活動テーマ:国内アパレル産業のブランディング戦略
産学連携先:御幸毛織株式会社


 杉田ゼミ(3回生)は、主に国内のファッションアパレル産業において差別化がどのように実現され、その差別化がどのようにしてブランド価値に転化していくのかについて研究を行っています。
 今回連携先となった御幸毛織株式会社は国内でも最大規模の繊維産地である尾州産地と結びつきの深い企業で、海外生産比率が点数ベースで97%を超えている日本アパレル市場の中で国産にこだわり続けています。
 今回の訪問では、どのような製品差別化をどのようにして御幸毛織さんが実現し、そしてその差別化をどのようにしてブランド価値に転化させているのかについて明らかにすることが目的でした。
 それらについて明らかにした後、今回のキャリアゼミに参加した学生1人1人が、今度は自分自身がいかにして担当する製品の差別化される要素を発見し、それをいかにして消費者に伝え、ブランド価値に変えていくかについて考えていくことが課題となります。

学生活動状況報告

 今回のフィールドワークでは、三重県四日市に工場がある御幸毛織さんを訪れました。そこではオーダーメイドの紳士服を取り扱っています。メイド・イン・ジャパンの高級製品であり、高い信頼性の裏には、独自の厳しい品質基準が設けられています。品質まで一貫管理を行うことで、迅速に各セクションにフィードバックができ、製品づくりや品質向上に役立てています。
 今回、御幸毛織を訪問し、お話を聞かせて頂いてる中で気になった点がありました。それは、100年以上歴史がある中で、昔から使用している木製縮絨機を今も大切に使い、天然石鹸で毛織物を洗浄しているという点です。
 合成石鹸ではなく天然石鹸を使用するという点に御幸毛織のこだわりを感じたと同時に、木の洗濯板を使い、ゆっくり丁寧に洗浄していくという点にも目が止まりました。木を使用することで、独特の風合いの味わいが出ます。昔ながらの変わらない設備でモノづくりをしている伝統的な技術に、もっと強いこだわりを感じました。
 また、工場見学をしている際、出来上がった製品を最後は人の目で検査し、より良い製品に仕上げている工程を拝見した時、これ以上ない緊張感と集中力に包まれている空気感に圧倒されました。機械ではなく、人の手で直接触りながら綺麗にすることで、高品質の製品が出来上がるんだなと強く感じ、胸を打たれました。
 そして、御幸毛織はオーダーメイドという関係上、個性的なカスタマイズが求められます。一人一人のお客様ニーズに応えられる技術、品質など、ジャパンクオリティをベースとし、安心と信頼のある一着を提供するために、日々追究されていることを、今回のフィールドワークを通して肌で感じることができました。

流通学部 橋田 瑞

参加学生一覧

五戸 一葉、庄司 もも、田中 海斗、田羅鋤 和弘、長沼 慶也、橋田 瑞、前田 みずき

ゼミ集合写真

連携団体担当者からのコメント

御幸毛織株式会社
四日市工場製造部長 中川 雅規 様

 国内でモノづくりを継続していくには、非常に厳しい時代に入ってきておりますが、杉田先生のおっしゃる通り、他国には真似できない、特徴のあるものを丁寧に作っていくことが重要で、そのようなモノを作り続けて発信することで、当社が目標とするブランド化が実現できるのではないかと、今回の件で、改めて気づかされた思いで感謝しております。
 これからも何かございましたら、遠慮なくご連絡ください。よろしくお願いいたします。

教員のコメント

流通学部 杉田 宗聴 教授

 日本は第二次世界大戦での敗戦後、長い時間を掛けて現在の高い生活水準を獲得してきました。それには1人あたりの国民所得、すなわち賃金の上昇が必要不可欠となるのですが、反面そのために繊維産業(アパレル産業)のような労務比率が高い産業の競争力は大きく後退することになりました。
 アパレル産業の競争力を取り戻すために賃金水準を下げるという選択肢は非常に馬鹿げたものであり、日本は「高くても、それ以上に付加価値の高い製品をつくって売る」ビジネスに取り組む必要に迫られています。
 これはすなわち、他では真似のできない差別化をものづくりの段階で実現した上で、それを広く深く消費者に伝えるブランディングを行うことに他なりません。
 今回の御幸毛織さんと連携したキャリアゼミでは、同社の100年にわたる歴史を通じてどのような差別化をどのようにして作り出し、それをどのようにしてブランド価値に結びつけていったのかについて学ぶことができました。
 また、今後も同社が生き残っていくためにはまだまださらなる差別化とブランディング活動が必要であることもまた教えていただきました。学生達も、自分たちが就職した後、様々な業界、様々な職種の立場に分かれてもやはり自分の属する企業が同じ課題に直面していることに気がつくと思います。その時に、今回御幸毛織さんとの取り組みで学んだことはきっと活かすことができるはずです。