4年生は卒業研究、3年生はゼミ研究の成果をそれぞれ発表しました

 2月2日(土)、森重ゼミの2~4年生42名が出席し、第6回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。森重ゼミでは、4年次にほぼ1年間をかけて卒業研究の制作に取り組みます。ゼミ生それぞれが独自性と社会的意義を持った研究目的を設定し、現状整理から課題の設定、調査、分析、考察、結論に至る一連のプロセスを論理的にまとめていきます。論理的に文章を書いていくことは決して容易ではなく、今年も多くのゼミ生は何度も書き直し、苦労を重ねながら卒業研究をまとめていきました。
 当日はこれからゼミでフィールドワークを始める2年生、ゼミ研究をほぼまとめ、卒業研究にとりかかり始める3年生が、4年生の卒業研究の成果発表を熱心に聞いていました。4年生の卒業研究発表に続き、沖縄県久米島でフィールドワークしてきた3年生が「久米島におけるマリンレジャー以外の魅力発信-海洋深層水の活用の可能性」について発表しました。終了後には懇親会を行い、学年を越えた交流を深めました。
 以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)

当日の様子

  • 開会あいさつの様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 質疑応答の様子

  • 質疑応答の様子

  • 研究発表を聞くゼミ生

  • 3年生のゼミ研究成果発表の様子

  • 卒研発表会後の全員での記念撮影

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卒業研究のテーマおよび要旨

地方空港をさらに魅力あるものにするための空港施設に関する研究-神戸空港を事例に(No.65)
 国際観光学部4年 田中美咲

 本研究は、空港施設の面において神戸空港がより魅力ある空港になるのか、その可能性を明らかにすることを目的とした。空港施設を評価する軸は5つあり、その中で「繁華性」の面で神戸空港と他の空港を比較すると、神戸空港には繁華性が足りないことが課題であるとわかった。先行事例では、茨城空港と東京国際空港、中部国際空港を取り上げた。茨城空港は、地域と協力したイベントを多く開催し、空港を観光地としてオリジナリティの高いイベントを行っていることがわかった。また、東京国際空港と中部国際空港には「THE HANEDA HOUSE」や「FLIGHT OF DREAMS」のような特徴的な空港施設があり、空港を観光地として利用者を増やし、賑わいを見せることに成功した。先行事例で取り上げた空港は、繁華性を高める手段(商業施設やイベントの数や種類)に違いは見られるが、他の空港では見られないものや、その空港が立地している地域の特性を生かしたオリジナリティの高いイベントを行い、空港を観光地としていることがわかった。その結果、神戸空港も繁華性を高めるために、オリジナリティの高いイベントや施設を展開し、空港を観光地とすることで、さらに魅力ある空港になることを明らかにした。

日本におけるカジノ導入の是非についての研究-大阪府を事例に(No.66)
 国際観光学部4年 平岡公之進

 本論文は、大阪府へのカジノ導入の是非を明らかにすることを目的とした。まず、IR導入の目的、地域振興政策の前例として行われた総合保養地域整備法との違い、IR導入によりどのようなメリット、デメリットがあるのかについて述べた。次に、IRを導入することで、多くの観光客が増加し、観光産業にも影響を与えることが予想されるため、現在大阪府の観光の現状と治安の現状を述べた。また、大阪府がIRを誘致するに至った経緯を調査し、大阪府がIRを誘致する目的、大阪府が期待しているメリット、懸念されるデメリットを述べた。これらから、ギャンブル依存症者率が増える可能性があること、外国人観光客が犯罪に巻き込まれるケースが増えることを課題とした。先行事例では、シンガポール、韓国、ラスベガスをあげ、ギャンブル依存症対策を分析し、外国人観光客への対応については外国で取り入れられているツーリストポリス制度を分析した。その結果、国民にカジノを身近に感じさせない取り組みによって利用者を制限することで、大阪府へのカジノ導入は良いと考え、観光主要地に外国語対応警官、ツーリストポリスを常駐させる必要があることを明らかにした。

