産学連携先:髙橋金襴織物 

 西陣織は、京都の西陣で作られる高級絹織物で、日本を代表する伝統工芸品の一つとして知られる。伝統工芸品というと、ファッションとは縁遠いものとしてとらえられがちだが、「ファッション」が装いの流行のことであるなら、西陣織にも当然ファッションはあり、洋服とはまた違ったビジネスが展開されている。

2021年度の安城ゼミ専門演習では、キャリアゼミ活動の一環として、西陣織の伝統工芸品としての側面ではなく、ビジネスとしての側面に注目し、その現状と今後の課題について理解を深めるべく以下のような活動を行った。

2021年11月 事前学習として、①西陣織とはどういうものか ②西陣織の歴史 ③ビジネスとしての西陣織の現状 をグループごとに調べ発表する
2021年12月7日 京都西陣の「手織ミュージアム織成館」見学会
2021年12月21日 法衣専門の西陣織職人である髙橋佑季氏ご講演(質疑応答)
2022年1月 髙橋さんのご講演を踏まえて「西陣織の未来」をテーマにディスカッション→髙橋さんからコメントをいただく

なお、この活動は、本来であれば2020年度に実施する予定だったが、コロナ禍のために延期を余儀なくされ、今年度後期になってようやく実現することができたものである。

学生活動状況報告

 今回、西陣織職人の髙橋佑季さんのお話をうかがうことで、自分たちで本や記事を調べるだけでは知りえなかった西陣織の現状を知ることができました。事前学習の中で、西陣織は職人の高齢化が大変深刻な問題になっていることを知り、若手の職人を育成するための支援を行うことで解決できるのではないかと考えていましたが、髙橋さんのお話から、分業で行っている工程の一つ一つを担う職人の数が少なくなっているため技術の継承が難しいことを知り、そう簡単に解決できない問題だということがわかりました。一枚の西陣織の生地を仕上げるまでには多くの時間がかかり、時給に換算すると非常に低賃金だということ、そして、それも簡単に解決できる問題ではないということをうかがい、それでも、西陣織を未来に伝えていく方法がないかと考えさせられました。
なかなか直接触れる機会のない西陣織の袈裟を見せていただきましたが、非常に繊細で美しいものだったので、日本の伝統工芸品の一つとして生き残っていってほしいと思います。
流通学部 走川 明

ゼミ集合写真

参加学生一覧

馬詰 怜那、佐竹 捺美、姫野 光太郎、金尾 玲、木村 涼太郎、坂上 拓真、菅根 野愛、垂口 蒼太、寺岡 晴哉、松平 凱斗、南野 嶺、宮武 美怜、山本 翔、伊藤 大志、森本 祐生、新井 梨紗、荒川 一斗、大石 季実、大倉 竜也、大谷 新太、大西 歩花、大西 隆斗、谷川 瑞季、中塚 拓、奈良 優杏、仁井田 永遠、走川 明、御堂 彰乃、森 郁登、槇野 光平、臼井 奏太、片芝 心優、川西 愛美、清澄 亜依理、黒川 勇輝、黒木 文太朗、光嶋 ナツ、清水 七海、清水 伶恩、高橋 郁裕、徳田 汐音、豊里 美友、YANG BINGQI、吉川 ほのか、米原 紀乃

連携団体担当者からのコメント

髙橋金襴織物 髙橋 佑季 様

今回これから社会に出る大学生さんに西陣織の職人として、西陣業界のありのままの現状と、これから就職される皆様に1人の社会人としてお話させていただきました。

率直な感想はすごく真っ直ぐな目で私の話を聞いてくれていて真面目でピュアだなと思い、私自身忘れかけていた皆様の初々しい姿を見て初心という物を思い出すいい機会になりました。

社会や仕事というモノは綺麗事だけでは済まない事。
今は漠然と勉強しろ!と言われても何をすれば良いのわからない事が当たり前ですが、これから良くも悪くも社会の壁に当たり、学んで行く過程で私の講義の一部分でも思い出す機会があれば嬉しいです。

人より目立つ事を恥ずかしいと思ってしまう日本人ですが社会に出て他人と差をつけたい、
個の力を身に付けたいと思い努力する事を忘れずにこれから先頑張っていって欲しいと思います。

教員のコメント

流通学部 安城 寿子 准教授

伝統工芸品について美しい言葉で語ったものは多いが、そのビジネスが「実際のところどうであるか」はなかなか知る機会がない。事前学習を通じて、ゼミ生は、西陣織職人の高齢化や後継者不足について調べ、問題の解決のために何が可能であるか意見を出し合っていた。しかし、髙橋さんのご講演では、たとえば西陣織の袈裟に施される特別な刺繍の技術者は現状たった一人のお婆さんだけで誰にも継承されていないというようなお話があり、時給換算した際の賃金が低いという問題も考え合わせると、後継者育成がそう簡単ではないということを知る貴重な機会となった。一方で、髙橋さんはSNSで積極的に情報発信を行うことでビジネスの可能性を広げておられることから、ゼミ生にとって、西陣織業界の抱える様々な問題の一括解決は難しくとも、新しいツールを活用した困難の克服の実例として学ぶところが大きかったようである。貴重なお話を聞かせてくださった髙橋さんにこの場を借りて心より御礼を申し上げたい。