「実験観光学」を体感する試み

実験観光学の紹介

 8月29日(日)の阪南大学オープンキャンパスにて,2010年国際観光学部開設記念事業として「観光まちあるき・まちづくりを体験しよう」というイベントが実施されました。
 午前中は阪南大学南キャンパスにて,「実験観光学の紹介」が行われました。明日香村の地域おこしオブジェ「朱雀」が南キャンパス入り口に展示され,来村多加史教授がキトラ古墳のミニ学術講義を行い,吉兼秀夫教授のゼミ生たちが飛鳥時代の古代衣装を着てパフォーマンスを行いました。

観光まちづくりの実践場所の見学会 参加者は17名!!

 昼からは,通天閣に近い新今宮地区へバスで移動して,新今宮観光インフォメーションセンター(TIC)の見学に向かいました。案内するのはTICを運営する松村嘉久教授とそのゼミ生たち,高校生14名と保護者3名の計17名が参加してくれました。街歩きにはちょうど良いくらいの人数でしたが,猛暑のなかの街歩きは大変でした。
 14時少し前にTICに到着し,まずは松村教授からTICの運営の様子や外国人旅行者の利用実態についての説明がありました。次に,外国人個人旅行者がよく宿泊するゲストハウス(ホテル中央とホテル中央セレーネ)の施設や客室を見学しました。
 その後は,松村教授の案内で,ジャンジャン横丁,通天閣,新世界市場などを歩いて回りました。一般的な観光客はまず踏み込むことのないコースを通り,ベタベタ・コテコテの通天閣や串カツに関する説明はほとんどなし。「大きな声では語れない話なので,近くに寄って下さい…。」と松村教授,観光とも絡めて,まちづくりの視点から,通天閣界隈の賑わいとそこに潜む危うさなどが語られました。

観光まち歩き体験

 通天閣から再度バスに乗り,国立文楽劇場前で降り,劇場内の展示室で一休み。ここで案内役が松村教授からまちガイドの石井聖美さんにバトンタッチ。石井さんは「大阪プロガイドマネジメント協会」の理事で,大阪ではちょっと知られた現役バリバリのおばちゃんガイドで,実にもっちゃりとした味のある大阪弁で案内されます。
 石井さんの先導のもと,15時半くらいから再び歩き始めました。灼熱の陽光が容赦なく降り注ぐなか,上手く日陰を選んで歩いて,まずは黒門市場へ。当初の予定では道具屋筋方面にも行くことになっていましたが,猛暑での体力消耗を考慮して予定短縮。臨機応変がまちあるきの妙です。
 その後は,大阪プロレスの前を通り,法善寺横町へ入り,とんぼりリバークルーズへ向かいました。乗り込んだのは16時15分発のクルーズ。ちょうど,この日に読売テレビの24時間テレビのイベントが道頓堀川沿いで行われていて,乗り場あたりは出店や屋台が立ち並んでいました。
 クルーズの案内は吉本の芸人養成学校NSC卒の「ちょも」さん。小ネタ満載のハイテンションな話芸で,30分ほどのクルーズはとても短く感じました。船からおりて,皆で記念撮影して無事終了,現地で解散しました。

引率した松村教授から一言

 とにかく暑い一日でした。案内する側も,案内される側も,過酷な条件下でのまちあるきになりました。参加者の皆さん,手伝ってくれた石井さんやゼミ生たち,本当にお疲れさまでした。
 私は全ての思想や思考は,現実の理解から始めるべきである,と考えています。合う合わない,好き嫌いは別問題として,見て知って感じて,現実を理解することが何よりも重要です。今回の見学会とまちあるき体験が,参加された方々にとってその第一歩になればいいなと思います。
 今回のまちあるきの参加者は,保護者の方から高校生まで,大阪は初めての方から大阪在住者まで,年齢層もニーズも地域認識も実に多様で,いずれも初対面の方ばかり。案内する側としては,とても難しい集団でした。私としては「場所の力(Power of Place)」と信じて,現場を見ていただき現実を語ることに徹しました。
 参加者の方々が私の語りや想いをどのように捉えたのか,とても気になるところです。参加してくれた高校生の皆さん,ぜひ阪南大学国際観光学部に入学して,私に感想や意見を聞かせてください。そして,今度は案内する側に回って,一緒に悩みましょう。