文章を書くのは難しい!?

1.文章を書くのは難しいと思いますか?

皆さんにこんな質問をすると、おそらく「はい」という答え以外に、こんなつぶやきが聞こえてくるかも知れません。
「文章を書くのは嫌い」
「文章を書くのは苦手」
「文章書くのは面倒くさい」

高校生に限らず、大学生でさえ同じだと思います。
高校生の皆さんが書く文章といえば、夏休みの読書感想文、AO入試の課題作文(「○○大学で何を学びたいか」など)、LINEなどで打ち込むメッセージ*、といったものでしょうか。
*パソコンやスマートフォンで文字打ちをする場合、手を使って何かを書いているわけではないのですが、ここでは、文字を使って情報を発信するものを「書く」と表現しています。

読書感想文などは年1回しか書かないとしても、LINEでメッセージを打ち込む(スタンプを送信する場合を除く)ことなどは、日常生活の中で頻繁に取り組んでいることでしょう。何を書くかにはよるものの、この「書く」という活動、日常性が高い活動かも知れません。

でもなぜか、聞こえてくるのは、(書くことが)「嫌い」「苦手」「面倒くさい」といった言葉・・・
一体なぜなのでしょうか?
今回の阪南経済NOWでは、「書く」という活動について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

2.「書く」という活動について

一口に「書く」と言っても、たとえば何かの見出しのような短いものから、読書感想文や課題作文のような、数百字の文章を書かなければならないものまで様々です。そこで今回は、こんな課題を例に、「書く」活動について考えてみましょう。

このところ、いろんな高校でオープンスクールが行われるのを目にします。その時、中学生には、高校の紹介をしたパンフレットが配られることでしょう。
さて、あなたの高校でも、オープンスクールに参加する中学生に配るためのパンフレットを作成することになりました。そこで、ある日のホームルームの時間、こんな課題が出されたとします。
【課 題】
 この学校を受験しようと考えている中学3年生に向けて、高校での生活のおもしろさ(楽しさ)を
 伝えるような文章を書いてください
さて、この課題を目にした時、皆さんはまず、何をするでしょうか?
いきなり文を書き始める、何を書こうかと考えだす、人によって違いはあると思いますが、頭の中ではこのようなことを考えているのではないかと思います。

さて、何を書けば良いか、これは多くの人の頭を悩ませる課題です。でも、とにかく書かなければならないので、必死になって、自分の持っている知識の中から当てはまりそうな内容(情報)を、頭の中から引き出してきます。

でも、これはまだ、「書く」活動の中の最初のステップにすぎません。
皆さんが頭の中から引き出した情報は、しばらくの間、そのまま頭の中にとどめておく必要があります。そしてさらに、こんなことも考える必要があります。
・中学生が見てもわかるものはどれ?
・中学生がおもしろいと思ってくれるのはどれ?
・(情報を)どのように並べ替えれば中学生にわかりやすくなるだろうか?
このように、頭の中では、情報をとどめておくだけでなく、それらの取捨選択や並べ替えまで行っていることになります。ですから、実に多くの作業を、一度に、しかも同時にこなしていることになるのです。

ここでとりあげた活動は、主に構想を練る(プランニング)時に見られる活動ですが、これらの活動は、実際に文章を書いている時や、推敲している時にも見られます。

こう考えると、一口に「(文章を)書く」と言っても、頭の中で、実に多くの活動を、一度に、同時に行っていることがおわかりいただけると思います。これだけ複雑な処理をしているわけですから、文章を書くことが難しい、と感じるのも無理もない話かも知れません。

3.「書く」ことの難しさを少しでも減らすには?

では、皆さんが感じる、「書く」ことの難しさ、少しでも減らす方法はあるのでしょうか?残念ながら、今の時点では、この問題を解決できるだけの有効な方法は得られていません。
しかし、今日ご紹介した、「書く」活動自体に少しはヒントが隠されているかも知れません。

文章を書く時、先生が「構想を紙にまとめなさい」「書こうと思っていることを(配布した)紙に書きだしてみなさい」といった指示をなさることはありませんか? 
この指示(活動)、皆さんにとっては「面倒くさい」と感じるだけかも知れません。「書くのは文章だけで十分だ」「そんなことをしたら二度手間になる」色々意見はあると思いますが、実は、この先生の指示、一理あります。

なぜなら、何を書けば良いかを考えて思いついたこと(頭の中から引き出したこと)を紙に書くことで、それらを頭の中にとどめておく必要がなくなります。すると、中学生がわかる(面白いと思ってくれる)ものの取捨選択や、取捨選択したものの並べ替えだけに集中して取り組めるからです。

このように、書こうとする内容(情報)を紙に書き出すことで、そうでない場合と比べて、頭の中の情報処理を、円滑に、かつ、効率よく進めることができるのです。

物事を円滑に、効率よく進めることは、様々な場面で大事になってきます。
ちなみに、限りある資源をどうすれば有効に活用できるだろうか、という考え方は、経済学を学ぶ上でも非常に大切なのだそうです。