阪堺電車の新車両「堺トラム」に試乗!!

 2013年7月3日(水),南キャンパスでは七夕まつりが行われていましたが,松村はこの日の15時から,阪堺電気軌道株式会社(以下,阪堺電車と略)の新車両「堺トラム」の試乗会に,ご招待いただいていました。2012年に全線開通100周年を迎えた阪堺電車は,存在そのものが大阪の貴重な観光資源です。
 阪堺電車は新今宮・新世界から阿倍野のまちづくりにも欠かせない存在で,私が会長を務める天王寺あべの地区まちづくり研究会や,新今宮地区観光まちづくり推進協議会にも参加していただいています。何より,私自身が阪堺電車のファンでもあるので,国際観光学部の七夕まつりは学生委員や他の先生方にお任せして,堺トラム試乗会へ行かせていただきました。
 集合は15時に阪堺電車社屋のある我孫子道車庫。集まったのは,大阪市交通局,天王寺動物園,OSAKA旅めがねなどを主催する株式会社インプリージョン,ミナミ・ジャズウォーク実行委員会の方々で,日頃からお付き合いのある方や顔見知りの方が大半でした。

 車庫内で堺トラムを目の前にして,阪堺電車の職員の方々と歓談をしたのですが,コアな鉄道ファンは新型車両よりも,昔ながらの旧型車両の方を好まれるそうです。私個人としては,新型車両と旧型車両が街中ですれ違う風景こそ,現代を生きる歴史都市・堺にふさわしいと思います。
 「堺トラム」阪堺1001形は,和風のおもてなし感覚にあふれた超低床車両で,車内の段差もないバリアフリー対応が大きな特徴です。車内のシートの図柄は和風,日除けブラインドもすだれカーテンでした。車両の外観は阪堺線のカラーである緑が基調となっていて,全体的には堺出身の偉人・千利休の「わび」をイメージした渋めのシャンパンメタリック色が,運転席あたりは「堺刃物」をイメージした流線型の黒が配されていました。
 車両をよく観察すると,三つの短い車両がまるで中国武術で使う「三節棍」のように連結している状態で,運転席のある先頭と最後尾の車両のみに車輪がついていました。阪堺電車職員の説明によると,「予想以上に小回りが利き,運転しやすい」そうです。

 15時30分過ぎから堺トラムを実際に動かしての試乗会となりました。車庫を出た堺トラムはまず我孫子道駅へ行き,そこから浜寺駅前を目指しました。我孫子道駅で乗車待ちしていた人たちは,突然の新型車両の出現に驚き,携帯で写真撮影される方もおられました。浜寺公園駅への途上でも,沿道の人や停車中の車からも,堺トラムは注目を浴びていました。
 堺トラムの乗り心地ですが,普段乗るチンチン電車と比べると,横揺れはずいぶんと軽減されていました。あと,車内が静かなのも印象に残りました。我孫子道から浜寺駅前までのいくつかの駅で停車したのですが,その際,車両とホームの段差はほぼなく,その間隔もわずかで,まさに超低床車両の醍醐味。もし車椅子で乗降するとしても,少し慣れれば介助者の必要はなさそうでした。阪堺電車に新型超低床車両が増えれば,身体障害者や高齢者が独力で出歩く機会は,きっと増えることでしょう。

 さて,何度も試運転を重ねて,堺トラムは8月25日(日)から,本日走行した我孫子道・浜寺駅前間を1日数往復で営業運行し始めるそうです。
 国際観光を学びその振興を志す立場からは,堺トラムが阪堺電車再興および堺観光振興の起爆剤になることを願ってやみません。阪堺電車は大阪で唯一生き残った路面電車であり,その沿線は実に魅力的な地域ばかりです。生活の足としての完全復活は,確かに遠い道のりかもしれません。しかしながら,観光という文脈から仕掛ければ,必ず活路を発見できる,と私は信じています。
 近い将来,百舌鳥・古市古墳群も世界文化遺産に登録されことでしょう。それが実現すれば,通天閣や阿倍野と住吉大社・堺市街地・仁徳天皇陵古墳を結ぶ阪堺電車は,間違いなく注目されます。堺トラムが阿倍野・天王寺へ乗り入れるようになり,それが天王寺動物園や通天閣を通り,大阪随一の繁華街・ミナミへとつながれば…,夢は尽きません。