今年、始まったばかりのゼミで記事執筆を目的とした取材実践を行いました。少子高齢化によって日本の社会構造が変容すると見られる「2025年問題」を考える為、薬剤師でスポーツファーマシストとして起業された美内明子先生をお招きし、40分の「記者会見」形式で、ゼミ生が事前に準備した質問に答えて頂きました。
 この活動で記事を執筆した遠藤隆恭さんの原稿を紹介します。

国際コミュニケーション学部2回生 遠藤隆恭

 2018年6月19日、阪南大学本キャンパスで、美内明子先生による「薬剤師とスポーツファーマシスト」についての講演が行われた。美内先生は1995年の阪神淡路大震災での被災経験から健康や生きている大切さを肌で感じ、弱者に寄り添いたいと薬剤師になることを決められた。現在、薬局での勤務の他、公認スポーツファーマシストとして活動を始めた。「2025年、団塊の世代など日本の人口の約3分の1が65歳以上の高齢者になります。一方で約43万人もの人が、必要な介護を受けられない『介護難民』になるという試算も出ています。自宅で暮らすことを余儀なくされるため、徘徊や孤独死の急増、それに病院で診断待ち者の急激な増加が懸念されます。医療や介護など、社会保障分野での経費が激増する半面、少子化で働き手が減るため、『1人の若者が1人の高齢者を支える、所謂騎馬戦型支援社会』という厳しい未来像が予測されています。」美内先生はこの2025年問題に向き合うべく健康分野の専門家と共に「高齢者になっても健康で生きがいを持って社会参加できる環境を実現する」との目標を掲げ、2018年4月に団体組織(名称:ウェルネス サポート)を立ち上げた。目的は病気を薬で治すのではなく、生活習慣の改善によって防ぐことである。
 活動の裾野を広げようとイベントや講演で体操や規則正しい生活スタイルを教える他、スポーツに関するドーピングの講演も行っている。美内先生は「ドーピング防止がスポーツの価値を保つ」と提唱し、私たちが普段何気なく使っている薬やサプリ、筋力増強のためのプロテインの中にはドーピング反応が出るものや、覚せい剤のような常習性をもたらす危険性があることを教えている。例えば、過度の痛み止めの服用は体の感受性を低減させ、結果的にさらなる服用につながってしまう事象も紹介している。
 先生の危惧する最悪の未来とは、経済格差によって市民一人一人がどこまで満足な医療を受けられるかを決定づける「医療格差」の招来である。この問題に対応するため、市民一人一人が健康を意識する必要があると提言している。ウェルネス サポートの活動で一番の課題は「健康増進を呼びかけても、美内さん自身に実績がないと断れること、活動の目的が伝わらないこと」だという。そのため「活動や提言に共感してもらうためには、自分の絵描くイメージがくっきりと輪郭を持ち、聞き手、つまり他者をしっかりと想像できるコミュニケーション力が必要」と語った。
 私が最後に「私たちが出来ることは何か」と質問したところ、「今日話した“健康”を自分自身のことして、日々、意識することが大事。私のように2025年問題に向き合う活動している一主婦もいることを伝えてほしい。」と話した。自分には関係のないことだと耳を塞ぐことなく、安易に薬に頼るのでもなく、一人ひとりが普段の生活を通して健康に意識を向ける必要があると感じた。