2015.1.30

第2回卒業研究発表会を開催しました

第2回卒業研究発表会を開催しました

大学生活の集大成となる卒業研究の成果を発表しました

 1月22日(木)、森重ゼミ・第2回卒業研究発表会を開催しました。当日は、今年度卒業予定の4年生13名が、各自で設定したテーマに基づいて、背景・目的から現状分析、課題設定、調査・分析、考察、結論に至る一連のプロセスを発表しました。また、昨年度に続き、3年生も島根県出雲市における1年間のフィールドワークの研究成果を発表しました。発表会にはゼミに所属する2〜4年生、計38名が出席し、熱心に発表を聞くとともに、活発な質疑応答も行われました。
 卒業研究発表会終了後には、カフェテリアで懇親会も開かれました。4年生にとっては最後のゼミであり、残り少ない学生生活を意識しながら、学年を越えた親睦を深めていました。
 以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します(森重昌之)。

写真−当日の様子

  • 開会挨拶の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 3年生の研究成果発表の様子

  • 研究発表を聞くゼミ生

  • 質疑応答の様子

  • 懇親会の様子

※関連記事

卒業研究のテーマおよび要旨

生活感ただよう大正区を残すために−過去と現在の大正区の比較分析(No.9)
 国際観光学部4年 野中武

 本研究では、大阪市大正区が過去から継続する生活空間を維持しながら発展を続けていくために何ができるのかを、現在と過去を比較しながら考察した。地域の景観を失わずにまちづくりを行うためには、地域住民の活気が必要である。地域住民が主体となってまちづくりを行うことで、継続的に活動を維持していくことができるが、大正区は他の区と比較すると、人口が急速に減少している。そこで、大正区の年々減少する人口の問題を解決するための提案を行った。提案として、人口はもちろん交通、産業、年間行事など、さまざまな視点から問題点を見つけ出し、解決を試みた。そして、問題点を解決することにより、大正区にどのような効果が表れるのかをまとめた。その結果、地域住民と行政が連携して行動を起こすことで、大正区の人口減少の問題を解決することができ、大正区に残る生活空間を維持しつつ発展できることを明らかにした。

駒川商店街における観光を使った地域活性化の可能性(No.10)
 国際観光学部4年 浦上絵梨香

 全国の商店街の経営が悪化しているなか、大阪らしさの残る駒川商店街の地域の交流や活気を残すために、観光客を使った地域活性化を検討した。先行研究から商店街と地域は密接な関係にあり、商店街は地域生活者への楽しみの提供や伝統文化の継承の面で大きな役割を果たしているため、商店街の衰退は地域の衰退につながること、商店街も経済性を追求するだけでなく、商店街としての快適性や娯楽性といったコンセプトを明確にしなければならないことがわかった。現状分析から、駒川商店街には地図がないので、観光客が訪れてもうまく回遊できない、東住吉区にある長居公園にはたくさんの人が集まるが、最寄駅が隣の住吉区にあるため、観光客が流れてしまうという問題があった。課題解決のためには、観光客も地域住民も共通して興味があるものが必要と考え、観光客が駒川商店街を楽しめるように、地図やパンフレットを充実させること、セレッソ大阪のサポーターが駒川商店街を利用するために半券の提示でサービスを受けられるようにするなどのしくみを提案した。

スポーツを通じた地域住民と選手の交流による地域活性化の可能性(No.11)
 国際観光学部4年 住谷祐佳

 地域活性化とは、経済効果や観光客数の増加を指すことが多い。しかし、それだけではない。地域住民が自分の住んでいる地域をますます好きになり、住民が楽しみ、元気になり、地域に活気が生まれることも地域活性化ではないか。そこで、このような地域活性化を実現させるために、スポーツイベントの活用を提案する。奈良県吉野町・東吉野村で開催された「近畿高等学校駅伝競走大会」において、地域住民と選手が交流する機会があった。この交流があったことで、地域住民は大会をさらに楽しむことができた。このような機会を増やすことで、地域住民の楽しみが増え、満足度が向上する。本研究では、先行研究や聞き取り調査をもとに、スポーツイベントにおいて地域住民と選手の交流を増加させることで、地域住民の楽しみを増やし、満足度の向上が図られること、地域が元気になる地域活性化を実現できることを明らかにした。

