歴史のある町 「空堀」を歩く

 11月11日に新谷ゼミは流通学部の井上ゼミと合同で空堀地区散策を行いました。空堀地区は大阪城の南に位置し、空襲による被害を受けていない場所のため、古い建物が残っている場所となっています。空堀地区は、歴史を感じる街であり、「がんばる商店街」でもあり、『プリンセス・トヨトミ』のロケ地にもなっている街ということで、たくさんの見所があります。ゼミでは小説『プリンセス・トヨトミ』の挿絵の場所を探すこと、長屋再生プロジェクトの萌・練・惣を探すことなどいくつかの課題を与えました。ゼミ生の皆さんにレポートをしてもらいます。

※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

空堀の歴史について調べました  流通学部2回生 松田莉奈

 私たち新谷ゼミは空堀地区を散策しました。
 私の家は空堀商店街の近くにありますが、機会がなかったこともあって、空堀に来たのは今回が初めてです。近くにありながら知らないことが多いので、今回はこの場所の歴史について調べてみました。
 まず、空堀という地名のこと。空堀という名前は、大坂城の堀の名前に由来するそうです。この場所は大坂城の三の丸の外堀である南惣構堀(みなみそうがまえぼり)があったところだそうです。南惣構堀は水のない空の堀であったことから空堀という名前になったとのことです。
 現在の地図を見ると大坂城からかなり離れているのに、こんなところにも堀があったのかと驚きます。この南惣構堀は強力な堀で、大坂冬の陣で大坂城を取り囲んだ徳川軍が、この空堀を突破することができなかったそうです。その後の和議によって空堀は埋められ、大坂夏の陣がおきるのでした。
 時は流れ、昭和の話。太平洋戦争の末期である1945年には、大阪大空襲によって、大阪市内の多くの場所が被害を受け、焼け野原になってしまいましたが、この空堀地区は幸運にも被害を免れたそうです。そのため、空堀地区には、江戸時代から戦前にかけての町屋や長屋などの古い建物が多く残っているとのことです。
 このような古い建物を再生して複合施設として活用している事例を実際に見てみることが今回の私たちの目的で、それが空堀の魅力となっていることを確かめようということでした。私たちは、長屋再生施設「萌」「練」「惣」や空堀商店街を散策しました。
 空堀商店街を歩いてまず思ったことは、坂道になっているということでした。松屋町筋から入って商店街を見ると向こうが見えないくらいの上り坂になっています。空堀商店街は上町台地の上、上町筋から松屋町筋まで東西800メートルにわたって横切っているので坂道がある珍しい商店街となっています。
 商店街は普通に坂道になっているだけですが、空堀商店街の周辺は土地がでこぼこしていると感じました。階段になっているところも多くて、自転車では移動が大変そうです。空堀周辺のでこぼこした土地にも歴史が関係しているようです。江戸時代には瓦を作るための土をこのあたりで採っていたとのこと。土を採られて大きくえぐられた地形が今も残っていて、階段や坂道が多い場所となったそうです。
 今回の訪問によって新しい発見がいくつかありました。とてもおいしいチョコレートのカフェも大きな発見の一つです。せっかく家の近所にあるので、また友達を誘って行きたいと思いました。

からほり再生複合施設 萌・練・惣 流通学部2回生 小原千波

 空堀地区を有名にしたものは、古い長屋や御屋敷を複合ショップとして再生する事業である「萌(ほう)」「練(れん)」「惣(そう)」です。これらの建物の再生を行ったのが、からほり倶楽部という組織だそうです。
 長屋を再生した複合ショップの「惣」は2002年に開業しました。もともとの建物は二軒長屋(細長い二軒の家が壁を共有してくっついている建物のこと)で、築90年を超えているため、雨漏りなどがひどく取壊す予定だったそうです。からほり倶楽部がこの長屋を修理してテナントを呼ぶという企画が受け入れられ、現在はカフェや雑貨屋などが入居するおしゃれなお店となっています。
 「練」は元々ある宮家の別荘として神戸の舞子に建てられた御屋敷が、大正末期に現在の場所に移築されたものだそうです。ここも解体する計画がでてきたところ、からほり倶楽部の提案により、2003年に複合ショップとしてオープンしました。現在、ここにはカフェなどがあります。
 複合文化施設「萌」は、地域住民が空堀の歴史や文化を共有できる拠点となる文化施設として長屋を再生したものです。ここには、他の施設と違って、雑貨屋などのショップだけでなく、直木三十五記念館があります。地元出身の作家で、直木賞にもその名を残す直木三十五の作品や写真、資料が展示されています。
 私たちが特に気に入ったのは、「練」です。「萌」と「惣」は長屋を再生したものなので、普通の家くらいの大きさでしたが、「練」は元々大きな御屋敷を改装した場所というだけあって、他の2つより入りやすい施設だと思いました。たくさんのお店が入居していて、中庭があり、気軽に立ち寄りたくなる雰囲気が感じられました。
 さらに、ここには、チョコレート専門店の「エクチュア」がカフェも営業しています。昔は心斎橋にお店があったそうですが、「練」の開業に合わせて移転してきたようです。御屋敷の蔵の部分をお店に改装していて、いい雰囲気となっています。
 最初、空堀商店街に行くことが決まった時は、あまり楽しみにしていませんでした。みんなで商店街に行くことへの目的が分かりませんでした。でも実際行ってみたら、集まりは悪かったものの少人数で盛り上がれました。この日は風も強く寒かったので、ホットチョコレートを飲んで、情緒溢れる空間でゆっくり温まることができました。ゼミの友達とも今までより仲良くなれたし、ドリンクもケーキもおいしかったので、プライベートでも利用したいです。

