私たち大谷ゼミは観光マーケティングをテーマとしてさまざまな活動を展開しています。マーケティングの定義にはさまざまな考え方がありますが、私たちはそれを「お客様に選んでいただく工夫」と考え、協働先にそれを提案する活動を行っています。このキャリアゼミではフェリー事業者2社にご協力いただき、フェリー利用者を増やすための取り組みを行いました。
 具体的な活動は、株式会社フェリーさんふらわあ(関西・九州間3航路を運航)と株式会社サンスターライン(大阪・釜山航路を運航するフェリー事業者(韓国)の日本法人)のフェリーに実際に乗船する取材を行い、プロモーションにつながる素材の収集とネットでの情報発信の実験を重ね、その成果をふまえて利用者増大につながる提案を考え提案するというものでした。活動にあたり1.フェリー認知度の向上、2.フェリー利用客の増大、3.就航先の観光活性化の3つの目標を定めました。そして、何度も現場に足を運ぶことと、自分たちの目線を生かすことを重視して活動を行いました。

 活動の開始にあたり、協働先が課題として考えていること、私たちに求めていること、私たちがお力になれることを探るために協働先と合同での会議を行いました。そのなかで私たちは協働先が「より多くの人にフェリーや就航先に関心を持たせたい」という課題をお持ちであるととらえ、私たちならではの特色あるコンテンツでネットだけでなく紙媒体を用いて情報発信を行う活動を展開することにしました。紙媒体に注目したのは、実際に乗船を重ねている際に船内に置かれているパンフレット類を手にする乗客が多いのを目の当たりにしたことに加え、韓国観光公社(政府観光局)大阪支社から活動へのアドバイスをいただいた際に、世界各国の市場では情報発信ツールが紙媒体からネットへ移行したのに対し、日本市場は紙媒体での情報発信が強い力を持ち続けているのが特徴だとお教えいただいたことが理由です。そこで私たちはリーフレットを制作することにしました。船内や現地での過ごし方を具体的に表現することで人々にイメージが伝わりづらいフェリーの魅力を伝えるコンテンツに加え、「恋する船旅」と題してカップルにフェリー旅行を訴求するというテーマ性の高いコンテンツも用意することにしました。ネット上でも同じコンセプトながらリーフレットよりも詳しい情報を提供するウェブサイトの運営も企画しました。
 活動を展開するなかで、就航先で地域活性化に取り組む他大学のゼミ(別府市内成地域で棚田の保全と地域活性化への活用のための活動を展開している立命館アジア太平洋大学畠田研究室)や他のフェリー事業者(株式会社名門大洋フェリー)からお声がけをいただき取材をさせていただくなど、活動に広がりが出てきました。実際に乗船する形でのフェリーと就航先の取材を重ねながらも、このように新たにお声がけをいただいた先での活動にも積極的に取り組んできました。

 しかしながら、肝心のリーフレットの制作とウェブサイトの開設について、事前に定めていた期日までに一定水準のものを完成させることができず協働先にお示しすることができませんでした。「お客様に選んでいただく工夫」を協働先に提案するという目標を断念せざるを得なくなったという厳しい結果になりました。多くの案件に積極的に取り組んできたつもりでしたが、結果的にはそれらの中で優先順位をつけることができず、すべてにおいて中途半端になってしまいました。最大の反省点は、ゼミ内の会議が進まずゼミ生同士の意思疎通ができていなかったということです。このような貴重な機会を頂いたにもかかわらずこのような結果となりましたこと、協働先の2社の方々をはじめとするお世話になった関係各位の皆様に深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。大変悔しい結果となりましたが、その思いと反省点を後輩達に伝え、これまで進めていた活動や案を無駄にしないように後輩に引き継ぎ、今後の大谷ゼミの活動につなげていきたいと思います。

下記で活動を紹介しています。

参加学生一覧

田中龍之介、松永未来、小西美穂、竹岡英人、夏原花実

学生の感想

国際観光学部 松永 未来

 私たちはフェリー事業者との協働活動として、フェリー利用者を増やす取り組みを行いました。フェリー会社に直接足を運び、意見交換を行い、紙媒体やウェブサイトでのプロモーション活動の企画を進めてきました。これまでの先輩方の活動では主に若者をターゲットにしていましたが私たちはカップルや家族をターゲットに設定し、さまざまな検討を進めてきました。また、現地他大学のゼミと活動をご一緒するなど活動に厚みが増しましたし、キャリアゼミの取り組み以外にも自治体や地域情報誌刊行企業などと勉強会を行うなど、観光マーケティングの学びを深めてきたつもりでした。
 しかし、上述の活動内容報告でも触れましたように、具体的な提案をお伝えするには至らず、1年という長い時間を無駄にしてしまい、すべての活動が中途半端なもので終わってしまいました。私たち大谷ゼミでは活動方針として、主体的・創造的な取り組みということが挙げられていました。それにもかかわらず、指示を待たなければ自ら動けないなど自分たちの力不足を痛感することになりました。自分自身もゼミ長という立場でこの少人数をまとめることができなかったことに責任と力不足を感じています。そもそも私たちは企業・社会との関わり方について甘く考えていました。今回の反省点を後輩達に助言し今後のゼミ活動に活かしてもらえるようにしたいと思います。
 このようにゼミとしては後悔ばかりが残る結果になりましたが、個人としては1年間の活動を通じて大きく成長できた部分もあります。まず、人々に物事の価値を伝えること、企業を相手に責任を持って活動をすることの難しさと、それに求められることを議論し計画を立てて実行することの重要性を知りました。次に、情報発信に対する反応や協働先との交流を通じ、他者の目に自分たちの活動がどう映っているかを考えることで、活動の意義を意識するようになりました。最後に、視野が広がり、複眼的なものの考え方ができるようになりました。これらを自身の卒業研究や今後のキャリアデザインに活かしていこうと思います。
 このような成長の機会を下さった協働先の皆様、ご支援くださった阪南大学キャリアゼミ関係者の皆様、そして活動を応援してくださったすべての皆様に感謝申し上げます。まことにありがとうございました。

教員のコメント

国際観光学部 大谷 新太郎 准教授

 大谷のゼミでは、主体性とそれによる創造的な活動を重視しています。活動のフィールドや協働先企業・機関は教員が紹介・調整しますが、課題設定や活動内容については学生に委ねています。今年度の活動は、フェリー事業者様と2012年度から行ってきたこれまでの活動に比べ、活動の量も関わりを持たせていただく相手も大幅に増えました。それはゼミ生たちが様々な案件に積極的に取り組んでくれた成果の一つだと思いますが、一生懸命頑張るだけで終わっていたともいえます。その結果、協働先に対する提案を辞退するという大変残念な結果になってしまいました。本人達も触れていますが、自分たちのなかで具体的な到達目標を定め、そのためにどのような取り組みがいつまでに必要か、議論がなされていなかったことがこのような結果に至った最大の原因でしょう。それに対し早い段階で問題を修正できるよう導くことができなかった指導教員としての責任を痛感しています。ただ、何度も現場に足を運び自分たちの目でフィールドを見つめてきた行動力、そして提案の素案に自分たちの目線を生かしていた点は評価に値するものです。良いものを持っていながらそれを生かし切っていない学生達に今後の奮起を期待したいと思います。
 次年度もフェリー事業者様との協働活動ができればと考えていますが、今年度の反省をふまえ、活動への強い意欲を持つ学生のみのチームを編成する、早い段階で具体的な成果を求めるようにするなど、体制を立て直してのぞみたいと考えています。