2011年4月24日(日)のフィールドワークについて(レポーター:松村嘉久)

午前はあいりん地区,午後からは三つに分かれて行動!!

 この日のフィールドワーク,午前は希望者のみの少数精鋭であいりん地区のフィールドワークを行い,午後からは,住吉大社・堺,平野郷,鶴橋・コリアンタウンの3チームに分かれて,外国人向けまち歩きツアーの下見を兼ねてフィールドワークしました。
 午前の参加者は,松村嘉久,小林志帆・山崎育美・坂田悠貴・高橋菜央・新田麻紀(以上3年),松川和矢・山下喜央(以上1年)の8名で,いずれも,あいりん地区のなかを歩いた経験のない学生ばかりでした。午後の住吉大社・堺コースの参加者は,勝元暁美(4年),兪頴伶・新田麻紀・和田昂之・坂田悠貴・張宝・高橋菜央(以上3年),田中寛人(1年)の8名でした。平野郷コースの参加者は,橋本果奈・前島佑香・キキ(以上4年),小路望・劉沖・加藤宏実・湯アコン(以上3年)の7名。鶴橋・コリアンタウンコースの参加者は,松村嘉久,趙日権(4年),小林志帆・川原美穂・山崎育美(以上3年),弘田愛美・小山明日香・松川和矢・山下喜央・水野巧基・石橋一希・柴田ひかる・喜多真子・浦上絵梨香・傍士莉菜子(以上1年)の15名。三つのチームを合わせて,ちょうど30名のフィールドワークとなりました。

あいりん地区のフィールドワーク(レポーター:松村嘉久)

松村ゼミの通過儀礼?!

 新今宮TICのスタッフをしていると,色々な来訪者がいらっしゃるし,色々な問い合わせが寄せられますが,そのなかには,あいりん地区についての知識がないと全く対応できないものも多々あります。「ここは観光インフォメーションセンターですから…」と逃げて,最初から対応しないという選択肢もあるのですが,この地域に存在するTICだからこそ,ボランティアスタッフでも可能な限り対応しよう,対応できない場合でもどこか対応できそうなところにつなごう,と心がけています。そのためには,少なくとも新今宮TICのコアスタッフは,あいりん地区のどこにどんな施設や組織があって,そこが何をしているのか,フィールドワークで現場を見て確認しておく必要があります。新しい学生が入ってきては卒業して行くので,私はこのフィールドワークをもう何度も行ってきました。しかしながら,この地道な努力を怠ると,新今宮TICの存在意義は揺らぐので,少なくとも私のゼミ生には必ず経験してもらいます。いわば松村ゼミの通過儀礼のようなものです。

とても濃い2時間のまち歩き…

 わずか2時間弱のフィールドワークですが,日本で最も刺激的で,絶対に説明が必要なコースだと思います。ここでは,歩いた場所と見たものと説明した事柄だけを列記しておきます。ひとりで勝手に歩いても,誤解と偏見を深めるだけで終わるので,もし歩きたい学生や教職員がいれば,私か釜ヶ崎のまち再生フォーラムに連絡してください。
 激安50円の缶コーヒー自販機,コインロッカー・荷物預かり所,ホテル東洋の客室,簡易宿所,福祉マンションとサポーティブハウス,大阪市立更生相談所,あいりん銀行,住所不定,生活保護,日雇い労働者の日常生活,紙芝居劇集団むすび,猫塚,飛田大門,飛田遊郭,救護施設,三角公園,ふるさとの家,本田哲郎神父,賭博ノミ屋,暴力団,大阪府警西成署,商店街,立ち飲み屋,酒類の自動販売機,朝6時からステーキを食べられるレストラン,西成市民館,こどもの里,西口宗宏氏さん,監視カメラ,四角公園と萩之茶屋小学校とまちづくり,簡宿と福祉マンションの違い,市営住宅,NPO釜ヶ崎支援機構,夜間シェルター,特別清掃事業,西成労働福祉センター,ありむら潜さん,手配師,白手帳などなど。

住吉大社・堺のまち歩き下見とフィールドワーク(レポーター:坂田悠貴)

2011年は何と住吉大社の1800年祭!!

