鶴橋・桃谷の夏祭りを満喫!!

祇園祭よりも,やっぱりコリアタウンの夏祭りでしょう!!

 2011年7月17日(日),松村ゼミは鶴橋・桃谷のコリアタウンのまち歩きを行いました。この日は京都で,日本三大祭りのひとつ「祇園祭」が行われる日。
 大阪の「ありふれた日常」と「ささやかな非日常」の体感をまち歩きの神髄に掲げる松村ゼミの外国人向けツアーは,この日にあえて,祇園ではなく,鶴橋・桃谷を選びました。
 鶴橋・桃谷の夏祭りは,城東区と生野区の複数の神社から,だんじり・ふとん太鼓・お神輿などが繰り出し,それぞれが別個に動きとても複雑なルートを通って,各々の神社へと宮入していきます。
 鶴橋・桃谷のまち歩きを成功させるには,まず何よりも,だんじりが通る情報を事前に入手して,だんじりと出会えるまち歩きルートを選ぶ必要があります。例えば,右のようなだんじり曳行マップさえ入手できれば,だんじりの動きはほぼ完ぺきに把握できます。そこで,まち歩き当日,一部のスタッフには早めの集合がかかりました。

事前の情報収集はバッチリ,あとは参加者を待つのみ!!

 17日朝10時頃,9代目ゼミ生たちが続々と新今宮TICに集合しました。小林志帆・内田裕規・清水翔平・張宝・劉沖・湯アコンの6名が10時過ぎに先発して,だんじり曳行の情報を収集するため,生野区の御幸森神社・彌榮神社,東成区の比賣許曽(ひめこそ)神社へと向かいました。
 坂田悠貴・高橋菜央・小路望は新今宮のゲストハウスを回り,外国人旅行者にツアー参加を呼びかけました。ゲストハウスのフロントにはかなりの外国人がいたのですが,やはり「京都の祇園祭へ行く」という方が多く,勧誘の手ごたえは残念ながらゼロでした。しかしながら,数名分のツアー参加申込書が届いていて,参加者ゼロという事態は避けられそうでした。
 先発情報収集組から,11時前に,携帯の写メールでだんじりの曳行ルート地図が送られてきました。その情報をもとに,松村先生も交えて,新今宮TIC内でまち歩きのルート選定会議と打ち合わせを行いました。13時半から14時の間,JR鶴橋駅の近くをだんじりやふとん太鼓が通るので,まずはそこを目指してから,生野区のコリアタウンへ向かうことになりました。

集まった参加者は4名,一緒に楽しみましょう!!

 12時過ぎになると,他のスタッフたちも新今宮TICへ駆けつけ,先発組も内田・清水の2名を残して帰って来ました。松村先生が「昼ごはん食べてない人はついておいで」とみんなを昼食に誘ってくださいました。
 十数名の大人数で向かったのは,ジャンジャン横丁のうどん・そばのお店『おたべや』,松村ゼミではお馴染みのところです。とても蒸し暑い日だったので,みんなの注文が,手間のかかる冷やし中華や冷やしうどんに集中したため,お店の従業員のおばちゃんはプチパニックでした。
 集合時間に集まったツアー参加者は4名,イギリス人男性1名,イギリス人女性1名,ニュージーランド人男性1名,リピーターの日本人男性1名でした。ツアー開始の挨拶はホテル中央セレーネのロビーで,8代目ゼミ生のキキが行い,13時17分にまち歩きがスタートしました。
 JR新今宮駅から大阪環状線に乗り込むと,早速その車中でイギリス人男性とニュージーランド男性が意気投合して,会話が弾んでいました。

だんじり,ふとん太鼓,獅子舞…と連続して遭遇!!

 JR鶴橋駅に到着したのは13時40分前,私たちを待ち受けた先発組の案内で,駅構内を出てほんの100メートルほど直進しただけで,JR環状線の内側で早速だんじりと遭遇!! 時間にしてわずか数分ほどでした。環状線の外側に移動すると,そちらにはふとん太鼓と獅子舞が…。このいきなりの連続遭遇に参加者も私たちも大興奮!! 先発組の情報収集のおかげです。
 夢中でカメラを向ける人ごみのなかに,8代目ゼミ生のタン・イーヘンさんが,私たちのまち歩きツアーとは全く別に,外国人を連れて祭りを見物されていました。マレーシアの友人が遊びに来たので案内しているとのことでした。シャイなタンさん,松村ゼミのまち歩きツアーに誘って参加すればいいのに…。
 さて,環状線の内側では,だんじりが大阪締めを繰り返しながら,ゆっくりと商店街を進み,環状線の外側では,ふとん太鼓と法被姿の子供のパレードが進みました。私たちは鶴橋国際市場へ向かおうとしましたが,イギリス人女性は「もっとここでだんじりを見ていたいから残る」,と申し出られました。みんなでSee you!とお別れして,私たちは鶴橋の市場へ…。

鶴橋の市場はワンダーランド!!

