政治や経済などの東京一極集中が続く中、2018年に東京圏への転入超過が約14万人となった。特に、高校卒業後に東京に進学する若者が多く、全国の大学生の約3割が東京にある大学に通っている。このような動きに歯止めをかけるために、政府は2015年から「地方創生」の名のもとに総合的な戦略に注力してきたが、未だ大きな成果を上げることができていない。
 一方、スポーツ庁、文化庁、観光庁では、スポーツや文化芸術資源の融合により、国内観光および地域の活性化を図るための取り組みを「スポーツ文化ツーリズム」として3庁が連携して魅力あるコンテンツを創生する活動を推進している。加えて、地域の人口減少や高齢化問題を解決するために総務省が主導している「地域おこし協力隊」の募集要項でもスポーツは重要なキーワードの1つとなるなど、地方創生を実現するうえでスポーツにかかる期待が年々高まってきている。
 そこで本キャリアゼミでは、関係人口の増加に力を入れている北海道夕張郡栗山町(以下、栗山町)でスポーツ文化ツアーを実践し、その結果に基づいて首都圏に住む若者が訪れたくなる町づくりについて提案することを目的とする。

学生活動状況報告

  9月に北海道栗山町で活動した先輩たちの経験や想いを引き継ぎ、3年生6名で2月13日から2泊3日で、同町でフィールドワークを行いました。今回は冬ということもありウィンタースポーツである雪板滑りを体験させて頂きました。また、実際に滑る雪板を2人1組で板から自分たちで作成する体験もさせて頂きました。ウィンタースポーツ初心者である私でも少し練習すれば、楽しく滑ることが出来ました。
この雪板製作から滑りまでを体験した後は、「雪板のワークショップを基に栗山町をもっと盛り上げるためには」という目的で栗山町の役場の方や本学の卒業生である地域おこし協力隊の北山先輩の前で3グループに分かれて発表を行いました。9月に先輩たちがまとめた地域課題を参考にしながら、実際に雪板の面白さや栗山町の良さを広めるためのツアーやイベントなどを提案しました。
今年度の9月と2月に実施した北海道栗山町でのフィールドワークでは、この町のさまざまな魅力(特に、町民の温かさ)を実感しました。特に、私たち大学生を暖かく迎えてくださったことにとても感謝しております。2023年度の夏にも今回と同じメンバーでフィールドワークを行う予定なので、栗山町の魅力をさまざまな人に知ってもらえるよう、引き続き地域おこしに協力していきたいと考えています。
流通学部 土持 智沙

ゼミ集合写真

連携先コメント

北海道栗山町
原田 恭兵 様(栗山町ブランド推進課 観光・賑わい推進グループ)

 今回のフィールドワークでは、2023年1月に本町駅前に開館したばかりの交流拠点施設の活用と、北海道の冬季資源である雪を生かしたプログラムとして、徐々に注目が高まっているウィンタースポーツ「雪板」制作及び体験モニター事業を実施しました。
「雪板」はスノーボードのように足を固定せず、ブーツで直接板に乗って雪山を滑走するスポーツです。初めてのワークショップ開催のため終始不安でしたが、学生のみなさんはハードな行程にも関わらず、電動工具を使った制作作業、雪山登山、そして滑走体験と大変意欲的に取り組んでくれました。
 終了後には改善点等についてフィードバックを行ったほか、大阪まつばら名物のかも鴨焼きを振る舞っていただき、関係者や地域住民との交流会ができたことでより一層親睦が深まり、忌憚のない意見交換や、次回訪問に向けてわくわくするようなアイディア出しをすることができました。学生さんたちの健気な姿勢や新しい視点から元気や気づきをいただきました。また次回連携できることを心待ちにしております。

教員コメント

流通学部 流通学科
早乙女 誉 教授

 3年ぶりの実施となった北海道夕張郡栗山町でのキャリアゼミ活動に、9月6名、2月6名、合わせて12名の学生が参加しました。そのメンバーを現地でサポートしてくれた卒業生の北山先輩は、じつは、このキャリアゼミがはじまった2019年7月に栗山町を訪れたメンバーの1人です。その後、北山先輩はゼミ活動とプライベートで度々同町の方々にお世話になり、教員が気づいたら地域おこし協力隊として採用されて2022年4月から栗山町で働いています。2019年から「栗山町の若者の関係人口を増やすための方策を検討する」を目的として活動してきましたが、それに関わった学生自身が関係人口ではなく実際に「人口」に加わるという稀な事例になったわけです。
 そんなユニークな先輩のキャリアに刺激を受けた4年生が、まず2022年9月に栗山町を訪れました。帰阪後、フィールドスタディを通して感じた地域の魅力を後輩たちに伝えて、そこで興味を持った3年生に2023年2月に栗山町で活動してもらいました。この「知る → 感じる → 伝える」のサイクルこそが、北山先輩らがまとめた関係人口を増やすための方策そのものです。連携先と本学との間の距離が離れているため、少人数で年2回程度しか現地に行けませんが、その分、実際に訪問した際はできるだけ密度の濃い活動をして、その魅力を次のメンバーに伝え続けることこそが、このキャリアゼミの最も重要な課題のテーマだと認識しております。
 来年度は、この2月に栗山町に行ったメンバーを中心に、夏に同町で活動し、その経験を次の学年にしっかりと伝えて、少しずつ関係人口を増やしつつ、より効果的な方策を検討していく予定です。町おこし自体が一朝一夕できるような活動ではないので、学生と共にじっくり時間をかけながら「知る → 感じる → 伝える」のサイクルを回し、学生の成長と地域の活性化につなげていきます。

参加学生一覧

木下 佳奈、小竹 葉月、武内 映璃、田中 智也、土持 智沙、宮武 宏次