鹿児島市で現地調査を実施しました(3)

鹿児島市役所での聞き取り調査の後、市内中心部で調査を行いました

 森重ゼミが9月12日から6日間、鹿児島市で実施した現地調査報告の第3弾です。今回は鹿児島市役所で聞き取り調査を行った後、ドルフィンポートやいおワールドかごしま水族館、天文館など、鹿児島市中心部の観光資源調査を実施したグループの報告です。このグループでは、遠方から訪れる観光客のための観光スポットだけでなく、地元の方々が訪れる百貨店や食べ物にも注目し、フィールドワークを行いました。
 今後はフィールドワークで得た成果をまとめ、第31回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションでの発表に向け、準備を進めていく予定です。最後に、今回のフィールドワークの実施にあたり、鹿児島市役所ならびに鹿児島観光コンベンション協会の皆さまには聞き取り調査にご協力いただきました。学生の学びの機会をご提供いただきましたことを、心より御礼申し上げます。(森重昌之)

フィールドワークの様子

  • 鹿児島市役所での聞き取り調査の様子

  • ホームセンターにある足湯にて

  • 金生饅頭の制作風景

  • 百貨店・山形屋の名物やきそば

  • 桜島の桜岳陶芸での聞き取り調査の様子

  • マリンポートにてゼミ生全員で記念撮影

※関連記事

参加したゼミ生の報告

さまざまな世代に向けた観光客誘致の取り組み
 国際観光学部3年 三谷悠子

 今回、私たちは鹿児島市役所で聞き取り調査を行い、鹿児島市の観光入込客の状況などのお話をうかがうことができました。現在、鹿児島市への若者の観光客のほとんどを、修学旅行生が占めているということがわかりました。その理由として、九州新幹線が開通したことにより、修学旅行生が鹿児島市へ来る交通手段として、新幹線を貸し切って訪れることが多いからだそうです。そして、修学旅行生が鹿児島市を訪れる要因として、現地でグループ別学習を行い、農家民泊を体験すること、また平和学習や歴史を学ぶことがメインになっています。そうした活動をすることで、将来修学旅行生に子どもが生まれた時に、鹿児島市はどのような場所であったか、またもう一度鹿児島市に訪れたいと思ってもらえるような内容を、鹿児島市が修学旅行生に配布しているパンフレットに書かれていました。
 また、LCCの普及により、鹿児島−上海線、鹿児島−香港線の増便、そしてクルーズ船の寄港回数の増加によって、若者のみならず、外国人観光客やシルバー世代の客層が増えている現状です。特に、時間とお金に余裕のあるシルバー世代の観光客誘致に力を入れているということがわかりました。鹿児島市の取り組みとして、冬の観光客が少ないということから、冬にも県外からの観光客に来ていただきたいと考え、昨年から天文館ミリオネーションという鹿児島市内中心部の天文館に約100万球の大規模イルミネーションの装飾を行っています。これは年代を問わず、誰もが見て楽しむことができるイベントの1つとして開催されています。そして、2020年には東京オリンピックが開催されると同時に、鹿児島県で国体が行われます。これを機に、学生に向けての合宿誘致を勧めており、特に大学生のサークル合宿や冬季に行われるスポーツキャンプの誘致などに力を入れているようです。
 このように、鹿児島市ではシルバー世代から若者まで、いろいろな世代の観光客に鹿児島県へ、そして鹿児島市を訪れてほしいという思いから、さまざまな取り組みを行っていました。鹿児島市にしかない景観や癒しを目的に観光客が訪れることを狙って、案を考えているそうです。今回、私が鹿児島市内に滞在して気づいたことは、鹿児島市は歴史などをメインに観光客にアピールしていますが、近年は若者をターゲットとした企画やプロジェクトなどを展開していることがわかり、いろいろな世代に向けた観光客誘致の取り組みを行っていることがわかりました。

