2018.5.17

異文化交流からの自他理解:異文化人への道案内「歩くインフォメーション」活動

活動テーマ:異文化交流からの自他理解:異文化人への道案内「歩くインフォメーション」活動
産学連携先:南海電気鉄道株式会社、駐大阪韓国文化院


▶ 活動目的及び意義
 近年の訪日外国人の急激な増加という環境の変化に、誰しもがどこか歯がゆい想いをしたことがあると思われる。私たち日本人にとっては「当たり前」のことが、外国人にとっては不思議で珍しい関心事であったり、素敵なこととして興味の対象となっていたりすることが少なくない。東京オリンピックを目前にして、外国人観光客に道を尋ねられることが増え、店先に並ぶ外国人の長蛇の列がごく普通に見受けられるようになった。このような状況下で、言語の壁や価値観の違いにたびたび直面する。この現状を受け、先進国といえる「日本」に暮らす私たち一人ひとりが異文化に対応する能力をさらに養う必要性が高まってきている。
 そこで、学生である私たちは訪日外国人を対象とした道案内の活動「歩くインフォメーション」や、隣国の文化を深く知るために「韓国文化体験会」を行っている。これらの活動を通して、身近な異文化に触れることで、言語の壁や価値観の違いから生まれる偏見や不信感・戸惑いを無くし、草の根の国際交流を広げることを目指している。これらの活動が、一部の日本人が抱く外国人への違和感の払拭に繋がり、訪日外国人には日本の良さを伝えるきっかけとなることで、多文化共存の基盤となることを期待している。

活動内容

道案内ボランティア活動「歩くインフォメーション」

▶ 外国人観光客を対象とした、英語・韓国語を用いた道案内・アンケート調査
 毎月2~3回のペースで、土曜日に、南海難波駅中央改札口を拠点として「歩くインフォメーション」の道案内ボランティア活動を行った。「歩くインフォメーション」の道案内は、観光名所、近辺のホテル、近隣の駅構内など幅広い範囲の道案内を対象にした。訪日外国人を対象としたアンケート調査は、国籍・年齢・滞在日数・来日目的・訪問場所・来日して困ったことなどを調査した。

▶ 東京(浅草周辺)の外国人を対象とした意識調査
 東京(浅草寺周辺)を中心とし、訪日外国人250名に、来日目的や訪問場所、日本の印象、大阪訪問の可能性などについて調査を行った。

異文化理解と体験「韓国文化の体験会」

 駐大阪韓国文化院の協力のもと、阪南大学国際コミュニケーション学部1年生を対象に講義内で異文化体験会を実施した。韓国の伝統舞踊の披露や伝統楽器「チャング」の演奏と体験、テコンドーのパフォーマンスを実演してもらい、隣国である韓国文化への理解を促した。

▶ 課題改善とその結果
 「歩くインフォメーション」の道案内ボランティア活動は、困った外国人を助けるために始めたものであるが、私たちの善良な意識とは裏腹に、見知らぬ私たち学生に外国人観光客は「不信感」を抱いており、それをどう払拭するかという課題があった。この不信感を無くすために、まず英語でボランティア・スタッフと表記されたユニホームに韓国語と中国語表記を加え、大学名も表記したものへと改善を図った。さらに、道案内時のコミュニケーションの質を向上させるべく、笑顔の徹底化と日本文化への学習を深め、アンケート質問事項の他に、日本の文化を紹介したり、相手国の文化について尋ねたりと会話の弾む質問を行った。その結果、活動当初に比べ、平均して1カ月当たり20組から45組へと道案内対象者を伸ばすことができた。また、異文化コミュニケーション力が向上し、多様な文化比較の会話が弾み、友たちになれるなど、SNSで連絡を取り合うほどの交流関係の構築に繋がったこともあった。
 韓国文化体験会では、隣国である韓国の近年のK-POPには関心があるものの、韓国の伝統的な文化には目が向けられていないという課題があった。そこで、現代の要素を取り入れつつ伝統を身近に感じて体験できる企画を駐大阪韓国文化院に提案した。その結果、伝統武道であるテコンドーとK-POPを融合した形のパフォーマンスを披露していただき、学生たちの関心を惹きつけるとともに、韓国文化について新たな知識と教養を深め、異文化理解に貢献することができた。
 このキャリアゼミ活動を通して多様な異文化コミュニケーションを図ることで、多角的な視点を持ち、様々な状況に対応できる適応能力を身に付けられたことは大きな収穫であったと考えられる。

学生からの活動状況報告

 私たちCHOゼミ3回生は、4回生である先輩達から「歩くインフォメーション」の活動を2017年3月から引き継ぎました。異文化に直に触れること、異文化コミュニケーションを自ら能動的に発信していくこと、直接人々の役に立つことといった3つの目標を掲げ、「歩くインフォメーション」活動のさらなる発展を図りました。活動の引き継ぎ直後は、慣れない社会人の方々とのメールでのやり取りや、外国人の方々との距離感、ゼミ生同士の相互協調など、不安や戸惑いもたくさんありました。しかし、活動を重ねるにつれて、外国人の方々への積極的な声掛けや活発な異文化交流が行われ、ゼミ生一人ひとりからの提案も活発になるなど、本活動に発展的な改善が見られました。
 このような貴重な経験を通じ、異文化への視野を広げるとともに日本文化の魅力を再認識することができました。異文化であるからこそ初めて遭遇する多くの発見が私を成長させたと考えています。さらに、運営面では、与えられたものを受動的に行うのではなく、自ら行動し発信していく主体性を身につけるとともに、全体をまとめる能力や活動の方向性を示せるリーダーシップと行動力も養えました。本活動によって得られたコミュニケーション力や協調性は直接自分自身の成長に繋がっています。現在では、キャリアゼミ活動に取り組んだ経験が私の強みとなり、それが積極的な就職活動の原動力ともなっています。

