国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第17号」 全国の学生FDサミットで学生活動の成果を発表

学生FDサミットに国際観光学部の学生が参加

 「学生FDサミット」は学生・教員・職員の三者が連携して大学教育の改善をめざす全国会議です。学生が主体となり、2009年から全国の大学を会場として開催されてきました。初回は総勢100名程度の小規模な会議だったそうですが、年々参加する大学が増え、第12回目となる今年春の会議では、68校の大学が参加し、総勢は560人ばかりにのぼりました。会議は東京都世田谷区にある日本大学のキャンパスで3月12日(土)と13日(日)の2日間にかけて行なわれ、日本大学文理学部の学生と教職員が主催し、盛況裡に終了しました。大阪府からは追手門学院大学・大阪産業大学・阪南大学の3校が参加し、本学からは国際観光学部の学生委員を務める3回生の中村聡志(なかむらさとし)君と2回生の上中魁人(うえなかかいと)君の2人が出席して発表しました。以下には2人の報告とインタビュー記事を綴ります(芝麻美)。

※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

チャレンジ精神を湧き立たせる刺激の数々 中村聡志

 学生FDサミットは3月12日の土曜日が初日。各大学の活動を紹介するポスターツアーから始まりました。会議のオープニングでは、日本大学の学生がハリーポッターを模した劇を演じ、学生FDがどのような組織であるかを説明してくれました。それによって理念はわかったのですが、各大学のポスターを見て、説明を聞きますと、イベントを行なっている学生組織もあれば、大学の運営に関わっている学生たちもいます。実際の活動はさまざまで、まずはその多様性に驚かされました。
 ポスターツアーには私たちも出展しました。学生委員が主催する学部の年中行事を紹介したものです。他大学の学生や教職員の方に説明をするなかで、最も反応がよかったのは「七夕祭り」イベントでした。

 キャンパスでまる一日を浴衣のまま過ごし、授業も浴衣姿で受けることが珍しい試みなのでしょう。活動人数の多さも注目されました。ただ、他大学の活動を見ると、少数のメンバーでも充実した活動を行なっている例が少なくありません。私たちも人数を活かしながら、より内容の濃い活動をしていかなければならない。そう感じました。
 午後からは分科会が行なわれました。「学生」「教員」「職員」「OB・OG」の4フレームに分かれ、それぞれが前半と後半の2部に分かれていますので、合計で8部のプレゼンテーションとなります。それを選択して聴くのです。第一部では、嘉悦大学の白鳥成彦先生と学生による「学生と教職員の思いはどれだけずれているのか」という発表を聞き、第二部では、日本大学・京都産業大学・神奈川大学の3大学の職員と学生による「こんなに違う!大学職員の実態」という座談会を拝聴しました。
 白鳥先生は2人の学生を連れて壇に上がり、教師と学生の立場の間にある感覚のずれを、トークをしながら見つけてゆく手法で発表されました。学生の本音はもちろん、普段あまり聞くことのできない教員の本音を聞けたのは幸いでした。「学生は無茶ぶりを喜んでいる」という白鳥先生の発言は印象深いものでした。「さすがに無茶ぶりに学生は喜ばないだろう」と思って聞いているうちに、納得させられたからです。「面倒だ」との思いをもつ反面、「やってやろう」という気持ちがまさり、学生の積極性を引き出せる。そして、積極的な行動が本人の喜びに結びつく。そういう理屈であることに気づいたのです。
 心に残ったもうひとつの格言は「教員が学生に仕事を丸投げする勇気」です。教員から仕事を押しつけられると、学生はどうしても「丸投げされたか」という受け身の感情を抱いてしまいます。そこで、白鳥先生はこう説明されました。「教員が学生に仕事を丸投げするのは、その仕事の責任も全部学生に背負わせることだから、すごく勇気がいるし、学生に対して信頼がなければできないことだ」と。考えてみれば、当たり前の理屈なのですが、丸投げの裏に信頼関係があるとすれば、仕事をいただけるのは、とてもありがたいこと。そう感じさせられます。
 第二部の座談会で印象に残ったのは、京都産業大学の職員と学生たちによるトークでした。彼らは互いへの思いを、卒業式という設定で語りました。卒業生が職員にあてた手紙を朗読します。4年間の活動と思いが何枚かの写真によって綴られます。職員への感謝の気持ちが涙ながらに語られます。学生と職員の距離がいかに近いか、4年間の活動がどれほど充実したものであったか。そのことが伝わってきます。学生の思いに応える職員の手紙も朗読されます。互いにわかりあえる関係が構築されている。そのことに感動しました。
 私たち国際観光学部の学生委員は、年間を通じてイベントの企画や運営を行なっています。その実績は誇れるものですが、さらなるチャレンジ精神をもって活動の幅を広げてもいいのでは。このたびの学生FDサミットに参加して、そういう思いが湧いてきました。刺激を受けたのは「学生発案型授業」でした。在学中の学生が教師となり、入学前の学生を対象に授業を行なう、という試みです。内容は在学生みずからが考えます。この試みには両面の効果があります。入学前の学生からすると、先生が大学の先輩であることの新鮮さを味わえます。年齢が近い分、気軽に質問をすることもできます。在学生からすると、教員の立場に立つことで、教えることの難しさと楽しさを味わえます。両者にとって、授業に対する理解度を深めるよい機会であるのです。
 広島経済大学の試みも参考になりました。学内の情報を発信する冊子を学生が作る活動です。ゼミ選びをする学生のための記事もあります。学生FDスタッフが先生方の研究室を訪れ、研究の内容を聞き取る一方で、先生方が何をゼミ生に求めるのかを探っています。掲載誌の実物も見せていただきました。学生の目で見ると、確かに有益な情報です。工夫しているなと感じたのは、取材の方法です。取材を受けた先生が次の先生を紹介する「バトンリレー形式」を採っていますので、次の先生も嫌とは言えません。これも使える手法です。
 さらに、「これは使える」と思ったのが、学生による「学生相談室」です。新入生は年度初めのガイダンス授業で教員から履修の方法を聞き、登録を行なうのですが、1時間半の限られた時間内で履修を理解し、登録を完了できる学生は少なく、不安を抱えたまま履修登録を済ませる学生が目立ちます。そういう新入生のために学生たちが「履修登録会」のようなものを開けば、喜ばれることでしょう。新入生に限らず、2・3回生の履修登録もサポートすれば、自分たちの進路により適合した科目が受けられることでしょう。そのほかにもTOEICの勉強会や授業に関する話し合いの場を設けられたら、きっと内容の濃い学生活動になることでしょう。
 学生FDサミットへの参加は有益でした。他大学の学生が行なっている数々の活動に触れて刺激を受け、これまで私たちが進めてきた活動を見つめなおすことができました。この成果を学生委員会のメンバーに伝え、活動の充実を図りたいと思っています。