新たな観光資源の発掘による松江・出雲間の湖北ルートの提案(No.67)
 国際観光学部4年 難波里紗

 松江市と出雲市は島根県内の2大観光地として、多くの観光客を集めている。両市の移動には宍道湖を挟んで南北のルートを使うことになるが、湖南ルートの方が多く利用されている。そこで、本研究では松江市・出雲市の宿泊者数、湖北ルート・湖南ルートの交通の現状を明らかにし、湖北ルートを利用した移動の提案を目的とした。文献調査から松江市と出雲市の宿泊者数の違いと、湖北ルート・湖南ルートの自動車、観光バス、鉄道の3つの利用者数の違いを明らかにした。先進事例として、いすみ鉄道、「うどん県。それだけじゃない香川県プロジェクト」の2例を取り上げた。前者では特産品と景観を活用した観光列車の導入、後者では知名度の低い物をPRする際に知名度の高いものから惹きつけたことが成功要因であると分析した。その上で、湖北ルートを活性化させるために、①島根県の特産品と車窓から望める宍道湖の景観を活用した観光列車の開通、②歴史・文化の知名度を利用したパワースポットの魅力創出が必要であることを明らかにした。

大河ドラマを利用した観光客増加の可能性-和歌山県九度山町を事例に(No.68)
 国際観光学部4年 山本真由美

 本研究では、2016年「真田丸」のゆかりの地として注目を浴びた和歌山県九度山町を事例に、大河ドラマ放映終了後の観光客増加の可能性について検討することを目的とした。まず、先行研究の調査を行い、これまでゆかりの地として注目を浴びた地域や、各地域が放映時に行った取り組みなどについて整理した。次に、大河ドラマが地域に与える影響や「真田丸」放映時と放映後の和歌山県、九度山町の観光の現状を明らかにした。調査の結果、大河ドラマ放映後は観光客数が減少するケースが多く、維持していくことが難しいということが明らかになった。九度山町の大河ドラマ放映終了後の課題として、大河ドラマ放映前よりも多くの観光客数を維持していくことが必要であると指摘した。課題を解決するために、先行事例として2010年に放映された「龍馬伝」のゆかりの地として注目を浴びた高知県を取り上げた。研究の結果、高知県の大河ドラマ終了後の観光客維持につながった取り組みとして、先行研究で取り上げた要因とは別に、①付加価値のある体験型観光を取り入れることで、新たな観光資源の発掘や魅力の向上につなげる、②地域の人びとのおもてなし意識の向上と人材の育成を図ることが必要であると明らかにした。

リゾート地と負の遺産の共存は可能か-沖縄県のガマを事例に(No.69)
 国際観光学部4年 安部和樹

 本研究では、リゾート地と負の遺産の共存の可能性を検討することを目的とした。調査は、文献とインターネットを用いて、ダークツーリズムに共通する考え方と沖縄における負の遺産の観光の現状を明らかにした。沖縄の観光の現状として、リゾートとしての機能が大きく、このままでは沖縄がもう一つ持っている歴史的な価値や意義が失われてしまうのではないかという点を課題としてあげた。先進事例として、ハワイにあるパールハーバーヒストリックサイトの事例を取り上げた。先進事例から得られたものとして、2点あげられる。1点目が1つの施設が複数の役割を備えていることがわかり、「慰霊」や「学び」以外に主眼を置き、観光資源化していることが集客につながっていることである。2点目が別の施設同士が共通点で有機的につながることで、最終的に「慰霊」を意識できるしくみがあることがわかった。先進事例から得られた示唆から、沖縄の負の遺産においても「慰霊」や「学び」としてだけ伝えるのではなく、別の視点から捉え再資源化し、負の遺産と観光客を徐々につなぐしくみが必要であることを明らかにした。

鳥取県の現状からみるお土産に求められるもの(No.70)
 国際観光学部4年 入江理子

 この研究では、鳥取県の政策や観光の現状を調査し、お土産やお土産づくりに求められていることを考えることを目的とした。鳥取県は「食のみやこ鳥取県」、「まんが王国鳥取」などの政策を行っているが、実際の鳥取県のイメージは「砂丘」や「砂」など、鳥取砂丘を連想させるものばかりで、お土産にも砂丘を連想させるものが多かった。お土産は人に配り、旅の共有やコミュニケーションの役割があるため、お土産を通して砂丘以外の鳥取県の魅力を知ってもらい、多くの人に選んでもらえるようなお土産が必要だと考えた。誰がどのようなお土産を購入しているか、他県のお土産の成功事例などを調査した。調査・分析から、鳥取県のお土産において、①お土産づくりの際、大学や企業などと連携すること、②観光客のニーズに応えるお土産であること、③収集欲を喚起するお土産であること、④お土産を認知してもらうため、イベントを活用すること、⑤パッケージへのこだわりが重要であり、これらがお土産に求められているものであると考察した。

