【松ゼミWalker vol.223】西成WAN第四弾が完成

 西成WAN(Wall Art Nippon)は,西成区あいりん地区の落書きだらけの壁に,色鮮やかなウォールアート(Wall Art)を描き,街に賑わいをもたらすことで,防犯カメラではなく人の目で安全と安心を築き,その志しを西成だけでなく日本全国へ広めて行こう,という社会的実践です。
 西成WANを推進するのが西成アート回廊プロジェクト実行委員会で,松村が委員長を努め,地元西成出身のラッパーのSHINGO★西成さんが総合プロデューサーを担当,歴代の松村ゼミの学生たちも深く関わっています。
 これまで,西成WANでは,2015年1月の第一弾,2015年9月の第二弾,2016年12月の第三弾とウォールアートを描き,松ゼミWalkerでも,その過程や活動を紹介してきました。
 以前の松ゼミWalkerでも触れましたが,残念ながら,最も規模も反響も大きかった第二弾の壁画が,あいりん総合センターの建替工事の一環で,ゴールデンウィーク後に潰されることになりました。西成WANにとってはつらく悲しい状況ですが,まちを再生しようと,地域で相談して決めた前向きな話で,「自分たちのまちは自分たちでつくる」,という第二弾のメッセージにも合致しているので,私たちは納得しています。

 嘆き悲しむよりも大事なのは,アセラズクサラズアキラメズ,前を向いて淡々と歩み続けること。そう思い,西成WAN第四弾を企画,実践しました。クラウドファンディングを利用した第三弾では,壁面ドナーも募り,西成WANで描ける壁面をいくつか確保しました。第四弾はそのうちのひとつ,ビジネスホテル和香の裏の駐車場のブロック塀とシャッターを選びました。阪堺電車今池駅の西側,駅のホームからも良く見える場所です。
 描いたのは,関西ストリートアート界の第一人者で,若手アーティストからもリスペクトされているZENONEさん。西成WANではお馴染みの巨匠CASPERさんもコラボで参加。二人とも,忙しいスケジュールを調整して,ボランティアで参加してくださいました。
 描く作業を開始する予定だったのは,2017年4月26日(水)。この日は,朝から雨模様。松村,協賛企業Calmaartスタッフ,ZENONEさん,SHINGO★西成さんら関係者が集まった昼前には,土砂降り。描く予定の壁面を滝のように雨が流れ落ち,みんな何もできず呆然。打ち合わせだけして解散しました。

 次の27日(木)は晴天。朝から集まれた人たちで下塗りを手伝い,ZENONEさんが驚異の集中力で快調に描いていきました。松村が仕事を終え駆け付けた15時過ぎには,全体の構図が分かり,一部のレターはもう完成していました。SHINGO★西成さんがツイッターでつぶやいたこともあってか,何名かのファンも見に来てくれました。
 完成予定日の4月28日(金)は快晴。作業は朝から順調に進み,昼過ぎからCASPERも参加。協賛企業Red Bullの職員,新聞社のカメラマン,関西在住のアーティストたちが駆け付け,地元ギャラリーも見守るなか作業は進みました。完成したのは日の入りのわずか前,仕上げのNISHINARI WANロゴはいつもステンシルを使うのですが,ZENONEさんに手書きしてもらいました。
 第四弾のコンセプトは淡々とカッコよく。描く内容は,特にSHINGO★西成さんのメッセージを込めることもなく,ZENONEさんにお任せしました。出来上がった作品はまさにグラフィティ・ライティング。デフォルメされたポップな書体で, MOLOTOWスプレーの多彩な色合いを活かし,Z,E,N,O,N,Eの6文字が,ZENONEさん独特の大胆かつ繊細なラインと陰影で描かれました。側面は,巨匠CASPERお馴染みのキャラクターが…。あえて作品の全貌は掲載しないので,ぜひ一度,現場へ見に行ってください。