2011.5.13

松ゼミWalker vol.67 ぶらり学生まち歩き 第2弾:達人と行く西成・浪速の立ち飲みB級グルメ巡りの旅(レポーター:和田昂之)

TIC終わったら立ち飲みにでも行かへんか…

謎の人物 西口さんはすごい人でした!!

 2011年4月30日。この日,新今宮TICに西口宗宏さんが来訪された。西口さんは,松村先生が顧問を務める大阪国際ゲストハウス地域創出委員会(OIG)の委員長であり,サポーティブハウスおはなの経営者であり,OIG加盟のビジネスホテルラッキーの経営者であり,萩之茶屋の町会長であり,簡宿組合の理事であり…釜ヶ崎でとても多彩に活躍されている方です。新今宮TIC開設の仕掛け人でもあったので,時々,新今宮TICの様子を見に来ていただいています。
 和田はこの日の新今宮TICのリーダーとして,運営にボランティア参加していました。そして,新今宮TICの運営が終わった後,一緒に買い物でも行こうかと思い,親友の平田瑛(阪南大学国際観光学部3年生・榎戸ゼミ)を新今宮TICに呼んでいました。すると西口さんから「TIC終わったら立ち飲みにでも行けへんか?」とお誘いを受けました。私は飲みに行くのは好きな方だし,平田君と一緒に連れて行っていただくことにしました。
 新今宮TICは運営が終わるとすぐに,その日の運営日誌をリーダーが松村先生にメールで報告し,松村先生経由でゼミ連絡網からゼミ生全員に運営日誌が届くようになっています。ボランティアスタッフが毎日入れ替わるので,この運営日誌で引き継ぎや近況などを周知徹底します。この日の運営日誌の最後に,「これから西口さんに平田君と一緒に飲みに連れて行ってもらいます」と書き,松村先生にメールしました。すると間もなく,松村先生から,「その飲み会,まち歩きレポートにしろ。どこに行き,どんな会話したか,記録して書いて。よろしく。西口の兄貴は,間違いなく,西成の達人の飲み方を知っています。兄貴に確認しながら,怒られん範囲で写真もとれ。」との指令が入りました。

1軒目は伝説の立ち飲み「難波屋」

 このメールで気合の入った私と平田君は,西口さんに連れられ歩き始めました。そして,わずか数分のまち歩きで,釜ヶ崎の核心部分へと向かいました。私は2010年のJICA研修に同行させていただき,松村先生の案内で釜ヶ崎をフィールドワークしたことがあります(松ゼミWalker vol.53参照)。しかし,お酒を飲むという目的でまさか同じ場所を歩くとは思わなかった。そして1軒目に到着。ここから大阪の本気を知ることになる…。
 1軒目は「難波屋」。ここは西成警察のすぐ近く,知る人ぞ知る伝説の立ち飲み屋さんだそうです。とりあえず狭い,そしてここを知らない若い人がフラッと寄れる場所では絶対にないなと思ったのが第一印象。西口さんから「作るチューハイいっとけ!」とアドバイスを受け,私と平田君は「作るチューハイ」なるものを頼みました。するとでっかいコップに氷,小さいコップに焼酎,ビンに入ったレモンのジュースが出てきた。これで,なんとなく意味がわかった。そして,でっかいコップに焼酎を注ぎ,レモンジュースをまた注ぎ,軽く混ぜ合わせて,「作るチューハイ」の完成だ。ちなみに難波屋には灰皿がない。灰皿は地面。
 西口さんは「ここは麻婆豆腐がうまいから」と注文。出てきた麻婆豆腐は値段の割にびっくりするほどの大盛りだった。見た目はいたって普通,口に入れて感動。辛いがとろみがありマイルドな味でとても美味しかった。最後に,今が旬というソラマメをいただき,難波屋は終了。3人で飲み食いをして1250円。信じられない,安い!!

ブタのホルモンを初めて食べたが安くて美味い!!