若者向けの観光資源とは何か
 国際観光学部3年 梶原 奈津希

 私たち森重ゼミ5期生は、2年生後期に鹿児島市をフィールドに設定しました。鹿児島市はどうしても歴史や桜島のイメージが強いので、若者がもっと訪れたいと思うような観光資源を発掘したいと考えました。2年生後期から3年生の夏休みまでに、インターネットや旅行ガイドブックなどを使い、若者が観光に対してどのようなことを求めているのか、鹿児島市の魅力的な観光資源とは何かなどをゼミ内で意見を出し合いました。今年3月に1泊2日で鹿児島市を訪れたのですが、少ない日数では鹿児島市の魅力に多く触れることができなかったので、夏休みを利用して3泊4日で再度鹿児島市を訪れることにしました。より良いフィールドワークにするために、現在知らない鹿児島市の魅力を事前にもっと詳しく知る必要性を感じたので、鹿児島県大阪事務所で聞き取り調査を実施しました。約1年弱の間、鹿児島市について調べたことや、他のゼミ生が事前に行ってくれた聞き取り調査をもとに、今回も以前同様、グループ行動で若者が訪れたいような観光資源について調査しました。
 私たちのグループが訪れた観光資源は、ウォーターフロントエリアにある「ドルフィンポート」と「いおワールドかごしま水族館」です。ドルフィンポートとは、2005年にオープンした鹿児島港内を埋め立ててつくった複合商業施設です。桜島や錦江湾の景観に配慮した2階建て構造で、晴れているととてもきれいな景観が広がります。鹿児島の発展を願う方たちにより運営されており、「より多くの人びとに鹿児島の魅力をもっと知っていただきたい、そしてふるさとへの愛情を深めていただきたい」という願いをコンセプトに運営されているそうです。桜島が見渡せる広場には、運動中の方やペットの散歩をしている方の姿が見られ、地元の人びとにも愛されるスポットなのだと知ることができました。
 そのまま徒歩で、いおワールドかごしま水族館を訪れました。この日はちょうど、70歳以上の方は入場料無料だったためか、年配の方であふれており、水族館に活気が見られました。エントランス付近にある水量1,500トンの黒潮大水槽の中には、世界最大の魚ジンベイザメやマグロ、カツオ、大型のエイ等が悠々と泳ぎまわっており、圧巻でした。
 私たちのグループが訪れた観光資源は、天文館から徒歩で約10分、鹿児島中央駅から自動車でも約10分で到着できることから、アクセスにも非常に優れています。市内でありながら、お金をかけずに南国気分を堪能できる点は、若者にとって魅力的です。
 今回3つのグループに分かれ、さまざまな観光資源を訪れたため、若者向けの資源やそうでない資源が各グループであったかと思います。今後のゼミ活動では、今回の調査を踏まえ、各グループの観光資源を生かす情報発信の方法を考えていきたいです。今まで話し合ってきたことを何かの形として残したいです。事前にたくさん時間を使って話し合ったおかげで、以前のフィールドワーク以上に充実した4日間となりました。