地域イメージから見た全国の人気土産物の特徴(No.12)
 国際観光学部4年 小山明日香

 本論文では、地域イメージと土産物が結びついているのかについて、まず「地域ブランド」、「地域イメージ」の定義を明らかにし、土産物を分析することで、土産物の持つ本来の意味について研究した。用語の整理を行った上で、空港土産物店であるANA FESTAの全国34ヶ所の土産物ランキングから99品目、全国観光土産品連盟より全国観光土産品公正取引協議会によって認定されたせんべい部門と和菓子部門から49品目、計148品目を分析し、そこから商品名、原料、菓子の種類を中心にカテゴリを作成した。商品名に入っている地域名は市町村が最も多く、地域ブランド調査の上位都市と類似していること、その地域の特産物を使った商品が多いことなどがわかった。また、?虎屋や赤福など、歴史のある企業は多くの世代になじみがあり、もともと商品名や企業名にブランド力があり、安心性と信頼性が根付いている、?地域発祥の企業や祭り・風習の機会に食されてきた菓子、またはモチーフにしている土産物は地域住民の日常に必要なものであり、地域固有のものとなり、他の地域との差別化につながっている、?地域に知名度や魅力、集客量の向上など、利益を還元できる土産物であるという3つの特徴を見出した。さらに、地域らしさを生かすことに成功している土産物やリピーターを生み出すことのできる商品に人気が集まっていることがわかった。

奈良の宿泊者数増加に向けた老舗旅館の取り組みの提案(No.13)
 国際観光学部4年 岡村綾佳

 本論文では、筆者の地元・奈良公園の老舗旅館について考えた。実家が奈良公園にある旅館ということで、常に旅館は筆者の身近にある。通学路にはたくさんの老舗旅館が立ち並ぶ。小学校、中学校と年月を経ていくうちに、今まであった旅館がなくなり、駐車場や空き地になっているという状況を目にするようになった。そこで、現在奈良市内で目にするようになった、このような状況に陥っている原因を追究するとともに、宿泊者数が全国の中でも最下位レベルにあることから、老舗旅館が生き残っていくためには、どのような改善策があるかについて考えた。まず、廃業寸前から立ち上がった旅館や廃業した旅館、旅館は宿泊だけの目的ではなく、それ以外の魅力を持っている旅館をいくつか紹介した。また、実家の旅館の取り組みや魅力がある旅館を訪問し、女将の話をうかがった。そこから、宿泊者数を増加させるために老舗旅館ができることとして、「奈良の魅力と旅館」を組み合わせた提案を行った。

犯罪手口の認識と観光客の意識改善を通じた犯罪被害の減少可能性(No.14)
 国際観光学部4年 船越勝太

 本研究では、筆者が海外でぼったくり被害に遭ったことで海外に対して悪いイメージを持ち、海外旅行に対する意欲が減ったことから、海外邦人犯罪被害を調べようと考えた。調べていくうちに、いろいろな犯罪が起こっていることが明らかになった。犯罪は地域別に特徴があり、「宝石のキャッチセールス詐欺」など、犯罪手口を知らなければ防げない可能性が高いが、犯罪手口を知ることによって、被害が減らせるものがあることがわかった。また、犯罪情報についてあまり注意喚起されていないことから、情報を周知することの重要性を指摘した。さらに、情報を周知することによって犯罪被害が減らせることを「オレオレ詐欺」の事例で示した。そして、情報を発信するツールを検証したほか、人びとがどのように情報を収集するかについても調べ、年代別にどの情報の発信方法が有効か明らかにした。

公園の多様性による地域の魅力向上(No.15)
 国際観光学部4年 関本健人

 筆者は、大学3年生でイギリスに留学している時、ヨーロッパと日本の公園利用のあり方の違いを感じた。そこで、日本の公園が果たせていない役割や利用方法があるのではないかと思い、それらを改善することで、公園のある地域も魅力的になるのではないかと考えた。本来、公園の概念は外国から取り入れられたものであった。そもそもなぜ日本と外国で公園の利用方法が違うのかということについて、筆者の経験などをもとに述べた。また、先行研究を整理しながら、公園が与える効果や魅力的な公共空間が備えている特性などを明らかにすることで、魅力的な公園の姿を提示した。さらに、筆者が訪れたことのある公園にこれらの特性を当てはめて考察した。その結果、日本の公園の現状や人や施設にかかわる問題などをいくつかあげ、解決方法を提案した。具体的には、現実の公園を筆者の思う公園像に近づけるためにはどうすべきかについて、草花や木々の緑と色の緑の両面から緑の重要性を説明し、身近な公園を例に、理想と現実の差を埋める方策を提案した。これらを行うことで、公園がより魅力的なものになり、その地域もより魅力的になる可能性を示した。