目標は自分色を作っていくこと 上中魁人

 去年の4月に大学生となり1年が過ぎました。これまでの人生の中で一番短く感じた1年でした。短く感じたのは、学生委員会に参加し、あわただしく活動をこなしてきたからかも知れません。といっても、先輩たちに指示されるまま行動し、準備と実行を繰り返すだけでした。そのような受け身の姿勢に疑問を感じたのは、たしか年末を迎えた時期であったと記憶しています。具体的に何をするのか、というのではなく、「とにかく自分で行動を起こさなければ」と感じたのです。
 年明けの活動日にひとつの知らせがありました。「この3月に東京で学生FDサミットが開かれますが、誰か参加する人はいませんか」との問いかけ。思いきって手を挙げましたが、希望者が参加人数を上回り、譲り合いとなりました。まだまだ積極性が足りなかったのですが、結果的に参加が決まったのは幸運でした。そこで「自発的+積極的=自分色を作っていく」という決意の公式を立てました。「自分色を作っていく」との目標は、FDサミットの題名である「キャンパスを彩る三原色」から着想したものです。

 学生サミットは東京都世田谷区にある日本大学文理学部のキャンパスで開催されました。東京の街には慣れていません。それだけで緊張した私に追い打ちをかけたのが、会場ではグループ別の個人行動になるというプレッシャーでした。不安にかられましたが、グループが10人程度の少人数であったことに救われました。話しやすい雰囲気のなか、緊張がほぐれ、普段の自分が出てきました。それぞれの大学で進めている学生のFD活動が紹介されるなか、私たちは学生委員会の活動を紹介しました。事前に用意したポスターをもとに説明をします。先生や職員の方にサポートしていただきながらも、みずから時間をかけて作ったポスターであるだけに、出された質問にも自分の言葉で答えることができました。
 午後からの分科会は、学生・教員・職員・OBOGの組に分かれ、組ごとにプレゼンテーションが行なわれました。私は嘉悦大学の先生と学生によるプレゼンテーションを拝聴しました。教員と学生の関係について、討論形式のプレゼンが進められます。学生との信頼関係を作り、そのなかで学生を育てる方針を打ち出された先生の熱意が凄まじく、学生が遠慮なく意見をぶつけることで信頼関係が構築されることを力説されました。面白く感じたのは「丸投げ」という言葉です。無責任に仕事を放棄するときの言葉であることは承知の上で、あえて「学生への丸投げが必要だ」と発言されたのです。丸投げが学生の責任感を育て、学生との信頼関係を築くきっかけになるそうです。ただ、とても難しく、時間のかかる教育だそうです。にもかかわらず、その先生は実践してこられました。こういう努力の積み重ねが大切であることを教えられました。
 「しゃべり場」と名づけられたワークショップも新鮮でした。自分の思う理想の大学について、グループのメンバーを変えながら話し合います。メンバーが変わるたびごとに立場も変わりますので、意見を出す視点が変わります。総括では、最初のグループに戻り、準備をして発表をしました。このしゃべり場が「自分色を作る」目標を実践に移す場となりました。積極的に発言をして個性を出し、グループの意見に集約していく。これまでも発言をすることはありましたが、自分なりの意見がなかなか出せませんでした。それを引き出してくれたのは、しゃべり場の雰囲気でした。グループの中で発表者を決める段になり、「私がやります」とみずから挙手。大きな一歩を踏み出せました。
 貴重な体験をさせていただくなかで、自分たちの課題も浮き彫りになりました。ポスター発表で感じたことは、努力不足です。活動をしたあとの反省を次に生かす努力です。改善すべき点を明確にして、次の活動で修正をし、ステップアップをめざす努力がまだまだ足りない。他者に説明をするなかで痛感した弱点でした。他大学の学生は教職員に対し、積極的に提案をして、新しい試みを実践しています。そのような試みが実現する背景に学生と教職員の信頼関係があることは、分科会で学び取りました。
 他大学の学生と接するなかで、自分自身の経験不足も思い知らされました。みずから志願してグループの成果を発表した私でしたが、緊張感も舞い戻り、思うように語ることができませんでした。まとめたことを棒読みするような発表に関心は集まりません。無難ではあるものの、印象の薄い発表に終わり、とても悔しい思いをしました。経験のなさを埋めていくためには、インプットからアウトプット、アウトプットからインプットという作業を繰り返さなければなりません。聴く人の記憶に残る発言ができるよう、努力します。学生FDサミットに参加したことで、成長するためのスタートラインに立てました。気落ちする私に同行の職員がかけてくださった言葉が心に残っています。「最初の一歩を踏み出すのは難しいけど、その一歩を出せたと感じたなら、いいスタートが切れた証拠だよ」と。この言葉を信じ、これからも一層励みます。

