【松ゼミWalker vol.131】 阿部野橋界隈の放置自転車問題の解決に向けたフィールドワークを実施!!

阿部野界隈の放置自転車問題は深刻!!

 阿倍野界隈には,JR天王寺駅,地下鉄御堂筋線・谷町線天王寺駅,近鉄南大阪線阿部野橋駅,阪堺電車天王寺駅前駅,地下鉄谷町線阿倍野駅と,実に5路線6駅もが集まっています。阪堺電車が南北に走る阿倍野筋の西側にはQ’s MALL,東側には2014年3月にグランドオープンするあべのハルカスと,大規模な商業施設が立地しています。

 阿倍野は間違いなく,大阪でも屈指の交通結節点であり,大阪を代表する繁華街のひとつでもあります。阪南大学に通う学生たちの多くも,近鉄阿部野橋駅で乗り降りして,賑わいを享受していることでしょう。
 その阿倍野界隈の繁華街は,広範囲にわたって,自転車放置禁止区域に指定されています。左図の黄色い部分が阿倍野区側の自転車放置禁止区域,赤い部分は2013年5月に拡大された大阪市立大学病院周辺の放置禁止区域です。
 しかしながら,実態として放置自転車はとても多く,歩行者や身体障害者や地域住民にとって,迷惑な状態が続いています。大阪市や阿倍野区も,放置自転車を減らそうと色々な施策を打ち,その実態を把握するための調査も行って来たのですが,放置自転車問題の解決に向けた実効力のある対策はなかなか見つからない,というのが現状です。

 昨年来,松村は,阿倍野区区政会議の「住環境部会」と関わり,放置自転車問題についての議論に加わるなかで,調査のための調査ではなく,課題解決の糸口を発見できるような調査が必要不可欠である,と主張してきました。と同時に,そのような課題解決型の調査を模索し立案し実行することは,阪南大学で学ぶ学生たちにとっても,大きく成長する原動力になるだろうと考え,阿倍野区役所へ大学との官学協働での調査実施を申し入れて来ました。阿倍野区役所側も,私たちの想いに応えて,阿倍野区の羽東良紘区長の指導のもと,全面的な協働・協力体制を整えてくれました。

調査はとりあえず成功,でも反省点や改善点も…

 2度にわたる事前調査と阿倍野区の谷川浩一・安全安心まちづくり担当課長からの情報提供を踏まえて,本格的な放置自転車調査は2013年12月1日(日)に行うことに決まりました。調査に参加したのは,松村が担当する「専門演習1」の10名,「専門演習2」の1名,ゼミOBの1名,「観光実習導入」の8名,「地域を読み解く」の16名,合計36名の受講生たちでした。
 調査自体は調査計画が立案されれば,実際の作業はごく簡単なものです。まずは,自転車放置禁止区域を10ブロックに分け(左図参照),調査参加者たちの能力を勘案しながら10グループと遊軍を作り,各グループの担当ブロックとそれを支援する遊軍を決めました。
 そして,午前10時からと午後13時30分からの2度にわたり,担当ブロック内の放置自転車数をカウントして歩き,自転車のどこかに貼られているはずの防犯登録を確認して記録しました。放置自転車のカウントが終わったら,放置自転車の多いホットスポットにスタッフを集め,自転車が出入りする状況を詳細に観察して記録する,という具合でした。
 調査日当日の集合は,あべのルシアスのイベントスペースに9時。そこに羽東良紘区長と谷川浩一担当課長も,学生たちの激励に駆け付けてくださいました。

 調査は臨機応変に進め,予定よりもかなり早く,16時過ぎに無事終了しました。幸いなことに誰一人,怪我することもトラブルにあうこともなかったので,調査自体はとりあえず成功したと評価できます。

 放置自転車の台数は午前で387台,午後で1,164台。防犯登録を確認して,ホットスポットを定点観察することにより,多くの新たな知見や,放置自転車対策の立案に向けたいくつかのヒントが得られました。例えば以下のような諸点です。
・阿倍野区に隣接する他の区で防犯登録されている放置自転車も多く,放置自転車問題は阿倍野区単独の施策では解決しがたく,より広域な連携が不可欠。
・大規模店舗の一時的な利用で,ためらいなく放置する人の場合は,駐輪場に空きスペースがある状態なので,駐輪場の場所の周知徹底とそこへの誘導を徹底すれば解決するはず。
・ホットスポットの観察から,どのような方々がどちら方面から来て放置し,どちら方面へ向かうのか,おおよその傾向が把握された。
 こうした調査の成果は後日,きちんと報告する機会を設けたいと思います。

 さて,今回の調査を終えて,参加したゼミ生たちからは,「もう一度,きっちりとやりたい。次はもっと効率よく,上手く調査できるはず。」という声があがっています。「こういう調査内容も盛り込んだ方がいいのではないか。」という積極的な提案も出て来ました。松村も今回の調査を経験して,調査マネジメント上のいくつかの改善点を見つけました。
 こうした反省や新たな提案を踏まえて,ごく近い将来,もう一度必ず,放置自転車の対策立案に向けた実態調査を行いたいと思います。
 なお,12月2日(月)の早朝,始発電車が動き始める頃,阿倍野の街がまだ起き出す前の放置自転車の実態を,松村とゼミ有志5名とで観察して回りました。基本的に,街が動き出す前,放置自転車は皆無に等しい状況でした。

 この早朝調査で,放置自転車は決して放棄自転車ではなく,街が動き出すのにともなって,誰かがどこかから乗って来て,阿倍野界隈に放置する,という事実が確認できました。
  • あべのルシアスでの打ち合わせの風景

  • 防犯登録を確認する調査スタッフたち

  • Q’s MALL西側の風景(朝10時頃)

  • Q’s MALL西側の風景(昼14時頃)

  • Q’s MALL西側の風景(早朝6時頃)

  • 朝の歩道橋下には放置自転車がちらほら

  • 昼過ぎの歩道橋下はびっしり

  • 同じ歩道橋下,始発前はこんな風景でした