国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 46号」お笑いで人生を変えたOB吉野大さん

2017.11.13

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【国際観光学部 国際観光学科】

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 46号」お笑いで人生を変えたOB吉野大さん

就活で悩む学生を勇気づける話

 こんにちは。早いもので、今年もあと2ヶ月。就職活動に備えてインターンシップや資格取得に励む3年生や、就職活動にラストスパートをかけている4回生にとっては、学生から社会人への変わり目となる時期ですね。このたびの記事は、将来に不安を感じたり、悩んだりしている学生には、とても勇気づけられること間違いなし。取材をさせていただいたのは、国際観光学部のOB、吉野大(よしのだい)さんです。吉野先輩は阪南大学を卒業したのち、人材会社に入社しましたが、2年前に脱サラして、現在はお笑い芸人として活動されています。吉野先輩を私たちに紹介してくださったのは、今年、現役を引退された吉兼秀夫先生です。広報部員2回生の大矢萌々華と4回生の湯栗未名実、そして私の3人が取材にあたり、吉兼先生にも加わっていただきました。 (川畑亜紀)

※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

過酷な生活からの脱出

川畑:いきなりですが、お笑いに挑戦されたきっかけは?
吉野:2013年に大学を卒業してから、人材コンサルティング会社に就職しました。ブラック業界で、入った会社も過酷でした。休みは月に1度しかなく、派遣の人をばっさり切って、不当解雇だって訴えられたことも。プライベートでも、投資詐欺にあって、300万円の借金を背負うは、結婚を考えていた相手が音信不通になるはで、ほんとうに無茶苦茶でしたね。
湯栗:それは災難です…。
吉野:月に1度の休みも、外で遊ばずに、家に引きこもるように。仕事に疲れ果て、普通に通勤して働く気が失せ、考えるのは、その生活から抜け出すことばっかり。毛布にくるまって、お笑いの動画を観ることだけが楽しみでした。たぶん心の底に「芸人になりたい」という気持ちがあったんやろね。やりたいことを考えたら、お笑いの世界しか思い浮かばなくなりました。
湯栗:それほどに追い詰められていたということでしょうか。
吉野:「やりたいことは?」って聞かれても、答えらえない人は多いけど、いえないだけで、心にはあると思う。それが例えば、女優さんとかで、「絶対なれない・やめておけ」って言われるのが目に見えているから、恥ずかしくて言えないのかもしれない。やりたいことって、実際は、考えるよりもシンプルだと思う。
湯栗:確かに。「現実にできることを考えなきゃ」って思ってしまいます。
吉野:でも、僕は思いを大事にして、芸人になる道を選んだ。養成学校への入学を勧める姉のアドバイスもあって入学を決めました。しかし、借金があるから、当然ローンも組めず、「あきらめるしかないな」と思っていたところ、居酒屋を何店舗か経営している阪南大学の先輩に助けられたんです。「入学金分を貸すから、うちで働け」と言われ、なんとか一歩踏み出せました。まわりには感謝でいっぱいです。
湯栗:素晴らしい話に変わりましたね。

人生は1枚のDVD

吉野:ぼくは、芸人になることが夢だったので、夢はすでに叶えているんです。この先の「夢の描き方」をどう描くか。今後は、これに何を加えていくか、が大切だと思っています。
川畑:夢の描き方?素敵な表現ですね。
吉野:コンサルで働いているときは本当に辛かった。でも、その会社を選んだのは自分。そういう環境に甘んじていたのも自分。会社のせいにして誤魔かすのは嫌でした。全部が自分の責任やから。でも、だからといって、自分を否定するのも嫌で。自分を肯定して、自尊心を高めるようにすると、人生がうまく回転しはじめました。
川畑:考え方しだいで、人生が変わるのですか。
吉野:いまの自分は、異常なほどポジティブ。借金のこともネタになるし。それで、ドキュメント撮っていただいたこともあったし。貧乏話が仕事につながるなら、ラッキーやと。ひとはネガティブな面ばかり見がちやけど、必ずその裏にはポジティブな面があると考えられるようになったのは、強みですね。
川畑:やはり考え方しだいなんですね。大学時代から周りに「芸人になったらええやん」と言われていたそうですが。
吉野:そうやったかなあ?
吉兼先生:典型的な大阪の変人だからね。「お前は吉本いけ」ってよく言われてた。
吉野:みんなの言う通り、僕の受け皿は、お笑いの道にしかなかったのかも。
湯栗:芸人をめざすときに、不安はなかったのですか?
吉野:先のことを考えたら、誰でも不安になるんじゃないかな。人生は、全部が必然で、そうなる運命。生まれたときから、たった1枚のDVDが回っているような感覚というか。どう考えても、2枚にはならない。
湯栗:天から与えられたDVDを「マイナスに取るのか」「プラスに取るのか」ってことですかね。
吉野:そうそう。運命は全部つながっているように思えるし、会う人にも全部意味があるんだと思う。いきなり数十万円をぽんと貸してくれたりもするし。(笑)