旧琵琶湖ホテルの保全と活用の可能性(No.16)
 国際観光学部4年 笹田真璃

 滋賀県大津市にある旧琵琶湖ホテルは、かつて国際観光ホテルとして運営されていたが、現在は大津市が建物を買収し、指定管理を民間企業に委託している。ブライダルやレストラン、庭園など、さまざまな活用がなされているが、稼働率は3割程度しかない。維持費だけでも年間9,000万円ほど必要とされ、建物の維持費の約半分を大津市が負担していることから、多額の税金が使用されていることになる。このような多額の税金を使用してまで運営される建物の価値とはいったい何なのだろうか。文化経済学ではさまざまな価値が提唱されているが、そうした価値を認め、保存する行為が新しい価値創造につながるということに気づいた。そこで、旧琵琶湖ホテルで建物を保存するための維持費を確保していくための活用の方法を探った。そして、現在の活用方法でブライダル展開の可能性を高めるために、建物の雰囲気作りを提案した。このように、建物の有効活用によって利用者を増加させ、旧琵琶湖ホテルの価値を高める可能性を指摘した。

B級グルメを活用した観光客誘致の方法−栃木県佐野市のイモフライを事例に(No.17)
 国際観光学部4年 小杉周平

 本研究は、栃木県佐野市のイモフライを事例に、B級グルメを活用した観光客誘致の方法を明らかにすることを目的としている。現在、まちおこしをするにあたって、「B級グルメ」を活用した事例が多い。B-1グランプリの開催など、イベント行事が全国各地で行われ、グランプリを獲得したB級グルメは、地域のまちおこしの成功につながっている例も多い。しかし、イベントに出展せず、地域から発信していくまちおこしの方法もある。それが、栃木県佐野市のイモフライ活動である。この2つの方法はまったく異なる。そこで、両者を比較した結果、地域から発信していくまちおこしの方法が良いことを示した。その理由として、特定の飲食店が流行に便乗し、目先の金もうけに走るあまり、本来のまちおこしのあり方を見失ってしまうからである。一方、佐野市のイモフライ活動はまちおこしの目的を見失わず、こつこつと情報を発信していることから、地域から情報を発信するまちおこしが大事であると考えた。

地域コミュニティを活かした商店街の魅力向上(No.18)
 国際観光学部4年 白野紘平

 本論文では、「地域のコミュニティ機能を活用した商店街の魅力向上」を考えた。近年、郊外への人口移動や人びとの生活圏内での大型商業施設の立地などの社会変化によって、市街地にある商店街の「買い物の場」としての役割が、空き店舗の増加や古典の後継者難などの形で影響を受けている。そこで、商店街と地域コミュニティが連携している事例を取り上げて、事例の特徴から傾向を分析し、商店街と地域コミュニティが連携することで商店街の魅力向上を図る可能性を検討した。その結果、成功の要因として、「地域の動向を把握すること」、「地域団体とのつながりを大切に維持すること」、「指針や目標に基づいて積極的に連携を働き掛けること」の3つがあげられた。これらの要因から、商店街が地域の担い手として「地域の課題解決の場」になることで、地域と商店街の魅力向上を図ることができることを明らかにした。

