高大連携の背景と概要

  阪南大学は、教育内容の一層の充実と発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(上田精也校長)と高大連携協定を締結しており、総合英語科2年生の「総合英語」の授業で取り組まれている、SDGsをテーマとした探究活動に関わっています。
 この探究活動は、法隆寺国際高校が12月に実施されるユネスコフォーラムでの発表を目指して行われており、私は9月の「探究のノウハウ」についての特別講義に引き続き、11月15日(水)に代表4つのグループの発表を拝見して講評を行い、12月15日(金)にはユネスコフォーラムに出席して代表2つのグループの発表に対して講評をしました。
 

11月15日(水)授業の中での講評

  この講評では、5時間目に7組の2つのグループと8組の2つのグループの発表を拝見し、それぞれに対してコメントをしました。それぞれの発表テーマとメインクエスチョンは次の通りです。
 7組 Happiness:What is the Best Country in the World?
    Gender Equality:Why is Japan So Low in Gender Equality Rankings in the World?
 8組 Animal Testing:Should Animal Testing be Allowed?
    Gender Equality:Why is Japan So Low in Gender Equality Rankings in the World?

   

 これらのテーマと問い(メインクエスチョン)は「総合英語」で用いられている教材の内容に則したもので、生徒が選んだものです。よって、教材と関連するという指定はありますが、生徒が自分の問題意識に基づいて、グループでテーマ設定を行っていることになります。
 授業時間が当初予定した2時間から1時間に短縮されたため、私のコメントに対する生徒さんからのリアクションを双方向で行う時間が限られたことが残念ですが、それぞれのクラスの2つの発表は見ごたえがありました。何より、全て英語でプレゼンテーションが行われており、生徒さんによっては手元の資料を見ずに英語を使いこなしていました。時折資料に目を落としながら発表する場面もありましたが、代表であるだけに、高い英語力でのプレゼンでした。また、4つの発表全ての流れがスムーズで、問題提起から調べた内容を経てまとめへと向かう構成に破綻はありませんでした。
 一方、スライドがシンプルで文字が小さく見にくいことや、まとめの結論は一般論が中心で、自分たちの独自性のある主張が見られないことが課題であり、それらの点を生徒さんと確認しました。特に、主張を裏付ける根拠としてデータ(数字)があれば良いことや、自分たちが主張したい部分を強調して伝えると、プレゼンがより改善することを伝えました。
 

12月15日(金)ユネスコフォーラム

 総合英語科2年生を代表して、7組と8組からそれぞれ1つずつのグループが本番のユネスコフォーラムで発表をしました。2つの発表テーマとメインクエスチョンは次の通りです。
 7組 Gender Equality:Why is Japan So Low in Gender Equality Rankings in the World?
 8組 Animal Testing:Should Animal Testing be Allowed?

  

 会場のいかるがホールの舞台では、2つのグループが堂々と気持ちのこもった英語でのプレゼンテーションを行いました。当日まで発表内容を改善したことが、事前にいただいた資料の違いから分かるほど、完成度が高まっていたことに驚きました。具体的には、パワーポイントのスライドが精錬され、内容面では自分たちの主張の根拠となるデータがグラフや表で示されていました。特に良かったことは、両方の発表のまとめで、自分たちができることを提案していたことです。例えば、Gender Equalityでは「~くん(男性)と~さん(女性)」を区別せず、「~さん(全員)」と呼ぶことを促したり、Animal Testingでは動物実験をしていない製品を具体的な例を示しながら使うことを呼びかけたりしたことです。
 ユネスコスクールである法隆寺国際高校の学習活動はESD(持続可能な開発のための教育)を目指すもので、今回の総合英語科の2クラスでの取り組みは、より良い社会の実現を目指すESDと密接にかかわるSDGsを根本的なテーマとしています。私はESDの研究者として、ESDは誰もが否定しない考え方であるため、一般的で正当な意見(見解)を結論としてまとめる発表が目立つことが課題だと考えています。その点、法隆寺国際高校の総合英語科の発表では、可能な限り自分たちの問題として考え、行動につなげることを目標とされています。その一面が、これらの発表の中で見られたことが素晴らしいと考えます。また、英語でプレゼンを行うためには、母語である日本語で考えたことを英語に置き換え、自分の言葉として英語を使いこなさなければなりません。これは通常の探究にはない、総合英語科独自の探究活動となります。
 法隆寺国際高校総合英語科2年生の皆さんの探究的な学びはこれで終わりではありません。ともすれば、SDGsなどの大きなテーマは他人事になりかねませんが、自分事として取り組もうとすることから、より良い未来を考えることにつながり、より良い社会の実現に関わることができるでしょう。総合英語科の皆さんがより良い未来社会の実現を目指して、自分たちで学びを深め広げていかれることを期待し、これからも応援をしたいと思います。