【松ゼミWalker vol.122】2013年京都国際地理学会議に参加して

2013年京都国際地理学会議に参加して(教員 松村嘉久)

 2013年8月4日(日)から9日(金),京都国際会館にて,「地球の将来のための伝統智と近代知(Traditional Wisdom and Modern Knowledge for the Earth’s Future)」というテーマで,2013年京都国際地理学会議(IGU2013 Kyoto Regional Conference,以下IGU KYOTOと略す)が開催されました。世界の地理学研究者が所属するグローバルな組織であるIGU(International Geographical Union)は,毎年夏に世界規模の国際会議を,夏季オリンピックイアーに大規模な大会を開催してきました。

 日本でIGU大会が開催されたのは,モスクワオリンピックのあった1980年東京大会,今回のIGU KYOTOは実に33年ぶりです。IGU KYOTOの出席者は,世界70余りの国や地域から1,500名近くにおよび,このうち海外からの研究者が過半を超え,発表数も1,200件を超える特大規模の国際会議となりました。
 IGU KYOTO組織委員会委員長は,私の大阪市立大学での学生・院生時代の恩師である石川義孝先生(現・京都大学教授)で,私も2010年春に組織委員会入りのお誘いをいただき,アウトリーチ委員に就任しました。IGU KYOTOのポスターは3年前に出来上がっていて,当時それを研究室や新今宮TICの壁に張り出したら,「えらい先の告知ですね」,と今はもう社会人となっている7代目ゼミ生たちに冷やかされたことを覚えています。月日が流れるのは本当にあっという間でした。
 IGU KYOTO開催に向けて,私は微力ながら,組織委員会の一員として活動を行ってきました。海外の研究者と会えば,必ず別れ際に「IGU KYOTOで再会しましょう」というのが口癖でした。思い起こせば,昨年夏のIGUケルン2012大会への参加も,アウトリーチ委員として,IGU KYOTOの宣伝を行うことも目的のひとつでした。(https://www.hannan-u.ac.jp/doctor/tourism/matsumura/mrrf43000000ksqf.html参照)

 アウトリーチ委員の役割は会議が始まるまでに終わることもあり,西成ライブエンターテイメントフェスティバル2013の準備で出席できなかった9日(金)の閉会式を除いて,私は主な基調講演やイベントの類には全て参加させていただきました。
 京都大学百年時計台記念館大ホールで開催された『市民公開講座』は,IGU KYOTOのプレイベントで,私はこの準備と運営をお手伝いさせていただき,芥川賞作家の楊逸さん,前・京都大学総長の尾池和夫先生ら講演者とお話させていただきました。
 秋篠宮殿下ご夫妻もご臨席くださった5日(月)の開会式では,恩師・石川義孝先生の見事な歓迎スピーチを見届けました。地理学への真摯なご愛着とご造詣を語られた秋篠宮殿下のスピーチは,基調講演かと勘違いするほど格調高く感動的でした。開会式後,何名もの海外の研究者から,「あなたの国のプリンス殿下は本当にグレートな研究者だ」とのお言葉をいただき,私だけでなく多くの日本人研究者が私同様,とても嬉しく誇らしく思ったことでしょう。

 7日(水)夜に『がんこ高瀬川二条苑』で行われた祝賀会Gala Dinnerは,総勢で200名を軽く超える盛大なものとなり,舞妓さんも日本舞踊の披露に来られて盛り上がりました。
 私がたまたま座った席は,ニュージーランドのGIS研究者,アメリカの計量地理学研究者,スロバキアの都市地理学研究者,フィンランドの気候学研究者,ポーランドの地形学研究者らがいて,実にグローバルで多国籍な空間でした。地理学という学問領域の間口はとても広く,お互いの専門分野はかなり違うのですが,お互いのお国自慢,各国での地理学や地理学的トピックの現状,京都のこと日本のこと,不思議と話は弾むものです。

 今回のIGU KYOTOへの参加も学会出張なので,当然,研究活動や情報交換も精力的に行いました。
自分の学会発表は8月6日(火)午前のCommission Session “Urban Geography: Urban Challenges in a Complex World”(委員会セッション「都市地理学:複雑な世界における都市の挑戦」)のContested social spaces(競合する社会空間)という分科会に配属されました。発表は阪南大学で日本地誌学を担当しているコルナトウスキーGeerhardt Kornatowski氏と共同で,“Recent Transformation and Area Diversification in Osaka’s Inner City: A Case Study of the Kamagasaki Area”「大阪のインナーシティにおける近年の変容と地域の多様化:釜ヶ崎地域の場合」というタイトルで行いました。
 同じセッションでの精華大学の顧朝林Chaolin Gu教授による“Spatial and Social Characteristics of the “Ant Tribe” Urban Village in Beijing”「北京における「蟻族」の城中村の空間的社会的特性」というご報告がとても興味深く,セッションが終わってからも色々と議論させていただきました。「蟻族」とは高学歴であるが就職が無くスラム地域に住む若者のことで,私がかつて北京のスラムで行ったフィールドワークとも深く関わる発表でした。

 IGU KYOTOでは私もホスト側の一員であったので,座長chairも経験させていただきました。8月6日(火)夕方,私が発表した同じ委員会セッションのIncreasing insecurity(増大する不安定)分科会で副座長vice chairを務め,翌7日(水)午前のDilemmas of aging cities(高齢化する都市のジレンマ)分科会で座長chairを務めました。英語が苦手なこともあり,実に仕切りの悪い,ぶっきら棒な拙い座長だったと思いますが,現在の私の実力の精一杯…,発表者の皆さん,どうかご容赦ください。  さて今後のIGU,2014年はポーランドの世界遺産都市・クラクフ,2015年はロシアのモスクワ,2016年は中国の北京で開催されることになっています。2016年の北京大会は当然参加するとして,2014年のクラクフ会議へ参加するかどうか悩んでいます。 しかし,Gala Dinnerで同席したポーランド人研究者から,別れ際に「来年クラクフで会いましょう」と言われ,思わず「Sure! See you at Krakow!」と言って握手をしてしまいました。クラクフ会議のテーマは“Changes, Challenges, Responsibility”,すでにSecond Circularも出来ていて,2014年8月18日から22日の日程で開催されます。