2013年度 スプリングセミナー(研究成果報告会)を開催しました

 スプリングセミナーは、本学の教員が専門分野から身近なテ−マを選んで、一般社会人に分かりやすく解説する講座です。
 今回は、3月8日(土)、本キャンパス622教室において、阪南大学産業経済研究所が実施する助成研究及び阪南大学叢書で発表した最先端の学術研究成果等の内容を紹介する講座として、「みんなで考えよう!観光まちづくり—誰もが主人公!わがまちの『魅力づくり』の秘訣」をテーマに開講しました。
 講師である本学国際観光学部森重昌之准教授より、私たちが住む地域資源をどう探せばいいのか、眠っている地域資源をどう磨き上げ、地域が誇れる宝物にできるかなど、地元が一体となって取り組んでいる地域の事例を取り上げ、参加者の40名弱の方々と質疑応答をしながら、一緒に考えました。

 観光というと、余暇活動のイメージが強いですが、観光には産業や異文化体験など、多様な側面があります。この多様性を分析・解明することが、阪南大学国際観光学部の学びです。
 従来、魅力的な観光資源の周りに飲食店や土産物店などを集める、「観光地づくり」が行われてきました。しかし、「観光地」と呼ばれない地域であっても、魅力的な資源があれば、人びとはそこを訪れます。こうした魅力を活かしてまちづくりを進めることを「観光まちづくり」と呼んでいます。それでは、地域の魅力をどのように引き出せばよいのでしょうか。
 例えば、北海道南西部にある黒松内町は、かつて典型的な過疎地域でした。そこで、町内にある「北限に自生するブナ林」に着目し、ブナ林を保全しながら活用するビジョンを策定し、それに基づいて施設を整備したり、特産物を開発したりしました。その結果、現在の黒松内町は「ブナ北限の里」として知られ、観光客が増えただけでなく、移住者も現れるようになりました。

 また、北海道東部に位置する標津(しべつ)町は、酪農業とサケ漁業を基幹産業とする地域です。サケ漁業を取り巻く環境が大きく変わる中で、「サケ=漁業者のもの」という考え方から、みんなで守り育てる資源という考え方に変化していきました。すると、サケだけでなく、「サケの育つ自然環境」が大切であるという考え方に広がり、今ではさまざまな体験型観光や特産物開発が進められる地域になっています。

 このように、地域の魅力を引き出し、いきいきとした営みを見出した地域はたくさんあります。そして、地域固有の魅力はどのような地域にも眠っています。なぜなら、資源は“ある”ものではなく、“なる”ものだからです。そこで、自分たちにとって大切なものや自慢したいもの、残したいものを探してみてください。そして、なぜ大切なのか、なぜ自慢したいのか、なぜ残したいのかについて考えてみてください。その答えが地域にある資源の魅力や価値になります。さらに、地域にある魅力や価値を地域外の人びとに伝えるしかけや工夫をすれば、それらが多くの人びとに伝わり、さまざまな交流が生まれます。「観光まちづくり」とは、観光のためのまちづくりではなく、人びとのふれあいや交流を生み出すための活動です。ぜひ、皆さんも地域の魅力を探し、地域で暮らす楽しさを見つけてください。
 なお、当日の報告内容の詳細については、阪南大学叢書101『観光による地域社会の再生』(現代図書)でもご覧いただけます。(3月下旬刊行予定)