 第2回目のFIT向けまち歩きツアーは住吉大社・堺,2011年の5月中旬に実施予定。その下見を兼ねて4月24日(日),フィールドワークへ行ってきました。2011年,住吉大社は御鎮座1800年記念大祭という大きな節目を迎え,それと関連する行事がこの5月に集中するので,私たちはまち歩きに選びました。しかし,もしかすると東日本大震災の影響で,住吉大社の行事が変更される可能性もあるので,松村先生からはしっかりと確認して来るよう指示を受けました。
さて,松村ゼミではもう何度も住吉大社・堺方面のまち歩きを行っていますが,私たち9代目はほとんどが未経験。そこで住吉大社・堺方面のまち歩きを経験している8代目の勝元暁美さんに,実際のまち歩きの際,どこへ行き,何を見て,どう語るのかを教わりながら,住吉大社での5月の行事予定の確認,堺の刃物ミュージアムや鳳翔館との打ち合わせを行ってきました。

パワースポットを巡り,神社の方に聞き取り調査!!

 12時半頃セレーネを出発し,阪堺電車南霞町駅で1日乗り放題の「てくてく切符(600円)」を買って,路面電車に乗り住吉大社へ向かいました。天気も良く電車はたくさんの人が乗っていました。15分ほど乗り,住吉鳥居前駅で降りました。住吉大社境内の建物は国宝で,最近補修工事され綺麗になったそうです。境内では結婚式が行われていたので,近くまで見に行きました。ウエディングドレスも素敵だけど,和装もとても綺麗だなと見入ってしまいました。「五大力」のところでは,私たちも夢中になって石を探しました。「五」,「大」,「力」と墨で書かれた小石が,たくさんの石のなかに少しだけ入っていて,その三つの石を探し当てて持っていれば,5つの力(寿力・智力・福力・体力・運力)が備わるそうです。
 神社の方がいらしたので,5月に行われる1800年大祭の詳細について話を伺いました。大きな式典は12日にあるそうですが,外国人を連れてのまち歩きにベストなのは15日(日)だろう,というアドバイスをいただきました。伝統芸能や踊りの奉納があるので,外国人もきっと楽しんでもらえるのではないかと思います。まち歩きツアーには含まれていませんが,パワースポットとして注目されている「おもかる石」も体験してきました。おもかる石を最初に持ち上げて,その後で願い事をしながらもう一度持ち上げる。その時,軽いと感じれば願いが叶い,重いと感じれば叶わないと言われているそうで,私は重いと感じました…,ショックです。

鳳翔館でご挨拶と打ち合わせ

 14時前に住吉大社を出て,次に妙国寺駅近くの「刃物ミュージアム」へ行きました。入場料は無料で,展示だけでなく刃物を買うこともできます。マグロ用,フグ用,クジラ用,ウナギ用,様々な種類の包丁があり,説明も日本語と英語で表記されていてわかり易い。刃物が作られる作業工程のビデオもありました。15分ほど見学して,次は綾ノ町駅近くの「鳳翔館」へ行きました。ここはこれまでのまち歩きでお世話になっているところで,今回も宜しくお願いいたします,とご挨拶に伺いました。当初まち歩きツアーは5月18日(水)を予定していたのですが,住吉大社での聞き取り調査の結果から,15日(日)に変更される可能性が高いことも相談させていただきました。15時前に鳳翔館から歩いて5分ほどの堺鉄砲館へ行きました。入場料は100円ですが,学生と子供は無料です。鳳翔館と鉄砲館は柏木さんご夫妻が運営されていて,2010年に亡くなった前田弘教授とそのゼミ生たちが支援されていた施設です。旧前田ゼミの最後のゼミ生たちが現在は4年生になっていて,今でも休日にボランティアで施設の運営を手伝っているそうです。
 鉄砲館を出てからは,綾ノ町駅から我孫子道駅乗り換えで,16時過ぎには南霞町駅へ到着しました。その後,17時過ぎからホテルセレーネのロビーで,松村先生ほかゼミ生一同でミーティング。住吉大社での行事予定について報告して皆で検討した結果,第2回目のまち歩き実施日はその場で,18日(水)から15日(日)へと変更されました。これで準備は万全,次のまち歩きの15日(日)が,今日のような晴天になることだけを祈ります。

平野郷のまち歩き下見とフィールドワーク(レポーター:加藤宏実)