九寨溝の繁忙期と閑散期の観光客数の差を縮小する可能性(No.71)
 国際観光学部4年 魏紅梅

 本研究では、九寨溝の観光の現状を調査し、九寨溝の年間観光客数のデータから、九寨溝の繁忙期の夏と閑散期の冬の観光客数の差が大きいことを明らかにした。そこで、九寨溝の繁忙期と閑散期の観光客数の差を縮小する可能性を検討することを目的とする。2015年の九寨溝の年間平均気温のデータや実際に九寨溝を旅行した観光客のコメントなどの調査を行い、観光客数の差を引き起こした原因を明らかにした。その上で、課題を解決するために、観光客が冬の函館市に求めることや札幌市の冬の観光の取り組み、貴州省の民族観光の取り組み、京都の着物を観光資源として活用した取り組みの4つの事例を取り上げた。研究の結果として、①観光イベントや祭りの開催、②民族文化のPRの推進、③民族文化観光資源の活用が必要であることを明らかにした。

スターバックスコーヒーの観光資源化の要因と地域の魅力向上の可能性-奈良県鴻ノ池運動公園店を事例に(No.72)
 国際観光学部4年 世木杏佳

 近年、カフェが観光資源になりつつある。本研究は、チェーンストアであるスターバックスコーヒーが観光資源になっている要因を明らかにした上で、スターバックスコーヒー奈良県鴻ノ池運動公園の魅力向上を図る方法を明らかにすることを目的とした。まず、スターバックスコーヒーのブランド化の現状などを分析するとともに、SNSを用いてスターバックスコーヒーで非日常感や充実感を演出している先行研究を整理した。また、富山県環水公園店の事例から、スターバックスコーヒーが誘引力を高めている要因として、「ブランド力」と「評判」が中心で、「地域の特性」がそれらに付随しているという先行研究の主張を取り上げた。両店舗の特徴を比較・分析した結果、「地域の特性」は付随する要素ではなく、これらが対等に組み合わされることによって、スターバックスコーヒーが観光資源化されていることを分析した。これらを踏まえ、鴻ノ池運動公園の魅力向上を図る方法として、①運動公園の利用者の特徴に合わせたスポーツグッズの作成、②イルミネーションなどの鴻ノ池運動公園でのイベントの開催を提案した。

アメリカンフットボールによる地域活性化の可能性-神奈川県川崎市を事例に(No.73)
 国際観光学部4年 宮野光海

 現在、アメリカンフットボールは日本でマイナースポーツとされている。その中で、日本で唯一アメリカンフットボール・ワールドカップが行われた神奈川県川崎市では、「アメリカンフットボールを活用したまちづくり」を推進している。本研究では、川崎市とその取り組みを調査することによって、川崎市の観光の現状を明らかにし、アメリカンフットボールで地域活性化するためには、どのような改善が必要か検討することを目的とした。川崎市の調査の結果、アメリカンフットボールによる地域活性化の課題として、市民のスポーツへの関心の低さを指摘した。そこで、課題を解決するために、先進事例として長野県松本市を取り上げた。研究の結果、選手やスポーツに対する市民のイメージ向上が必要であることを明らかにした。