 鶴橋の市場は通路が狭くとても複雑で,まるで迷宮のようです。ここを熟知する松村先生が先頭を歩かれ,私たちは残る外国人参加者2名をゾーンディフェンスで取り囲み,先頭を追いかけました。鶴橋国際市場のなかは,チマチョゴリ・キムチ・チヂミ・蒸し豚・丸ごとのニワトリ・アンコウなど,朝鮮半島に由来するモノも日本のモノも,ごちゃ混ぜで売られていました。
 今回のツアーにも,ホテル中央オアシスの細谷さんが助っ人参加してくれたので,市場のなかでの難しい質問にも英語対応はバッチリ,遅れることなく上手く誘導できました。
 と思いきや,リピーターの日本人男性参加者の姿が見当たりません。どうやらJR鶴橋駅の近くでトイレに行かれて,そのままはぐれたそうです。もう何度も私たちのまち歩きツアーに参加されている方なので,松村先生が直接電話で連絡をされて一件落着。「何って言われたのですか」との私たちの問いに,松村先生は「あの人はまち歩きのセンスある方やし日本語もわかんねんから,絶対勝手で楽しみはるはず…だから無理に合流しようとしないで,別行動にしましょう…」と見どころだけを伝えられたそうです。

茶谷さんのまち歩きと会い,だんじり倉庫を見学!!

 私たちは国際市場を抜けて商店街と疎開道路を通り,彌榮神社に到着したのは14時半前でした。彌榮神社の境内に入るや否や,『大阪あそ歩』のチーフプロデューサーの茶谷幸治さんと遭遇。茶谷さんは『長崎さるく博』を大成功させた人物で,まち歩き観光の先駆者のひとり,松村ゼミでもよく話題にあがります。この日は『大阪あそ歩』の参加者を自ら率いて,まち歩きの案内をされていました。松村先生と茶谷さんは知り合いで,茶谷さんは新今宮TICを訪ねて来てくださったこともあります。お互いまち歩き参加者を連れていらっしゃるので,わずか一言二言でしたが,会話を交わされていました。
 さて,松村ゼミの率いる一行は,境内のだんじり倉庫に注目。夏祭りのこの日,だんじり倉庫の厚い扉は開けっ放しで出入り自由。倉庫のなかにはだんじり正面の屋根を飾った歴代の「獅噛み(しがみ)」が保存されていました。参加者の方々には,神社で大切に保存されているだんじりが,地元民に引かれて神社から出て,コミュニティ内をくまなく練り歩き,神社へ帰るという伝統と意味が説明され,納得されていました。

お約束は桃谷商店街の70円ソフトクリーム

次に向かったのは,疎開道路の北側,彌榮神社からは歩いてわずか2分ほどの御幸森神社で,ここにもだんじり倉庫があり,十数軒の屋台が出ています。
 御幸森神社の境内でも,茶谷さんとは別のまち歩き集団と出会いました。松村ゼミはこの界隈でこの夏祭りの日に,3年連続でまち歩きを行っていますが,他のまち歩きグループと出会うのは今年が初めてだそうです。松村先生は「ようやくコリアタウンの夏祭りが浸透してきたようでうれしいなあ。でも外国人を案内してるんは,まだわしらだけやから,一歩先を進んでるで…自信を持とう」とのことでした。
 時計を見るとこの時点で15時前,御幸森神社のだんじりは,直線距離でそこから2キロ強離れたところにいて,戻ってくるのは夕方とのこと。炎天下で待つのはさすがにつらいので,桃谷商店街経由で新今宮へ帰ることになりました。桃谷商店街には松村ゼミお約束の1個70円の激安ソフトクリーム屋があります。今回も,松村先生に参加者・スタッフ一同,ソフトクリームをご馳走になりました。暑くて疲れた体に,冷たく甘いソフトクリームは最高で,生き返りました。決して広くない商店街,通行の邪魔になるので,ソフトクリームを手にした者から,JR桃谷駅へと歩き始めました。

またいつかどこかで!!

 新今宮TICに着いたのは15時半頃,小路望が新今宮TIC前で,最後まで残った2名の外国人男性に向かって,かなり強引に「終わりの挨拶」を始めました。
 それを真剣に聞いてくれた2名からは,拍手と感謝・ねぎらいの言葉をいただきました。
 「ぜひニュージーランドにも来てください。私がもっとラージサイズのソフトクリームをあげます。」
 「イングランドのお祭りも面白いよ。私の地元でもコミュニティのほぼ全員が参加する,いいお祭りがあります。ぜひ遊びに来てよ。今度は,私が案内します。」
 別れ際,Facebookのユーザーたちは,お互いにその情報交換をしていました。草の根から広がる国際交流は,こうした地道な活動の積み重ねで成り立つと実感したまち歩きでした。

松村先生からの一言

 コリアタウンの夏祭りもとても暑く熱かった。見ているだけでも汗だくになるのに,あの重いだんじりを長期間,長時間にわたり,引っ張り練り歩き続ける地元民のパワーには,本当に驚かされます。今回のまち歩き参加者は今までで一番少なかったのですが,それゆえに,有意義な時間が共有できたと思います。
 実は,まち歩きの翌朝,私は用事があってJR新今宮駅で下車しました。すると,そこでバッタリ,京都へ移動位しようとするニュージーランド人男性と再会しました。彼からはその場で,まち歩きツアー,新今宮TICの活動,私のゼミ生のホスピタリティ精神ほか,おそらく本気で大絶賛してくれました。
 私はたとえそれがリップサービスでもいいと思っています。海外での旅先で,そうした気持ちになる日本人は,いったいどれほどいるでしょう。私たちの活動は,間違いなく,有意義で先駆的です。少し想像してみてください。あなたが海外旅行に行って,地元をよく知る学生たちが,周到な準備をして,完全なるボランティアで,たどたどしい日本語ながらも,地元民しか知りえない魅力あるお祭りを,参加者のニーズに合わせて案内してくれた。そんな経験,私は海外でしたことがありません。外国人参加者の感謝の気持ちは,本物と確信します。