【松ゼミWalker vol.128】 住吉大社・堺のまち歩きツアーを実施!!

外国人向け着地型ツアーを行う唯一の存在・新今宮TIC(教員 松村嘉久)

 新今宮TICは単に観光情報を提供する場ではなく,完全な形で着地型のまち歩きツアーを外国人向けに行っている全国でもおそらく唯一の存在です。
 通訳案内士法と旅行業法の時代錯誤的な分厚い障壁があるため,学生たちの力だけでは容易には事業化できない状況ですが,外国人向けの着地型ツアー催行に関しては,いつ事業化しても,存立し得るだけのノウハウと基盤をすでに築いています。
 数ある外国人向けまち歩きツアーのなかでも,住吉大社・堺方面へのものは,「ありふれた日常」と「ささやかな非日常」を楽しめる鉄板ネタです。このコースはもう何度も催行していて,その都度,何か新しいことを試してきたので,ツアーのオプションも充実してきました。今回も,その様子を学生たちのレポートでご覧ください。

参加者とツアー概要(3回生 池田千紘)

 2013年10月13日(日)の大安吉日,松村ゼミは新今宮地区観光まちづくり推進協議会との協働で,住吉・堺のまち歩きツアーを実施しました。住吉・堺のまち歩きツアーは,松村ゼミ恒例の行事でありますが,今回は,新今宮地区観光まちづくり推進協議会の構成員である阪堺電車とOSAKA旅めがねを主催するインプリージョンの支援を受け,ツアー参加者にアンケート調査を行いました。まち歩き当日は,インプリージョンのプロガイドの森なおみさんが同行指導してくださいました。

 ツアー参加者の募集方法は,従来と同じく,新今宮界隈の国際ゲストハウスと連携して行い,オーストラリア人女性2名,カナダ人女性1名,中国香港人女性1名,フランス人男性1名,ポーランド人男性1名がツアー当日集まりました。松村ゼミ所属の交換留学生,許善美(韓国の慶熙大学)・李家伶(台湾の国立高雄餐旅大学)もモニターとして参加してくれたので,女性6名・男性2名で計8名のモニターを確保できました。
 オーストラリアとカナダからの参加者はアジア系の親しみやすい方々で,住吉大社で伝統的な結婚式を見学できるかもしれないと知り,参加しようと思われたとのことでした。中国香港人女性はツアー当日の午前に日本へ到着したばかりで,ゲストハウスのフロントでチラシを見て,昼から特に予定がなかったので参加した,とおっしゃっていました。

 フランス人男性は2013年春の花見ツアーにも参加してくださった方でした。この方は大の日本好きで,フランスに帰国してから,日本語を学ぶため再訪日されていて,たまたまゲストハウスでポスターを見かけ,前回の印象がとても良くまた参加したい,と思ってくださったそうです。これまでのまち歩きツアーでも年度を跨いだリピーターがいた,と松村先生から伺っていますが,嬉しい限りです。
 スチール工場のエンジニアというポーランド人男性は,堺の刃物づくりの現場を見学できると聞いて,参加を決められたそうです。松村先生は来年の夏にポーランドで開かれる国際学会に参加される予定だそうで,阪堺電車の車内でこのポーランド人の横にお座りになり,日本からポーランドへの行き方やポーランド国内の観光事情などについて,熱心にご質問されていました。

 一方,日本人の参加者は,松村入門ゼミの1回生有志が7名,松村ゼミ3回生が11名,4回生が1名,これに松村先生と森さんが加わり,合計で21名。まち歩きツアーは総勢で27名となりました。新今宮TICの運営には,4回生の谷河里香さんと村上恵美さんの最強コンビが居残りました。
 さて,今回のツアーの概要は以下の通りでした。⇒ は阪堺電車での移動,→ は徒歩での移動,【 】内は見学あるいは体験したことを示しています。なお,今回のツアーでは,お馴染みの阪堺電車全線1日フリー乗車券「てくてくきっぷ」(大人600円)を利用しました。
 新今宮TIC → ホテル中央セレーネ(参加者登録) → 阪堺・南霞町駅 ⇒ 阪堺・住吉鳥居前駅 → 住吉大社【境内参拝,五大力,七五三,お宮参り,神前結婚式】→ 阪堺・住吉鳥居前駅 ⇒ 阪堺・綾ノ町駅 → 鳳翔館【町家体験,お茶会,和菓子】 → 水野鍛錬所【日本刀鍛錬,包丁づくり】 → 阪堺・綾ノ町駅 ⇒ 阪堺・恵美須町駅 → TOWER KNIVES OSAKA【堺包丁の解説,試し切り】→ 新今宮TIC前で解散

阪堺電車で住吉大社へ(3回生 江畑知恵)