『プリンセス・トヨトミ』のロケ地をまわる  流通学部2回生 加藤 美津希

 新谷ゼミでの空堀地区訪問の目的のひとつが『プリンセス・トヨトミ』の舞台を見ることでした。『プリンセス・トヨトミ』というのは、万城目学の小説です。『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』に続く関西三部作のひとつで、第141回の直木賞の候補にもなりました。また、映画化もされています。
 事前学習の一環として、映画『プリンセス・トヨトミ』を見ました。授業時間の都合もあって全部ではなく、大阪でロケをしている場面を中心に見ただけでした。ゼミの時間では物語のクライマックスくらいで授業終了時刻となったので、続きが気になってしかたがなく、後で借りて見ることにしました。
 この作品の主な舞台は空堀商店街です。小説の挿絵として、榎木大明神、「はいからほり」のアーケードなど空堀界隈が描かれています。私たちにはこれらの挿絵に描かれている場所を探して写真を撮るというミッションが与えられました。
 榎木大明神は目の前に工事用車両が駐車していて、正面からの写真を撮ることはできませんでした。はいからほりのアーケードはほぼ同じような写真が撮れたのではないかと思います。お好み焼き屋の「太閤」は実在する「匠」というお店がモデルとなっているということで、そちらにも行って写真だけ撮ってきました。そのほか、映画のロケ地となった場所を散策しました。
 映画『プリンセス・トヨトミ』のロケ地は空堀地区や大阪城、大阪府庁だけでなく、大阪市内の有名な場所が出てきます。梅田の歩道橋、南海難波駅、なんばグランド花月、新世界など。特に大阪全停止の場面では、自動車がまったく走っていない道路、誰もいない駅など撮影が難しそうな場面もたくさんありました。これは撮影に協力的だからできたのでしょうか。
 大阪には「大阪フィルム・カウンシル」という組織があります。大阪市、大阪府、大阪商工会議所などが設立した日本初のフィルムコミッションで、映画の撮影協力やロケ誘致活動を行っています。これに『プリンセス・トヨトミ』以外にも、『ホームレス中学生』や『ボックス』などの映画やドラマがこの組織を利用しているとのことです。機会があれば、他の大阪を舞台にした映画を見ようと思います。
 私は、空堀商店街を映画で見て初めて知りました。地元にある商店街と比べてみると地元の商店街は、衣類の店が多く若い人がたくさんいて買い物がメインの商店街でした。しかし、空堀商店街は昔ながらの独特な雰囲気を感じ静かで穏やかなところで食がメインの商店街のように感じました。商店街によっては、雰囲気やお店の感じがまったく違うので他の商店街を見て回ってみたいなと思いました。

