身近な経営情報あらかると

 本連載では、われわれ阪南大学経営情報学部の教員が日頃の研究成果をもとに、みなさんの暮らしに役立つちょっとした知識を提供していきたいと考えています。研究分野はさまざまですが、いずれの場合も社会に役立つことを最終目標としています。難しい理論はとりあえず脇に置いて、身近な視点から経営情報学部に興味を持ってもらえれば幸いです。

お金の話から

 さて、お金にまったく興味のない人はいないと思います。よく、「お金がたくさんあっても幸せとは限らない」と言われますが、お金がないと十中八九不幸なのも確かです。では、お金を効果的に増やそうとすれば、株式投資や定期預金、あるいはギャンブルといった数ある選択肢の何を選べばよいでしょうか。

金利の重要性

 もちろん、答えをひとつに絞ることはできません。それは人によって、失敗のリスクをどこまで許容できるかが異なるからです。しかし、手掛かりはあります。それが今回のお話のカギとなる「金利」という言葉です。みなさんご存じのように、金利とはお金を貸すことに伴うレンタル料のようなものであり、銀行預金からも利息を受け取ることができます。

お金が増えない時代

 では、現在の金利はどれくらいでしょうか。大手のM銀行の場合、普通預金の金利は直近で0.001%です。これだと、100万円を1年間預金して受け取られる利息は、わずか10円(税金を引くとおよそ8円ですが、ここでは税金は無視します)です。このまま預金すれば、2年後に100万20円、3年後に100万30円、なかなか増えませんね。

2倍になるのは何年後?

 この調子で預金を続けた場合、利息によって元手の100万円が2倍の200万円になるのは何年後でしょうか。それを簡単に計算するための手段が、つぎの72の法則です。

72÷○%=□年

○のところに金利をそのまま入れれば、□年後という答えが得られます。

驚きの結果

 いま、72÷0.001=72,000ですので、M銀行でお金を運用して2倍になるのは、なんと72,000年後となります。われわれが生きている間に期待できそうもありませんね。しかし、昔は郵便貯金でも、金利が4%を超える時期がありました。これだと、72÷4=18ですので、18年後には利息だけで100万円もらえたのです。

倍々の法則

 この72の法則は、倍々の法則です。金利4%の例になぞらえれば、18年後に元手は2倍になりますが、さらに18年経つと(36年後)そのまた2倍の400万円になります。この調子で、54年後には8倍、72年後には16倍まで増えます。金利の条件がよければ、預貯金でも十分に老後の資金が手当てできたわけです。

投資戦略を考える

 ところで、世の中にはリスクに応じて、さまざまな金利の投資手段が用意されています。たとえば、2018年に金利3%の商品に100万円投資すれば、24年後に200万円になります。続いて2019年以降も、毎年同じ商品に100万円ずつ投資を手掛けるとします。みなさんでしたら、この投資を何年間継続しますか?

ちょっとした年金

 正解はありませんが、わたしなら2042年で投資を終了します。なぜなら、その時点で24年前(2018年)に投資した100万円が200万円になって戻ってくるからです。利益の100万円は小遣いとし、残り100万円はくだんの商品に再投資します。すると、2042年以降、投資を追加することなく、毎年100万円の小遣いがもらえることになるではありませんか!

機会費用

 このように、年間4%の利益を保証する投資先が存在するときに、全財産を金利0.001%の条件で貸し付けることに意味はあるでしょうか。かりに、あえて0.001%での貸し付けを選べば、われわれは年間3.999%に相当する利益を失います。経済学では、ベストな投資機会を逸することで失うこの利益を機会費用と呼んでいます。

お金だけの問題ではない

 機会費用の考え方は、普段の行動を考える際にも、重要な指針となります。われわれの眼前には、無限の選択肢が存在します。そのいずれを選ぶことも自由ですが、その選択は自身の人生をもっとも豊かにする決断なのでしょうか。われわれの時間には限りがあるからこそ、一瞬一瞬の行動選択に慎重になる必要があると言えます。