近年、英国やカナダ、オーストラリア、米国では競技スポーツと生涯スポーツを融合させた若い競技者育成モデルの開発と普及啓発に力を入れてきました。このモデルの中では、競技者の身体的および精神的(知的)な成長を促すために年齢や発育発達段階に合わせていくつかのステージが用意されています。最終的にはこれらのステージを通して、より高いレベルの競技会を目指す競技者も、そうでない競技者も生涯にわたってスポーツを楽しむ活力に満ちたライフスタイルを形成することが共通のゴールとして設定されています。しかしながら、わが国ではこのような考え方の重要性について十分な議論がなされていません。
 そこで本キャリアゼミでは、諸外国で開発された競技スポーツと生涯スポーツを融合させたモデルを基に、松原市民や阪南大生を対象として年齢や発育発達段階に合わせた多様な「するスポーツ」への参与機会を創出することを目的とします。特に、幼児の「生涯を通じて運動・スポーツを楽しむための身体的・心理的な素養」すなわちフィジカルリテラシーの向上を重要課題とします。

学生活動状況報告

 2022年4月から約1年間、早乙女ゼミでは松原市の子どもたち中心に、様々な人たちに運動する機会を提供する活動に取り組んできました。まず、昨年に続いて「のびのびあそびフェスティバル(2022年11月開催)」を開催し、子どもと保護者を合わせて約300名が来場してくださいました。本年度は、阪南大学の人工芝のグラウンド1面とGYCホール(体育館)を利用し、自転車教室や自由遊び、トランポリンや室内球技など様々な遊びを体験してもらうことができました。運営スタッフ約30名と子どもたちが一緒に元気に遊ぶ姿が印象的でした。
12月には、松原人権交流センターで「クリスマスイベント」も開催することができました。小学校低学年約20名と高学年10名、それぞれの年代に合わせてクリスマスに関係した体を使う遊びを中心に考え、運営に関わった学生と共に楽しい時間を過ごしてもらうことができました。
 また、今年度の最大規模のイベントとなる冬季学術集会(2023年2月開催)を阪南大学で開催しました。それに伴い、松原青年会議所の方に協力して頂き、「大阪まつばら名物かも焼き」を考案し、お昼休みにお披露目会も行うことができました。このかも焼きは、松原の名物を作成するために河内鴨で有名なツムラ本店さんに協賛して頂き、青年会議所のメンバーと我々阪南大生が協力して完成させることができました。これから、かも焼きをより良いものにするために試行錯誤を繰り返しつつ、普及活動にも取り組んでいきたいです。
 他にも「はーとビューバスケ」と呼ばれる小学生向けのバスケットボール教室や、大学の夏休みを利用した「まつばら阪南サマーキャンプ」も開催しました。小学生と一緒に夏休みの宿題やカードゲームをしたり、バスケや野球あそび、ラケットスポーツなどの楽しさを伝えることができました。また、南海電鉄の新規事業である「カムバス(カムバックバスケットボール」にアンバサダーとして関わり、社会人の方ともバスケを通して交流するという貴重な経験ができました。
 来年度も、私たち学生が中心となり、子どもたちが楽しく遊びながら運動に必要な動きや体力を身に付けられる機会を提供していきたいです。そして、子どもだけでなく、松原市の人ともたくさん関わり、色々な世代の方とも交流していきたいです。
流通学部 武内 映璃

ゼミ集合写真

参加学生一覧

青山 夢唯斗、 奥田 亜美、 小澤 美和、 唐澤 仁輔、 岸田 龍平、 木下 佳奈、 小竹 葉月、 佐伯 桃香、 武内 映璃、 立神 怜央、 田中 智也、 田中 理穂、 土持 智沙、 西崎 日毬、 西田 快誠、 藤井 颯大、 古谷 海星、 宮武 宏次、 村上 瑠夏