平野郷は平日のまち歩きになりそうです…

 松村ゼミの外国人まち歩きツアーの鉄板ネタ,それが平野郷杭全神社の夏祭りです。第3回目のまち歩きツアーは7月13日(水)の予定です。あちらこちらの夏祭りが人材確保のため土日開催へ移行するなか,杭全神社の夏祭りは7月11日から14日。平野郷各町のだんじりが宮入りする7月13日(水)は,松村先生曰く,「同時多発だんじり状態で,まちの雰囲気も出会う人たちも最高の1日」なのだそうです。平常授業のある平日のまち歩き…,何かと障害は多いのですが,ゼミ生一同力を合わせて何とか成功させたいと思います。
 さて,今日はその下見,8代目のまち歩きの経験を9代目に伝える意味もありました。セレーネを12時半に出発して,JR新今宮駅からJR大和路線で平野駅までわずか10分で着きます。平野に着いてからは,3名の4年生の先輩方の引率で,昨年と同じルートを歩きながら,その時の状況や雰囲気,どこでどんな解説をしたのか,などを教えていただきながら楽しみました。歩いて回ったのは,大念佛寺,商店街,全興寺,杭全神社,最後の杭全神社でおみくじを引きました。
 途中の全興寺では,昔ながらの紙芝居が行われていました。後のミーティングで知ったのですが,その時の紙芝居のおじさんは,松村先生のお知り合いで紙芝居に関する本も書かれているそうです。鈴木常勝さんとおっしゃる方で,阪南大学南キャンパスでのイベントにも,来ていただいたことがあるそうです。松村先生は本当に顔が広いなと感じました。

鶴橋・コリアンタウンのまち歩き下見とフィールドワーク(レポーター:川原美穂)

迷路のような鶴橋の市場…

 1年の参加者が多く松村先生が引率された私たちのチームは,まち歩きの下見というよりも,フィールドワーク重視で動きました。12時半にセレーネを出発して,徒歩でJR新今宮駅へ移動。そこから電車の先頭車両に乗って鶴橋駅へ。外国人と一緒にまち歩きに行く際は,必ず他の乗客が少ない先頭車両に乗るそうです。
 鶴橋駅の西出口から改札を出ると,「とりあえず,さっと商店街を歩くから,見失わんようについて来てな」と松村先生。賑やかな売り声が飛びかうなか,韓国語もちらほらと聞こえてきました。細い路地の両側のお店では,キムチ,チヂミ,トッポギ,色鮮やかなチマチョゴリなど,鶴橋ならではのものが売られていました。松村先生は迷路のような市場の薄暗く細い路地へどんどんと入り込み,私たちの方向感覚は狂い,どのあたりを歩いているのか全くわからなくなりました。
 歩きながら松村先生の話は,「その先のキムチ屋のお姉さんはむかし美人やってんで」,「ここの煮豚はほんまに美味い」,「キムチの味は好みやけど,ここが一番私には合う」,「この路地が鶴橋で一番狭いねん」などなどでした。

目的地は「牛竹」ですか??

 「さあ着いた」と松村先生が立ち止まったのが「肉の牛竹」さん。ここが目的地だったようです。松村ゼミはよくゼミで「すき焼きパーティ」をします。牛肉はこの「肉の牛竹」か,天美の商店街の「ミートショップ松井」で買うそうです。「これで牛竹の場所わかったから,今度から買い出し頼めるなあ」と松村先生,3年一同は「絶対に無理です…たどり着けません」と思いました。
 ざっと鶴橋の市場を歩いてから,松村先生が鶴橋の歴史や在日コリアンのことを説明してくださいました。戦後の闇市の雰囲気が色濃く残る鶴橋は,とてもエスニックで魅力的な場所でした。気が付けばもう13時過ぎ,みんなお腹が減っていたので,鶴橋風月本店近くまで戻って昼食解散,14時再集合となりました。

弥栄神社,御幸森神社,コリアンタウンを歩く!!

