株式会社交通論壇社を訪問しました(経済学部三木ゼミ 3年生)

 2015年6月3日(水)、経済学部の三木ゼミ3年生は、ハイヤー・タクシー業界の専門誌を発行している株式会社交通論壇社の北大阪オフィスを訪問し、代表取締役社長の小北隆弘さんにお話をうかがいました。
 交通論壇社は2007年に小北社長がそれまで勤めていた会社から独立する形で設立、以降徹底した独自取材と豊富な人脈、斬新な視点でタクシー業界の理論誌「TAXISTA」、FAX新聞「交通論壇」を発行、常に最新ニュースを提供しています。
 三木ゼミは、グローバル人材を育成する「グローバルキャリアプロジェクトゼミ」であると同時に、民間企業出身の教員が指導するという特色を活かし、企業/行政/地域との接点をできるだけ多く持つようにしています。

日本のタクシー業界のマナーの良さは経営者の熱心な教育によるものであることを知りました 3年生 李 章徳

 今回は株式会社交通論壇社代表取締役社長の小北隆弘さんにお会いし日本のタクシー業界の現状について詳しくお話をしていただきました。この訪問で日本のタクシー業界はマナーと安全性がトップレベルで評価が高く利用者が安心して乗ることができていることを知りました。逆に海外ではマナーの面はあまりよくなく、安全性の面では運転が荒くて海外のタクシーに乗られた方々は事故の危険を感じるということも知ることができました。私も海外に行って実際に身を持って感じたことがあります。しかし、日本のタクシー業界の平均年齢は60歳以上で月収も低いという現状が続いており、若者のタクシー運転手が集まらないといった問題が起きています。この問題の解決には、運転手の賃金をある程度まで上げることが従業員の意識向上にもなり、若手運転手が集まることにも繋がるではないかと思いました。そのためには経営者が従業員にしっかりとした教育してタクシー運転手に自分たちがいかに日本社会の役に立っているかを意識させることでサービスの質が向上し、そのタクシー会社を指名して乗ってくださるお客様が増え、その結果賃金の上昇につながるのだと感じました。
 日本のタクシー業界大手であるMKタクシーでは毎朝、社員たちが大きな声を出して朝礼をしています。これはしっかりと挨拶をすることでお客様に気持ち良く乗車してもらうことが目的です。これをお聞きして、一度MKタクシーに行って体験してみようかなという思いが芽生えました。その他にも「サービスの面で失礼なことがあればお金をすべて返金します」といったことまでやって今のMKタクシーがあることを知り、心を打たれました。大阪にあるさくらタクシーという会社では昔、従業員のマナーが非常に悪かったことで有名なのですが、社長自らが倉庫内でタクシーの洗車をして油まみれになりながらも教えてくれる社長の姿を見て従業員たちの意識が変わりいまのさくらタクシーがあるというエピソードも知ることができました。イギリスのタクシーではブラックキャブが有名です。ブラックキャブはタクシーという仕事をする上で必要なことを教育機関で4年間学ばなければければ乗ることができないようです。だからブラックキャブは簡単な地図や通りと番地を運転手に見せるだけでその場所がわかるということをお聞きしました。このときに教育がいかに大切であるかを改めて感じました。また、日本のタクシー業界と比較しても平均所得が高く高学歴の人たちもブラックキャブに乗務しているということもあるようで自分はブラックキャブの運転手であるというプロ意識を持っていることを知りました。
 しかし、日本のタクシー業界では先ほど述べた通り、低月収で従業員の地位が低く見られているということもあって、今後若者の増加にはある程度ドライバーの地位が認められなければ若者も集まってはこないしプロ意識も高まりにくいということをお話から感じました。また、日本ではすでにタクシーの台数が供給過剰の状態で利益を出すことが難しくなっている状態です。それでもいま生き残っている日本のタクシー大手はこういった従業員教育を熱心に行って現在まで継続したからこそ大企業として君臨していることを感じました。
 日本のタクシー業界がマナーの面でトップレベルなのも大手の経営者が熱心にドライバーを教育したから実現したことであります。もしも、熱心にドライバーを教育していなければトップレベルになることはできなかったでしょう。

