本学 経営情報学部関智宏准教授の阪南大学叢書『現代中小企業の発展プロセス−サプライヤー関係・下請制・企業連携− 』(平成23年3月刊行・ミネルヴァ書房)が中小企業に関する図書または定期刊行物に発表された論文のうち優れた作品に授与される「中小企業研究奨励賞」準賞を受賞しました。

関准教授は平成22年度も経済部門において、『産地の変貌と人的ネットワーク−旭川家具産地の挑戦−』(共著・ミネルヴァ書房)で準賞に入選しており、2年連続の快挙となります。

「中小企業研究奨励賞」は、商工中金の創立40周年を記念して昭和51年に開始され、昭和62年から当財団で引き継ぎ実施しているもので、歴史と権威ある表彰制度です。平成21年度まで通算34回、表彰点数144点に及んでいます。

阪南大学叢書とは、阪南大学産業経済研究所の所員が研究成果を広く公開するため、シリーズ化して刊行助成を行っているもので、これまでにも「カナダ首相出版賞」、「日本流通学会奨励賞」や「大平正芳記念賞」等において受賞しています。

関准教授のコメント

このたび、阪南大学叢書89として出版した『現代中小企業の発展プロセス—サプライヤー関係・下請制・企業連携—』(ミネルヴァ書房、2011年3月刊)が、財団法人商工総合研究所の中小企業研究奨励賞準賞を受賞しました。中小企業研究にとって名誉と伝統のある賞を受賞でき、この場をお借りし関係者の方々に厚く御礼を申し上げます。

【本書の概要】

本書は、アセンブラーとサプライヤーとの受発注取引関係をサプライヤー関係としたうえで、サプライヤー関係、下請制、企業連携のそれぞれのアプローチから、特にサプライヤー関係のなかでの中小企業の発展プロセスについて考察したものである。
1990年代以降の経済社会の国際化や情報化などの進展は、国境の垣根を越えた競争を激化させている。これにより、サプライヤー関係の日本の代表的形態である下請制は大きな変化を求められた。下請中小企業は自らの存立可能性を高めるべく、必ずしも発注企業に依らない経済行動を模索していくことになった。こうした動きは「脱下請」とも言われるが、その過程や、過程をつうじた企業発展に関する研究蓄積はほとんどなかった。
そこで筆者は、サプライヤー関係に関連した先行研究を踏まえ、また日本の下請制研究をも踏まえ、1990年代の日本の下請制を取り巻く経営環境の変化と下請中小企業の存立と行動を「レント」概念の一形態である「関係レント」の分析アプローチから明らかにしようとしている。さらに、「関係レント」の生成と分配の観点から下請中小企業の存立問題を指摘するだけでなく、下請中小企業の発展可能性を指摘している。この分析アプローチを用いた下請中小企業研究は皆無であり、下請制研究の発展に寄与するものと期待される。
また本書では、中小企業連携の学術研究がほとんど蓄積されていないなかで、事例を丹念に収集しているだけでなく、さらにそれを、下請中小企業をはじめとする中小企業の発展を可能とする場として位置づけている。中小企業連携を、中小企業の発展を可能とする場として「レント」概念を用いた分析から捉え、独自に分析を行っている。さらに、その過程や条件としての母体組織、さらには新連携制度の現状と課題までも事例やアンケート調査に基づくデータ分析から明らかにしている。
このように本書は、伝統的な議論を踏まえながらも、独自の分析による接近を試みようとする学術的研究の萌芽である。本書のように体系的に検討され、かつ中小企業経営さらには中小企業政策でのインプリケーションを導出している学術研究はおそらく他に類を見ないと考える。本書が、このたびの受賞をきっかけとし、広く世に知られ、日本の下請中小企業の発展を考える際の1つの参考になることを望む。