活動テーマ:松原市における高齢者の介護予防を目的とした健康増進活動への取り組み
産学連携先:松原市役所高齢介護課


 2018年、総務省が日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が過去最高の28.1%となり、国内における女性の高齢者人口が初めて2000万人を超えたことを発表した。この数字から見ると、現在の日本においては「4人に1人が高齢者」ということになる。今後益々高齢者人口の増加が予想される中、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間を指す「健康寿命」に対する関心が集まっている。2018年に発表された平均寿命と健康寿命の差は男性8.84歳、女性12.35歳で、この期間は自立した生活を営むことができていないことを示している。その一番の要因が脳を含めた運動器の障害で、適切な運動を継続的に実施することが障害を防ぎ、健康寿命を延ばすことにも繋がる。また大阪府松原市は村町を除くと府内で2番目に高齢化率の高い自治体であることから(29.75%)、市民が体力・認知機能の現状を把握し、それを基に多種多様な運動教室を選択できるようなシステムを作ることは健康寿命延伸のための課題と言える。そこで本活動では松原市の介護予防教室に参加する高齢者の体力・認知機能の測定結果から、教室内容の見直しや運動の実施率を上げるための施策について検討することを目的とした。

学生活動状況報告

  今回松原市の高齢者の方を対象に体力測定を3回にわたり実施しました。男女合計62名が参加され、私は3回ともお手伝いさせていただきました。参加される方をGYCホールへ案内したのですが、皆さん自転車や徒歩で来ており、すごく元気な方が多かったことが印象に残っています。体力測定も参加者同士でいい結果を目指し切磋琢磨しながら取り組まれていました。3~4つのグループに分かれ体力測定を行ったのですが、グループ内で参加者同士が会話しながらとても楽しい雰囲気で体力測定ができました。
市役所の方への報告会では、松原市と日本の高齢者の体力を比較したデータを発表させていただきました。グラフ作りや比較した結果から何が言えるのかを伝えることが難しかったです。緊張しましたが、滅多にない貴重な経験ができました。体力測定はこれからも続いていくのでもっと効率の良い方法を探りながら、より多くの方に参加してもらえるように官学で連携していければと考えています。

流通学部 2年生 久保 実梨

参加学生一覧

牧野 大和、今井 彩華、宇田 翔、久保 実梨、小松 聖、高橋 大成、田上 佳依、辰己 稜汰、半田 萌里、堀 海斗、前田 月弥、鎗山 崇大、吉田 隆将

ゼミ集合写真

連携団体担当者からのコメント

松原市役所高齢介護課
高齢支援係 岡村 康子氏

 まつばら健康体力プロジェクトでは、健康寿命の延伸を目的に、阪南大学の黒部准教授と学生が中心となり、松原市介護予防事業「レッツ筋力トレーニング(チューブによる筋力トレーニングや自重トレーニング)」の経験者62名を対象に体力測定が行われました。その成果報告会では、全国の平均値より歩行能力や身体の機能性が優れていることがわかりました。また、社会参加の少ない人たちの状況把握が大切であり、社会とのつながりを持てるように促すことが今後の課題であると意見をいただきました。
 高齢化の進む松原市では、全国の高齢化率27%に比べ、松原市は、29.75%と年々高くなってきております。今後も産官学連携のもと、元希者の皆様が生きがいを持って社会参加ができるように、介護予防に取り組んでいきたいと思います。

教員のコメント

流通学部 黒部 一道准教授

 2018年度より官学連携活動(キャリアゼミ)の一貫として松原市役所高齢介護課と共同で健康寿命の延伸を目指したプロジェクトを開始しました。以前より高齢者向けエクササイズの作成や運動指導、体力測定のお手伝いに参加しておりましたが、単発行事として終わってしまうため参加者への継続的なサポートまではできていませんでした。個々の生活習慣と健康や体力の状態を継続的に調査することで自身の変化を数値として明確に確認することができ、松原市における健康面での課題も浮き上がってくるのではないかと考えたからです。高齢化率の高い松原市としても健康寿命を延ばすことは直近の課題でもあったことから、今回のプロジェクトに協力していただけることになりました。
 今年の方針としては松原市が主催する介護予防教室に参加した住民の中から、より詳しく体力や認知機能のデータを取得したいという希望者を大学に招いて測定を行いました。測定を手伝う学生はゼミに入りたての2年生が大半であったことから、まず初めにプロジェクトの意味や意義を理解させることからスタートしました。そこから測定方法の習熟、各測定がどのような意味を持っているのかを参加者に説明できるよう学習してもらいました。本番では教員に確認を取りながら説明や測定をする場面もありましたが、年3回実施する中で自信を持って取り組む学生が増えたように思います。次年度以降は新規に参加する方だけでなく定期測定に来られる方もいるため対応する人数も増えますが、研究室のマンパワーを使いながら多くの市民に健康に対して高い意識を持てる街づくりに貢献できればと考えています。