【松ゼミWalker vol.112】9代目との軌跡と奇跡…(レポーター:教員 松村嘉久)

9代目との卒業旅行は台北へ!!

 松村ゼミの卒業旅行は西成区堺筋沿いでの夜市創設に向けた調査も兼ねて,2013年2月25日(月)から3月1日(金)の4泊5日で,台北へ行って来ました。参加したのは卒業する9代目ゼミ生が17名中10名,3回生(10代目)が1名,2回生(11代目)が5名,1回生が6名,これに高雄餐旅大学からの交換留学生で留学を終えて台湾へ帰っていた范妍希さんが台北で合流したので,私も含めて,合計24名もの大集団になりました。

 2013年3月に卒業する9代目を中心に展開してきた新今宮TICでの活動は,CB・CSOアワードやJTB交流文化賞ほかで優秀な成績をおさめ,色々と副賞もいただきました。2013年2月2日(土)開催のOB・OG総会で,歴代の卒業生たちにはお礼をしたので,その残りの副賞は新今宮TICを拠点とする観光まちづくり活動と,今回の卒業旅行で利用することになりました。そこで,ゼミ生23名の台北での宿泊費・食費・活動費は,基本的にそうした副賞から支給しました。

 台北では,西成での夜市創設への想いを後輩たちへ伝えるため,いくつかの夜市をまわりました。せっかくの卒業旅行だから,台北郊外の観光地である九フン(人偏に分)・淡水・烏来などへも行きました。
 楽しみにしていた九フンはあいにくの大雨で,全く楽しめず…。淡水では河口へ近づくと,大規模なマングローブの原生林があり,それがほとんど観光の文脈で活用されていない様子を観察できました。淡水のまち自体は,とてもコンパクトで見どころもあり,若者が好みそうなところとの印象。
 興味深かったのが烏来。少数民族観光や自然景観保護問題などを考えさせられる場所でもあり,地元の台北人と足湯に入りながらのんびりと交流でき,日頃の疲れを癒しつつ楽しめるところでした。
 夜市の屋台でのB級グルメも,北京ダックや本格広東料理もみんなで楽しみました。何名かとは足のマッサージへも行きました。卒業する9代目の多くが旅慣れた学生であり,台北調査のリピーターでもあったので,後輩たちへ,現地集合・現地解散のノウハウ,旅の楽しみ方や調査やチームワークの極意,松村ゼミならではのドイツルールのUNOなどを,きちんと伝えてくれました。

卒業式はやはり複雑…

 2013年3月19日(日),松村ゼミ9代目17名は全員,誰ひとり留年することもなく…,いや,そんな低い目標ではなく,実に大きな成果を残して見事に巣立ちました。9代目はとても優秀で能力が高く,行動力もある学生たちで,タレント揃いでした。卒業式の際,国際観光学部の総代として卒業証書を受け取った兪穎伶も,松村ゼミ9代目です。
 思い起こせば,社会人基礎力グランプリ全国大会で準大賞を獲得した奇跡の7代目が3回生になりたての頃,2009年4月26日(日)に,新今宮を拠点としたフィールドワークを実施しました。その際,当時入学して間もない9代目17名中の5名がこれに参加していました(【松ゼミWalker vol.22】参照)。
 新今宮TICが常設運営されたのは2009年7月から。だから,新今宮TICは卒業する9代目とともに歩んできたと言っても過言ではありません。新今宮TICの古い記録ノートを見ると,9代目ゼミ生の全員が,2009年夏から2010年の1回生から2回生にかけて,何度もスタッフとして手伝いに来てくれていたことがわかります。

 2009年から2010年頃のことで,印象に残っているのは,9代目ゼミ長・昌山志保さんと井上咲季さんです。この二人は2009年の1回生の夏から,新今宮TICの運営にとても積極的に参加してくれ,運営の合間にコツコツと英語の学習を重ね,英語でのコミュニケーション能力が飛躍的に成長しました。(左写真:卒業式後,阪南大学同窓会から表彰していただいた松村ゼミ9代目の5名)
 2010年の2回生後期から,昌山さんと井上さんは1年間の海外協定留学へ行ったのですが,その際,二人ともTOEIC550点以上を獲得していたので,阪南大学から助成金を受けての留学となりました。この年の協定留学で助成金をもらえたのは,確か全学でこの二人だけ…。
 協定留学へ行く前の2回生の夏,昌山さんと井上さんは,早々に松村ゼミ入りを表明してくれたので,私は新今宮TIC運営終わりに二人を「すし寛」へ誘い,美味しいハモの梅肉あえをいただきながら,海外留学中の心得や諸注意をゼミ教員として語ったことを記憶しています。二人は帰国後,英語力を存分に活かして,新今宮TICの運営やまち歩きツアーで大活躍してくれました。

