新聞記事で紹介されるまでの経緯(レポーター:小林志帆)

私たちにできることは何か?

 2011年4月11日(月)の産経新聞夕刊に「通天閣で元気を」という記事で,私たちの新今宮TICでの活動が紹介されました。松村先生からのご指名で,記事が掲載されるまでの経緯を9代目ゼミ長代行の小林志帆が報告することになりました。
 さて,OIGの震災避難者支援策がまとまり,3月末から動き始めたことは,松ゼミWalker vol.62で紹介しました。その後も,松村ゼミでは新今宮TICでの活動を通して,東日本大震災の支援ができないかと,松村先生やゼミ生らで話し合い色々なところに働きかけてきました。3月末になると,幼稚園や小中学校が終業式を迎え,いよいよ春休み。原発被害がいつ落ち着くのかわからないので,春休みに入ると,幼い子供を連れた家族が,不安を抱えて新今宮にも避難してくるに違いない。私たちはそう予想していました。
 新今宮に避難してきたご家族が,観光を楽しめたなら,ひと時でも心が和らぎ,憂鬱な気分も少しは晴れ,明日からまた頑張ろうという気持ちになっていただけるのでは…,私たちが手助けできるのはこれくらいしかありません。新今宮地域のゲストハウスのスタッフの方々は,チェックインやロビーでの会話から,どのお客さんが避難されてきたのか把握されています。私たちの最大の強みは,こうしたゲストハウスと連携しているので,何か避難者向けの支援をしようとしたら,ゲストハウスを通じて確実に避難者へ届けられるというところにあります。
 そこで,松村先生と私たちは,新今宮TICの活動で築いてきた幅広い人的ネットワークを活かして,「ゲストハウス経由で確実に避難者へ想いとともに手渡しますので,どうか無料チケットをご提供ください」と各所に呼びかけました。どこも私たちの活動の趣旨には賛同してくださいましたが,いずれも何らかのハードルがあって,無料チケットはなかなかご提供していただけませんでした。松村先生も私たちも,もう無理かなとあきらめムードでした。

良い知らせは思わぬきっかけで

 良い知らせは突然やってきました。4月2日(土),松村先生が国際観光学部新任の森重昌之先生と,通天閣近くのいつものバーへ飲みに行かれ,マスターにこれまでの経緯を話されたそうです。するとマスターが,「ほんなら通天閣の社長に言うたるわ」とその場で通天閣観光の西上雅章社長に電話されたそうです。西上社長が会ってくださることになり,松村先生とマスターは,森重先生をひとりで店に残して,歩いて1分の通天閣へ。松村先生から事情を聞かれた西上社長は,「そういうことなら喜んで協力させていただきます。」とその場で即決。「とりあえず手元にある分だけお渡しします。無くなったらまた言うてください。」と通天閣の無料入場券150枚を快くご提供くださったそうです。
 通天閣の無料入場券の配布は,4月4日(月)から,いつも外国人向けまち歩きツアーで連携している新今宮のゲストハウスと,新今宮TICで始めました。この話を耳にした産経新聞の記者から,松村先生に取材申し込みがあり,4月5日(火),新今宮TICにて皆で取材を受けました。記事が掲載されたのは地震発生からちょうど1ヶ月後の4月11日(月)。その翌日の12日(火),毎日放送の「ちちんぷいぷい」から松村先生に取材依頼が入ったそうですが,先生はその日,授業と会議で残念ながら空き時間なし。代わりに,ホテル中央グループの山田英範社長が取材を受けられました。OAでは山田社長のインタビューが流れたそうで,松村先生は「ぷいぷい…出たかったなあ…」と悔しそうでした。
 新今宮TICは4月10日(日)まで毎日運営を行い,最終日に打ち上げを兼ねて,2011年の第1回外国人向けまち歩きツアーを行いました。このツアーの模様は,次回松ゼミWalkerで報告されると思います。通天閣の無料入場券は,新今宮TICとゲストハウスのフロントで今でも配布しています。

松村先生よりひと言

 やっぱり一番大事なのは人と人とのつながりでした。新世界・通天閣周辺には,ヨソモノとして見ていて羨ましくなるような,何か独特の粋でディープであたたかい人と人との付き合いがあります。Babyのマスターと通天閣観光の西上社長に,心より感謝申し上げます。そして,今後ともよろしくお付き合いください。
 東日本の震災復興では,まだまだ遠く長い道のりが続きます。私たちのまち歩きツアーのテーマである「ありふれた日常」と「ささやかな非日常」が,どれほどありがたく愛おしい存在なのか,本当に痛感しています。仲間のなかには,被災地へ行って活躍している者もいますが,私は行けないし,行ってもおそらくあまり役に立ちません。「ありふれた日常」を感謝しつつしっかりと生きながら,ゼミ生や学生たちと,震災復興に向けて,私たちでも無理なくでき長続きする支援を考え実行していきたいと思っています。新今宮TICの利用者も,震災の影響で激減していますが,淡々と運営して行きましょう。それが震災復興に必ずつながります。