新たな発見から歴史に触れる機会へ
 国際観光学部3年 若林佳代

 私たち森重ゼミは、フィールドワークの対象地として鹿児島市についての研究をしています。今年3月に1泊2日で、鹿児島市にフィールドワークで訪問しました。鹿児島市について考えると、黒豚や白熊アイスなどの食のイメージが強くあります。実際に訪れてみると、桜島や歴史に関する内容を紹介している場所には、若者の姿があまり見られませんでした。また、桜島小みかんを使用しているソフトクリームが道の駅でしか味わえないことなどを知り、まだ私たちが発見できていない鹿児島市での観光資源があると感じました。
 私たちはインターネットや雑誌などで集めた情報から、鹿児島市はどのような情報発信をしているのかということに疑問を持ちました。また、桜島の噴火がニュースで中継されると、鹿児島市民にとっては当たり前のことであっても、私たちは危険と感じてしまい、訪れることをやめてしまうことがあります。こうしたイメージを変えるにはどうすればよいのかという疑問もわきました。そこで、9月12日から17日まで鹿児島市を再度訪問しました。今回鹿児島市を訪問し、「癒し」などをテーマとする場所を調査するという目的があったので、以前思っていたイメージとは感じ方が変わりました。
 鹿児島市内の天文館にある唐芋ワールドでは、当店一番人気の「ラブリー」という商品が紹介されていました。芋を使用した商品を取り揃えていて、東京限定や博多駅限定の商品なども多くありました。女性は「限定」という言葉に惹かれることがあるので、観光として訪れた時に手に取ってもらえるのでは感じました。以前は桜島小みかんなどのイメージを持っていましたが、芋を使用している商品が多く見られました。例えば、芋を使用した鹿児島名物の「芋・焼酎」ソフトクリームや安納芋バターなどがありました。
 次に私たちが訪れた場所は、鹿児島市総合センターに場所を教えていただいた、「ハンズマン」というホームセンターにある足湯です。総合センターの方も知らなかった場所でしたので、新たに癒しの場所を見つけられたと思いました。鹿児島空港の出口にも足湯が設置されていて、温泉は鹿児島県民にとって身近の癒しだと感じました。「温泉に癒しを求めて、旅館でくつろぐ」というと、私は京都へ行こうとイメージしますが、実際に鹿児島市で温泉を体験し、「温泉で癒されたい」、「ちょっとした観光に鹿児島へ行こう」と思えるようなプランがあればいいなと思いました。
 桜島で桜島オールナイトコンサート記念モニュメントを見に訪れた時に、アイランドビュールート周辺観光マップがあり、バス停付近の見どころが紹介されていました。温泉目的や食を目的とした観光客がそのまま帰るのではなく、せっかく鹿児島市を訪れたので、バス停や目につく場所にマップなどがあれば、その場所を訪れてもらえる機会になるのではないかと思いました。

老舗デパート内にある店に若年観光客を呼び寄せる方法
 国際観光学部3年 寺田収孝

 私たち森重ゼミでは、どのような事業を行えば若者を鹿児島市に観光目的で呼び寄せることができるのか、そもそも鹿児島市内に若者が訪れたいと感じることができる観光スポットが存在するのかを探るため、各グループに分かれて現地調査を行いました。
 私のグループは滞在2日目に、鹿児島市に唯一あるデパート「山形屋」で調査を行いました。店内は平日であったにもかかわらず、多くのお客さまで賑わっていました。中でも最上階の7階にあるレストラン「山形屋食堂」には行列ができており、多くのお客さまが食事を楽しんでいました。お客さまの多くは野菜と魚介の餡がかかったボリューム満点の名物焼きそばを注文されていたので、私たちもそれをいただきました。テーブルには焼きそばに合うようにつくられた特製の三杯酢が置いてあり、それをかけるとまろやかになり、より美味しく感じました。店内の一部には、桜島を見ながら食事を行える席もありました。
 また、地下1階には「金生まんじゅう」という饅頭屋があり、こちらも列ができていました。この店はテイクアウト専門のため、私たちのグループは近くにあった休憩スペースで、大判焼きのような形をした名物の金生饅頭を味わいました。店内は一部ガラス張りとなっていて、作業工程を自由に見ることができ、私たちもつい作業を行っている様子を見入ってしまいました。
 どちらの店舗も、デパートの中にあるにもかかわらず、リーズナブルな価格で行列ができるほど多くのお客さまで賑わっていました。しかし、2つの店舗を含め、デパート内には若者があまりおらず、観光客もほぼ見かけない状況で、地元の主婦やご高齢の方で賑わっているように見えました。地元の方が気軽に行き、食事を行える場となっている中で、もし若者の観光客を多く呼び寄せてしまえば、地元の方にとって行きにくいと感じる場所へ変化してしまう可能性があると考えます。
 しかし、現状では、鹿児島市はさつま地鶏や黒豚などグルメが豊富な場所であり、餡のかかった焼きそばや金生饅頭といった、どこでも食べることができそうなグルメを県外へPRしても、たとえ「食べたい」と感じる人がいたとしても、実際に足を運ぶ人は少なく、費用を抑えたい若者でも難しいのではないかと感じました。若者の観光客に食べに来てもらうためには、デパート全体をアピールする必要があると考えます。もし県外の若者に山形屋の情報発信を行っていくのであれば、デパートにあまり行かない若者を含め、人を引きつけるような山形屋らしい事業を鹿児島市と協力して展開しなければならないと考えます。そして、当然のことですが、地元の方が今まで通り、デパートを利用できるようにしなければなりません。そうすれば「山形屋食堂」や「金生まんじゅう」に多くの若者の観光客が訪れることにつながり、さらに山形屋全体の売り上げにもつながるかもしれません。
 デパートに若者の観光客を呼び寄せることは非常におもしろい試みではあると同時に、非常に難しい難題であると感じました。

