「新世界・西成 食べ歩きMAP」が大好評!!(レポート:兪穎伶・劉沖)

 8代目の先輩たちが中心となり私たち9代目も作成支援した「新世界・西成 食べ歩きMAP」(以下,新世界・西成マップ)は,2012年4月から新今宮界隈のゲストハウス,通天閣,掲載された飲食店など,50ヶ所近くで配布が始まりました。ゼミ生や松村先生のこだわり満載で,地図部分を大きく見やすくして,まち歩きポイントや娯楽・観光施設も盛り込んだ新世界・西成マップ。外国人旅行者だけでなく,日本人観光客からも好評を得ているようです。
 最近,新今宮TICの昼食休憩などで,通天閣の近くを歩いていると,新世界・西成マップを持って歩いている人を見かけることも,たびたびあります。松村ゼミがよく利用する馴染みの飲食店からも,新世界・西成マップを持って客が来た,との嬉しい知らせが届いています。

 例えば,先日,新今宮TICのスタッフが松村先生と,日本料理の「季節料理・坂」にランチブレイクしに行きました。その際,韓国人の若者のグループ,アメリカ人のカップルなどが,新世界・西成マップを持って来店された,とのお話を伺ったそうです。
 この地域の食文化に対する日本人のイメージは,「串かつ」が圧倒的に優勢です。でも,特に初訪日の外国人の場合は,串かつよりも,もっと一般的な日本料理のイメージが強く,例えば,すし,てんぷら,すき焼きなどへの関心が高いので,串かつ以外の飲食店でも効果が期待できるのではないか,と思います。
松村先生はゼミ生有志を連れて,西成区の立ち飲みの「石本酒店」にも行かれたそうです。そこでは,関東から来た日本人ビジネス客が,新世界・西成マップを持って来店されたとのことでした。西成の立ち飲み文化は奥深く,なかなか他地域から来た人は立ち入れません。でも,大阪商工会議所の発行するこの新世界・西成マップが,その壁を乗り越えるきっかけとなりつつあります。新世界から西成にかけての飲食店は,一度その壁を乗り越えさえすれば,とても居心地がよく人情があふれ,何度でも来たくなるような空間です。
新今宮に宿泊したり新世界を訪れる外国人や日本人が,新世界・西成マップを持って,地元のお店で楽しく飲んだり食べたりするようになれば,編集・作成に関わった私たちにとって,何よりの喜びとなります。

新世界・西成マップの中国語版も作ろう!!(レポート:張宝・トウアコン・范妍希)

 2012年4月12日(木)の松村ゼミに,大阪商工会議所の職員3名が来られました。2011年度からの協働で何度も,ゼミや新今宮TICにお越しいただいた方々でした。来訪された用件は,「新世界・西成マップが好評なので,日本語・英語版だけでなく,日本語・中国語版も作ろうと計画しています。そこでご相談なのですが,今年度も一緒に協働して,中国語版を作成しませんか。」という内容でした。
 ゼミではこのご提案を受けて,いくつかの確認や議論が行われました。「中国人の好みを意識して,掲載店舗の入れ替えはしますか。」「香港・台湾で使われている繁体字で作成しますか,それとも,中国大陸の簡体字で作成しますか。」「いつまでの完成を目指しますか。」「もう一度,飲食店に取材に行くことになるのでしょうか。」「掲載店舗側の意思確認や原稿チェックはどちらが担当しますか。」などなど。新世界・西成マップを編集作成した経験を踏まえて,次から次へとゼミ生や松村先生からの質問が出て,大商側との対話のなかで合意ができていきました。

 結果として,掲載店舗ほかの内容変更は必要最小限にとどめる。基本的に,既存の新世界・西成マップの情報を中国語簡体字へ翻訳する。完成配布は新世界・通天閣100周年の2012年7月3日を目指して,大商側は掲載店舗まわりなどでしっかりとフォローする。おおよそ,こんな感じで話が落ち着きました。
 新今宮のゲストハウスに宿泊する中国人は,今のところ,簡体字を使用する中国本土からの来訪者よりも,繁体字を使用する台湾人・香港人の方が圧倒的の多いのが現状です。しかしながら,今後ますます,簡体字に慣れた中国人客が増えると予想されます。何よりも,通天閣を訪れる中国人は急速に増えつつあります。みんなで状況を分析して話し合った結果,将来性を見込んで簡体字で翻訳しようということになりました。
最後に,松村先生が私たちの意志を確認されました。「頑張ってもらわなあかんのは,中国語のわかる留学生なんやけど…。やりますか,やめますか。」と。答えは当然,「やります」です。現在,松村ゼミの留学生は,写真の左から,張宝・劉沖・トウアコン(以上4回生),徐晨(3回生),兪穎伶(4回生),呉暁テイ(3回生),范妍希(高雄餐旅大学からの交換留学生),崔園園(3回生)の8名。みんなで協力すれば,必ず出来ます。

中国語訳作業開始!!(レポート:徐晨・崔園園・呉暁テイ)

