活動の目的及び取り組む課題

日本の安全保障政策のなかに組み込まれた沖縄は、米軍基地との関係で国際法上も他の地域とは異なる地位に置かれ、その「まちづくり」も政府主導の「沖縄の本土化」路線による沖縄優遇政策が展開されてきた。一方的に負担と優遇を押しつけられる沖縄の側からは、それに対する抵抗と従属が繰り返され、政治学的、経済学的、社会学的に一貫した将来のまちづくりに関する展望が見いだせない。このゼミでは、日本の安全保障政策に組み込まれた沖縄の歴史と現状について総括し、政府主導の沖縄のまちづくりのあり方を再検討し、その上で、沖縄のあるべきまちづくりと開発について検討することを目的とする。
 また、キャリアゼミとしては、地域開発やまちづくりについての基礎的知識を身につけ、NPO法人と連携することで社会のなかでNPOのような公的機関や営利企業とも異なる第三の存在が果たす役割やその仕事について学ぶことも目的としている。

活動内容

このゼミでは、国家レベルの政府による安全保障政策や開発政策という政治学的視点、国内の地域開発についての経済学的視点、地域的コミュニティ形成や「まちづくり」についての社会学的視点の3つの視点から、沖縄のまちづくりについて検討していく。その際、現地である沖縄の若者の声を反映させるべく、沖縄国際大学の比屋定ゼミと共同研究を行う。さらに、地域的コミュニティ形成やまちづくりについて地方公共団体と協同活動しているNPO法人である「とよたエコ人プロジェクト」の役員であり、沖縄のまちづくりについて長く調査研究をしている谷口功氏の指導の下、現地調査を行う。最終的には、沖縄のあるべきまちづくりについてのゼミ提案をNPOの立場から評価していただく。

【中間報告】代表学生から活動状況

 私たち、国際コミュニケーション学部井上ゼミは、「沖縄のまちづくり」をテーマに、沖縄の経済開発などについて研究している。沖縄を取り上げるのは、日本のその他の地域と違い、そこには基地問題など、日本の安全保障に関わる制約があるからである。国際政治経済のゼミとして、単に経済開発だけでなく、安全保障などを含めた多様な視点から沖縄のまちづくりについて考察している。
夏休みには、実際に沖縄で現地調査を行った。沖縄では、まず連携先である沖縄国際大学比屋定ゼミの皆さんと合同ゼミを行った。そこで、沖縄の若者の視点から、沖縄の開発などについて意見を伺うことができた。さらに、目に見える開発への制約である基地についても、沖縄国際大学に隣接する普天間基地を大学の屋上から見せていただけた。また、2004年に大学構内に米軍ヘリが墜落した現場なども見学させていただいた。今現在、辺野古沖への移設に揺れる沖縄基地問題の最前線にある普天間基地を見せていただけて、遠く大阪に暮らす自分たちにも初めて基地のことについて実感を持つことができた。
 その後は、各自がそれぞれのテーマにしたがって、沖縄経済の主要産業である観光や流通、それに農業などについて調査を行った。それらについては、もうひとつの連携先である「NPO法人とよたエコプロジェクト」の谷口先生のご指導もいただいて、さらに研究をすすめ、最終報告として報告するつもりである。

国際コミュニケーション学部3年生 ゼミ学生一同

参加学生一覧

加藤 優奈、萩原 美麗、氷海 世奈、平野 真由、福角 太智、堀之内 つばさ、山森 美咲

連携団体担当者からのコメント

沖縄国際大学比屋定ゼミ 比屋定 泰治氏

 今回、阪南大学国際コミュニケーション学部の井上ゼミと私たち沖縄国際大学法学部比屋定ゼミで合同ゼミを実施いたしました。
井上ゼミの皆さんは、大阪にいて、沖縄に関心を持ち、沖縄のことをとても深く勉強しているという印象を持ちました。また、大学の屋上を開放して、普天間基地を見ていただきました。いかに沖縄の人たちの生活の近くに、あるいは大学生としての学生生活の近くにそれがあるのか実感していただけたと思います。そうして、沖縄の人だけでなく、大阪の学生の皆さんが沖縄の基地をまず実感していただくことが、沖縄の基地問題の今後を日本全体で考えていく機会になっていくと思います。
今後の沖縄のまちづくりの研究の発展を期待いたします。

活動日程

前年度の後期の基礎ゼミで、すでに日本の安全保障政策に組み込まれた沖縄の歴史や現状について政治学的な予備的学習を済ましている。
前期授業期間:前年度の知識を前提に、より具体的な現在の沖縄のまちづくりについて、経済的、社会的な内容の学習をすすめる。
夏休み:沖縄において現地調査を実施する。
後期授業期間:現地調査や共同研究の結果をさらに精査し、沖縄のまちづくりについて提案・報告(年末)する。

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