観光地としての桜島の再生の可能性
 国際観光学部3年 仲田玉徳

 私たち森重ゼミ3回生は、若者の観光客に関心を持ってもらえるよう、鹿児島市内の観光資源を発掘し、再確認して、若者が訪れるにはどのように情報発信していくかということを研究テーマに掲げています。私たちは3月に1度、視察で鹿児島市を訪れました。その時に私が鹿児島市に対して持ったイメージは、歴史や遺産が印象に強く残り、若者はあまり足を運ばないと感じました。その後、パンフレットやホームページをもとに、若者の旅行に行く動機などを徹底して調べ、次のフィールドワークに向けて自分たちなりにデータを集めました。そして、2度目の調査を実施することになり、9月12日(月)からの3日間、3つのグループに分かれて桜島や鹿児島市街の観光資源を調査しました。私は3日目に訪れた桜島について書きたいと思います。
 私たちのグループは鳥島展望台、桜岳陶芸、cafeしらはま、古里温泉に調査に行きました。初めに鳥島展望台に訪れたのですが、突然の大雨によって視界が悪く、調査にはなりませんでした。続いて、桜岳陶芸へ訪れました。ここでは火山灰アートや火山灰粘土の体験を行っています。売られている桜島焼はここに来ないと買えず、桜島独自の自然の産物だけでつくられていました。
 何より私が印象に残ったのは、店の方との話でした。桜島はこの20年間で観光形態が大きく変わったとおっしゃっていました。20年前はその人に会いに来る、人とのかかわりを大事にした観光でしたが、現在は観光バスが出ているため、「会う」観光から「見る」観光へとシフトしてしまったそうです。観光形態が変わった影響で、観光客はバスを利用するようになり、タクシーの需要が減ったため、島内のタクシー会社は1つで、3つあったホテルも今は1つだけになっています。その唯一のホテルも経営が厳しく、今は鹿児島市が支援しているとうかがいました。私はこのままだと宿泊施設がなくなってしまい、桜島が観光地でなくなってしまうのではないかと、この先が不安になりました。同時に、店の方の桜島に対する愛情も感じ取れ、観光形態の変化などは語り継がれるべきだと感じました。
 昼食は「cafeしらはま」で、桜島で採れた食材を使ったプレートランチをいただきました。ここで「若者の観光客は来るのか」と質問すると、若いカップルや大学生の卒業研究などで若者が訪れるとおっしゃっていました。そして、何より台湾や上海など、アジアからの観光客が多いことに驚きました。
 そして、最後に古里温泉に行きました。外観は大きい佇まいでしたが、中に入ってみると、照明は暗く、お客さまは私を含めて2人だけでした。大丈夫かなと不安を抱えながら温泉を覗くと、とてもきれいな露天風呂があり、そこから見る桜島は絶景で、先ほどの不安はすべてなくなるほどでした。
 桜島の今後の課題について、見る観光も重要ですが、地元の方の話を聞いていると、見るだけでなく、人との触れ合いを大切にする観光形態を再びつくっていく必要があるのではないかと考えました。今後に生かせる良いフィールドワークであったと思います。