 次に,松村ゼミ入りを早くに決めたのは,基礎演習(2年生のゼミ)の受講生だった小路望さんと清水翔平くんでした。どちらもゼミに入ってくれたらいいな,と私が望んでいた学生でした。小路さんは2回生の終わりから,8代目と一緒に嵐電主催のプレゼンテーション大会へ参加,新今宮TICではスタッフのシフト調整を担当。その後も,重要な局面でいつも献身的な働きをしてくれました。清水くんは,高校地歴の教員免許を取得しての卒業。教員免許取得と松村ゼミでの活動の両立は,大変だったと思います。

 その後,同じ基礎演習から兪穎伶さん・劉沖さん・張宝くん・トウアコンさんの4名の留学生が,少し遅れて,新今宮TICで活躍していた川原美穂さん・山崎育美さん・坂田悠貴さん・新田麻紀さんもゼミ入り表明をしてくれました。留学生4名は兪さんを筆頭に成績もよく,協調性もある良い学生ばかり。活発な劉さんはソフトボール大会で,思いやりのある張くんはすき焼きパーティほかゼミイベントで,奥ゆかしいトウさんはまち歩きツアーで活躍してくれました。2011年夏の台北での夜市調査の際は,4名とも通訳として日本人ゼミ生をリードしました(【松ゼミWalker vol.77】参照)。

 川原さんとは一番よくすし寛へ通ったかも。山崎さんはとても堅実,彼女がスタッフ入りしていると安心できました。坂田さんと新田さんは悠貴(ゆき)と麻紀(まき)で,私がよく名前を呼び間違えたので怒られましたが,旅の経験値の豊富なたくましい女性に育ちました。いずれも心意気のある学生ばかりだったので,この段階で,9代目は大丈夫,と安心したことを覚えています。
 ところがその後,おそらく色々なゼミが獲得を狙っていた小林志帆さん・高橋菜央さん・加藤宏実さん・和田昂之くん・内田裕規くんが,相次いで松村ゼミ入りを表明…。国際観光学部はAO入試での入学者を学生リーダーに育てる方針で,様々な取り組みを進めて来ましたが,小林さん,高橋さん,加藤さん,和田くんは,その先陣を切った学生たちです。
 小林さんはゼミ長の昌山さんが海外留学で不在時,ゼミを取り仕切り,その後もリーダーシップを発揮し続けてくれました。高橋さんはしっかりもの,加藤さんはちゃっかりもの,ゼミ活動の展開で迷った時はこの二人とよく相談しました。私はこの二人の意見を,新しいことへ取り組むかどうかの判断基準にしていました。和田くんは国際観光学部の学生委員長として活躍しながら,「新世界・西成 食べ歩きMAP」の作成でも活躍してくれました。見た目は少し怖そうでしたが,内田くんは後輩への気配りもできる心優しい学生でした。

 改めて,集まった17名の9代目ゼミ生たちの顔を見渡すと,国際観光学部のなかでも,特に積極的でよく動く精鋭ばかり…。ゼミを結成した頃,「これは責任重大やなあ…」と思いました。
 ところが,幸いなことに,7代目が軽やかに創設した新今宮TICは,個性派ぞろいの8代目が見事に守り育て,絶好の状態で9代目へと引き継がれました。後に続く10代目も,数こそ少ないが能力の高い学生ばかり。この7代目から始まる4年間の軌跡は,本当に奇跡だと感じます。

 9代目は先輩にも後輩にも恵まれ,私が育てなくても,新今宮TICという場所を拠点に,自分たちが考えて自分たちで頑張れば,色々な人たちから評価していただける環境にありました。まさに「継続こそ力なり」。
2012年度,卒業した9代目を核として,色々なプレゼン大会に出場して,色々な賞をいただきました。しかし私は,9代目の能力を全て活かし切れたとは思っていません。黙々と裏方に徹しようとする控え目なゼミ生もいました。井上さん,兪さん,川原さん,山崎さん,和田くん…,おそらく表に出てプレゼンする機会さえあれば,大いに活躍していたことと思います。

 さて,卒業式が終わり,リッツカールトンでの謝恩会も終わり,松村ゼミの卒業生たちは,在校生有志が待つ新今宮のホテルセレーネへと急いで帰りました。そこではゼミの後輩たちがホテルの一室で,手作りのビンゴ大会を用意して待っていました。

 松村ゼミの卒業式は,何の思い出もなくただばか騒ぎするような日ではなく,語り合うことが多すぎて時間が惜しくてしょうがない1日でした。また,必ずゼミの同窓会を行うので,9代目ゼミ生たちも,今後はOB・OGとして参加してください。