連携先コメント

松原市人権交流センター(はーとビュー)
花谷 高昭 主幹

 2022年度も新型コロナウイルスの感染状況が予想できないなか、当センターの事業(わくわくクラブ・はーとビュークラブ)を阪南大学スポーツマネジメント部の早乙女先生と相談しながらすすめてきました。この事業は、普段あまり触れることのないスポーツ・文化体験を通して、子どもたちに様々なことに興味を持って取り組んでもらうということを目的としています。
 土曜日に実施している「わくわくクラブ」では、バスケットボール教室を行いました。基本的な練習からゲームまでメニューを考えていただき、実施しました。点数にこだわるのではなく、バスケットボール自体を楽しみ、チームで声を掛け合う姿が見られました。このバスケットボール教室は前期・後期合わせて年間16回しかありませんが、参加した児童が教室以外の時間でも松原市人権交流センター(はーとビュー)のバスケットコートを利用しにやってくるようになっています。バスケットボールが好きになって中学校に進学してからもバスケ部を選ぶ人もおり、何年もバスケットコートを利用する人も増えています。
 日曜・祝日のはーとビュークラブでは、4回連続のダンス教室を年3回実施しました。リピーターが多く、安定した申し込みがあります。「水遊び」や「クリスマスタイム」は学生が中心となって企画・進行しているので、今後も大学の先生とは学生にとっても参加する児童にとっても有意義な時間となるように連携を続けていきたいと思います。
 来年度も引き続き反響があり、リピーターの増えてきているイベントは継続しながらすすめていければと思っています。今後も学生のアイデアや視点を取り入れ、より参加者にとって魅力的なイベントを企画していくことができるのではないかと思っています。子どもたちの笑顔ために、一緒にすすめていきたいと思っています。

教員コメント

流通学部 流通学科
早乙女 誉 教授

 今年度は、3年ぶりにコロナウイルスによる行動制限がほとんどない中で活動でき、ここ10年間で最も多くの企画を実現しました。特に、感染症が広まり始めた2020年に入学した現在の3年生は、溜めていたエネルギーを一気に放出したかのように大車輪の活躍を見せてくれました。
 2022年11月に開催したまつばら阪南のびのびあそびフェスティバルには、約250名の子どもと保護者らが参加し、約40名の学生スタッフが来場者に色々な運動あそびを楽しむ機会を提供してくれました。2023年2月に本学で開催した日本スポーツ産業学会主催の冬季学術集会では、中学生向けのサッカー教室や社会人向けのバスケットボール教室、大阪まつばら名物かも焼きのお披露目会なども同時に運営し、ここでも約30名の学生スタッフが来場者をもてなしました。
 今年度から導入したモルックは、年齢に関係なく子どもから高齢者までが一緒になって楽しめることもあって、松原市や八尾市から依頼を受けて学外でも複数回イベントを企画・運営しました。モルック未経験の学生がいちからルールやコツを学び、それを他者に伝える方法や効率よく体験会や試合を運営する策を練り上げた過程は大変見事でした。
 このような企画を準備し、実施した後には必ず振り返りをする機会を設けました。その中には、研究発表の形にまとめて2022年12月に流通学部で実施したゼミ大会で発表し、高評価を得た取り組みもあります。まさに、本ゼミが重要視しているPDCAサイクルの好例です。加えて、本年度のもう1つの大きな成果は、先輩学生による後輩の育成です。コロナ禍で途絶えかけていたイベントの企画・運営のノウハウを4年生が3年生に伝えて、その3年生が実際に行動に移しました。その後は、3年生が1, 2年生をサポートしながら新たなイベントを開催するサイクルが機能しました。これについては、本ゼミの専門であるコーチングが身についてきたのだろうと評価しています。
 来年度も、阪南大生や教職員、松原市民らにスポーツをする・みる機会を提供しながら、学生が自分で自分を成長させる力(セルフコーチング)と他者の成長を手伝う力(コーチング)を伸ばしていってもらいたいと考えています。