都市部以外の駅間沿線の高架下開発の可能性-京阪沿線を事例に(No.74)
 国際観光学部4年 森晃太郎

 現在、飽和している駅前の土地の中で、鉄道事業社は高架下に注目している。その中で使われておらず、整備されていない高架下は、地域住民がマイナスイメージを抱いていることがわかった。本論文は「暗い」、「汚い」、「怖い」のイメージを払拭し、駅間高架下の有効的な開発方法を検討していくことを目的とした。まず、高架下開発の概要や文献調査をもとに現状を調査した。その結果、高架下のマイナスイメージの課題として、周辺建築物による光の遮断や高架下の落書き・老朽化などがあげられ、その影響で集客できていないことが判明した。分析の結果、駅間高架下開発による地域活性化は、地方自治体や地域住民の前向きな行動力や計画力などの協力が不可欠であり、その大きさが結果を左右することがあげられた。高架下開発に取り組む場合、まず人びとが高架下に関心を持つようなきっかけをつくり出すことが必要である。それをもとに、今までにない新しい商店街としてのイベントを企画するような前向きな行動力や計画力がある千林商店街と協力すれば、高架下に親しみや関心を持つきっかけをつくることができ、有効的な集客が見込める駅間高架下開発が可能であることを示した。

野球独立リーグ観客数増加の可能性-四国アイランドリーグを事例に(No.75)
 国際観光学部4年 村田雄大

 本研究では、独立リーグである四国アイランドリーグ(四国IL)の現状を明らかにし、四国ILの観客数増加の可能性を検討することを目的とした。まず、文献調査によって独立リーグの概念、歴史、役割を明らかにするとともに、四国ILの概要、現状についてインターネットで調査を行った。これらの調査の結果、課題として①若年層のリピーター獲得、②マスコミなどのメディア露出、③チケットの種類、④野球観戦以外での集客の4点を指摘した。これらの課題を解決するために、先行事例として①横浜DeNAベイスターズの集客事例、②広島東洋カープの集客事例、③MLBボストン・レッドソックスのボールパーク化戦略による集客事例、④千葉ロッテマリーンズのボールパーク化戦略による集客事例、⑤アルビレックス新潟のリピーター獲得事例、⑥西部ライオンズの6例を取り上げた。研究の結果、①興味がない人に対しても、興味を持って球場に足を運んでもらえる取り組み、②インフルエンサーを活用したPRの2点がこれからの四国ILの観客数増加に向けて必要であることを明らかにした。

外国人観光客からみる富山県の観光の現状と課題(No.76)
 国際観光学部4年 松永七海

 富山県は立山以外の観光地を訪れる観光客が少ないため、富山県内でより周遊してもらうために、富山県内の魅力を高める可能性を検討することを目的とする。富山県では、宿泊施設が不足していること、観光消費額と滞在時間が全国平均よりも低いこと、認知度が低いこと、外国人観光客が多く訪れており、特に台湾などのアジアからの観光客が多いこと、旅行に必要な情報源としてインターネットやSNSを活用していることがわかった。これらから、富山県の魅力に価値をつける必要があることを明らかにした。そこで、金沢市や島根県と比較し、観光の取り組みが劣っていることから、富山県では特にSNSを充実させる必要があることを指摘した。そのため、観光情報をより多くの人に向けて発信することで、富山県に興味を持ってもらえると考えた。また、写真を多く取り入れたSNSや日本らしいプロモーション、現地に降り立ってからの情報収集、投稿者がSNSに載せている写真の活用が必要であることを指摘した。

酒蔵ツーリズムによる若者をターゲットとした地域活性化-東広島市西条酒蔵通りを事例に(No.77)
 国際観光学部4年 後田風佳

 日本酒輸出額は「186億円と過去最高を記録した」と国税庁が発表したように、年々増え続けている。このように、日本酒は日本国内問わず注目が高まりつつある中で、「酒蔵ツーリズム」という、酒蔵を巡り、地元の人びとや蔵人との交流を楽しむ旅行が人気を集めている。そこで本研究では、東広島市の西条酒蔵通りの現状を明らかにし、年々観光入込客数は増えているのにかかわらず、若者があまり訪れていないことを課題にあげ、若者に訪れてもらうためにはどのような要素が必要か検討することを目的とした。課題を解決するために、先行事例として、日本酒に関する意識調査、他地域の酒蔵ツーリズムの事例、ワイン・ツーリズムの事例、ウイスキー市場の巻き返し戦略、ビール市場の事例、フェスやイベントでの日本酒の活用事例の6つを取り上げた。研究の結果、①広い分野の層をターゲットとした取り組み、②日本酒が飲みやすい環境を提供することの2点が必要であることを明らかにした。