 ツアー出発前の新今宮TIC内での打ち合わせにて,インプリージョンの森さんが電話で住吉大社に当日の神前結婚式の予定を問い合わせてくださいました。この日は大安吉日ということもあり,昼過ぎ13時から1件,14時から1件,本殿で神前結婚式が予定されているとのこと。私たちは13時に新今宮TICから出発する予定だったので,絶好のタイミングです。

 念のため,本隊が出発する前に住吉大社と鳳翔館へ,3回生の松川和矢君・山下喜央君と1回生の西澤明広君・藤原醇君が,現地での受け入れ準備をするよう,先発隊として出発しました。
 本隊は13時にホテル中央セレーネを出て,阪堺電車で南霞町駅から住吉鳥居前駅へ向かいました。住吉大社へ到着して太鼓橋を渡り境内へ入ると,透き通るような秋空のなか,七五三参りやお宮参りの参拝客で賑わっていました。先発隊の山下君の案内で,本隊は境内の第一本宮へ。第一本宮内ではまさに神前結婚式が行われている最中でした。
しばらくその様子を見学してから,外国人も楽しめる「五大力」の石探しに向かいました。無数の玉砂利のなかから,「五」・「大」・「力」という漢字の書かれた小石を見つけ,肌身離さず持っていると,体力(physical power)・智力(intelligence)・財力(money)・福力(lucky)・寿力(long life)のパワーを授かるというものです。アジア系の参加者が多かったこともあってか,みなさん真剣に三種類の小石を探しておられました。

 住吉大社はお宝の宝庫,次はどこへ行こうかと思っていると,先発隊の山下君から,第一本宮での神前結婚式の儀式が終わり,新郎新婦が移動する模様,との連絡が入りそちらへ移動。神前結婚式の行列の後をついて太鼓橋へ行くと,14時から第一本宮で挙式する次のカップルとも遭遇。先発隊のおかげで,住吉大社へ到着してからわずか30分ほどの間に,たっぷりと神前結婚式を見学でき,特に女性の参加者たちは十分満足された様子でした。
 松村先生のお話によると,大安吉日の土日・祝日の住吉大社は,外国人個人旅行者がフラっと立ち寄っても確実に楽しめる「鉄板」だそうです。松村ゼミがこれまで何度も新今宮発の住吉・堺方面ツアーを行ってきた影響もあり,新今宮界隈の外国人個人旅行者の間で,この情報は口コミでかなり語り継がれて浸透していて,休日の吉日(lucky day)は阪堺電車で住吉大社へ,という流れがすでにできているそうです。世界文化遺産登録されている京都や奈良の寺社は,観光客で混雑する土日・祝日を避けて平日に訪れ,土日・祝日はお気軽に住吉大社へ行き,大阪市民の日常的な信仰対象として活きている神社を見るようになって欲しい,と松村先生はおっしゃっていました。

鳳翔館で町家体験をして水野鍛錬所へ(4回生 大宅和佳)

 次に,再び阪堺電車に乗り綾ノ町駅へ向かい,駅から徒歩2分の鳳翔館へ行きました。鳳翔館では先発隊の松川君が,堺銘菓の小島屋「けし餅」を買い,柏木館長夫妻とお抹茶の準備をして待ち受けていました。鳳翔館は国際観光学部の故・前田弘教授がゼミ生たちとともに支援されていた町家休憩施設だそうです。
 故・前田弘教授は,ちょうど現在の3回生たちの阪南大学AO入試があった日に突然亡くなられたそうで,鳳翔館の柏木館長夫妻と松村先生は,懐かしそうに前田先生の思い出話をされていました。柏木館長夫妻は,「前田先生がいらっしゃらなければ,今の鳳翔館はなかっただろう。もし生きていらっしゃったら,もっと色々なことをご一緒にできたのに…。ほんまにええ先生やったよ。」とおっしゃっていました。

 さて,ツアーの方は,外国人参加者の方々を二階のお座敷へ案内し,柏木館長自らたてていただいたお抹茶でお茶会を行いました。お茶席は10席用意されていたので,外国人参加者に松村ゼミの交換留学生と留学生が加わりました。

 お座敷では当然ながら正座,30分ほどのお茶会でしたが,最後の方になると,この正座の姿勢が外国人参加者の方々には,少し辛かったように見受けられました。二階の配膳係り以外の学生たちは一階で待機,冷たいお茶と残りの「けし餅」をいただきながら休憩,鳳翔館に来られていたお客さんたちとのんびり過ごしました。
 鳳翔館を出てからは,歩いて5分ほどのところにある水野鍛錬所へ向かいました。水野鍛錬所は包丁だけでなく,日本刀の鍛錬も行っている伝統的で本格的な工房でした。鍛錬所内の見学は20名くらいが限界とのことでしたので,外国人参加者のほか,留学生や英語の得意なゼミ生たちを厳選して入りました。残りの学生たちは,堺旧市街地の下見をした松川君の案内で別行動,フリーのまち歩きに出かけました。

