今年のフィールドワークは台北市で夜市の調査!!(レポーター:松村嘉久)

2年前の予備調査に続いて本格的な調査を!!

 松村ゼミ毎年恒例の夏のフィールドワーク,今年は2011年9月6日(火)から10日(土)の4泊5日の予定で,阪南大学学会の学生研究活動支援制度の助成を得て,台北へ夜市の調査に行きます。実は今から2年前,2009年8月31日から9月5日にかけて,松村ゼミは同制度を利用して,同じような調査を行いました。
 2年前のこの調査はいわば予備調査で,5泊6日で12ヶ所もの夜市を,とにかく駆け足で見て回り,広く台北の夜市についての知見を深めました。今年の調査では,夜市・屋台・公設市場・地下街などを管理する「台北市市場處」へ聞き取り調査に行き,時間と体力の許す限りで,典型的な夜市をピックアップして,昼夜の空間利用について,本格的なフィールドワークを行います。
 台北現地調査の参加者は総勢18名,教員の松村ほか,4回生が2名,3回生が11名,2回生が3名,1回生が1名という構成です。このうち6名は中国語ができるので,現地での行動は不自由しません。また,参加者のほぼ全員が国際観光学科の学科科目『観光地理学』(松村担当)で,フィールドワークの手法を学び,松村ゼミ企画のフィールドワークに何度も参加した経験豊かな学生ばかりなので,かなり難しい調査でも信頼して任せられます。
 今年4月から文献資料を収集して,参加者全員で共有し,ゼミ終わりの時間などを利用して,具体的に現地のどこでどのような調査を行うのか,などについて話し合いを重ねてきました(右は台北市中心部の観光夜市の分布図)。

なぜ今,もう一度,台北の夜市調査なのか??

 台北の夜市は,台湾観光の貴重な観光資源のひとつに成長していて,どのガイドブックを見ても,夜市の紹介にかなりのページがさかれています。例えば,士林夜市などは,台北市民や国内観光客だけでなく,海外から屋台B級グルメ好きがたくさん訪れ,夜な夜な賑わっています。
 観光振興のなかで,「夜」の観光の充実はとても重要な要素です。なぜなら,「夜」の観光が充実すれば,「日帰り観光」ではなく,より消費の期待できる「宿泊を伴う観光」へつながるからです。あちらこちらの観光地で,まちなかや観光スポットがよくライトアップされていますが,それはこうした思惑から始まっています。
 外国から来た観光客が夜市へ行って,美味しい物を食べて,楽しいお酒を飲んで,仲間と一緒に騒ぐ。その後で,そこから遠く離れた所まで帰って宿泊するでしょうか。ほとんどの観光客は,夜市からそう遠くない所に泊まります。食べて飲んで騒いだ翌朝は,ゆっくりと過ごし,昼から近場の観光地をまわることが多くなり,そこにも観光消費が落ちると期待されます。夜市は,このような意味から,観光消費を高める絶好の観光資源であります。アジアの主な観光都市を思い浮かべてください…,台北・香港・バンコク・クアラルンプール・バリ…,どのまちでも夜市がにぎわい,美味しい屋台料理が味わえます。
 さて,皆さん,大阪を代表する食文化を考えてみてください。たこ焼き,お好み焼き,串カツ,うどん…,どれも屋台で提供するのに適したものばかりだと思いませんか。京料理は落ち着いた静かな料亭のお座敷でいただきたいが,大阪の「食」は屋台か路上でも充分楽しめ,むしろそちらの方が,大阪らしい雰囲気なのかもしれません。
 ところが,大阪にかぎらず,日本では路上で飲食を提供する屋台文化,それが集積した夜市文化は,衰退の一途をたどっています。屋台は路上を「不法」に占拠する許し難い存在である,それが集まる夜市などはもってのほかである,と多くの地方自治体は考えています。道頓堀の『大たこ』問題がまさにその象徴です。

なぜ台北はできて,大阪はできないのか?!

 日本で屋台や夜市が嫌われるようになった原因は,おそらく終戦直後の焼け跡・闇市まで起源がさかのぼれます。戦後の混乱期,土地や路上を「不法」占有あるいは「無断」使用して商売した事実が,一部で既得権益化しました。それが高度成長期に入ると,道路使用・占有の問題へと発展し,路上での商売は急速に姿を消していきました。最近では,博多・中洲の屋台街を抱える福岡市が,屋台は博多の文化であるという観点から,屋台街の存続発展に向け,その在り方について議論をし始めました。
 さて,改めて,想像してみてください。例えば,道頓堀川沿いの遊歩道,夜になると人通りが激減する大阪ミナミの船場エリアなど,こんなところが毎夜屋台街へと変身したならば,皆さん行きたいとは思いませんか。夜になると人手でごった返すような地域のすぐ近くに,全く人通りの途絶える寂しいところはありませんか。そんなところが屋台の立ち並ぶ夜市に変身できたら,大阪人も観光客も外国人も喜ぶナイトスポットになると思いませんか。
 大阪市にはないのに,台北市にはそんな夜市がすでにあり,毎夜,内外からのお客で賑わっている。台北市はどのような仕組みで夜市を運営しているのだろう,大阪市はなぜできないんだろう。台北市から学び,大阪市の現状を知ることで,大阪市でも夜市を運営できる可能性が見えてくるのではないか…。私たちは,まず何よりも,台北市から真摯に学ぶことが重要だと考えています。台北市市場處からも調査協力をご快諾いただき,現地調査の準備も順調に進みつつあります(写真は台北の公設市場『長春市場』の資料)。

新今宮グルメマップ作りが本格始動!!(レポーター:小林志帆・高橋菜央)

 大阪商工会議所大正・浪速・西成支部との協働,新今宮界隈の国際版「グルメマップ」(仮称)作りが,いよいよ本格始動しました。8月25日(木)の13時半から,大阪市立大学西成プラザで松村ゼミが開催され,そこに同支部から3名の職員が来られ,詳細な打ち合わせが行われました。夏休み期間なのにもかかわらず20名を超えるゼミ生が,この会議と新今宮TICの運営に分かれて参加しました。
 この打ち合わせでは,掲載する店舗の確認,あいさつ回りと取材のすすめ方,グルメマップのレイアウト,今後のスケジュールなど,多くのことが話し合われ決まりました。掲載店舗は,この地域の老舗を中心とする40数軒に絞り込まれ,新今宮TICを運営しながら,この8月と9月で順次,コンテンツ取材をすすめて行くことになりました。松村ゼミからは,サンプルとして作成をすすめた10店舗のコンテンツが紹介されました。
 9月5日(月)・9月25日(日)にゼミが開催される予定なので,両日に大阪商工会議所の方々も来られ,詰めの作業を行う予定です。9月25日(日)は新今宮TICの夏季毎日運営の最終日で,この西成プラザで打ち上げのすき焼きパーティーも行う予定なので,忙しい1日となりそうです。
 順調に進めば,年内にはグルメマップが仕上がり,新今宮界隈のゲストハウスや駅などで配布が始まります。このグルメマップを持って店を探す観光客の姿が,今から目に浮かびます。

松村ゼミ作成のサンプル

  • 季節料理坂の日本語版

  • 季節料理坂の英語版