国際コミュニケーション学部 2年生 石倉 果歩

参加学生一覧

3年生
池田 梨奈、小田 夏羽、角井 優、勝矢 優香、鎌田 吉美、下家 千春、小林 舞弥、下園 穂乃花、武田 博美、仲田 葵、野口 安佳里、野中 千穂、牧 未来、水田 樹菜、矢野 未菜美、若狭 美咲
2年生
有井 康陽、石倉 果歩、和泉 美咲、上原 茉里奈、宇佐美 彩夏、裏野 秋穂、上村 真里奈、河合 友紀、小関 遥奈、田中 芙実、谷畠 嵩、中本 綾香、藤澤 伶治、森谷 友哉

ゼミ集合写真

連携団体担当者からのコメント

駐大阪韓国文化院
院長 朴 英恵氏

阪南大学 国際コミュニケーション学部 異文化理解講義 について

 毎年春に、阪南大学国際コミュニケーション学部の皆様に、大阪韓国文化院および韓国の様々な文化をご紹介する「異文化理解講義」に参加させて頂けることを、大変ありがたく思いますと同時に楽しみにしております。 特に、講義を聞かれる方の多くが新入生ということで、この講義をきっかけに韓国の文化に関心を持って頂き、その後、韓国語の勉強を始めたり、韓国へ旅行に行って頂くような方が増えることを期待しております。
 昨年の講義では、これまで行ってきた伝統舞踊の公演と、伝統楽器体験に加え、初めて「テコンドー演武」を披露しました。迫力のあるパフォーマンスに、学生の皆さんからも大きな歓声と拍手を頂き、高い関心をお持ち頂けたようで、こちらとしても嬉しく思います。
 また、楽器体験につきましては、せっかく韓国の楽器に触れられるいい機会ですので、より多くの学生の方に体験していただきたいですし、これをきっかけに韓国の楽器を習い始めたり、そんな方による公演が実現すれば、素晴らしいことだと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

南海電気鉄道株式会社
プロジェクト推進室インバウンド事業部

「歩くインフォメーション」に関する活動評価レポート

 平成28年11月から南海難波駅2Fにて実施頂いております、外国人案内ボランティア「歩くインフォメーション」活動につきまして、下記の通りご報告いたします。
 平成28年11月より、貴大学のCHOゼミの皆さまに南海難波駅の改札付近において外国人のお客さまへの道案内を行って頂いております。東アジアを中心とする訪日ブームに合わせて、当社難波駅をご利用されるお客さまも増加しています。それに伴い、外国人のお客さまの滞在場所や行先も多様化しており、駅施設に設置しているマップ等の案内物では十分に対応することができないこともあります。   
 本活動では、お客さまに道順を教えるだけではなく、会話しながら目的地まで付き添っていただいております。お客さまと外国語で会話することにより、皆さまの語学力の向上に役立つことはもちろんのこと、お客さまの旅行中の不安の解消、ひいては満足度の向上にも貢献しているかと思います。今後も、語学力の向上を含めた国際コミュニケーション能力の更なる研磨を目指して、活動を継続していただくことを期待しております。

教員のコメント

国際コミュニケーション学部 曺 美庚教授

 今回のキャリアゼミ生達は、先輩達が立ち上げたチャレンジ活動のバトンを引き継いだ形で、この活動をより充実させるために日々頑張ってきた。さらなる改善のためにお互いが意見を出し合ったり、自ら異文化体験に出掛けたり、異文化理解を図ったり、外国人たちが日本の人々に求めることを調査したり、おもてなしに向いている人に関する調査を行ったりしながら、道案内インフォメーション活動や異文化交流活動を充実させる努力を重ねてきた。
 日本的なおもてなしの心を活かした道案内や日本の伝統文化の紹介のために、各自の語学力を伸ばす努力は勿論、身振り手振りの非言語コミュニケーションをも駆使し異文化コミュニケーションを図ってきた。外国人への道案内の途中で語られる彼らの多様な文化や考え方にも触れることができ、異文化への興味や関心が深まり、多様な異文化交流に参加することもあった。また、外国人が語る日本文化への思いや外国人が興味を持つ日本文化の話に耳を傾けながら、改めて日本文化のすばらしさに気づいたり、日本の伝統文化への興味が沸いたり、日常の中に染まっている日本文化に目覚めたりして、自己文化への理解が深まり、日本文化に対して誇りを感じることができたと思われる。
 東京オリンピックを目前にして、増え続ける訪日外国人を目の当たりに、道案内インフォメーション活動を通して外国人との接し方や改善すべきことについても深く考えるきっかけとなった。
 このキャリアゼミ生達が、根気よく活動を重ねる中で、自分自身を成長へと導いている様子がうかがえた。この活動の経験を活かし、さらに充実な日々を重ねることで、成長する自分史を作ることを願う次第である。