奈良における観光を活用した伝統産業間の多様な異業種交流の必要性(No.19)
 国際観光学部4年 水野巧基

 伝統産業は古くから受け継がれてきた技術や製法を用い、日本の伝統的な文化・生活に根ざしている産業であり、地場産業となっていることも多く、人びとの暮らしや地域に大きな影響を与えてきた。しかし、伝統産業は生活様式の大きな変化や海外からの安価な輸入品の増大などにより需要が低迷し、生産額は減少傾向にある。そこで、販路開拓のために海外進出や体験型観光への参入など、さまざまな取り組みがなされている。奈良県においても同じく衰退傾向にあり、体験型観光への参入も見受けられるが、個々で取り組んでおり、他業種間や組合での取り組みには至っておらず、伝統産業振興の観点から見ても、必ずしも成果をあげているとは言えないことが明らかとなった。伝統産業振興をめざす上で観光を有効に活用できていない点、伝統産業間の連携や交流が活発でない点を解決するためには、現在県内で行われている体験型観光の形を変える必要があると考えた。そこで、伝統産業の中でも異業種間の交流が盛んな京都府に着目し、京都府と京都市に聞き取り調査を行った上で、伝統産業従事者や伝統産業の事業所の交流に向けて仲介的役割を担う「京の手習ひ事業」について、現地視察と聞き取り調査を実施した。そして、京の手習ひ事業を例に、奈良においても工芸体験ならが仲介業務を行い、伝統産業の中で異業種が交流し、体験型観光を実施するモデルを考案した。さらに、奈良墨を例にモデルの実現可能性についても検討した。

御坊市「寺内町」における語り部の必要性(No.20)
 国際観光学部4年 田中将司

 本論文は、和歌山県御坊市「寺内町」における観光案内において、語り部の必要性を述べたものである。和歌山県御坊市は県中部に位置する市で、紀中・日高地域の中核都市である。そして、御坊市の名前の由来は、約400年前に建立され、地元住民が御坊様と呼び親しんだ、日高別院から来ている。その後、寺内町として発展し、現在もその面影を残している。また、江戸時代から大正期までの御坊市の繁栄期を残した街並みや建造物も寺内町に存在している。さまざまな時代の建物が並ぶ街並みを生かした寺内町観光について説明し、なぜ御坊市の寺内町観光には語り部が必要になるかについて考えた。その主な理由の1つとして、歴史的建造物が次々になくなっていることがあげられる。このなくなった歴史的建造物を「あるもの」にし、観光地としてあり続けるには、語り部の存在がなくてはならないものと考えた。

映画ロケ誘致による地域活性化の可能性(No.21)
 国際観光学部4年 片山礼央

 本研究は地域活性化の可能性をロケ誘致の視点から調査した。日本のロケ地誘致の取り組みや現状を調べ、ロケ誘致の課題を発見した。そして、ニュージーランドの取り組みによる成功事例やロケ誘致が地域に与える効果を調査した。その結果、ロケ誘致にはさまざまな効果があり、より多くの映画を誘致することが地域活性化に効果的であることがわかった。しかし、日本においては、撮影許可の問題や誘致を円滑に進める団体、制作に対する支援がうまく機能していないことから、ロケ誘致がうまく進んでいないのが現状である。それらの課題を解決するには、地域、フィルム・コミッション、制作陣の連携を強めて、ニュージーランドのように、国が主導で映画制作に対するバックアップを行うことが必要である。撮影許可が下りない問題や誘致政策の遅れなど、国がフィルムツーリズムによる効果を軽視するのではなく、効果をより認識し、支援することが必要である。問題を解決することによって、よりロケ誘致が進みやすくなり、ロケ誘致がうまく進めば、日本の地域がより認知され、観光客の増加につながり、それが地域活性化により近づくのではないかと考えた。

観光地としての鳥取県の認知度向上についての研究(No.22)
 国際観光学部4年 山根光

 鳥取県にはさまざまな魅力的な観光地があるにもかかわらず、その魅力をうまく情報発信できておらず、観光地としての認知度が低い。本研究では、鳥取県の認知度向上と観光客数の増加のために、どのような方法が効果的なのかについて考えることを目的とした。そこで、鳥取県の中で全国的に認知されている鳥取砂丘を利用したツアーやイベントを行い、観光地と観光地につながりを持たせることで、他の観光資源の認知度向上とともに、鳥取県の観光客数の増加を狙う。また、鳥取砂丘以外の観光地を売り込むために、現在の観光地に関する情報発信の方法を見直し、より効果的な情報発信の方法を考える。スマートフォンが普及したことでSNSの利用率も上がったので、SNSを利用した情報発信を積極的に行う。それにより、情報の広がりも早く、効率的な発信ができると考えた。