2019年11月26日(火)3時限目に、本学50周年記念館4階ホールにて第10回スピーチ・コンテストが開催されました。
 本年度も、賀川ゼミでは夏期休業明けに2回生から4回生まで日本語もしくは英語でスピーチ・コンテストのゼミ内予選を行いました。そのなかでも唯一、この予選段階から際立っていた3回生の隅谷海斗君がコンテストに応募し、第1次予選を通過して本選に臨んだ結果、日本語部門で第2位となりました。
 ここに、本人がこのスピーチ・コンテストに掛けた意気込みについて書いてくれましたので、紹介させて頂きます。来年度、あの舞台に出ようと考えている皆さんの参考になれば幸いです。

スピーチコンテストを終えて…
国際コミュニケーション学部 隅谷 海斗

1、テーマについての想い

 今回のテーマ「壁を越える」は、自分の心の中にあるものと向き合わなければならなかった。自身が日頃感じている不安や恐怖が、自分の心で作り出されているということを認める必要があり、自分に起こる全てのことに、全責任を持つ考えが必要であった。これは決して大げさに言っているわけではない。生きていくうえで、主体的に生きるには、自ら考え、行動し、その責任を受け持つことが必要だからだ。この考えが根についていなければ、スピーチで話すことや、ここで記していることが嘘になってしまう。それほどの覚悟が必要なお題だと認識をしていた。自分で選択し、「生かされる」のではなく、「生きていく」ためには、どんな時も自分のうちにあるものに問題があるという事実を受け止める必要があることを日々考え続けなければ、このお題に向き合うことはできないと考えていた。

2、どのような点を重視して内容を考え、スピーチの準備を進めてきたのか

 最も大切にしていたことは、心で話すことだった。1年の頃、スピーチコンテストに参加した際、頭の中に一生懸命原稿を詰め込み、文を飛ばさないことや、噛んだり、間違えたりしないか恐怖や不安を持ちながら舞台に立った。このような考えでは、スピーチはうまくいくはずがない。結果は散々だった。その経験があり、改善しようと試みたが、どのように改善すればよいか全くわからなかった。
 そんなとき、D・カーネギーの『話し方入門』を読んだ。そこから、スピーチで大切なことは、原稿を読むことではなく、スピーチで自分が本当に何を伝えたいのかを追求し続けることだと気づかされた。そして、朝起きてから寝るまで、自分が何を伝えたいのかを追求し続けた。これが、スピーチの準備での核になった。
 準備も早い段階から開始した。なぜなら、一夜ですり込めるほど甘くないことを自覚し体験していたためであり、長い時間をかけて心にすり込む必要があったからだ。本番の11月後半に向けて、夏休みが始まる前から、スピーチが始まる前日まで、内容に磨きをかけた。原稿用紙を何十枚も書き直し、無駄なところをできる限り削る作業を行った。5分という限られた時間に収めるのが最も難しいことだということが、原稿を作っているときに身に染みて感じた。普通に話せば、3時間をゆうに超える内容だったからだ。その中から、大切なことを三つに絞り、簡潔に、わかりやすく、伝えたいことが抜け落ちていないか確認することにほとんどの時間を費やした。
 ここまでの段階を怠らなければ、最後の段階だ。それは、ひたすら練習するのみだということ。シンプルだが、この最後の作業がスピーチの良さに大きな影響を及ぼす。話すことは心に刻み込んである。この段階で重要視したのは、声のトーンや大きさ、動き、視線などだった。この部分が大切なことを知っているのと、知らないのとでは、大きな差が出る。こうして、当日の本番ぎりぎりまで、心に刻み、練習を繰り返したのである。ここで注意していたのは、テクニックはあくまで第二段階ということ。最も大切な第一段階「心で話す」がなければ、本当のスピーチを行うことはできない。

3、感想

 スピーチコンテストは最高のイベントだ。すべてを主体的に行わなければ、良いスピーチはできない。テーマにそって自分の考えを掘り下げていく作業、準備期間を自ら決める必要があること、良いスピーチを行うために必要な情報を集めるなど自分の行動力が試される良い機会であることに間違いない。それと同時に、自分の弱いところも見えやすくなった。怠惰、不安、恐怖、言い訳などの思考が頭を駆け巡ることもしばしばあった。
 大勢の前で話す機会などそうあることではない。このような機会をいただけたことに心から感謝をしている。そして、スピーチに耳を傾けてくれた人々、原稿を作るときにアドバイスをいただいた方、応援してくれた仲間に心から感謝している。
 スピーチコンテストで結果を出すのは大切だ。私にとっては結果よりも大切なことがあった。それは、挑戦し、自分の内側にある考えを真剣に見つめなおす機会だということだ。ある意味、あのスピーチは自分への誓いといってもいいくらいだ。スピーチコンテストというイベントにどのような価値を見出すかは自分次第であり、そこから得られるものも自分で決められる。このイベントに多くの人が興味を持ってもらい、勇気がある人はぜひ参加してほしい。
 最後にもう一度お伝えしたい。物事の価値を決めるのは、両親でも、友達でも、先生でも、他人でもない。自分次第だということを、自分自身に誓い、これを読んでいただいた人にもお伝えしたい。