 水野鍛錬所の中へ入ると日本刀を鍛錬するスペースがあり,そこはしめ縄で結界されている神聖な場所でした。案内してくださった水野淳さんは,日本刀や堺打刃物の製造過程を丁寧に説明してくださったのですが,特殊な専門用語が多く,英語の得意なゼミ生たちも松村先生も悪戦苦闘。「地金(じがね)」,「玉鋼(たまはがね)」,「鍛錬」,「焼き入れ」,「刃文(はもん)」などなど。
 松村先生は,「この後で,もっと英語での刃物の説明が上手い,ビヨンという外国人のいるところへ行くので,ここでは工房の雰囲気を楽しんでください。」とおっしゃると,水野さんもビヨンさんを良くご存知だとのことでした。
 水野鍛錬所にて興味津々だったのが,スチール工場でエンジニアをしているというポーランド人男性でした。工房に置いてある機械や道具を注意深く観察しては質問され,うなずきながら「Amazing!」や「Great!」を連発されていました。プロガイドの森さんも,鳳翔館や水野鍛錬所のことはご存知なかったようで,「こんないい施設があるなんて!!」と驚いていらっしゃいました。

アンケートに回答していただき,新世界へ(3回生 許善美)

 水野鍛錬所を出てからは阪堺・綾ノ町駅へ行き,終点の恵美須町駅を目指しました。途中の我孫子道駅で乗り換えなければならず,少し待ち時間があったので,その際にツアー参加者たちにアンケートへの回答をお願いしました。
 アンケートはA4裏表2ページの簡単なもので,質問は英語で書かれています。参加者たちには恵美須町までの阪堺電車のなかで,熱心に回答していただきました。
 私たちがアンケートで最も注目していたのは,「このツアーの経験を全体としてどのように評価しますか?」という質問です。結果,優Excellentが5名,良Very goodが1名でした。もうひとつ注目していた質問は,「もしこのツアーに参加料を払うとしたら,どのくらい払ってもいいですか?」というものでした。その答えは,500円以下が2名,500円から1,000円が2名,1,000円から1,500円が1名,1,500円から2,000名が1名と,意見が分かれました。「払うなら参加しない」という回答は,幸いなことに一人もいませんでした。
 恵美須町に着いたら,通天閣の近くのTOWER KNIVES OSAKAという,日本の包丁を展示販売するお店へ行きました。ここの経営者は,日本語(大阪弁)・英語・フランス語・デンマーク語・ドイツ語をしゃべれるという不思議な外国人,ビヨンさんです。松村先生や森さんと大の仲良しで,とてもお話が上手で,陽気で元気で身体の大きな方です。

 ビヨンさんは英語で,堺の包丁の作り方を分かりやすく説明してくださり,説明だけでなく,その包丁を使って試し切りもさせてくださいました。何名かのツアー参加者が試し切りに挑戦,その切れ味に全員が本当に驚きました。ビヨンさんによると,松村先生はこの試し切りが大好きで,ここに来ると必ず毎回,楽しそうに挑戦されるそうです。
 何とこのビヨンさんのお店で,二人のツアー参加者が,堺の包丁と砥石を購入されました。なぜ購入されたのか伺うと,「本当に素晴らしい包丁なので,家族へのお土産にいいと思ったから。」ということでした。プロガイドの森さんは,日本人客ツアーをよくビヨンさんのお店に連れてくるそうですが,日本人客もよく包丁を買われるそうです。やはり試し切り体験して,「本物」なのを確かめられるのがいいのかもしれません。
 ビヨンさんのお店を出てから,みんなで揃って新今宮TICまで帰って解散しました。解散する頃,オーストラリア人女性たちが,みんなと一緒に晩御飯を食べたい,と言い出されました。そこで松村ゼミ有志で,外国人参加者たちと一緒に,焼肉の「友園」へ食事しに行くことになり,とりあえずいったん解散。その後,松村先生も加わって,「友園」で食事を楽しみ2回目の解散をしました。
  • Name Cardを書く参加者たち

  • 信号待ち

  • 太鼓橋前で新郎新婦の記念撮影

  • 結婚式へ向かう花嫁行列

  • 阪堺電車を待つ

  • お茶会の様子

  • 鳳翔館でくつろぐゼミ生たち

  • 移動中はそれぞれが会話を楽しむ

  • 試し切りはとてもエキサイティング

  • ビヨンさんの包丁さばきはプロ級

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