空堀商店街の魅力を探る  流通学部2回生 藤田香墨

 私たちが訪れた空堀商店街は、新・がんばる商店街77選に選定されている商店街です。がんばる商店街77選というのは、2009年に中小企業庁が発表した77ヶ所のがんばっている商店街のこと。2006年に発表されたがんばる商店街77選に続くものとなっています。
 大型ショッピングセンターの台頭による郊外へ買い物客の流出などによって、駅前の商店街はシャッター通りと呼ばれる商店街が増えました。ただ、すべての商店街がだめになっているかというとそうではなく、がんばっている商店街もたくさんあります。そこで、特色のある取り組みを行っている商店街を、がんばる商店街として77の商店街を選び、それを参考として他の商店街にも参考としてがんばってもらいたいと発表したそうです。
 空堀商店街は、新・がんばる商店街77選に選ばれているだけあり、たくさんのジャンルのお店があり人通りも多く、にぎわっていました。八百屋のおばあちゃんがたまねぎの皮をむきながらお客さんと思われる人と大きな声で、元気よく話しをしているところをみかけました。楽しそうに話をしているおばあちゃんたちをみて、私はなんだかほほえましくなり心が温かくなり、商店街には、大型ショッピングセンターよりも人の身近な存在であって心がほっこりする温かな場所だと、空堀商店街を探索して感じました。
 また空堀商店街の界隈には、空襲の被害が少なかったことから昔の建物が多く残っています。特に古い長屋が多く残っていてその長屋を複合ショップとして再生する事業が「萌(ほう)」「練(れん)」「惣(そう)」です。私はこの3つの中でも特に気になったのが「萌」です。複合文化施設であり地域住民が空堀の歴史や文化を共有できる拠点となる文化施設として長屋を再生したものです。雑貨屋などのショップがあり、空堀にきたら、ぜひふらっと立ち寄りたくなるおしゃれで素敵な雰囲気の施設でした。
 また「萌」には、直木三十五記念館があります。直木三十五というのは大阪生まれの作家で、小説の直木賞の名前の由来となった人です。この記念館は黒い部屋ですが、直木三十五が自分で設計した家の内壁が黒一色だったことからだそうです。
 空堀商店街、その周辺を歩いていると「ここ何のお店だろう?」と興味のわく個性のあるお店が沢山あり、さらに近代的な心斎橋や梅田あたりとは違いのんびりと過ごせる歴史のある町です。活気のある空堀商店街も、商店街周辺の施設にもまたぜひ行きたいです。また、大阪ではほかに、天神橋筋商店街や粉浜商店街、千日前道具屋筋商店街などが選定されていますが、機会があれば他の商店街も見に行きたいと思いました。

上町台地とその周辺の坂道 流通学部2回生 益田若奈

 今回わたしたち新谷ゼミが訪れたのは、大阪市中央区にある空堀商店街です。
 第二次世界大戦では大阪の多くの地域が空襲で被害を受けたのですが、空堀は戦災を免れました。そのため、歴史的価値の高い建物や町の風景などが現在でも多く残されています。建替えも進んで町の風景が大きく変わっていっていますが、その一方で古い町並みや建物を活かそうという動きもあります。わたしたちは、古い建物を改造してつくられた萌と練と惣という3つの建物などを見てまわりました。
 また、わたしたちは空堀商店街も通りましたが、この商店街全体が坂道となっており、わたしはそこに注目しました。大阪には大阪平野が広がっているので、全体的に平坦で坂のない都市という印象がありましたが、実際に空堀商店街を歩いてみると坂道が多く、その印象ががらりと変わりました。
 大阪市の中心部には上町台地があります。縄文時代のころ、温暖化の影響もあって海面が現代よりも高く、大阪はほとんど海だったそうです。大阪は上町台地だけが半島のように突き出ていたといわれています。その後、堆積によって大阪平野ができたようです。大阪の他の場所は坂が少ないけれど、上町台地のあたりには坂が多いということがわかりました。
 上町台地は、北は大阪城付近から南は住吉大社付近まで、南北に伸びています。商店街全体が坂道になっていますが、これは商店街が上町台地を横切るように東西に伸びていて、上町台地の地形がそのまま商店街の地形になっているのです。松屋町筋側から商店街を見ると向こう側が見えないくらいの坂道になっていて、上町筋付近が上町台地の頂上になることがよく分かります。実際に歩くと、とても歩きづらいという印象でした。商店街だけでなく商店街周辺の住宅街も坂道でした。坂道の途中でもカフェ、レストラン、八百屋など、様々な店舗があり、とても賑わいのある街だという印象があります。
 さらに、上町台地の他の坂についても調べてみました。空堀から少し南になりますが、上町台地の西端に沿って坂道がいくつもあって、その中でも歴史的な価値が高い七本の坂は「天王寺七坂」と呼ばれています。「真言坂(しんごんざか)」「源聖寺坂(げんしょうじざか)」「口縄坂(くちなわざか)」「愛染坂(あいぜんざか)」「清水坂(きよみずざか)」「天神坂(てんじんざか)」「逢坂(おうさか)」の七本の坂です。それぞれの坂道には由緒正しい由来があり、周りにお寺も多く、現在でも歴史的な風情を残しているところが多いとのことです。次は歩きやすい靴を履いて、これらの坂をすべて歩いてみようと思いました。