お二人に聞く参加の成果

:学生FDサミットへのご参加、お疲れ様でした。ところで、参加しようと思ったきっかけは?
中村:私たちは国際観光学部の学生委員会で活動しています。その委員会で「学生FDサミットに参加してみませんか」というお誘いがあり、きっかけをいただけました。
:サミットというからには、他大学の学生もたくさん来られるのですね。
中村:他大学の人たちと接する機会があればと、前から思っていたのですが、なかなか自分から行動を起こせませんでした。サミットへの参加はいいチャンスです。他大学の学生たちの取り組みを知るいい機会でもあります。
:上中さんは?
上中:入学したときから「何か自分で行動しよう」と思っていましたが、できないままズルズル来ました。サミットでは、会話を通じてそれぞれの情報を共有すると聞きましたので、これはと思い…
:他人との会話ですか。
上中:大勢の、しかも面識のない学生に話しかけるなんて、聞いただけでも緊張します。でも、「自ら行動するきっかけになるのでは」と思い、勇気を出しました。
:参加して、どのようなことを感じましたか?
中村:私たちの学生委員会と他大学のFDスタッフとは活動内容が違いました。話を聞きますと、想像以上の活動をしています。とにかく活動範囲の広さに驚きました。
:具体的にどのような活動を?

中村:学生が主体となって授業をしている大学がありました。また、大学の運営にも学生が関わっているところもありました。
:学生の授業?学生による大学運営?それは凄いですね。
中村:私たちには別世界です。そのような世界にいる学生の話を聞くだけで、とても勉強になります。学生が自分たちの判断で行動をする。その大切さに気づきました。
:国際観光学部の学生委員も自分たちで活動しているじゃないですか。
上中:言われてみるとそうですが、主にイベントの企画や運営ですね。大学生活に慣れていない新入生に楽しんでいただこうと考えて、日々努力はしています。
:たくさん行事がありますよね。
中村:新入生オリエンテーション、七夕祭り、ソフトボール大会、ハロウィンイベント、クリスマスパーティーなど、さまざまなイベントがあります。七夕祭りは、学生だけではなく、先生も浴衣で授業をします。そういう雰囲気がありますので、南キャンパスは一年中、盛り上がっていますね。
:私もイベントが好きなので、毎回参加しています。教育や大学運営に携わることも大事かも知れませんが、キャンパスの雰囲気作りは、学生ならではの大切な役目だと思いますよ。
中村・上中:ありがとうございます!
:これから活躍してくれる後輩に向けて、メッセージをお願いします。
中村:南キャンパスでは学生たちが語り合う機会が多いせいか、学年の壁もなく、アットホームな環境があります。つながりを大切にすれば、大学生活がより一層楽しくなります。私たちといっしょにイベントを運営することで、さまざまな人たちと関わっていただきたい。そう願います。
上中:挑戦したいことが山ほどありながら、行動に移せずに後悔しました。聞くところでは、企業の方と相談しながら進めるプロジェクトもあるそうです。充実した大学生活を送るために、いっしょに参加してみませんか。
:ありがとうございました。今後のご健闘も期待しています。

インタビュー後記

 お二人に共通するのは積極性です。そして、謙虚な気持ちです。学生委員として活躍をしている姿を見ると、自信を持って進められているようですが、実際には試行錯誤の連続なのですね。学生FDサミットへの参加がお二人にとって大きな刺激になったことは、報告文でもインタビューでも強く感じました。学部の中に閉じこもっていては、得られない何かをつかまれたのでしょう。振り返って自分たちの活動を思うと、改善すべき点が見えてくる。一歩前に踏み出すことで、見える景色が変わったのかも知れません。前向きに挑戦することの大切さを、このたびの取材でも感じました。