 2012年4月19日(木)のゼミで,早速,新世界・西成マップの中国語翻訳の作業を開始しました。松村先生から「誰かプロジェクトリーダーを決めてや。」とのお願いがあり,留学生で唯一の男性,張宝さんが選ばれました。新世界・西成マップに掲載されている32店舗の情報と地図の文字,誰がどこを翻訳するのか,張宝さんのリーダーシップで役割分担を決めました。全員が初めての経験なので,とりあえず翻訳してみて,次回のゼミでそれを持ち寄り,修正したり進め方を検討しようということになりました。
 その後,少し時間があったので,留学生だけで,どう翻訳したらいいのか,色々と話し合いました。問題になったのは,ひらがなの店名です。例えば,「すし寛」ならば,「寿司寛」でいいけれども,「だるま」のような場合は,どうしたらいい…?? 意味で翻訳したら間違いなく「達磨」,でもこれを中国語読みで発音しても日本人は全く分からない…。万葉仮名みたいに,音を重視して例えば「打如馬」と漢字を当てはめても違和感が…。それに,お店の看板はひらがなで「だるま」と書かれているから,通り過ぎてしまうかも…。それならいっそうのこと,中国語訳しないで「だるま(DARUMA)」の方がいいかも…などなど。
この他にも,中国ではあまり使わない単語もたくさんありました。例えば,立ち飲み,オムライス,デミグラスソース,(お好み焼きの)スジコン,串かつなどなど。この他にも,「焼きそば」を中国語訳すると「炒麺」となりますが,中国人のイメージする「炒麺」と日本の「焼きそば」はかなり違う…,どう訳せばいいのだろう…と話は盛り上がりました。
 松村先生からは,中国語のガイドブックやウェブサイトで,お店の名前や料理の名前がどのように紹介されているのか,それをしっかりと確認して優先して使うよう,というアドバイスをいただきました。そのうえで,日本語が読めないし喋れないという中国人観光客でも,そのマップを見ながら,お店を選んでその場所までたどり着き,飲食を楽しみ満足できるよう,という観点から翻訳してください,とのことでした。私たち留学生も日本に最初に来た頃は,色々と戸惑うこともありました。その頃の経験をこの新世界・西成マップの翻訳作業に活かしたいと思います。

松村先生からのひと言

 日本でも大阪でも,中国・台湾・韓国からの留学生や就学生が,数多く学び働いています。こうした貴重な人材を観光立国のための社会資源と位置付けて活かすべきだ,と私は常々考え主張しています。大阪の繁華街の飲食店では,中国語や韓国語のわかる留学生や就学生が,アルバイトとして働いているところが数多くあります。新世界から西成にかけての飲食店も事情は同じ。
 理想を語るならば…。大阪市内の観光に関わる全ての産業において,ある外国語で日常会話レベルの対応ができる人材は,その国の国旗の腕章をつけて日常的な業務に携わり,その能力を給与に反映させられれば,観光立国への道はグンと近づきます。
 例えば,こんなイメージ…。とある飲食店で中国朝鮮族の留学生がアルバイトしていて,腕章に「中国」と「韓国」の国旗がついていて,中国人や韓国人のお客が来ると,その留学生が接遇にあたる。その腕章の国旗マークを取得するためには,何らかの検定があるものの,それを取得さえすれば,マークひとつあたりで時給が例えば50円増える。その留学生は一般のアルバイトよりも,時給が語学対応能力手当として100円高い,というイメージです。
 JRや私鉄などの運輸事業者,宿泊施設,USJなど主な観光施設などは,こうした制度を,すぐにでも導入して広げていくべきではないでしょうか。中之島のリーガロイヤルホテルなど,一流ホテルのなかにはすでに実施しているところもあります。この制度が大阪市内の観光産業全体に広がれば,大阪は「もてなしのまち」,「外国人観光客にやさしいまち」,として評価されることでしょう。
 私は,駅で迷っている外国人旅行者などを見かけたら,時間の許す限り,「May I help you?」とこちらから声をかけるようにしています。でも,怪しまれたり,英語が分からない旅行者のことも多々あります。もし,外国人旅行者の方が駅構内で働く人たちの腕章を見て,自らの主体的意思のもと自らの母語で尋ねられる環境が整えば,遠慮なく語りかけることもできるし,信頼もできることでしょう。
それが働く側にとっても,キャリアとなり,給与に反映されるとなると,インセンティブがあがり,腕章の国旗の数を増やそうと努力することでしょう。いわば,ソフト面での観光立国に向けたインフラ整備です。大阪から全国に先駆けて,このような取り組みを広げれば,とても意義深く注目されるのに…,といつも思っています。
 さて,理想はなかなか実現しないので,私たちは理想を語りながらも,しっかりと地域に根差して,地道な社会的実践を積み重ねて行きましょう。新世界・西成マップの中国語版作成は,松村ゼミの留学生たちの献身的な努力が欠かせません。自分たちが翻訳したマップを持って,多くの人たちが食べ歩く姿をイメージして,少しでもいいものを作ろうという努力を重ねてください。