タクシー業界のサービスの質の高さを知ることができました 3年生 松本 光司

 私たちは今回株式会社交通論壇社代表取締役社長の小北隆弘さんにお話を伺いました。夏季に行われるベトナムインターンシップにおいて、私たちが取り組む課題の一つであるSaigontourist Transport(タクシー会社)への事業改革提案に必要な情報を得るために訪問させていただきました。なぜ日本のタクシーの内情を知っておくことが必要なのかというと、今でもぼったくりや遠回りが残っているベトナムにおいて、現在行われている日本のサービスを現地で実施するとそれが最前線のサービスになるからです。しかし普段タクシーに乗る機会が少なく且つ事情を全く知らないと言っても過言ではないほど理解していない私にとって、実際に話をうかがうと驚きを隠せない内容ばかりでした。中でもタクシー業界が農業並みに高齢産業になっている(60歳以上の年齢層が過半を占めている)実態は想像以上で今後の国内のタクシー業界の未来について懸念させられました。
 その懸念とは裏腹に、国内のタクシー産業のサービスの向上にはものすごく感心させられました。現在取り組まれているものの例がマタニティータクシーとバイリンガルタクシーです。マタニティータクシーとはその名の通り妊婦を運ぶためのもので、体温管理や破水等にも対応するために、防水シートを積んでいるそうです。しかし、救急車のように様々な器具が揃っている訳ではないですし、専門医が乗っているわけではないので、イレギュラーな事態には対応し兼ねることがあることや、支えることが必要な場合痴漢行為にならないのかなど、考えどころが多く普及するのは中々難しいのではないかと感じさせられました。またバイリンガルタクシーは東京オリンピックが2020年に予定されているので、需要が期待されているのではないかと思いました。しかし、高齢産業であるタクシー業界でバイリンガルタクシーを普及させることは、今から英語を勉強しなければいけないということなので、非常に苦労されている様子が伺えました。他にも取り組まれている中で、私が1番気になったものは子育支援タクシーです。内容的には子供の学校までの区間を送り迎えし、常に同じドライバーを割り当てることで子供にも安心して乗ってもらえ、且つ子供が利用していれば親がタクシーを利用する際にもそのタクシー会社を使ってもらえる可能性があるといった利点を備えたサービスです。これには毎日の送り迎えにタクシーを利用するほど裕福な家庭が少ないというデメリットがあります。しかし、私の考えとしてはこれまでのタクシーの固定観念を捨て去り、富裕層向けの高級タクシー会社というものも面白いのではないかと思いました。一般の公共交通機関として電車が最も普及しているため、電車を主に使用しない客層に顧客ターゲットを置くことで固定顧客を獲得することができるのではないかと考えています。
 気になる国内タクシー業界と海外タクシー業界との比較ですが、ここにもまた私の知らないことが多くありました。制度の違いにより、日本ではほとんどの会社で各ドライバーが法人を意識しています(ドライバーはタクシー会社という法人に雇用されている)が、海外ではドライバーは車を賃借して運転しているという位置づけで法人としての意識は低い(個人経営をしているような感覚)という実態は、昨年香港でタクシーに乗る機会があった時に私も感じていました。しかし、自動ドアを取り入れているのは日本くらいだという事実は全く知りませんでした。海外で改革が進んでいて、これから主流となっていくものは、スマートフォン専用のアプリによる、アプリ配車とのことです。タクシー業界でも時代の流れに対応するやり方が採用されているのだと、適応することの大切さを感じました。
 今まで私にとって接点が非常に少なかったタクシー業界ですが、様々な知識を得られたことで改革提案を行うための基礎知識を身につけることができたと思います。今回得られた内容をまとめ、現地のタクシー会社で行われているサービスがどのようなものか、他会社との差別化はどのように行っているのかを調査するのは、大前提として必要なことだと思っていますが、最も大切なことは異文化理解です。そのためには、一ヶ月の間に多くのベトナム人及びタクシーを利用する人と関わることが必須だと思うので、自分からコミュニケーションをとっていくように心掛けたいです。そして日本のシステムとしてこだわる部分はこだわり、現地の人にとって心地よく利用することができるタクシー会社に改革していけるような提案を行いたいです。

【ご参考】