毎日がネタ探し

湯栗:ネタはコンビで練るのですか。
吉野:そうですね、相方とは週に3日くらいの割合で会っているかな。
川畑:昔からの友達?
吉野:いや、養成学校で知り合って、コンビを組むことに。
川畑:芸人としての目標は?
吉野:MCができればええなと思います。目指しているのは、マルチタスクな芸人です。コメンテーターとか。俳優もやってみたい。憧れのミュージシャンがいて、その影響でバンドもやりたいなと。
湯栗:風呂敷、広げてますね。
吉野:そのために、目的を設定し、戦略をたて、実行しなければならない。努力をしたからといって報われる世界ではなく、結果がすべて。ロジックをしっかり立てるようにしています。好きなことのために頑張ることは、努力とはまたすこし違う。自分の意思で自分の理想のために頑張るのだから。
川畑:芸人として鍛えるために具体的にやっていることはありますか。
吉野:そうですね、1日1つはおもしろいことを考えるようにしています。それに、ついつい見てしまうかな、他人の行動は。ひとりで居酒屋へ行って、「なんかおもろい話ないですか〜」って、知らん人に話しかけることもあるしね。(笑)
湯栗:すごいですね。職業柄、ネタになりそうな話や行動に目が止まるのですね。
吉野:常にアンテナをはって、さまざまなことに興味を持つようにしています。
吉兼先生:吉野君は、意外と政治ネタに詳しかったよね。そういうタイプじゃないのに。
吉野:意外って。(笑) 大学生時代は政治のことをよく口にしたけど、共感してくれる友達がいないから、話し相手はいつも吉兼先生でしたね。
大矢:大学生のころから関心を持たれていたのですね。
吉野:日本には政治に興味のない学生が多いので問題やと思います。いまも大きな問題が次から次へと流れてくる。平和が当たり前と思わず、危機感を持ってもらいたいなあ。
大矢:日本人のなかのひとりとしてではなく、当事者意識を持たなければ、ですね。

成功と継続の秘訣は執着心

川畑:このあたりで大学時代の思い出を。
吉野:先生方とはよくお酒を飲みましたね。もちろん、20歳になってからやけど。
湯栗:森重先生からお話を聞きましたよ、「あいつは、やばいよ」って。(笑)
吉野:そんなことを。でも、森重先生は僕のことが大好きですからね。吉兼先生とは、明日香村でもよく呑みに行きましたね。
吉兼先生:なつかしいね。
吉野:吉兼先生といえば、「なんとかなる」が、先生の格言、ていうか口癖。でも、実際その通りやと思います。僕もどん底まで沈んだけど、いまは何とかなっている。人生はリセットがきくと、そう考えたら変わってきました。「なんとかなる」は僕の人生でもありますね。
川畑:先生、ゼミや大学での吉野さんはどうでしたか。
吉兼先生:しゃべりは上手だったよ。キャリアゼミの報告会などでも、彼が話すと、受けがいい。声がいいのかな。先生の受けもよかった。成績が悪いのは、みんな知っていたけど。(笑)
吉野:明日香村での活動は、いまでも続いているのですね。
吉兼先生:そうだね。明日香村での活動は8、9年続いたから、これからの学生にも引き継いでもらいたい。けっこうオリジナリティーを出していろいろオブジェも作った。今年はまた案山子も作ったし。
吉野:インスタグラムで見ました。
吉兼先生:ずっとやりたいとつぶやいていて、やっと今年、できることに。
吉野:急に実現したんですね。
吉兼先生:やりたいことはいつまでもやりたい。そう思わないと、消えてしまうからね。しつこく言って、耳に残して、バカにされても、言い続けることが大事。
吉野:吉兼先生の凄さは、いい意味で、明日香村への執着心。実現させて、継続させるには、執着心がないと。執着するって、「好き」ということやから、なにか1つ執着するものがあるといいですね。
川畑:4回生になったら、みんな嫌でも就活に執着しますね。
吉野:執着しないといけないのは、就職活動ではなくて、その先やと思うけど。どこでも就職できればいい、というものではない。やりたいことが明確やったら、それができる会社だけを受けまくる。ただそれだけ。僕のように、ブラック企業に勤めたおかげで夢への道が開けることもあるけどもね。
吉兼先生:僕は40才まで自分の夢が決まらなかったよ。30代の時に観光関係のコンサルの仕事で働いていたけど、嫌でしょうがなくて。もともと社会学の環境問題について学んでいて、それをやりたいと思っていたから。でも観光を専門にしたらどうだろうと考え始めたら、その翌日からハッピーになったよ。
吉野:観光を専門にしたからハッピーになったんですね。観光はいろんな分野があって面白いですよね。僕も、いまでも東洋経済を読んでいます。

