井上ゼミでは食品企業における製品開発とサプライチェーンマネジメント(SCM)および、マーケティング戦略について学んでいます。その一環として、2回生、3回生合同でグリコピア神戸の見学を実施しました。工場見学に参加したゼミ生のレポートを紹介します。

1.はじめに

 私はこの度、阪南大学流通学部のゼミ活動として、兵庫県にある江崎グリコ株式会社の工場見学をした。そこでは、実際にグリコの看板商品である「ポッキー」や「プリッツ」を作っている現場をこの目でみて、案内人の方からグリコの歴史や創業者である「江崎利一」の想いを知ることが出来た。

2.菓子業界においてのグリコの位置

 業界動向サーチ.comによると、2020-21年の菓子業界売上高&シェアランキングでは、江崎グリコの順位は4位であり、売上高は1,815億円となっており、上位5社(カルビー、ロッテ、森永製菓、江崎グリコ、明治HD)の中では唯一売上高を増加させている。
 このデータから読み取れることは、江崎グリコはすでに菓子業界の中では、いわゆる「大企業」と呼ばれる位置に存在し、他のライバル社が売り上げを増加させるのに手間取っている中、唯一増収していることから、今後も売上高を伸ばしていけるのではないかと考えられる。

3.SCMの変革

 江崎グリコではSCM業務を変革するプロジェクトが進められている。その中でも最も力を入れているシステムが「需要予測エンジン」である。この「需要予測エンジン」では、出荷や特売、主要コンビニエンスストアの取り扱いデータをもとに、3か月先までの売上高を予測することができ、その精度も8割を超えると言う。実際に効果も表れており、ロットアウト品(賞味期限が迫り、値下げに回される商品)の量がこのシステムを導入する前と比較して、約25%削減したとのデータも既に出されている。
 このような変革を起こしていることからも、他の菓子企業が売り上げを低迷させている中も増収することに成功している要因とも言える。

4.体験価値を与える製品開発

 企業が売れそうな製品を売る時代は終わり、現在のマーケティングでは顧客と価値を共創するような体験価値を提供する時代に突入したと大学の講義で学んだ。その考えを取り入れ、第一線で商品開発をしている企業が「江崎グリコ」である。
 例えば、「シェアハピ」は我々の記憶にも新しい体験価値である。「シェアハピ」とは「シェアハピネス」の略で、みんなでポッキーを分け合うことを通じて、周りの人と幸せをシェアするというもの。ポッキーは一箱にたくさんの本数が入っているから、家族や友達と分け合って楽しく食べるという商品の特性があり、それを昇華させて幸せを分け合うという価値にまで高めたいと考えられた。
 そのシェアハピを最も印象的にさせるために「三代目J soul Brothers」をキャストとして起用した。狙いは、彼らが楽しく音楽に合わせて踊り、シェアハピポーズをするのを見て、見ている我々もそのポーズをやってみたくなる、そんな価値体験を提供することであった。

5.まとめ

 私はこのグリコピア神戸への見学及び、資料を通して多くの事を学んだ。グリコは1919年に誕生してから今まで、菓子業界の最前線を走っており、業界内でも常に売上額は上位5社以内に位置をキープさせている。それは度重なるイノベーションや製品開発の努力によってなし得たものである。
 これからの時代、マーケティングはグッズドミナントロジックの考えから、サービスドミナントロジックの考えへシフトしなければならないということは理解していたが、実際にどのようなことが行われているのかがグリコの工場見学を通して理解することができたため、これから就職活動に活用していけたらと考える。