 再集合してからは,鶴橋の住宅街を通って疎開道路へ抜け,14時半には弥栄神社に到着しました。この移動中の松村先生の在日コリアンに関するお話は,とても興味深いものでした。さて,7月18日(日)には,この弥栄神社からだんじりが出ます。お参りして境内の下見をしていると,その様子を見ていた神主さんが出てこられ,だんじり倉庫の鍵をあけてなかを見せてくださいました。だんじりを間近で見ると,立派な木彫りなど,やはり迫力がありました。弥栄神社には大きな桜の木もあり,「ここで花見をしてもいいな」と松村先生はおっしゃっていました。自動車道路から少し距離があり静かで,お花見には向いている場所だと思いました。
 弥栄神社から大通りの向こうの御幸森神社へ移動。御幸森神社からもだんじりが出て,境内には屋台が並ぶそうです。そこからコリアンタウンに入り,平野川まで歩きました。コリアンタウンは鶴橋とはまた違った雰囲気で,観光客も多く見かけました。平野川沿いを少し歩いて,桃谷商店街へ向かいました。商店街の「名物たこ焼き西村」で,松村先生にソフトクリームをおごってもらいました。ここのソフトクリームは何と1個70円。松村先生によると,「大阪で一番安いのんとちゃうか」とのことでした。2010年のまち歩きでもここに寄ったそうです。その後は,ソフトを食べながらJR桃谷駅まで歩き,15時半過ぎに1年は解散,私たちはセレーネへ向かいました。1年が多いのではぐれてしまわないか心配でしたが,3年でうまく誘導ができ,バラバラになることもなく行動できました。

フィールドワーク参加者からの感想

弘田愛美

 鶴橋の市場はお店も多く,昔ながらの商店街でした。老朽化が進んでいる建物が非常に多かったのですが,それがまた良い味を出していると思いました。
 コリアンタウンは,その名の通り韓国のまちに行ったような感覚になりました。売られている品物の説明も韓国語で,何か分からず困っていると,お店の方が日本語で丁寧に教えてくれました。
 鶴橋もコリアンタウンも,韓国語をしゃべる店員さんが多く,日本人客も外国人客もたくさんいて,国際交流がしっかり出来ている良いまちだと思いました。

傍士莉菜子

 24日は鶴橋のコリアンタウンに行きました。私は韓国に興味があるので,何度かコリアンタウンには行ったことがあります。印象に残ったのは,鶴橋の普通の住宅街です。表札を見ながら歩いたのですが,金さん,朴さんなど,韓国の苗字をそのまま書いているお家も多く見かけました。
 コリアンタウンでは,韓国の食材や食物を売るお店,韓流グッズのショップがずらりと並んでいて,見ているだけでも楽しかった。松村先生から,かつてのコリアンタウンはそれほど栄えていなかったと聞き,驚きました。韓流ブームの影響か,たくさんの方々がコリアンタウンに来られていました。
 私は高知県出身で,大阪の観光地はあまり知りませんでした。でも,今回のフィールドワークに参加して,大阪の大学に入ったんだという実感がわき,大阪の観光地も知れてとても良かった。

水野巧基

 24日はまち歩きツアーの下見ということで,鶴橋とコリアンタウンをフィールドワークしました。コリアンタウンの方々が,笑顔で観光客を迎えていたのが印象的でした。もう一度行ってみたいと思える魅力のあるところでした。23日・24日と二日間のフィールドワークを通して,私の地元の奈良県よりも,大阪の方が観光客を受け入れる体制が整っていると感じました。将来は地元の奈良で着地型観光を企画してみたいと思いました。

柴田ひかる

 4月24日のフィールドワークでは,鶴橋・コリアンタウンを巡りました。鶴橋の駅を出ると焼肉の匂いと迷路のような通路に驚きました。通路は混んでいて,はぐれないよう注意しなければなりませんでした。1時間ほどの自由行動の間は,韓国語もしゃべれるお店のおばさんと話したりしました。とても親切にしてくださり韓国に来たような気分になりました。
 また弥栄神社に行き,このあたりで7月に行われる祭りのだんじりや御神輿を見せていただきました。とても豪華で日本の文化の象徴でした。ぜひ外国人旅行者にも見ていただきたいと思いました。今回のフィールドワークで,日本の歴史や文化と韓国の雰囲気を感じられる鶴橋に魅力を感じました。

松川和矢

 2日間で最も印象に残ったのは,24日午前の新今宮でのフィールドワークでした。
 大阪に住む私でも足を踏み入れることのない場所,実際その場所へ行ってみると,「知らない生活」,「知ることのなかった生活」がありました。
 ホテルの客室の一部が福祉マンションになっている建物や,外国人観光客と労働者が行き交う交差点など,「新今宮ならでは」な風景がありました。
 実際に歩いてみて,「今の新今宮を活性化して変えていかなければならない」と「今の新今宮の風景や生活を残したい」という複雑な思いになりました。この二つの思いを叶える方法があるのか,考えても今の自分には答えがでません。ただ今まで何度も観光地へ行きましたが,その場所について深く考えることはありませんでした。観光は,環境やそこでの生活者とのバランスで成り立ていると実感しました。