時代がどんどん変わってゆく

湯栗:観光に話を戻しましょう。吉野さんにとっての観光学とは?
吉野:観光学に触れてなかったら、今の自分は無いなと。ビジネスに興味を持ったのも、観光への興味から始まっているので。
湯栗:観光学をやりたいと思ったきっかけは何ですか?
吉野:やっぱりUSJからかな。学生時代に受けた授業では、森山正先生の「テーマパーク論」が印象的やったね。一番感銘を受けたのが、インターナル・マーケテイング。
大矢:顧客を満足させる従業員教育ですか。
吉野:満足させるのは顧客だけではない、というのが森山先生の話。僕はそのときUSJでアルバイトをしていたので、「顧客満足度を上げるためには、従業員満足度を上げる」という話を授業で聞いたあと、その視点でUSJの体制を見ると、がぜん面白くなった。たしかに従業員が行きたくなるような職場で、学校みたいに組織化されてる。だから、従業員の離職率も低い。
大矢:ためになる話ですね。
吉野:僕が大学にいたころは、こんなにインバウンド客が増加するとは思ってもなかった。今のそういう時代背景で、観光を学んでいたら、いろんなビジネスを思いつきますよね。逆にどんどん視点を変えていかないと、飽きられてしまう。
大矢:たしかに。
吉野:学生のみなさんには、さまざまな視点から、学んで欲しいですね。せっかく観光に追い風が吹いている時代に、観光学を学んでいるのだから。観光業って、人を楽しませることが基本やないですか。お笑い業界でも同じで、楽しませるために何をするかが一番の課題。そしてこれが難しい。泣かせることは簡単だけど、笑わせるのは難しい。僕の根源はそこにあったんやと。
湯栗:なるほど。
吉兼先生:いやいや、話を作っているよ。
吉野:いや、全部ほんとですよ。本当やから、即興で答えられるのです。
吉兼先生:今までの話をきれいに並べたら、そういう話になるよね。腕を磨いたな(笑)
吉野:芸人をしていたら、いろんな人に会えて、いい経験をさせてもらえる。このあいだも沖縄県の鳩間島を活性化させようとしている人に会い、誘われて、いっしょに行くことに。知識が必要、と思うのは、こういう時やね。小さな島の活性化は、やりたいことのひとつだったので、よかった。就活のときは、そういう会社に手が届かなくて。こうして実際に関わることができた。
吉兼先生:人とのつながりと経験が財産だね。
吉野:ほんとに。お笑い業界に限らず、人脈は大事です。

ゼロか百かの人生は意外に楽

川畑:たとえば5年後、芸人としてどうなっていたいですか。
吉野:5年後ね。32歳か。まず、30歳までには、売れたい。全国ネットに出たいです。
川畑:東京進出ですか。あこがれますね。
吉野:東京で暮らしながら、仕事をするのが目標。冠番組も欲しい。満足できる落としどころは、そこしかないから、突っ走ります。夢が叶っても、その先を求めるだろうけどね。
川畑:なるほど。挑戦は続きますね。苦しい道のりですかね。
吉野:いや、そうでもなく、案外気楽ですよ。売れるか、売れないかの二者択一なので。結婚とか子育てとか職場とか家庭とか、そういう複雑なことは一切なく、ゼロか百かだから、話は簡単。目標を明確にして日々を過ごす。これは意外に楽。
吉兼先生:職業病とかないの?自分が話しているときに、まわりが楽しんでいるかどうかとか。
吉野:なりますね。芸人になってから、人の話の振り方とかが、どうも気になる。今まではなんとも思わなかったけど、話の持っていき方が下手な友人には、心の中でダメ出しをしてしまう。
一同:(苦笑)
吉野:構成とか考えてしまうね、ただの日常会話やのに。
川畑:その能力、話下手の私には、とても欲しい。
吉野:当たり前やけど、友だちの集まりと芸人同士の集まりでは、会話の質がぜんぜん違う。漫才を聴くと、ネタの構成とかで、けっこう話術が学べるよ。たとえば去年のM−1グランプリでの和牛さんの1発目のネタ。フリとボケが完璧で、あれほど勉強になるものはないと思いながら見ています。ぜひ。
川畑湯栗・大矢:応援しています。本日は、ありがとうございました。

インタビュー後記

 脱サラをしてお笑い芸人になった吉野大さんと、大学時代にゼミで吉野さんを指導された吉兼秀夫先生にお話を伺いました。終始、インタビューは和気藹々。お笑いを仕事とされているだけに、とても楽しませていただけましたが、お読みになってわかるように、話の内容は極めて真面目。これから社会人をめざして学ぶ学生にとって、大切なアドバイスや示唆に富み、とても濃い記事となりました。周りに惑わされず、自分の意思を貫いて前に進むことの大切さがよくわかりました。吉野さんがこの道を歩まれていることも、すべては自分の選択。辛いこともたくさんあるのでしょうが、プラス思考で乗り切る生き方が素敵です。その生き方は「なんとかなる」が口癖の吉兼先生に学ばれたのかも知れません。師弟の熱いつながりを感じて、心温まりました。先生と学生の信頼関係が大切である。そう実感した次第です。(大矢萌々華)

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