあの日以降、一度も原爆による被害者を出していないと言い切れるだろうか。
さて視点は変わるが、メディア業は製造業やサービス業と同じく、利益を出さなければ倒産に追い込まれてしまう。つまり、より多くの人の目に留まるような記事を書かなければ、生き抜くことができなくなってしまう業界である。そのため、利益を得るために、意図的に誇張された記事が出回ることもあるのである。不謹慎ではあるが、「日本は被爆した国だ」というよりも、「日本は被爆した唯一の国だ」と述べた方が、読み手に対して、日本だけといった特別感を感じさせられるのではないだろうか。
「世間について知るためにはニュースを見なさい」と、学校の先生や両親から一度は言われたことがあるであろう。しかし、この文章は訂正する必要があるのではないか。「世間について知るためにはニュースを観なさい」と。この「観る」には、対象を見極めるために意識や行動をするという意味がある。皆さんも今一度、テレビやネットで流れてくるニュースについて、この情報は正しいのだろうかといった批判的思考を持ちながら、吟味して頂きたい。
担当者:河原

【参考文献】

・川崎哲『核兵器はなくせる』岩波書店、2018年

7.「日本と欧米の性教育—緊急避妊薬のOTC化に向けて」

 はじめに、筆者から質問がある。みなさんは緊急避妊薬のOTC化という言葉を知っているだろうか。睡眠、食欲、性欲。これらは人間の三大欲求と言われているが、最後の性欲という言葉を聞いて、どんな気持ちになっただろうか。
 また、性教育という言葉を耳にしたとき、中学校や高校で保健体育の授業を受けたとき、なんだか恥ずかしいという気持ちになった経験はないだろうか。もしくは、保健の授業になると黙り込んだり、本当は知りたいのに無関心を装っていたり、そんな人たちを見たことはないだろうか。
 筆者は緊急避妊薬のOTC化という言葉を、大学1回のときに知った。OTC化とはOver the counterの略で、直訳するとカウンター越しという意味になる。緊急避妊薬をカウンター越しで受け取ることができる、つまりは医師の処方箋なしで薬局にて緊急避妊薬を購入できるというものである。
 現在、世界の約90ヵ国の国々や地域では緊急避妊薬のOTC化が実施されているが、日本はその90ヵ国に入っていないのだ。また筆者は数年前から洋画や海外ドラマなどの性に関する描写や表現が、日本の作品とは違うと感じることが何度もあった。初めの質問も筆者自身の経験から思いついたものである。これらを踏まえ、日本社会では性というものがタブー視されているのではないかという疑問を抱いた。
担当者:佐竹

8.「日本でメジャーリーグをメジャーにするには—変わりゆくベースボール文化」

 MLB(メジャーリーグベースボール)は、野球界最高峰のリーグであり、アメリカ4大プロリーグの1つである(残りの3つはバスケットボールのNBA、アメフトのNFL、アイスホッケーのNHL)。世界各地のプロ野球選手の多くはこのリーグでのプレーを目標にしている。PR TIMES、株式会社ベネクスの調査による日本のプロスポーツリーグの人気度調査で、1位は野球は31.1%と、2位のサッカーに2倍以上の差をつけた。
 筆者は2019年秋頃からMLBを見はじめた。最初は言語が全て英語、チームの多さ、それに伴う選手の多さから、わからないことだらけであった。しかし、毎日見ていくにつれて、日本の野球とは全く違ったプレースタイルや、選手一人一人のプレースタイルの個性が強く、更に日本のチームの倍以上のチームがあるので、見ていて全く飽きないことに素晴らしさを感じた。
 しかし、当然ではあるが日本では日本のプロ野球の方が圧倒的に人気であり、MLBに熱中している人はほとんどいない。なぜ日本でこれほど人気が出ないのかと疑問に思い調べたところ、なんと本場アメリカでも人気が低迷している可能性があることを知った。
 アメリカで人気が低迷している原因は、アメリカ野球のプレースタイルの変化であった。簡単に説明すると、日本の野球ならプレースタイルは、インプレーと呼ばれるプレーが多く、守備での素晴らしいプレーなどが絡み、観客が盛り上がる。それに対してアメリカの野球はデータ化が進み、いかに効率良く点を取れるかが重要視され、ホームラン(打ったボールがスタンドに直接入り、そのプレーだけで1点以上が入る)をたくさん打つというプレースタイルが確立された。このプレースタイルでは守備が絡む展開が減り、ホームランか三振(3ストライク)のどちらかになってしまい、観客の盛り上がりも控えめになってしまった。
 近年は大谷翔平選手に代表されるMLBでの日本人選手の活躍も増えてきたのに伴い、日本でのMLBの認知度も少しずつ上がってきている。筆者はMLBの素晴らしさを日本の野球ファンに伝えたいと考える。
担当者:田中

9.「世界幸福度ランキングと税金の結びつき—税金が高ければ幸せになれるのか」

 筆者が卒業研究のテーマとして選んだのは、世界幸福度ランキングと税金の結びつき—税金が高ければ幸せになれるのか」についてである。テーマ選択の動機は2点ある。
 1点目は世界中の国々が幸福度で順位化されていることに興味を持ったこと、2点目は順位を見ていると、世界幸福度ランキング上位の国々に共通点があると気づいたからである。
2022年度のランキングを見てみると、1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がアイスランドであった。フィンランドに至っては、2018年から5年連続の1位となっている。
 一体なぜ、北欧の国々の人は幸福度が高いのであろうか。上位である北欧の国々の共通点として、税金が高いことが挙げられる。世界幸福度ランキング5年連続1位のフィンランドの消費税を見てみると、通常の消費税はなんと24%、日本の2.4倍にあたる。
 ではこんなにも税金が高いのに、なぜ幸福度は高いのであろうか。答えは社会の弱者にしっかりと援助する社会制度が整っている、高福祉・高負担社会であるからである。例えば、フィンランドでは小学校から大学までの学費が無料、18歳未満の医療費無料、育児保証・失業補償が手厚い、最低保証年金(老後生活で毎月最低16万円は保証される制度)など、手厚いサービスを受けることができる。このように、誰もが受けられるべき権利について、家庭環境や経済的な影響で受けることができないということがないのである。
 さて以上のことから、ランキング54位である日本が税金を高くすると、上位になることはできるのであろうか。答えはNOである。大切なことは、国民が税金の使い道を知りその使い道に納得することである。世界幸福度ランキングという興味深いデータ、共通点はあるものの、人口、土地、言語、文化、風土、それぞれは全く違う国々なのである。
 今回、上位の共通点として挙げたのは税金の高さについてであるが、税金を高くすれば全ての国の幸福度が上がるということはない。ただ数ある解決策の中の一つとしては考えられよう。そのためにも、他国を知り、自国を知るということが一番大切なのである。
担当者:山本