 2軒目は「霧島の豚鳥店」。ここは,立ち飲みではなく椅子のあるお店だった。私と平田君は日本盛の熱燗を頼む。そしてメニューを見るとまた驚き。鍋が450円でその他は350円以下と破格の値段。ここでは,豚なんこつ味噌煮込みとぼんじり,豚ホルモンの盛り合わせを注文しました。豚のホルモンを食べたのは初めての経験でした。とりあえず美味い。そして,酔いが回ってきた私たちは,西口さんとの話も弾みました。しかし残念ながら,ここでの西口さんとの会話は,松ゼミWalkerで公表できるような話ではありません。でもとても「深イイ話」ばかりでした。これを聞きたい人は,新今宮TICのスタッフとして参加して,西口さんから誘われるのを待ってください。

メーデー前日の三角公園はいつもと違う雰囲気

 霧島の豚鳥店を後にして,ほんの数十メートル歩いて,釜ヶ崎の三角公園へ。松村先生案内のフィールドワークで一番緊張したあたりです。この日の三角公園は妙に盛り上がっていました。メーデーの前日ということで,三角公園でその前夜祭がある模様。西口さんは私たちを連れて,「ああ毎度,毎度,毎度…」とあちらこちらに挨拶しながら,三角公園のなかへ。「昔はこの公園にジャングルジムや滑り台もあったんやで」と教えてくれた。そして,ステージにはスクリーンの代わりに白い大きな布を使い,そこに何か映像を映し出そうとしていた。
 雰囲気が分からず戸惑う私たちだったが,周りを見渡すと普通に遊ぶ子供たちの姿。松村先生とのフィールドワークの際,この三角公園は全くの異世界のように見えた。でもこの日の三角公園では子供たちが必死にサッカーボールを蹴っていて,そのなかになぜかホームレスのおっちゃんらも入っていて…お祭り騒ぎで…。何とも言えない不思議な場所となっていました。そこで思ったのは,私が思っているよりも,この地域には元気があり,活気があるということ。そして,普通の生活があるということ。「怖い」とか「薄暗い」というイメージのあった釜ヶ崎だが,西口さんの話を聞きながら一緒に歩いて自分の目で見ると,自分が想像していた釜ヶ崎とは全く違い,少し反省してしまった。松村先生とのまち歩きとは全く別物の良さがありました。

浪速区新世界の「のんきや」へ

 三角公園を後にして,私たちは新世界へと向かいました。新世界は浪速区にあります。向かう途中,西口さんの語るむかしの釜ヶ崎,西成の様子がとても勉強になりました。こういう語りは,実際に住んでいる人でないと語れないし,逆に聞く私たちも,歩いて実際に見ながら話を聞かないと想像も理解もできない。これぞまさしくフィールドワーク,本当にいい経験をしているなと思い,嬉しく思いながら歩きました。
 そう思っている間にジャンジャン横丁へ。「今から新世界で一番美味いどて焼き食わしたるわ!」と西口さん。松村先生が「西成の達人の飲み方を知っている」と称賛する西口さん,私たちのテンションは上がりました。3軒目は立ち飲みの店「のんきや」。私たちはにごり酒,西口さんはハイボールを頼み,そして,おすすめのどて焼きはもちろん,おでんのねぎま,たけのこ,鯨のさえずりも注文。まずはどて焼きを口に…,くせがなく,甘すぎずちょうどいい味加減。とりあえず「美味い!」と二人声を揃えた。そして鯨のさえずり。西口さん曰く「キタやミナミなら1000円は出さな食われへん」とのこと。確かに私はあまり鯨を食べたことがない。今では高級食材の鯨。味わっていただいた。とても酒に合った。ここではトータル2310円。新世界のお店はよっぽど飲まないと儲からないなと思った。そして,のんきやを出て4軒目へ。私も平田君もかなり酔っていましたが,まだ大丈夫。

串カツの「近江屋」で地元愛を語る!!

