Let's research!【No.1】「地方銀行の地域貢献についての考察—四国地域に焦点を当てて」(多田哲生)

 本論文は地方銀行の地域貢献に着目するものである。銀行の目的がいくつもあるなか、なぜ「地域貢献」が特に強調されるのか、地方銀行が地域に貢献することにどのようなメリットとなるのか、そして現状において地方銀行はどれだけ、またどのような方法で地域に貢献しているのか、これらの疑問に関して、考察し明確にしていく。研究対象は四国地域内の地方銀行とする。地方銀行と地域貢献の関係についての疑問を解き明かす目的の他にも、本論文を通じて将来、地方銀行の一行員となる自分がどのように地方銀行の業務に向き合うべきなのか真剣に考えるきっかけにする目的もある。
 地方銀行の地元県に占める預金シェアは約7割であり、その預金のうちの約6割が地元企業の経営に必要な資金として貸し出されている。このことから銀行にとっての主要業務である預金の受け入れと資金の貸し付けは地元企業と住民による経済活動なくしては成り立たず、地方銀行の経営に大きな影響を及ぼすことは明らかだ。地域住民、企業の経済活動を絶やさず、維持・発展させるために「地域貢献」は必要なのである。住民と企業が地元県で自ら望み、快適に生涯そして何代にも渡って存在することができる地域として発展させる「地域貢献」、それが地方銀行の目的として強調される理由として十分言えるだろう。また、全国的に問題となっている少子高齢化は、特に地方で大きく進んでおり、四国地域も例外ではなく、地域の人口減少は預金と貸出金の減少に繋がる。以上より地方銀行の地域貢献についての考察をする際には、地方銀行自体の経営の維持と発展、そして地元地域の人口についても考慮する必要があるといえる。本論文では、これらのことを踏まえながら、銀行の財務データを用いて、四国地域の地方銀行による地域貢献の実態とその影響を明らかにした。
 研究対象である四国地域の地方銀行では、地域貢献として共通の取り組みがいくつか見られた。ほとんどの地方銀行で共通して行われていたことは医療・介護分野を成長分野とした積極的支援であった。これからも地域での少子高齢化は続く。増え続ける高齢者が快適に生活できる地域をつくるためには医療・介護分野の充実なくしてはありえない。地方銀行はこの高齢化の進む地域にとって必要不可欠な医療機関の安定的な経営を、資金の提供と経営相談などといった方法でサポートし地域の貢献に尽力していた。
 地元取引先中小企業の海外進出の需要の拡大に応えるための地方銀行の海外金融機関との連携強化も地方貢献の方法と言える。企業が、経営を続け発展するためにはより多くの取引先、顧客との関係が必要である。そのなか地域、特に四国という人口の少ない狭い市場では企業の活動には限界がある。そこで企業にはアジア新興国への市場進出という選択肢が生まれるのである。地元企業がより効率的に、海外への進出ができるように進出先の国の情報、ノウハウを現地金融機関と連携するなどして取引先企業に提供することも地域金融機関の地域貢献の手段である。
 その他にも銀行法に示されている銀行業に当てはまらない取り組みで、地域の活性化、住民が生活しやすい地域への発展、全国への地元県アピールという結果をもたらし地方銀行の経営の維持と発展に繋がる取り組みもある。
 以上のことから地方銀行にとっての「地域貢献」とは地域と共に発展するための経営手段であるといえる。