 最後は串カツの「近江屋」。ここは,2年前のオアシスモニター宿泊の際,松村先生と一緒にフィールドワークへ行ったメンバーは皆,松村先生に連れて来てもらったお店だった(松ゼミWalker vol.21/vol.22参照)。当時,私は1年生だったのでお酒は飲めず,串カツだけを食べました。ここの串カツは,「だるま」などの串カツとは全然違い,ふわっとしていてもっちりした衣が特徴です。2年前には飲めなかった生ビールも注文。気持ちよく酔った私たちは,西口さんをはじめ,隣に座っていた京都から来たおっちゃん,近江屋の店員さんと,楽しく会話しました。そのなかでも印象的だったのは,西口さんがこうやって私たちを飲みに連れ歩いてくださった理由だ。「伝統を守り続ける。新しい客よりも,昔からの労働者やリピーターを大事にしてるのが今日行った店や。地元に根をはり愛する気持ちが大事なんや。伝えたいのはそこ!」私は深イイと思ったし,西口さんの地元愛を感じた。
 ふと気づけば,空は,いつの間にか暗くなっていた。楽しい時間はアッと言う間に過ぎた。この日の経験はとても貴重だった。最後の近江屋は別として,西口さんという案内人がいないと,絶対に入らないだろうし入れない,とてもディープなお店ばかりだった。釜ヶ崎や新世界の立ち飲み屋さん,若い人は近寄らないしなかなか入る勇気もわかないと思う。でも入ってみると,決して怖いところなどではなく,本気の大阪がそこにあり,とても安くて美味しいものがあり,楽しく飲める雰囲気があった。これは大学では絶対に習えないが,とても貴重な経験だったと思う。実際歩いて飲んで教わって,これがホンマの文化なんだと思いました。

一緒に回った友人の感想と松村先生からの一言

平田瑛(国際観光学部・3年)

 私はたまたま偶然が重なり,このまち歩きに参加させてもらうことになった。先に結論を言わせてもらうと,本当にためになることばかり教わり,大学の授業では絶対に学べないものを学びました。
 今回,人生で初めて立ち飲み屋に行きました。私たちの世代で,立ち飲み屋へ行くことはまずないと思います。しかも西成のど真ん中の立ち飲み屋…,かなり不安はありましたが,店に入ると常連客が当たり前の様にいて,店で楽しそうに野球の試合を観ながら夕方から酒を飲んでいました。1軒目の難波屋の麻婆豆腐は本当に美味しかった。
 ジャンジャン横丁の「のんきや」は何度もお店の前を通っていたのですが,入ったことはありませんでした。おでんとどて焼きがメインの立ち飲み屋さんでしたが,どれも美味しかった。最後の「近江屋」もフワフワの衣が初めて経験した食感でした。新世界の串カツ屋は,大きなチェーン店などもありますが,小さなお店で常連客に愛されているところの方が雰囲気もあるし,美味しいと思いました。大きなチェーン店ばかりが目立ちますが,こういう小さな雰囲気の良い店の方が絶対にいいと思います。4軒のお店を飲み歩き,どのお店も個性が強く美味しいところばかりでした。
 最後に西口さんは西成出身で,まちを愛しておられ,何とかまちをいい方向へ変えていきたいと活動されていて,地元愛にあふれる熱い方でした。ごちそうさまでした。

松村先生からの一言

 西口宗宏さんによる西成区から浪速区にかけてのディープな立ち飲み屋巡りツアー,私も何度も経験しましたが,本当に面白く奥深いものです。西成区の立ち飲み屋は一般的にとても入り難い印象があり,達人と一緒に巡るのが何よりの近道です。このツアー,本気で企画すれば,一般からもかなりの参加希望者がいるのではないかと思います。今回の和田君と平田君が連れて行ってもらったお店以外にも,西成区から浪速区にかけては,隠れたA級・B級・C級グルメの名店がいっぱいあり,西口さんはそれを熟知されている数少ない達人のひとりです。
 西口さんによるこのツアーは,新今宮TICのボランティアスタッフの特典のひとつとなっています。歴代松村ゼミOBたちも,男性を中心として,西口さんとの「西成・浪速ディープな飲み歩きフィールドワーク」を経験しています。西口さん,いつもありがとうございます。